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2023年08月06日

その女アレックス

ひと月ほど前にKindleで施川ユウキの「バーナード嬢曰く。」というマンガが半額以下のSALEに出ていました。せっかくなので既刊6冊をまとめ買いして読みました。
このマンガは「読書家だと思われたい女子高生が図書室で友達といろいろするコメディ」です。
当初は主人公はあまり読書に熱心ではないのですが、巻を追うごとに読書が趣味になり、とりあげられる作品も増えてゆきます。
古典的名著から話題作、ちょっとマニアックな作品まで各種取り揃えていて、このマンガを読むだけで読書通になれる(気がする)お得な本です。

「その女アレックス」は、4巻で取り上げられています。
作者はピエール・ルメートル。パリ生まれの作家です。
日本ではこの作品が初めての翻訳ですが、密かに致命的なトラップが仕掛けてあります。
じつは「アレックス」はシリーズ物の2作目なのです。お話の冒頭に、1作目に関する壮大なネタバレがあります。
未読の人は、できればシリーズ1作目の「悲しみのイレーヌ」から読むのが賢明です。文春文庫から出ています。
alex01.jpg「その女アレックス」
ピエール・ルメートル
文春文庫 2014年初版

「その女アレックス」は、2014年に翻訳が出て、その年のミステリの各賞を総なめにしています。
ものすごく面白いのか、と聞かれると、ちょっと困る。
なかなか強烈なお話です。
冒頭、アレックスという女性が誘拐され、廃墟内に監禁されてネズミのエサにされかけます。
裸で木の檻に押し込められて、天井から吊るされ、ドブネズミ軍団がやってくるのが第1部。
極めて映像的な描写でテンポよく進みます。管理人は「JOJO」の荒木飛呂彦先生の絵柄で脳内上映しながら読み進めました。もっと言えば望月三起也の「ワイルド7」のテイストに近い。
警察の捜査班も、デブとチビと金持ちとドケチという実に「描き分けやすい」キャラです。
本の帯にもでっかく書いてありますが、「あなたの予想はすべて裏切られる」はずです。
いや、そんなことはないんだけどね。
結末については人によっては意見が分かれるかも。
舞台がフランスのパリで、フランスは重罪裁判には陪審制がとられていて、その前提で予審判事という司法官が存在するってことを予備知識として持っておくといいかも。
「バーナード嬢」のなかでは、読み終えた男子が「なかなかヘヴィな話だった・・・」といって友人の図書委員の女子に語り、最後に「読む?」と言って貸してあげるんだけど、オレだったらどうするかな。
相手がミステリファンなら貸す。
そうでなければそもそもこの本の話はしない。

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2023年07月08日

隣のお姉さんが好き (by藤近小梅)

管理人のゆうすけです。
今日、人生で初めてヤクルト1000を飲んだら、なんかお腹の調子が悪いです。
オレには1,000億個の乳酸菌シロタ株に耐えられる力も無いのかと愕然としております。
ストレスを和らげようなどと人並みの幸せを求めることさえ叶わぬ人生ですよ。

そんな心の闇に差し込む一条の光が「隣のお姉さんが好き」です。
秋田書店のWebサイト、マンガクロスで藤近小梅先生が連載しているラブコメ漫画です。
コミックスがすでに3巻まで出ていますが、管理人は基本的にマンガクロスでタダ読みしています。
でもコミックスだけで読める「おまけマンガ」が読みたくて、ついつい1巻を買ってしまいました。

マンガのあらすじはだいたいこんな感じ。
「映画が大好きな美人で明るい心愛さんは、お隣に住む3つ年上のお姉さん!! 絶賛片想い中の僕は、おススメ映画を教えてもらうことを口実に、お姉さんと毎週水曜日2人で会う約束をして…!?」
中学2年の次原佑(つぎはらたすく)君と、高校2年の星野心愛(しあ)さんとの年の差恋愛モノです。

中学2年が主人公、というと「僕の心のヤバイやつ」を連想します。じつはどちらもマンガクロスの人気作品で、女性作家が少年・青年マンガで恋愛モノを描く、という共通項があります。
僕ヤバの主人公の市川君は重い中二病を患っていて、基本的に自分が嫌いですが、この作品の「たーくん」は真逆です。バスケ部で活躍していて見た目も良くて、自分が大好きでモテる自覚(誤解)があります。
あれ、やっぱ二人とも只の中坊ですね。自分のなんたるかが全然わかっていない。要するに「大人のなりかけ」です。
そんなたーくんが、お隣の心愛さんのことが好きになって、映画好きな彼女と一緒に映画を観るという繋がりを作って、すこしずつ自分とお互いを知ってゆくお話です。
中二男子にとっては、高校2年の女性はとても「大人」に見えますが、実際はそんなことはない。
心愛さんの性格はわりと内省的ですが、いわゆる「陰キャ」とは違います。「難しい」「めんどくさい」という呼ばれ方もしますが、感情も知性も豊かだけどそれをアウトプットするのがまだ上手くない人です。
映画好きで、自分で脚本を書いて投稿するレベルに到達していますが、その脚本はなかなかうまく纏まらない。
たーくんからストレートに「好きです」と言われるけど、隣の中二男子の言葉も自分の気持ちも、簡単には纏まらない。
コメディ的要素が多いので、読んでいて気分が高まり、1000億の乳酸菌よりも心身を癒してくれます。
ヤクルト1000に加えてこのマンガを読んで寝れば、たぶん精神的ストレスが低減し、良質な睡眠を得ることが出来ると思われます。たぶんね。

余談ですが、たーくんにはお兄さんとお姉さんがいます。二人とも愉快で仲良しなので、藤近先生はご兄弟に恵まれた家庭環境で育った人なのかなと思う次第です。
管理人の駄文よりも実際の作品の方が1000億倍面白いので、少しだけ最近のシーンを転載させていただきます。

IMG_0169 (編集済み).PNGIMG_0170 (編集済み).PNG

 

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2023年06月25日

僕が恋するコズミックスター(by縁山)

最近「週刊少年チャンピオン」が気になります。
じつは毎週読んでいるのですが、3週ほど前に「代原ちゃん2」が掲載されて世間をざわつかせました。
「代原ちゃん」というのは押切蓮介先生が描く、連載マンガ休載時の「代理原稿」をネタにしたマンガです。
「代原ちゃん2」なので、じつは第2話です。すでに第1話は発表されているのです。
いろいろあって、今回「2」が掲載されました。漫画家は大変なんだね。

先週からは縁山先生の新連載「僕が恋するコズミックスター」が始まっています。
縁山と書いて「へりやま」と読みます。「みどりやま」ではない。
あらすじはだいたいこんなかんじです。
「灰田さんに恋する平凡な男子学生「叡智」の前に、突如美少女宇宙人ヒーロー「スター」が現れて…!?」
というわけで、コズミックなラブコメです。空から美少女が降ってくる系のアレです。
cosmicstar02.jpg
「僕が恋するコズミックスター」(縁山)
週刊少年チャンピオン 2023年29号から連載

2023年6月現在、秋田書店のサイトで第1話が試し読みできます。
縁山先生は、同誌で以前「家庭教師なずなさん」を描いていました。
独特の雰囲気がある作風で、特にセリフ回しが可笑しくて好きです。
妙な倒置法とか、芝居がかった物言いとか。「弁える」等のルビ必須の言葉も使います。「わきまえる」ね。
キャラクタの動きもクセがあって、セリフを言うときにいちいち芝居が入ります。
それもミュージカル風の派手なヤツ。少年誌なので動きを入れろという指令が入るのか、オータム書店は。
まだ連載2回目なので今後の展開は予断を許しませんが、2話のサブタイトルが「セイブザキャット」という開き直りぶりです。
「SAVE THE CAT」というのはハリウッド式脚本メソッドの王道で、危機一髪のネコを助けたりすることによって主人公に共感を呼びこませる手法ですが、このマンガでは第2話で本当に猫を助けます。
あのチェンソーマンの第2部でもやっていますね。みんな「セイブザキャットの法則」をネタにしすぎ。
そんな一筋縄ではいかないマンガですが、管理人的には応援していますので、縁山先生にはがんばって描き続けていただきたい。
どうしてもダメなときは「代原ちゃん3」があるから。
なんなら週チャンに「代原ちゃん」が2話一挙掲載、ぐらいになってもOK。
押切先生は許して下さる。

2023年05月20日

日本三國(by松木いっか)

以前も書いたような気がしますが、オタクにとって「三国志」は必修科目です。
小説でもマンガでも映画・TVでもOKですが、かならず履修する必要があります。
できれば孔子や孫子についても学んでおくと「作品への理解度」が増します。
ということで「日本三國」です。
この作品は裏少年サンデーコミックスで2023年5月現在、3巻まで発刊されています。
あらすじはこんな感じ。
「この国を、再統一する――
文明崩壊後の近未来、再び戦国時代と化した日本を再統一すべく一人の青年が立ち上がった。
名は三角青輝。後に奇才軍師と称される彼の伝説が、いま始まる!!」
時代設定は近未来ですが、世界観としては「明治時代」ぐらいです。
世界大戦があって、日本が衰退(人口が1/10まで減少)、3つの国に分かれています。
他国も国力が低下しているようで、基本的に日本は世界から忘れられています。
冒頭に書いた通り、「日本を舞台に三国志をやってみた」というマンガです。
近代兵器を持ち出すと「三国志」にならないので、戦車・機動戦闘車などは使用不可です。
当然航空機も不可です。原子力空母も潜水艦も不可です。馬で移動して刀で闘います。
コーエーのゲーム「三国志」シリーズや、戦略・戦術SLGが好きな人、架空戦記やポリティカルフィクションが好きな人、諸葛亮孔明が好きすぎる人におススメしておきます。
物語自体はかなり殺伐としているのですが、キャラクタやセリフ回しなどに妙な可笑しさがあります。
現在・過去・未来が混然一体とした世界のなかで、主人公が異彩を放っています。
天下統一、天下泰平を目指すには、何かしら強い理想や信念、動機が必要ですが、そのエピソードが冒頭で語られます。
1巻を読んでみて大丈夫だったら一気に3巻まで進んでください。
はやく続きが読みたくなってきましたね。
日本三國、恐るべし。

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感想(3件)


2023年05月13日

これ描いて死ね 3巻(byとよ田みのる)

「邪黒竜恐怨悪猫喰植物(エビルブラックドラゴンバッドバッドキャットイータープランツ)だッ!!!」
「わーーー!!!」

ということで、「これ描いて死ね」第3巻です。
冒頭のセリフは主人公が描いたマンガの1シーンから。
じつはこの子が描くマンガには、ほぼ毎回このバケモノが「いきなり」出現して、延々とバトルします。
しかも登場キャラの「ニャン太」が毎回おなじ格好で蔓に巻き取られて逆さになってます。
クセの強い絵柄と内容で、震えるぐらい面白いんだけど、他人には言えない。でも中毒性がある。
1巻と2巻にはこのシーンが出てきたんだけど、3巻には出番が無かった。残念。

「これ描いて死ね」は、とよ田みのるが描く漫画家漫画です。
「伊豆王島」に住む女子高生の安海 相(ヤスミ アイ)は、漫画を読むのが大好き。
とある出来事がきっかけで「漫画創作」を意識し始めます。
学校の先生や友人の協力を得て「漫研」を設立し、「まんが道」へと踏み出します。
2023年の「マンガ大賞」で大賞受賞!なんです。
korekaitesine01.jpg「これ描いて死ね」とよ田みのる/小学館
マンガ大賞(2023) 大賞受賞

この作品が受賞した「マンガ大賞」は、2008年にできた有志によるマンガ賞です。
小学館や講談社などが主催する漫画賞とは異なります。
運営は、マンガ大賞実行委員会が行っており、非営利です。
選考員は、実行委員が直接声をかけたマンガ好きの有志たち(主に書店員をはじめとするさまざまな職業の方です)。
選考対象は、前年に出版された単行本の内、最大巻数が8巻までの作品です。
ざっくり言えば「比較的最近の作品で、とくにみんなに読んで欲しいと思うもの」が選ばれます。
出版社主催の漫画賞は、自社への貢献度(売上)が重視されますが、この賞はそういったしがらみがなく、出版社や売上を問わず、純粋に「面白い」とよべる作品を選んでいるので、信頼度が高いのです。
いずれ何かの賞を獲るだろうと思っていましたが、さすが「マンガ大賞」、お目が高い。

漫画家漫画は数々ありますが、とよ田先生の作品は重層的でいろいろな視点で楽しめます。
管理人がとくに好きなのは、漫研顧問の手島先生。
じつは元漫画家で、わけあって離島の国語教師になって「漫画界」とは縁を切ったはずですが・・・。
ものすごく「漫画が好き」なのがダダ洩れしているのがたまらない。
手島先生の過去編が各巻の巻末に1本ずつ掲載されていますが、「これ読んで死ね!」というぐらい面白い。
ただ、この面白さは「創作の苦楽」を知る人にこそ伝わるので、全ての人にはお勧めしない。
漫画好きとそうでない人へ。

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2023年03月26日

嘘の子供(by川村拓)

川村拓は漫画家です。
知っている人は知っているし、知らない人は知らない。自明ですね。
じつはかなり人気がある。人気の秘密は、作品が期待を裏切らないことと、読後感の良さ。
恋愛、コメディ、ヒューマンドラマの分野で若干どえらく圧倒的な実力者です。
シンプルな描線で可愛い女の子を日々量産しています。レビュウの作品ではないのですが「事情を知らない転校生がグイグイくる」というマンガがもうじきアニメ化されます。

そんな川村拓の最新作が「嘘の子供」です。
公式の内容紹介はこんな感じ。

「優しくて、嬉しくて、悲しい奇跡。
幼くして亡くした子供が、そのままの姿で現れたら?それがもしも、化け狸の仕業だったら?再会じゃない。本物じゃない。だけどそれでもーーすがりたい。その嘘は、優しくて、悲しい。「事情を知らない転校生がグイグイくる。」の川村拓が贈る、心ゆさぶるヒューマンドラマ。」

涙腺の緩い人は気を付けてください。1話目からいきなりやられます。
「事情を知らない・・・」もそうですが、わりと深刻なテーマを、コメディの皮を被せて上手に読ませるのが川村拓のズルいところなので、まんまと騙されてください。
川村拓のマンガは「こんなことがあったら嬉しいなあ」という願望が、そのまま絵になっています。
そんな絵空事を、と笑う人は読まなくていい人です。
そんな絵空事でもせめてマンガの中だけでもみんな幸せになって欲しいよね、って思う人は読んでみてください。
こういう嘘なら騙されてもいいんじゃないかな。
usonokodomo.jpg「嘘の子供」川村拓


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2023年03月09日

僕の心のヤバイやつ 8巻(by桜井のりお)

「やったー」
ということで、8巻です。
連載5周年です。300万部突破です。アニメ化です。
はい、「僕の心のヤバイやつ」(桜井のりお)です。

IMG_0007 (編集済み) (2).PNG「やったー」と叫ぶ山田杏奈さん。
なにをやったのかはご自分でお確かめください。

僕ヤバも8巻からいよいよ中学3年編が始まりました。
スタート時点が中2の1学期だったので、ようやく1年経過したわけです。作品内では1年ですが、連載期間が5年なので、なにか遥々と旅をしてきた感があります。
今回は、クラス替えに始まって、新キャラ紹介、体育祭、修学旅行と、イベント盛りだくさんです。
そしてイベント以上に内容が濃い。もう表紙でネタバレしていますが、ようやく二人のお付合いがはじまります。読者的には5年かかったので、これを読めずに死んでいった方には仏壇にお供えしてあげよう。

管理人的にこのマンガの評価が高いのは、エモーショナルな恋愛マンガである一方で、主人公たちをとりまく人々が個性豊かに活写されている点です。それぞれの家族やご学友、先生、山田の仕事関係者などが絶妙なバランスで配置されていて、出番が少なくとも常にその存在が感じられます。世界観が強固ですね。
そのサブキャラの中で、今回の功労賞はやはり足立君でしょう。
別クラスになってしまいましたが、ナイスガイですね、足立。いつか回想シーンで「チンポバトル編」をやって欲しい。
功労賞の次点は、3年編から登場の半沢ユリネさん。
謎のクールビューティー。深海生物が好きらしい。
萌子とは別の形でふたりをサポートしてくれる偉い人。「愛してる」の意味を知りたい、らしい。
Karte102で、山田から半沢さんへのお手紙が披露されるのが、かなり良いエピソードに思える。
じつはコミックスには収録されていないのですが、この「お手紙」の現物がTwitterで公式にご披露されています。せっかくだから転載してしまおう。諸々の許諾なく。桜井先生お許しください。
IMG_0116(1).JPG山田から半沢さんへのお手紙。
内容はすごく良いのに、山田のブス字のせいで頭に入ってこない。
いろいろ突っ込むところが多すぎて手が付けられない。
山田、恐ろしい子・・・。

この回のすごいところは、「山田の心情をモノローグなどで語るのはNG」「市川の知り得ない情報は原則非開示」という作劇上の縛りを踏まえたうえで、それを回避するために「山田が書いた手紙を市川が偶然見つけてそれを市川のモノローグの形で読者に開示する」という超絶高難度ウルトラ技を爆裂させた点です。
桜井のりお、恐ろしい子・・・。

ということで、まだまだ「僕ヤバ」は続くと思いますので、読者諸兄は生暖かい目で二人のお付合いを見守ってあげてください。
2023年4月からはアニメも始まります。主役の声のイメージはけっこうイイ感じなので、こちらもどうぞよろしく。

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2023年02月12日

潮が舞い子が舞い 第9巻(by阿部共美)

「じっとできておりこうさんでした」
「どういう意味だよ 殺し屋のキメ台詞か」

ということで、2023年2月に「潮が舞い子が舞い」9巻が発売されました。
冒頭のセリフは第98話から、氷室と水木の会話。
水木先輩大好きな氷室が、策士「円」の暗躍で、ネクタイを結んであげたシーンのオチです。
この前に那智先生とのからみがあって、それが前フリなんだけど、予想通りで予想以上。
ネクタイを結ぶ時の氷室の構えが、井戸に棲んでいてTVから這い出てくるあの女性にそっくりなのが可笑しい。情念の深さの暗喩であると読み解こう。
siomai14.jpgコミックスの帯にも晒されている氷室さんの今回のやらかし。
じつはエロ画像にも造詣が深いらしい。

今回は89話から99話までの11話が収録されています。
管理人はコミックスで読む派なので、いずれも初めて読むエピソードばかり。
あまり派手な回は無いんでけど、地味に心を揺さぶるエピソードがゴロゴロしている。
9巻のメインは伏兵の車崎君。2巻の時から「性格が悪い」キャラとして登場していますが、今回は彼が水木君と絡む内容になります。8巻で「みんなで休みの日に動物園へ行こう」という話が出ていましたが、結局誘われた水木君はやってこなかった模様です。その件で車崎君は「あいつは裏切りをした」と言い、否定しようとするのですが…。
人は誰しも「車崎」的なものを心に抱いていると管理人は思うわけです。
それはたぶん、「不寛容」という度し難きもので、こいつを飼いならすことが「大人」への階段を登るアレとも言えます。
この作品で良いのは、その「不寛容」に翻弄される車崎君に、毅然と諫言をしてくれる歌野ちゃんや、いつもそばにいてくれる釣岡君のような友人がいることです。釣岡君が不在の時は、なんと水木が相手をしてくれます。水木は色恋にはアレだけど、やっぱ良いヤツだよね。
車崎君はたぶん10年後か20年後ぐらいに、「あれ、オレってものすごく友達にめぐまれているよな」って気付くと思います。いや、もっとはやく気付けよ。叱ってくれた歌野ちゃんにアイスおごれよ。

9巻では車崎君が慟哭していますが、他にもバーグマンが咆哮したり(安定的に)、摩耶先生が何かに憤慨しています。ほぼ1頁の間、後ろ向きでお怒りのご様子ですが、原因は自分にある雰囲気ですね。
誰もが皆、心に深い傷や痛みを抱え、それでもなお生きることを諦めず、こんなさみしい夜は電話してくれよウオウウォウォウ、という変な歌詞みたいなものが脳内に湧きあがる「潮舞い」9巻です。
「潮が舞い子が舞い」のキャラクタは、デザイン的に記号化されているように見えますが、その裡には沼よりも深い「人格」という海が広がっているのです。

ちょっと蛇足を。
キャラクタのデザインが記号的なのは、とくに髪型や眼のデザインに顕著ですね。
マンガで基本モノクロなので、髪色は白、黒、中間トーンの3つで、あとはヘアスタイルの組み合わせ。
眼の描き方は、とくに瞳の描き方が特徴的で、主なパターンは登場人物紹介の絵をご参照ください。
siomai15.jpg女性キャラの目のパターン各種。
歌野ちゃんのハイライト(三角の光?)を見れば分かるように、キャラの個性(!)を目で表していますね。


瞳の描き方はキャラクタの個性や役割によってパターンや組み合わせがあるようです。
美少女型は、瞳が大きくて虹彩にグラデーションが入ります。
あえて美少女枠から外す場合は瞳を小さくするとか、変形型(黒目が四角や台形)になります。柿境ちゃんは素地はいいけどすっごい三白眼になっています。これはこれで良いけどね。
瞳孔をはっきり描き入れるのは眼力パワータイプ。縫部とか、眼で殺すタイプ。
瞳(黒目)がやけに大きいタイプとか、黒目がぐるぐるタイプとか、いろいろ分類して考察すると楽しいかも。誰かやってください。
siomai13.jpg狐塚さんの目は「人外」の印象。
瞳孔が丸ではなくて、ヤギや羊のような横長。怖い。


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2022年11月28日

裏は花色木綿

ご近所のマンガ喫茶がことごとく閉店してしまったので、最近はマンガを読むのも一苦労です。
と言いながらもなぜか毎週ネットカフェなどへ行って週刊誌を読んでいます。
すべての雑誌に目を通すことはできないので、読んでいるのは数誌だけです。
以前は「週刊少年ジャンプ」を読んでいましたが、気が付いたら読むのが止まっていました。いつからだろう。
なんとなく「こち亀」が終わった頃じゃないかと思う。
そんな「ジャンプ」ですが、久しぶりに読んでみたら、相変わらず「ジャンプ」でした。
他の雑誌と比べて、やたらと熱量が高いです。紙面から寄せてくる「圧」が強くて、若年層なら耐えられるけど、50代後半の世代には眩しすぎてちょっと辛い。
「HUNTER×HUNTER」が再開したので読んでいるのですが、ものすごいネームの量に眩暈がしています。
個人的には「ルリドラゴン」の再開が待たれます。

さてそんな「ジャンプ」ですが、ちょっと異色な作品が「あかね噺」。
現代を舞台にした落語ものです。主人公は17歳の女の子。
父がなれなかった「真打」をめざして落語家の道を進むお話です。
女の子が落語をするのは「じょしらく」などがありますが、ギャグに流れず王道の「成長物語」を描いています。「ジャンプ」で落語をやって人気が出るのかと思われる節もありますが、じつはかなり人気があります。
「ジャンプ」は過去にも「ヒカルの碁」など、およそ少年マンガの題材には向かないものを大ヒットさせた実績があります。まったくもって油断がならねぇ。

管理人は落語はあまり聴かないのですが、日曜の早朝にやっているNHKの「演芸図鑑」は毎週見ています。
日曜日の朝5時15分にリアルタイム視聴しているのです。どうでぇ驚いたかい。
それから、中学生の頃に落語を「読破」したことがあります。
たしか講談社文庫の「落語文庫」(全18巻)だったと思いますが、当時の担任から借りて、全部読みました。
われながらガッツのある中学生だと思います。なにが彼をそこまで駆り立てたのでしょう。

ということで「あかね噺」。
途中から読んで面白かったので、コミックスで1巻からあらためて読んでいます。
これを読んで落語に興味を持った中学生に、「落語文庫」全18巻を読破して貰いたいものです。
さてここで表題の「裏は花色木綿」に繋げてオチをつけようとおもったのですが、まったく繋がりませんね。
どっとはらい。

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2022年11月05日

乙嫁語り 14巻(by森薫)

「乙嫁語り」は、19世紀半ば、中央アジアを旅するイギリス人旅行者スミスが各地で出会った“乙嫁”(美しいお嫁さん)たちを描いた漫画作品です。作者の森薫の長編2作目。前作はヴィクトリア朝の英国を舞台にしたメイド漫画「エマ」。番外編を含めて傑作なので未読の方はぜひ。

「乙嫁語り」の基本的な主人公は、アミルさん(20)とそのご主人のカルルク君(12)ですが、14巻ではアミルのお兄さん(アゼル)たちのお話がメインです。
舞台となるのが19世紀の中央アジア(カスピ海の周辺)で、ロシア帝国の侵攻が始まりつつあります。アゼル達の草原の一族と街の一族が会談を開き、それに対抗するために同盟を結ぶことになります。草原の一族の結束を固めるため、ハルガル族のアゼルはジャンディク族の娘を嫁に貰うことになりますが、娘が認めた男にしか嫁がせないという条件がつきます。勝負は「馬競べ」。
ということで、今回は中央アジアの雪原を、馬で爆走するお話です。
「馬」とか「馬具」とか「民族衣装」とか、あらゆる角度から描きまくっています。スゴイよ。
森先生はディティールをきっちり描くタイプの人なので、絵を見ているだけでわくわくします。
誰に強制されたわけでもないのに、ペルシア絨毯の柄を、延々と描き込んでいます。怖いぐらい。
森先生はデジタル派ではなく、紙にペンで描いているそうなので、できれば手伝ってあげたい。
ちなみに「乙嫁語り」は、通常サイズのコミックスとは別に、大きなサイズのワイド版も発行されています。
そうです。できるだけ大きなサイズでお楽しみいただきたい作品なのです。
原画を見たいなあと思ったら、じつは原画展もやっているのです。

otoyome01.jpg
「乙嫁語り」の原画展が絶賛開催中
ものすごく行って見たい。
京都で2022年の12月までやっている。
そうだ、京都行こう
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プロフィール
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ゆうすけ
銀河大計画別館の管理人。 「銀河大計画」は、1993年から細々とやっている同人誌です。 ゆうすけが書いたネタや没ネタなどを、別館で細々と掲載します。どうぞよろしく。 アイコンコピーライトマーク卵酒秋刀魚さん。
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