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2024年08月23日

1184 死なすしかないさー


いわれたとおり水をかけると、確かに寒いのか、泣き止まる、がしかし、30分もするとまた泣き始まる。
30分おきに水をかけ通したが、人間の体が持たない。
オスのヤギのいるところ知っているので、連れてこようか、というと、奥さんは即座にブルルン、ブルルン、ブルルンと、首を横に振る。
これ以上ヤギが増えたらどうなる、よほど懲りたと見える。
「仕方ないさー、殺すしかないさー」
この後に及んでは、高山夫婦も従うしかない。
しかし、ヤギを殺せる人はそういない。
3人ほど名前を挙げてもらい、頼みに行くと、勘弁してくれとのことだという。
そこでまた育造爺ジイーは、最後の頼みで、ひかるのところへ行けといったとの事。
確かに子供の頃、ヤギは食用に飼育していたので殺し、解体した経験はあるが、いまさら殺傷は嫌だ。
あまりの困惑顔に、ひかるの方で3名のうちの一人に泡盛をしたたか飲ませ、人助けだからと頼むと、なんとか殺すことに同意した。
ヤギの泣き声が止まった時、うわさが出る。
誰が殺したのか? たぶん殺し屋ナンバーワン男はアイツだろう・・
田舎暮らし、意外と見落としがちなのは、ベッドによるトラブルだ。
去勢する動物病院が、田舎や島にはない場合が多い。
犬を飼っている家があるが、やはりオスやメスだけでは、問題が出る。
発情期はかなり凶暴で、誰それが噛まれ、誰それが、噛まれる直前まで行ったという話を聞く。
観光客には子供連れもいる。子供がそのような犬に噛まれ病院、旅行変更ダイナシで賠償問題にまでなる事を考えるとゾッとする。
また去勢しているからとて周りには去勢していない野良動物がおり、トラブルもある。
田舎暮らしを計画している人が居たら、厳重な注意が必要だ。
殺し屋は、そう簡単には見つからないぞ!

1183 悲痛な声


前にも増して泣き方が、懇願するようなもの悲しさと悲痛な声で泣いている。
再度育造爺ジイーの所へ行くと、満面の笑顔で泡盛を舌なめずりで飲んでいる。
ジーが泡盛を飲むとケツに根が生え、びくとも動かず、泣き声などまったく耳に入らない。
頼んでも、頭の中は泡盛のことだけでまったく話にならない。
そして言い放った。
一晩くらいは、ヤギと添い寝しな、再度泣き出したら指を2本突っ込め、これを繰り返していると大丈夫だよ!
やぎの糞の中で寝るのか!、バカバカしいと高山夫婦は、腹に据えかね帰った。
今度は、ひかるの所へ相談に来た。
あまりにも島暮らしのルールを知らない。
バカバカしい相談なので、この問題を解決できれば、間違いなくノーベル賞はもらえる、夫婦で本気になって考えな!
ヤギの糞がいやなら、自分のベットへお招きしろ、と言ってやった。
夫婦は周りに、島人は自分たちの悩みを本気に相談にのってくれない、自分建ちは、移住者としてよそ者扱いされていると、愚痴をこぼしたそうだ。
あんたら馬鹿か!。
そんな下らないことで島の人たちと諍いを超すようだったら、この先が思いやられる。
横浜へ帰って、週刊誌ネタで、井戸端会議をしていろ!
帰ったほうがましだぞ・・・!
高山夫妻のところの、二匹目のヤギがとうとう発情してしまった。
メスヤギの鳴き声は、ますますひどく、1週間おきに、2日間、昼夜を問わず泣き続けるという。
それに今度は、子ヤギが泣きはじめたのである。
高山夫人は、とうとう完全なるノイローゼ状態だ。
今度こそはと、わらにもすがる思いで、育造爺ジイーのところへ相談に行くと、「水をかければいいさー」という。

 1182 郵便配達


見晴らしのいい観光休憩所でのんびりしていると、赤い郵便局のバイクが来、顔なじみの配達員が、兄さん、東京から手紙だよ!、と配達してくれた。
東京なら郵便受けへポンで終わりだが、島らしい。
なぜ俺がここに居る事が分かった、と聞くと、民宿で聞いた、との事。
そうだ、民宿の親父は、立ち寄らなくても、厨房で仕事中でも、バイクの音を聞き分けることが出来る。
10分前に、こっちの方へ行ったから、と教えてくれたそうだ。
他にもバイクは走っているが、音が違うし、時間帯により誰が通ったか、見なくても分かる。
島はのどかでいい所だ。
最近、石垣島より若い娘達が日帰りでワンサと訪れれる。
港でカニウマを借り、島内一周して必ず立ち寄るのが、赤いポストの郵便局だ。
そう、この南のハート島のポストに想いを投函すると成就する、と言われ、押し寄せるのである。
ワーリトーリ(歓迎)黒島へ!
島に、横浜から移住してきた、50代の高山夫婦がいる。
子供はなく、二人きりの生活で、大きな番犬を飼っている。
それにペットとして、メスのヤギを二匹、飼いだした。
大きい方のヤギが、ここのところやたらめったら泣く、それも、一昼夜メーメー泣き続けるのである。
泣き止むかと思うと、2週間もすると、また夜通し泣き続ける。夜中2時3時であれ関係なく、不眠不休で泣き続けるのだ。
島の人に聞くと、それは発情だろうとのことだ。
さて、困ったことに、オスのヤギがいない。
とうとう3回目も泣き出し、隣近所に対しても迷惑だし夜も眠れない。
そのうち二匹目も泣き出したら、やっとの思いで移住したのに、島にはいられない。
高山夫婦は、困りはててしまった。
育造爺ジイーなら、島のことは知っているし、頼んでみようということになった。
ジイーは、しばらく人から頼まれ事も無いので、即座にOKだ。
ヤギ小屋へ行くと、荒々しくメスヤギを横倒し、な、ななんと、指をメスヤギの熟れたあそこへ突っ込んだのである。
メスヤギは、いきなり抑え込まれ,眼をパチパチ、オジさん何すんのよ!と言っているのか、唇ムニャムニャ、あまりにも速い動作に、あっけにとられた顔だ。
そうすると、どういう訳か泣きやんでしまったのである。
高山夫婦は大いに感謝、感激。大事に取ってあった泡盛の古酒と、夜のおかず用に用意してあった刺身を育造爺ジイーに渡した。
育造爺ジイーは、得意満面、「何かあったらいつでも相談に乗るさー」と意気揚々と帰っていった。
ところがところがだ。
2時間もすると、またメーメー泣き出したのである。

 1181 半ボケ


皆さん、ハートアイランドご存知ですか。
沖縄本島から南へ450キロ。
周囲12キロという、ものの見事にハート型をした、小さな島がある。
黒島で、別名はハートアイランドと呼ばれている。
この島に年齢は80歳を越した、いまだに独身の一人の爺ジーが居る。
頭は完璧にツルツル、ツルッ禿げだがその分あごヒゲはもじゃもじゃ。
目は人一倍小さい。遠くから見ると、どう見ても顔が上下逆回転だ。
いつも短パンにランニング姿で、腹がポッコリと出ている。
年のせいか、半分ボケが入っている。
足腰は意外と丈夫で何時も自転車を乗り回し、昼間から島中を徘徊している。
見晴らしのいい、休憩所などで観光客がいると誰かれ構わず、「何処から来たね〜」と声をかけ回る。
爺ジーは若い頃、20年程大阪で仕事をし自分の生まれ育ったこの島へ、ふらりと単身戻って来た。
観光客が名古屋から来たというと、私は20年間名古屋で住んでいたといい。適当に話を合わせる。
別な観光客が、仙台から来たといえば自分は20年間、仙台に住んでいた事がある、と良い加減だ。
毎日が徘徊と、想像の世界である。
顎鬚は見事、そして笑顔が子供のように愛らしき、いつもニコニコしている。
観光客は、半分ボケているとは誰も思わない。
最近島に、外人観光客が増えてきたが、育造爺ジイーは果敢に挑戦する。
「何処から来たね〜」と聞き「スイスから来た」というと、私は20年間スイスで生活していたと始まる。
エッフェル塔の眺めは、素晴らしい。上ったことあるかい。
ゼラシックパークという公園では、昼間からよくも、若者がチュウチュウ、キスをして恥ずかしくないのかね。
・・・・???
話は全く通じない。
また別の外人を見つけ、何処から来たね〜、と始まる。
イギリスから来たというと、私は20年間イギリスに住んでいた事があると始まる。
セーヌ川の高台の高級住宅街、知ってるかと得意になって話をする・・・・???
話は全く通じない。
とうとう育造爺ジイーは外人と話をする事を止めた。
その点を聞くと「あいつら、バカだよ」
こんな小さな島へ流れ着くような外人は、学校なんぞ出ていない無学文盲だ。
育造爺ジイーは、芯から怒り出す。
今日も育造爺ジイーは自転車で徘徊をはじめる。

 1179 地獄耳


パーティーから数日後、港で会ったので声をかけた。
先日、群馬からお父さんが来たんだって、と聞くと。
え! ええ!!、誰から!、誰から聞いたの、私お父さんが島に来た事誰にも言ってないのに、とびっくりしていた。
おじさん、地獄耳だから何でも知ってるよ、というと観念したのか、皆さん島の良い人に出会えた事、一生忘れないよと、笑顔で答えていた。
真美ちゃんのお父さん、本当に心配で仕事を休んで、高い飛行機代出して、様子を見に来たんだぞ。
もっとお父さんに、甘えた方がいいよ、というと、ニ週間後に島を離れるけど島の事、一生忘れないから、と明るい笑顔だった。
群馬へ帰ったら、お見合いをし、いい人見付けな、というとコックリうなずき、私必ずいい人見付けて、もう一度島へ来るからと自信に溢れた少女の笑顔が返ってきた。
この島は、見事なハートの形をしている。何故かこの島に滞在すると、心が落ち着き癒されるという。
真っ赤に燃えた真美のハート、きっといい人が見つかるであろう。
南の島の夜、雲一つない晴天、まれに見る星空の美しい夜の出来事。
民宿の庭で、観光客14、5人と輪になって酒を飲んでいると、年の頃30歳を越したばかりと思われる女性の二人連れがいた。
綺麗な星空を海岸で見て来る、と二人は出かけた。
しばらくして、綺麗な星空が見れてよかったと帰ってきた。
流れ星見えた、と聞くと、すごい大きな流れ星が何個も見えた、との事だ。
年頃の女性なので、さぞかし流れ星にロマンチックな想いを寄せたのでは、と尋ねると「勿論、お願い事したわよ」
何をお願いしたのと聞くと、勿論お金よ、と即座に言ってのけ、隣の子もうなずいていた。
「おじさん知らないの、流れ星に、金、金を5回連発出来ると、金持ちになれるのよ」・・・・
今の若者の考え方には、夢もロマンもへったくれもないか。
しばらく飲んでいたが、また今度は、別の方向で星を見に行くという。
姉御役と思われる一人が、どうも自信がない。
こんどこそ間違いなく、金、金を5連発してやると、立ち上がって行った。
こら! この若さで、まだまだ人生を開き直る事ないだろ、といったがどうも耳に入らないようだ。
スレた様子からみて、この二人の女性は、再度星を見に行くと言って、周りの男の子が一緒に追いて来るのではないかと、誘いをかけしているように見えたが、男は誰一人として追いて行かなかった。
男どもよ! 間違ってもこのような女性に捕まるな。
まかり間違って捕まると、なんで私が貧乏な人生を続けなければならないんだ、と言い続けられる。
結婚しない女性が増えているというが、原因の根本は結婚に対する金の比重が、以前とは格段に違うようだ。
このような世代に生まれなくて幸せだった・・
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