2018年02月14日
スノウホワイト / 慾鴉のパラディン
随分昔の話である。かつて私は美しい純黒の鴉だった。けれど足りない。更に美しくあるため、私はルビーの首飾りを身につけ着飾った。赤い屋根の家の女から頂戴したものだった。
あれは虚栄心だけが立派な馬鹿な女だ。整形を繰り返し美貌を保ちながら、大企業の社長秘書の立場を利用し金持ちに貢がせる。金と装飾品と賛辞の言葉でしか己を満たせない愚かな女。
秘書の女は自身を飾り立てることばかり気にかけて家のことは全て疎か。換気扇はまったく手入れしていない。腐食が進んでいるから、くちばしで突けば私でも通れる隙間ができた。
あの日もエメラルドの指輪をくわえ、壊れた換気扇から出ていこうとしていた。ちょうどその時だ。家の中で誰かがスイッチをいれた。私のすぐ傍で、換気扇が回り始める音がした。
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