おはようございます。あるへです。
本日はこちら「Armed Emeth」のレビューです。
本作はHit-Point製のKemcoゲーですが、総合的に見てグラフィック全振りゲーでした。
いやね、一風変わった世界観や、それに則った戦闘システムなど光るものは感じられ、そこはかとなく、なんとなぁ〜く漂うワイルドアームズ感やゼノギアス感は正直悪くはなかったんですよ。ちゃんと戦闘は面白かったし。
ただし、シナリオが、ね、良くないんですよね。
ゲーム制作に本格的にかかる前に作ったと思われる世界観設定はよく出来てるんだろうなと思います。頑張った感じはしました。ただ、それをゲームに落とし込み、ストーリーや表現として描き起こすライターの腕が、今回は及ばなかったように思います。そのせいで作り込まれた世界観の魅力を引き出しきれず、イマイチ没入できない雰囲気ゲーに成り下がったのかなと。
今作はその独特な世界観ゆえ、開幕から「ルシがパージでエボンジュ」をぶっ放してきます。後の展開で少しずつルシが何でパージが何なのか明らかにはなってくるのですが、一度セリフ内でさらりと解説されたらあとはもう投げっぱなし、すでに十分理解しているものとして物語が進んでいくんですよね。
理解したからといってそれで更に物語に深みが出て面白くなるわけでもないので流してもいいのですが……。
問題は、というか本作で私が最も苦戦したのはそんなスタンスの中で、作中に五人か六人くらい出てくる女性の扱いです。既に人数からして怪しい(笑)
たしか、アンナ、マイア、マリア、ミリア、ステラ…だったかな。
この五人は登場機会というのが最序盤か最終盤に限定されていて、その人物像やエピソードを記憶に刻むチャンスがほぼありません。そのくせ、物語ではかなりの重要人物として主人公たちの口から彼女たちについて度々語られます。
厄介なのはこの五人の女性は、この女性同士、と同時に主人公たちとも相関関係を持っており、まるで海外ミステリばりの複雑な血縁関係にあるのです。
登場人物の半数はみんなファミリー説まであるので誰がどの妹で嫁で娘なんだか非常に混乱する上に、名前が皆似た響きなのが混沌(カオス)に拍車を掛けていました。
結局、道中主人公たちがそれぞれの想い人のために熱くなるシーンでも、その人がどんな人なのかイメージできず(説明はされたはずだけど)、またエンディングを迎えても今いるこの人がどの立ち位置なのか理解できておらず、ただ憮然と眺めているだけでしたね。
これがHit-Pointの味とでもいうのか、淡白でぶつ切りなセリフ回しなんですけど、今作はその中でも文字数は多い方でありながら、このセリフ、この情報が後に続いていかないぶつ切り感を醸していて(理屈で説明するのはとっても難しい)、引っかかるんですよね。
街にいるMOBすなわち世界観を表現する役しかないNPCたちというのは非常にメタな存在となっていて、世界観を「説明」するか、その世界観のテーマとなる哲学的な内容に踏み込むと非常に「説教」臭くなるんですよね。
どっちか片側に寄り切った極端な世界なので、そらぁ書き手としちゃあ説教しやすいでしょうよ。
で、こういう物語に落としきれない世界観の設定や補足、あるいはライターのエゴに基づいた説教を披露するときはだいたい饒舌になり、たかがMOBのくせに何度もページ送りしないと放してくれないクドさに繋がっています。
とにかくクドくてうるさかったです。
うるさいくせにその会話単独で完結しちゃってるから、ゲームに滑らかさが無いのかもですね。
世界観はよく作っただろうし、グラフィックはもちろん良い。ゲームとしても面白さはあったけれども、これら事前に作り込んだ部分で、それをそのまま仕様書通りに作ればいいシステム面とは裏腹に、その人の経験値や技術がもろに出てくるシナリオ面では、材料をだいぶ無駄にしてしまったと感じました。
あっ、思い出した。
今作のダンジョンのBGMはバグだろ? そう言ってくれ。
三秒くらいのフレーズが無限ループするこのBGMは、使うシチュエーション間違ってない? これギャグパートで使うやつだろ? ダンジョン内だけならまだしも、敵要塞とか、そこでのド・シリアスなシーンでも常にこれが垂れ流されていて、この仕様一つで演出のクオリティがガッタガタ。脳が腐るかと思いました。
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