2020年05月15日
坂口安吾の「肝臓先生」から見えてくるバラツキについて4
2 場面のイメージを分析する
2.1 データの抽出
作成したデータベースから特性が2つあるカラムを抽出し、標準偏差によるバラツキを調べてみる。例えば、A:五感(1視覚と2それ以外)、B:ジェスチャー(1直示と2隠喩)、C:情報の認知プロセス(1旧情報と2新情報)、D:情報の認知プロセス(1問題解決と2未解決)というように文系と理系のカラムをそれぞれ2つずつ抽出する。
場面1
かく観ずることによって、先生は安心を得た。否、かく観ずることによって、その時以来、さらに逞しい闘志に燃えたち、診察を乞う人々のあらゆる肝臓の苦痛をやわらげんものと堅く心に期するところがあったのである。A2、B1、C2、D1
そこで先生は冷静の上にも冷静を重ねて例外なく腫れているモロモロの肝臓をつぶさに観察し、一方に慢性的な進行性と、一方に甚しい伝染性のあることを突きとめた。家族の一人がこの肝臓炎に犯されると、数年のうちに、家族の全員に伝染することも確かめたのである。A1、B1、C2、D1
かくて先生はその由って来たるところに結論を得たが、これぞ戦争がもたらしたイタズラ小僧の末弟の一人だ。コロンブスによってもたらされたスピロヘーテンパリーダが忽ちにして全世界を侵略するに至ったのも戦争のせいである。鎖国の別天地、日本を侵略するに最も多くの時間がかかったとはいえ、ヨーロッパの侵略におくれることたッた六十年で、日本人の鼻を落しているのである。A2、B1、C2、D1
日支事変によって、日本と大陸とに莫大な人員物資の大交流が行われ、大陸の肝臓炎が輸入されてきたのだ。はじめ先生はこれを大陸カゼとよんだ。スペインカゼが心臓を犯したように、大陸カゼは好んで肝臓を犯すのである。元来肝臓炎は風邪に随伴して起りやすいが、肝臓病者がカゼをひきやすくもあるのである。
A2、B1、C2、D1
かくて大陸渡来の風邪性肝臓炎は今や全日本を犯しつつあり、赤城風雨先生の診療室に戸をたたく患者のすべての肝臓を腫れあがらせているほどの暴威をふるうに至っているのだ。
先生はこれを流行性肝臓炎と命名して患者に説明したが、町の人たちにはオーダンカゼと言ってきかせるのが一番わかりやすいことを発見した。A1、B1、C2、D1
花村嘉英(2020)「坂口安吾の『肝臓先生』から見えてくるバラツキについて」より
2.1 データの抽出
作成したデータベースから特性が2つあるカラムを抽出し、標準偏差によるバラツキを調べてみる。例えば、A:五感(1視覚と2それ以外)、B:ジェスチャー(1直示と2隠喩)、C:情報の認知プロセス(1旧情報と2新情報)、D:情報の認知プロセス(1問題解決と2未解決)というように文系と理系のカラムをそれぞれ2つずつ抽出する。
場面1
かく観ずることによって、先生は安心を得た。否、かく観ずることによって、その時以来、さらに逞しい闘志に燃えたち、診察を乞う人々のあらゆる肝臓の苦痛をやわらげんものと堅く心に期するところがあったのである。A2、B1、C2、D1
そこで先生は冷静の上にも冷静を重ねて例外なく腫れているモロモロの肝臓をつぶさに観察し、一方に慢性的な進行性と、一方に甚しい伝染性のあることを突きとめた。家族の一人がこの肝臓炎に犯されると、数年のうちに、家族の全員に伝染することも確かめたのである。A1、B1、C2、D1
かくて先生はその由って来たるところに結論を得たが、これぞ戦争がもたらしたイタズラ小僧の末弟の一人だ。コロンブスによってもたらされたスピロヘーテンパリーダが忽ちにして全世界を侵略するに至ったのも戦争のせいである。鎖国の別天地、日本を侵略するに最も多くの時間がかかったとはいえ、ヨーロッパの侵略におくれることたッた六十年で、日本人の鼻を落しているのである。A2、B1、C2、D1
日支事変によって、日本と大陸とに莫大な人員物資の大交流が行われ、大陸の肝臓炎が輸入されてきたのだ。はじめ先生はこれを大陸カゼとよんだ。スペインカゼが心臓を犯したように、大陸カゼは好んで肝臓を犯すのである。元来肝臓炎は風邪に随伴して起りやすいが、肝臓病者がカゼをひきやすくもあるのである。
A2、B1、C2、D1
かくて大陸渡来の風邪性肝臓炎は今や全日本を犯しつつあり、赤城風雨先生の診療室に戸をたたく患者のすべての肝臓を腫れあがらせているほどの暴威をふるうに至っているのだ。
先生はこれを流行性肝臓炎と命名して患者に説明したが、町の人たちにはオーダンカゼと言ってきかせるのが一番わかりやすいことを発見した。A1、B1、C2、D1
花村嘉英(2020)「坂口安吾の『肝臓先生』から見えてくるバラツキについて」より
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