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2024年08月02日

 1174 画

ウーニー2.jpg

ウーニーを船の下敷きにさせないため、トウジーの怒号が飛ぶ。
(写真は大野隆志氏提供)

 1173 画

ウーニー3.jpg

水中を走るには、熟練した技術が必要。

 1172 画

ウーニー1.jpg

超人気者、ウーニー。

1171 偽ミンク





この島では、気温が10度を切ると、近海の魚が凍死して浮き上がってくる。
一番寒さに弱い魚は、フクラビと呼ばれるカワハギである。
立派な皮を纏い、見た目は寒さに一番強そうな魚が、一番弱い。
カワハギ! お前は、イミテーションのミンクのコートを着ているのか。
ヤマトウ嫁が民宿をやると、大繁盛する。
料理や観光客の心を理解出来る為だろう、と古老が呟いた。
20年も前だが、20才前後の女が島へ来、島男とどうしても結婚がしたい、男を紹介して欲しいと頼み回ったそうだ。
十人並みの容姿で問題ないが、何かいわくがあるのか? 
頭がおかしいのか、と誰も相手にしなかったそうだ。
最近、ヤマトウ嫁が活き活きと活躍する姿を見、あの娘は20年先の今を見通していたのでは、決して頭が可笑しかったのではない。
あの娘が民宿をやっていれば、今頃は島一番の民宿になっていただろう。
島として大きな損失だった、としみじみ呟いた。
ひかる! 今からでも遅くない。
島には40代、50代のチョンガーがいる、その娘を探して来い、と。
お〜い!! 心当たりの人、いるか?
足腰は弱っているが、最後の力を搾り、島ジーが一肌でも二肌でも脱ぐ、と言っているぞ!
今一度、島ジーの所へ行ってくれ!

 1170 垂れ垂れオッパイ





島のじいさんと飲んでいたら、今の女のオッパイは、成っていない、あの格好は何んだ、と怒っている。
猥談でも始まるのかと思うと、真面目な話のようだ。
昔の女は、オッパイを長く長く伸ばす訓練をしていたんだぞ。
子供を背負い、オッパイを欲しがったら肩へちょこんと乗っけ、子供にオッパイを飲ます。
その間、手仕事が出来る。いちいち抱いていたら、乳を飲ませる時間が無駄になる、乳の垂れ具合で、働き者のいい嫁か、決まったと言う。
おかしな話もあるもんだと、聞いていると、隣に60代のおばちゃんがいて、この話は本当かも知れない。
亡くなった母は、本当にオッパイが垂れ下がって、肩にのっけられるくらいの長さだったという。
そう言われてみると、この話本当なのかなー?
アフリカの原住民の女性のオッパイがかなり垂れ下がっているが、もしかして、この話のとおり延ばし延ばしたのかな。
ある日、90を過ぎたおばあちゃんに、どうしたらオッパイを長々と延ばせるのか、と聞いてみた。
そのばあちゃんは、にっこり笑って、「あんた! 私に惚れたね! 久しく絶えていたが、今夜はいいよ!」とにじり寄って来た。
おい!、ばあちゃん勘違いするなよ!
90を過ぎ、三途の川へ片足つっこんだ、ばあちゃんに乗ったら、オレはギネスブックに載るよ。
最中に、いく〜、いく〜、と逝かれたらブタバコ行きだ!
くわばら・・くわばら・・
とりあえず、快楽どころか、葬式の事が頭をかすめ、逃げ帰って来た。

1169 献杯





女房一族のドンが亡くなった時、献杯の音頭は、ひかるしかいないと、音頭を取らされる信頼、急変ぶりである。
勿論、ひかるは必死に働きマイホームを構えていたが、女房の親が年を取り、足元もおぼつなかったので、親の面倒は子供が見るべし、と嫌がる女房を説得し、同居に踏み切っていたのである。
塩を撒いたはずの男が、今や心から信頼出来る婿として同居する。
安心した親は、都心の一等地と建物を遺言で女房に譲って、あの世へ旅立って行ったのである。
ひかるは常々女房に言っていた。
お金は、生きる為の道具、幸せに成る為の小道具に過ぎない。
金の亡者となり、金の奴隷と化すべきではない。
貧しくても、心豊かに、優雅に生きられる方法がある、と言って、つつましく生きて来たのである。
女房も財産が転がり込んだからとて、ブランド品を買いあさる訳ではなし、孫たちの成長をいつくしみ、楽しんでいる。
孫はかわいい、ジジ、ババとマクドナルドへ行くのが、一番の楽しみのようで、ハンバーグをほおばる横顔を見ていると、毎日が楽しい。
一緒に風呂に入り、ジジ、ババの買ってくれたパジャマだ、と言ってウルトラマンのパジャマを着、ウルトラマンのパンツを着て、フトンへ潜り込んでくる。
スヤスヤ寝息を立てる横顔を見ると、幸せの極地である。
片や学は、昼間は掃除、炊事洗濯など、お手伝いにやってもらえるかも知れないが、夜は一人でチクチク痛む肝臓をさすり、不安な日々。
寝ても覚めても頭の中は、札束が飛び交っている。
布団に入って、横に寝るのは猫だ。
夢枕には、金の延べ棒で出来た階段を、一歩一歩上がっているだろう。
一歩一歩、あの世へ近ずいているんだぞ!!
これから先、この男の頭は正常化するのだろうか。
少子化の影響なのか、親の遺産を当てに、フリーターを誇らしげに自慢する人に出会う。
冒頭に出会った、文京区の青年は、最たるもので、ひかるから見ると、己の人生を無駄にする、許せない輩で、怒り心頭だ。
おい! めん玉ひんむいて、よく見ろ!
土手の川風を涼やかに受け、夫婦が孫二人と手をとり、心豊かに優雅に散策している。
対岸には、男がリュックサックに札束を詰め、周りをキョロキョロ警戒しながら歩いている。
後からは、悪しからぬ輩がなんとかリュックサックの中身を、少しでも掠め取りたいと見え隠れして狙っている。
しかし男は屈強な恐ろしい犬、三匹に引っ張られ、一生懸命犬の糞を処理している。
貴方は、この二つの姿を見、どの道を選ぶのか、本気で考えて見ろ!
貴方の鼓動、今の一鼓は、もう後戻りしない。
のんびりしている場合ではない。
貴方は今、一刻一刻、白髪、シワ、禿げの世界へ、一歩一歩近づいているんだぞ!
もう一度、めん玉ひんむいて、土手を見ろ!
そして、胸に手を当て、己の鼓動と、冷静に会話しろ!
まさかお前の両親は、お前を犬の糞拾いにこの世へ誕生させた訳ではあるまい。
 人生の 喜怒哀楽に ロマンあり
 若者よ 思い残すな 明日は華
 貴方には 誰にも盗られない 知恵がある
 貴方には 誰にも止められない 鼓動がある
 これしかない!
 己の人生ドラ マロマンを持て!
 そして
 命を張れ!
 命を張れ!

 1168 子孫





投資した金は半分に減ってしまったのである。
それからというのは、親からもらった財産を半分に減らした分を、なんとか元に戻すと、更にお金に対する執着、そして呪縛は、日を増すにつれ、膨らんで行った。
とうとう60を過ぎても結婚出来なかったのである。
それでもまだ五億くらいの金は背負っていたので、もうお金の事は諦めろ。
老後を楽しく過ごそう、と言ったが全く聞く耳を持たない。
母親も亡くなり、これから先、自分が死んだらこの財産、どうなるのだろうかと不安がっている。
また若い時、金に任せ女遊びと酒を飲んで肝臓まで患ってしまい、不安な毎日を過ごしているそうだ。
ちなみに、渋谷で億ションを買って遊び呆けていた姪ご達、中山家の人達は誰一人として子供が出来かったそうだ。
金に狂った一族だと言わざるを得ない。
ひかるはアパートを転々とし、引っ越し貧乏を繰り返していた。
仕事が忙しく、徹夜の連続か午前様で、朝は子供達が目覚める前に、出社する。
子供達が、父親を怖がり近寄らない状態。
あまりの貧乏さに、ある時女房が怒鳴りつけた。
貯金が4万円しかない、これからどーやって生活する!
どうせこれからも母子家庭に間違いない。
貴方等いない方がいい、出て行け! と怒鳴ったのである。
貴方等、貧乏王国へ行けば即大統領になれる、素晴らしい人だ。
もうこんな生活はイヤだ!
それでもひかるは、コツコツと働きに働き続けた。
子供達にも、祖父母の存在は必要だろうと考え、女房の実家とも丁重に頭を下げ、和解した。
女房の実家側からすれば、最初に沖縄という、想像出来ない所の人間で、まず拒否感が出たのであろう。
それなりに家庭を守り、またテレビ業界での仕事ぶりは、大きな評価を得て、塩を撒き付けたはずの男が、何時の間にか神棚に上げられるような大変な信頼ぶりである。

1167 新婚生活





ひかるの新婚生活、女房の実家に猛反対され、それこそ三畳一間、電化製品ひとつない、貧乏どん底からのスタート。
木造で、廊下は歩くとミシミシ音がし、トイレはポットン便所の安アパート、夫婦で共働き、やっと家賃が払えるという生活。
東京で家賃が一番安いアパート。当時アパートには沖縄出身者の入居お断り看板が出ていた。
沖縄名字のひかるは当然パスポート保持者。
ひかるはテレビの世界で仕事をしていたが、当時は白黒放送で、給料など一般の企業の社員に比べられない、どん底生活であった。
ボーナスが入ったら洗濯機を買おう、その次は冷蔵庫、テレビと夫婦で夢を描き、必死で働いていた折、学が自由が丘に五階建ての賃貸しマンションを建てたので、管理人をしてくれないか、との話。家賃は無しとの話だったので、これ幸い飛びついた。
ただほど高くつくものは無い。この管理人の仕事、とんでもない結果を生む事になる。
当時マンションという言葉は、聞き慣れない言葉で、走りだったのである。
家賃も高かったので、入居者はハイクラスの人ばかり。有名な銀座の老舗ビルの息子夫婦だとか、新宿の高級クラブのママさんだとか、自他共に金持ちと認じる人ばかりである。
そういう人達から見ると、明らかに若くて、家賃の出ないマンションの管理人をやってる人間なんぞ、見下げた貧乏人に見えたのだろう。
隣人同士のいざこざ、上下階のいざこざ、トイレが詰まっても管理人の責任だとか、やたらめったら無理難題を押し付けて来る。
下の階からの焼き肉の匂いを、あれは我が家に対するあてつけだ。なんとかしろ、と言ってくる。
とうとう女房が、初めての子を流産してしまった。住人は流産した事を知っているが、優しい言葉をかける訳でもない。
貧乏人など子供を作る資格がない、と言わんばかりに輪をかけて自分たちの争い事を管理人に押し付けてくる。
金持ちなら、心豊かに周りに温かい目、優しい言葉がかけられるものだと思ったが全く逆だ。
金持ちは、人間としての情が金に奪われてしまうものだ、としみじみ感じた。
その後、妊娠をしたので出る決心をし安アパート生活に戻った。
数年後、学が35歳になった頃、母親から嫁探し、お見合いの相手を見つけて欲しいと頼まれた。
友人の為と思い、あちこちに声をかけ、二度も見合いをさせたが成立しなかった。
相手はなんの非の打ちどころもない。素晴らしい女性で、成立しないという事はおかしい。
本人を捕まえ、とことん本音を聞いてみるとびっくりした。
女は自分の背負っている金、財産が目当てだ。
そんな女に子供が出来、子供にまで財産を持っていかれるかと思うと、どうしても決断が出来ないという。
お金の亡者、呪縛に縛られた人間の頭の中というのは、そういうものか、と呆れ果ててしまった。
以後、ひかるは二度とお見合いの段取りはしかかった。
周りの友人も、同じ経験をしているから、誰一人として学に結婚を進める人はもういなくなった。
学はゴルフが好きで、金に任せゴルフ場の会員権を北海道から九州迄くまなく買いあさっていた。
先行投資で、いずれ倍、倍になると自慢していた。
事実、ある程度倍くらいにまでなったようだが、しかしバブルがはじけてしまった。

1166 田舎者





当時、沖縄は日本国ではない。米国統治下でパスポートを持っており、ましてやひかるの生まれ育った島など、日本の地図には載っていない。
彼女の実家は、代々手広く卸問屋をしており、嘘かまことかは分からないが、皇族にもつながる由緒ある家だと言っていた。
そんな家柄が、ひかるみたいな見た目も格好も田舎者。ましてや沖縄とパスポートとなると、反対するのは当然だ。
座布団を投げ付けられ、しまいには塩を捲かれるありさまだ。
生まれて初めて他人さまに馬鹿にされ、コケにされる屈辱感は半端じゃない。
当時、沖縄生まれでパスポートを持っている。自分でも劣等感は感じていたが、それをもろに罵られると、人間の感情は火に油を注ぐようなものだ。
こんな人間、生きている価値がない・・ぶっ殺してしまえ!それくらい憤りを感じた。
しかし故郷で、今日もヘラで草取りに汗を流し、爪に火を灯して生きる両親の事を考えると、息子が東京へ出て殺人を犯した、なんて白い目で周りから見られて生きるのは、あまりにも酷だ。悔しくても、侮辱されても、頭を下げ続けたが、結果的に、許してもらえなかった。
彼女が、親兄弟、親戚含め全て縁を切り一緒になる、と言ってくれた時は、涙が止まらなかった。
ひかるは一生、彼女を路頭に迷わす事はすまい、と心に誓って新婚生活をスタートさせた。
新婚当時、女房の友達を含め7、8人、同年代の仲間でよく飲み食いをした。
その中に一人、独身の中山学がいた。
学はとんでもない男で、十数億もの資産を持ち、自由が丘の邸宅住まいだ。
外国製のカマロだとかいう、訳の分からない外車を乗り回していた。
日本の車は、ドアを閉めた時の音が軽すぎる、といって重厚なドアの音のする外車を次から次と乗り回していたのである。
親父を早くに亡くしており、母と2人の生活だ。
邸宅へ誘われていったが、庭には外車を4台収納出来る車庫があり、門の横には鉄格子で囲った、立派な犬小屋だ。
ひかるの三畳一間の生活、犬以下だ。
この犬がまたデッカイ、3匹もおり、人間なぞひと噛みで殺しそうで、それこそ血統書付のいい犬だという。
家の中へ入ると、そこにはまた、青い眼をした、ペルシャ猫だとかなんとか言っていたが、これまた血統書付の高級な猫だというのが3匹ほど、母親が可愛がっていた。
家のなかの家具や調度品は見た事もない、皇族のお宅ではないかと思われるようなしつらえだ。
泊まっていくようにと勧められ、泊まった。そこには全く見た事もない、そのために作らせたのかと、思われるような本棚があり、そこには、とんでもない百科事典等が、びっしり収まっている。
母親は上品な女性で、何人かのお手伝いを雇い、家の中や庭等、綺麗に作り上げていた。
なんで金があるのかと聞くと、学の祖父は次男ではあったが、長男を手伝い、その昔造園業をやっていたという。
貯木のため、原っぱだった土地をかなり持っていたので、兄貴に分けてもらったとの事だ。
その土地は自由が丘、あれよあれよという間に値上がりし、手が付けられない程の大金が転がり込んできたという。
本家の姪達は、20歳前だと言うのに二十億もの資産を相続、渋谷駅近くに億ションを購入し、優雅に遊び呆けているとの事だ。

1165 軽い男





食事を済ませ8時過ぎ、庭のテーブルで、泡盛を飲んでいると、民宿の20代半ばのカップルが2組散策がてら、ぶらりと入って来た。
東京と島を年間半々生活してる私を見て、うらやましい。自分の両親にもそのような生活をしてもらいたいと、話していた。
親父は定年になるの楽しみにしていたが、いざ定年になると、朝から晩まで夫婦角突き合わせで、些細な事で、口争いが絶えないという。
若い内は朝昼晩喧嘩するが、朝昼晩セックスをすれば、仲直りができる。
歳をとるとセックスの数が追いつかず、なかなか仲直り出来ないというと、おじさんのいう事は的を得ていると、おおはしゃぎだ。
世間話をしていると、同じ民宿の泊まり男客が2人、話につられ、ぶらりと入ってきた。
一番年上だと思われる、30歳くらいの男の言動がどうも気になる。
自分は1度も仕事をした事がない、フリーターである事を自慢している。
態度や言動から見て、どうも軽過ぎる。
スタイル格好そのものは普通の十人並みだが、男として結婚をしようとか、そういう感覚は全く無いようだ。
東京の文京区に親と同居しており、どうも生活するのには困らないようだ。
文京区あたりは東京のど真ん中で、そこに親の代から生活しているという事は、土地なり資産があるだろう。
当然あくせく働く必要もなく、十分食べるくらいの収入があるだろう。
が、しかし男として考えると軽すぎる。
ティッシュペーパーがふらふらしているようなもので、ちょっと風が吹けば舞い上がり、己をコントロール出来ないような、あまりにも軽い幼い感じすら受けるのである。
ひかるの息子は40才、子会社、下請会社を数社使いこなしバリバリ働いている。
今の時代はどうだのこうだのと、親父に説教するくらいのバリバリ、毎日が充実しているようだ。
軽い男に言い聞かせる気などさらさらないが、つい経験した犬の糞物語を話してやった。
ひかるは高校卒業と同時に、周囲12キロ海抜12メータという、日本の南端の小さな島から、着のみ着のままで上京した。
昼間は必死で働き、夜学の後テレビ界へ就職した。
その時知り合った東京生まれの東京育ち、江戸っ子の彼女と出会う事が出来た。
結婚の約束をし、相手の親の所へ挨拶に行くと猛反対だ。
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