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2024年09月16日

芥川龍之介の「河童」の多変量解析−クラスタ分析と主成分4

◆場面1 超人倶楽部

ことに家族制度というものは莫迦げている以上にも莫迦げているのです。トックはある時窓の外を指さし、「見たまえ。あの莫迦げさ加減を!」と吐き出すように言いました。窓の外の往来にはまだ年の若い河童が一匹、両親らしい河童をはじめ、七八匹の雌雄の河童を頸のまわりへぶら下げながら、息も絶え絶えに歩いていました。
A1、B1、C2、D2

しかし僕は年の若い河童の犠牲的精神に感心しましたから、かえってその健気さをほめ立てました。
「ふん、君はこの国でも市民になる資格を持っている。……時に君は社会主義者かね?」A1、B1、C2、D2

僕はもちろん qua(これは河童の使う言葉では「然しかり」という意味を現わすのです。)と答えました。
「では百人の凡人のために甘んじてひとりの天才を犠牲にすることも顧みないはずだ。」「では君は何主義者だ?だれかトック君の信条は無政府主義だと言っていたが、……」
「僕か? 僕は超人(直訳すれば超河童です)だ。」A1、B2、C2、D1

トックは昂然と言い放ちました。こういうトックは芸術の上にも独特な考えを持っています。トックの信ずるところによれば、芸術は何ものの支配をも受けない、芸術のための芸術である、従って芸術家たるものは何よりも先に善悪を絶っした超人でなければならぬというのです。A1、B2、C1、D1

もっともこれは必ずしもトック一匹の意見ではありません。トックの仲間の詩人たちはたいてい同意見を持っているようです。現に僕はトックといっしょにたびたび超人倶楽部へ遊びにゆきました。超人倶楽部に集まってくるのは詩人、小説家、戯曲家、批評家、画家、音楽家、彫刻家、芸術上の素人しろうと等です。
A1、B1、C2、D1

花村嘉英(2020)「芥川龍之介の『河童』の多変量解析−クラスタ分析と主成分」より

芥川龍之介の「河童」の多変量解析−クラスタ分析と主成分3

3 多変量の分析

 多変量を解析するには、クラスタと主成分が有効な分析になる。これらの分析がデータベースの統計処理に繋がるからである。
 多変数のデータでも、最初は1変数ごとの観察から始まる。また、クラスタ分析は、多変数のデータを丸ごと扱う最初の作業ともいえる。似た者同士を集めたクラスタを樹形図からイメージする。それぞれのクラスタの特徴を掴み、それを手掛かりに多変量データの全体像を考えていく。樹形図については、単純な二個二個のクラスタリングの方法を想定し、変数の数や組み合わせを考える。
 作成したデータベースから特性が2つあるカラムを抽出し、グループ分けをする。例えば、A五感(1視覚と2それ以外)、Bジェスチャー(1直示と2隠喩)、C情報の認知プロセス(1旧情報と2新情報)、D情報の認知プロセス(1問題解決と2未解決)というように文系と理系のカラムをそれぞれ2つずつ抽出する。
 まず、ABCDそれぞれの変数の特徴について考える。次に、似た者同士のデータをひとかたまりにし、ここでは言語の認知ABと情報の認知CDにグループ分けをする。得られた変数の特徴からグループそれぞれの特徴を見つける。
 最後に、各場面のラインの合計を考える。それぞれの要素からどのようなことがいえるのであろうか。「城の崎にて」のバラツキが縦のカラムの特徴を表しているのに対し、ここでのクラスタは、一場面のカラムとラインの特徴を表している。
 なお、外界情報の獲得に関する五感の割合は、視覚82%、聴覚11%、嗅覚4%、触覚2%、味覚1%とする。(片野2018)

花村嘉英(2020)「芥川龍之介の『河童』の多変量解析−クラスタ分析と主成分」より

芥川龍之介の「河童」の多変量解析−クラスタ分析と主成分2

2 芥川龍之介は日本を風刺する 

 「河童」の購読脳を「風刺と精神病」にする。結局、精神病院の院長は、狂人が早発性痴呆症患者であるという。しかし、セカンドオピニオン役の河童の国に生きる医者のチャックは、狂人ではなく、院長や来院者こそが早発性痴呆症患者であるとする。つまり、狂人は、本当のことがわかっていて、院長や聞き手の方がわかっていないとする。
 また、河童の国でも裁判官が失職すると発狂して精神病院に送られる。もし芥川が見舞いに行くとしたら、何をするのか。精神的な治療として聖書を進めたかもしれない。そこで、「河童」の執筆脳は、「機知と批判」にする。    
購読脳の組み合せ「風刺と精神病」という出力が、共生の読みの入力となって横にスライドし、出力として 「機知と批判」という執筆脳の組を考える。

 狂人は、事業に失敗した話になると、乱暴になる。汽車に乗ろうとして巡査に捕まり、病院に入れられた。病院でもどうやら日本の社会や人物の欠陥、罪悪のことを遠回しに批判していた。狂人の方が本当のことを理解している。シナジーのメタファーは、「芥川龍之介と逆転の論理」にする。 

花村嘉英(2020)「芥川龍之介の『河童』の多変量解析−クラスタ分析と主成分」より

芥川龍之介の「河童」の多変量解析−クラスタ分析と主成分1

1 先行研究との関係

 これまでに芥川龍之介(1892−1927)の「河童」の執筆脳を「機知と批判」としてシナジーのメタファーを作成している。(花村2020) この小論では、さらに多変量解析に注目し、クラスタ分析と主成分について考察する。それぞれの場面で芥川龍之介の執筆脳がデータベースから異なる視点で分析できれば、自ずと客観性は上がっていく。この小論ではシナジーのメタファーといえば「芥川龍之介と逆転の論理」を指す。  

花村嘉英(2020)「芥川龍之介の『河童』の多変量解析−クラスタ分析と主成分」より

心理学統計の検定を用いて佐藤愛子の「沢村校長の晩年」を考える7

3 まとめ

 佐藤愛子の「沢村校長の晩年」の正剛と光江の性格についてデータベースから心理学統計による評価をしてみると、違いがあることが分かった。

参考文献
大山正・中島義明 実験心理学への招待 サイエンス社 2012
実吉綾子 心理学統計入門 技術評論社 2013
花村嘉英 シナジーのメタファーの作り方−トーマス・マン、魯迅、森鴎外、ナディン・ゴーディマ、井上靖 中国日语教学研究会上海分会论文集 2018
花村嘉英 佐藤愛子の「沢村校長の晩年」の執筆脳について ファンブログ 2020
佐藤愛子 院長の恋 文春文庫 2012

心理学統計の検定を用いて佐藤愛子の「沢村校長の晩年」を考える6

1 最初は作者と鼠とで努力に差がないと予測する。両者の平均値を取ると、正剛 1.0、光江 1.7になる。この差は誤差の可能性がある。 
2 具体度の1、2は独立変数であり、それにともなう努力の大小は、従属変数になる。
3 独立変数そのものの1、2が要因で、独立変数の実際の値である努力が水準になる。
4 ここでは、どちらの水準も同じ標本からデータを集めているため、具体度という要因は、参加者内要因になる。
5 得られた有意確率(p値)を有意水準と比較する。危険率は通常5%未満のため、ここではt検定を採用する。 
6 t検定では、二つの平均の差を表す統計量(t値)、データの規模を表す自由度(df)、p値(p-value)を説明する。
[満足度のt検定] 
正剛1.0、光江1. 7、よってt値=0. 7。
自由度は、独立した標本の個数から1引いたものである。よってdf=8。
p値は0.02にする。ここでは5%未満のため、帰無仮説を棄却し対立仮設を採択し、性格に違いがあるとする。

花村嘉英(2020)「心理学統計の検定を用いて佐藤愛子の『沢村校長の晩年』を考える」より

心理学統計の検定を用いて佐藤愛子の「沢村校長の晩年」を考える5

表2 具体度

「世に憎むべきは善意である」正剛は日記にそう書いた。「悪意には立ち向かい様がある。しかし底抜けの善意には立ち向かいようがない」光江のすることなすことが彼の気に障るのである。→基準からの逸脱1、逸脱2 

時折、光江は仏壇の前に座って鉦を鳴らす。必ず三回、「チーン、チーン、チーン」と鳴らすのである、すると彼はムッとした。→基準からの逸脱1、逸脱2

居合わせた柳原がそれを聞いて、「なんだ?そりゃ?」といぶかしんだ。「ばあさんだよ、手伝いの」吐き捨てるようにいった。→基準からの逸脱2、逸脱1

柳原は尚もいぶかしんでいった。「なんで鉦を鳴らすんだ?」「知らんよ」正剛はまた吐き捨てた。「オレも知りたいよ・・・」それ以来、柳原は光江を気に留めるようになった。→基準からの逸脱1、逸脱1 

「あれは例の秋葉原のメイド喫茶の真似かね?」といったこともある。光江は黒々と染めた前髪にレースの縁取りをした白い布をつけている。「知らんよ」その時も吐き捨てるように正剛はいった。→基準からの逸脱2、逸脱2

花村嘉英(2020)「心理学統計の検定を用いて佐藤愛子の『沢村校長の晩年』を考える」より

心理学統計の検定を用いて佐藤愛子の「沢村校長の晩年」を考える4

2.3 「沢村校長の晩年」の登場人物間で性格が違う 

 「沢村校長の晩年」は、私立の女子高校の元校長とお節介なお手伝いとのやり取りを描いた短編である。ここでは、この小論の研究テーマ、正剛と光江の性格に関し違いがあるかどうかについて作成したデータベースを基に考察していく。  

解答 正剛と光江の性格に違いがある

表1 具体度

光江がしゃべりながら近づいてくる。「先生、見ました?こんなに小さくて可愛いんですよう、鶯色して・・・あら、鶯が鶯色なのは当り前ですけどね。」一人でけたたましく笑っている。→基準からの逸脱0、逸脱2

「梅に鶯って昔からいいますけど、ほんとうですわえ。お庭には桃も桜もあるのに、わざわざ梅にくるなんて、梅の密がおいしいのかしら、香りがすきなんでしょうか。それとも花が可愛いから?」。→基準からの逸脱0、逸脱2 

それを打ち切るように正剛は「赤松さん!」と呼んだ。声がふるえている。「赤松さん、鶯が来ているときは黙って、静かにしているものですよ。それが年に一度来る鶯への礼儀だ・・・」すると光江はいった。→基準からの逸脱1、逸脱1 

「礼儀!そうですわねえ。やっぱり先生はおっしゃることが違いますわ。それで先生はだまって静かにしてらしたんですねえ。私はまた、ご存じないのかと思って・・・失礼しました。ほんとうに私ってどうしてこんなにオッチョコチョイなんでしょう、うちの主人もしょっちゅう、いいますんですよ、昨日もねえ・・・」。→基準からの逸脱1、逸脱2 

「もういいから、少し静かにしてくれませんか。ひどく疲れるんだ」。あらたと話していると、と彼は付け加えたが光江は気にも留めず、「あらまあ、いけませんわ。先生、お休みになってください。お床をとりましょう。お熱はどうです?大丈夫ですか?」と額に手を当てにくる。→基準からの逸脱1、逸脱2 

花村嘉英(2020)「心理学統計の検定を用いて佐藤愛子の『沢村校長の晩年』を考える」より

心理学統計の検定を用いて佐藤愛子の「沢村校長の晩年」を考える3

2.2 実験計画

【研究テーマ】 
質問 正剛と光江の性格に違いがある。 
帰無仮説 正剛と光江の性格に関し違いがない。 
対立仮説 正剛と光江の性格に関し違いがある。  
【実験計画】
独立変数 実験や調査をする人が仮説を検証するために使用する変数。原因と結果でいうと原因である。
従属変数 独立変数の操作に応じて変化すると考えられる変数。原因と結果でいうと結果である。
【要因と水準】
要因 実験者が使用する変数。独立変数そのもの。
水準 実験者が使用する種類。独立変数が実際にとる値。
【参加者間要因と参加者内要因】
参加者間要因 水準のデータが異なる標本から集められる場合。
参加者内要因 水準のデータが同じ標本から集められる場合。
【有意確率】
帰無仮説を前提としたときに、誤差から偶然ある程度の差が標本に生じる確率のこと。危険率とかP値という。また、誤差には、本当はないのに誤って誤差があるとする第一種と誤差があるのに誤ってないとする第二種とがある。実吉(2013)では、5%水準を基準にしている。

花村嘉英(2020)「心理学統計の検定を用いて佐藤愛子の『沢村校長の晩年』を考える」より

心理学統計の検定を用いて佐藤愛子の「沢村校長の晩年」を考える2

2 心理学統計

 心理学統計では、心の働きを数値化しながら客観性を計り、集計や分析を試みる。心を測定する時は、様々な要因がデータに含まれるため、データには誤差が付き物である。そのため、統計学により誤差を取り除き真の値を求めていく必要がある。そうすると、限られた人数のデータから人間一般に共通する心の働きも推測可能になる。

2.1 有意性検定

 科学では全般的に仮説を立てて検証する方法が使われる。実吉(2013)によると、検定の際に仮説が成り立つかどうかは、作成したデータから決めていく。検定の対象は、そこに有意性の差があるかどうかである。例えば、男女の性差で満足度に差があるのかどうか、または不安度に差があるのかどうか考える。こうした問題に対してデータを集めながら検定すると、解答が見えてくる。

【検定の流れ】
帰無仮説と対立仮説を立てる → 独立変数と従属変数を具体的に決め、実験計画を立てる → データを取る → 実験計画に応じた統計検定を行う → 得られた有意確率(p値)を有意水準と比較する → 帰無仮説の棄却、採択を決定する

 ここで、帰無仮説とは、比較する数値間に差がないという仮説である。対立仮説は比較する数値間に差があるとする仮説である。検定では、まず帰無仮説が正しいことを前提に検討され、帰無仮説が成り立たなければ、それを棄てて対立仮説に移り、差があるという結論にする。つまり背理法による命題の証明である。

花村嘉英(2020)「心理学統計の検定を用いて佐藤愛子の『沢村校長の晩年』を考える」より
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プロフィール
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花村嘉英
花村嘉英(はなむら よしひさ) 1961年生まれ、立教大学大学院文学研究科博士後期課程(ドイツ語学専攻)在学中に渡独。 1989年からドイツ・チュービンゲン大学に留学し、同大大学院新文献学部博士課程でドイツ語学・言語学(意味論)を専攻。帰国後、技術文(ドイツ語、英語)の機械翻訳に従事する。 2009年より中国の大学で日本語を教える傍ら、比較言語学(ドイツ語、英語、中国語、日本語)、文体論、シナジー論、翻訳学の研究を進める。テーマは、データベースを作成するテキスト共生に基づいたマクロの文学分析である。 著書に「計算文学入門−Thomas Mannのイロニーはファジィ推論といえるのか?」(新風舎:出版証明書付)、「从认知语言学的角度浅析鲁迅作品−魯迅をシナジーで読む」(華東理工大学出版社)、「日本語教育のためのプログラム−中国語話者向けの教授法から森鴎外のデータベースまで(日语教育计划书−面向中国人的日语教学法与森鸥外小说的数据库应用)」南京東南大学出版社、「从认知语言学的角度浅析纳丁・戈迪默-ナディン・ゴーディマと意欲」華東理工大学出版社、「計算文学入門(改訂版)−シナジーのメタファーの原点を探る」(V2ソリューション)、「小説をシナジーで読む 魯迅から莫言へーシナジーのメタファーのために」(V2ソリューション)がある。 論文には「論理文法の基礎−主要部駆動句構造文法のドイツ語への適用」、「人文科学から見た技術文の翻訳技法」、「サピアの『言語』と魯迅の『阿Q正伝』−魯迅とカオス」などがある。 学術関連表彰 栄誉証書 文献学 南京農業大学(2017年)、大連外国語大学(2017年)
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