おはようございます。あるへです。
本日はこちら「マレニア国の冒険酒場 〜パティアと腹ペコの神〜」のレビューです。
ちょっと予感はしていたんですけど、いつものKemcoゲーと舐めてかかったらいい意味でバッサリ裏切られました。
めちゃくちゃ作り込んであるし、すっごいボリュームありますよ。普通に良ゲーですし、人によっては神ゲー……は言い過ぎでもしばらくハマりそうなほど面白かったです。
その予感なんですが、本作はいつものKemcoゲー、すなわちExe-CreateまたはHit-Point製作のゲームではありません。
さらには、それらの作品集の中でほんの少し割高なお値段なんですよね。
たぶん、まったく別のインディースタジオが、Kemcoの力を借りてXboxに進出したということで、ある意味外注作品なんじゃないかと勝手に思ってます。
だからなのか、もうね、作り込みが全っ然違う。
ガワはいつものドットRPGみたいな感じですけど、本作は似たもので言えばいわゆる錬金術で有名なアトリエシリーズに近く、冒険に出て食材を集める、お店に帰って集めた食材でレシピを研究する、出来上がった料理を客に提供し収入を得る、という確固としたルーチンが完成されています。
この作業感が非常に心地よいです。
食材の種類も、それに伴うレシピもこの手のライトなゲームにしては信じられない程多く、作っても作ってもまだまだレパートリーがあり、足りなくなった食材を探すための強力なモチベーションになるんですね。
冒険の場では各地に採取ポイントがあり、戦闘で敵を倒しても結構な頻度でたくさんの食材を落とすので、その部分はかなり楽しいです。
惜しむらくはその戦闘自体が極端につまらないことなんですけど、まぁ目を瞑りましょう(笑)
そしてお店に帰り、手持ちのレシピとにらめっこして新しい料理の研究や、補充をするのですが、この部分がまた楽しい。
最初から全てわかっているものあれば、必要な材料が穴あきの状態で提示されるレシピもあるんですよ。これを、リアルの料理を想像しながら何が足りないのか推理して試行錯誤するのが面白かったです。
食材の名前は世界観に合わせてそれっぽい名前になっているので、バイン肉やオーロクス肉が実際に何の肉に近いのか、碧玉草やミスト草が現実では何と呼ばれている食材なのか、実際に料理として完成すると、ああこれアレじゃん、ってな具合でピンと来てなかなかに新鮮でした。
そしてその知識が、別のレシピの推理に活きてくるんです。
2Dドットのキャラに3Dのマップ構成も、なんか背伸びしすぎない感じがあって好感が持てます。
さらにはストーリー。
こちらもやはり今までのKemcoゲーとは毛色が違い、終始ふんわりして優しく、平和な感覚なんですよね。こじらせたライターの妄想全快な光と闇がーとか神と悪魔がーみたいな話にうんざりしていたので、細かな点は無視して楽しく読んでいられました。
その楽しく読めたもう一つの縁の下として、やはり言葉遣いがほぼ完璧な点が挙げられます。
そうだよ、これだよ。こうでなくっちゃね。
日本語の基本的ルールに則した表記は非常に読みやすく、読み心地も滑らかです。
道具から装備から食材から料理に至るまで、全てのアイテムにフレーバーテキストが付いてるのはいいんですけど、数が圧倒的に多いのでネタ切れの末に苦悩して捻り出した感は否めません(笑) まぁ、よく頑張ったとは思う。
冒険やアドベンチャー、経営シミュレーションチックなゲームとしてはかなり完成度が高いです。仲間の一人が序盤、ちょいちょい知らない人物の名やエピソードを語ったりするので、もしかしてシリーズものなのかな。
Xboxに来た暁にはそっちも遊んでみたい気がします。
逆に、戦闘に関してはイマイチ面白みを感じない、陳腐な出来でした。作りが甘いとかそういうわけでもなく、ちゃんと調整はされているしなかなか一筋縄ではいかないような場面もありますが、なんというか、散々使い古された出涸らしのお茶みたいな、新鮮味を感じない戦闘なんですよね。
そんなところまでアトリエリスペクトせんでいいのに。
戦った後の戦利品はとてもモチベが高いですが、戦うこと自体へのモチベは決して高くないので、最初はオート戦闘で流していたのですが……こいつがね、また。
ヘルプには「効率のよさそうなアクション」を行うと書いてありますが、この体たらくの一体どこを見たらそんな言葉が出てくるのか。
本作の戦闘、結構相性というか、弱点の相関関係というのが重要なバランスになっているのですが、オート戦闘にしちゃうとこの関係をばっさり無視して、現在使えるスキルの中からランダムで発動しちゃうんですよね。
三回に一回は敵の得意属性の魔法を吸われて回復とか、全員ピンピンしてるのに全体回復とか、瀕死の敵放っといて状態異常を回復、あげく発狂されて結局消耗とか、無駄行動がとにかく目につきました。
面倒がってオートに任せると、時間はかかるしMPの消耗も激しいしでまったく良いことないって学んでからは、手動とせいぜい通常攻撃オンリーボタンしか使いませんでした。
意外と、こういう時に便利だったのが、スキル入れ替え機能。
よく使うスキルを上に持ってきてまとめたりと任意に順番を組み直せるのは、なかなかただのサラリーマンには気づけない真心ですぞ。
アトリエの名が何度も出てますが、言うほどパクリという感覚はなくて、十分にオリジナリティはあると思います。私がこういったジャンルの他のゲームを知らないだけかもしれませんが、制限時間も時限要素もないし、自分のやりたいように好きに進めていけば、かかる時間は違えど誰でもストーリーを追えるように、緩い感じで設計されているのが良かったですね。
KemcoゲーはRPGという体裁を取りつつも、結構マニアにしか受けないようなニッチな産業の中で、本作は万人にお勧めできる、きちんとしたJ-RPGとして完成されています。
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