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2024年09月16日

心理学統計の検定を用いて佐藤愛子の「沢村校長の晩年」を考える4

2.3 「沢村校長の晩年」の登場人物間で性格が違う 

 「沢村校長の晩年」は、私立の女子高校の元校長とお節介なお手伝いとのやり取りを描いた短編である。ここでは、この小論の研究テーマ、正剛と光江の性格に関し違いがあるかどうかについて作成したデータベースを基に考察していく。  

解答 正剛と光江の性格に違いがある

表1 具体度

光江がしゃべりながら近づいてくる。「先生、見ました?こんなに小さくて可愛いんですよう、鶯色して・・・あら、鶯が鶯色なのは当り前ですけどね。」一人でけたたましく笑っている。→基準からの逸脱0、逸脱2

「梅に鶯って昔からいいますけど、ほんとうですわえ。お庭には桃も桜もあるのに、わざわざ梅にくるなんて、梅の密がおいしいのかしら、香りがすきなんでしょうか。それとも花が可愛いから?」。→基準からの逸脱0、逸脱2 

それを打ち切るように正剛は「赤松さん!」と呼んだ。声がふるえている。「赤松さん、鶯が来ているときは黙って、静かにしているものですよ。それが年に一度来る鶯への礼儀だ・・・」すると光江はいった。→基準からの逸脱1、逸脱1 

「礼儀!そうですわねえ。やっぱり先生はおっしゃることが違いますわ。それで先生はだまって静かにしてらしたんですねえ。私はまた、ご存じないのかと思って・・・失礼しました。ほんとうに私ってどうしてこんなにオッチョコチョイなんでしょう、うちの主人もしょっちゅう、いいますんですよ、昨日もねえ・・・」。→基準からの逸脱1、逸脱2 

「もういいから、少し静かにしてくれませんか。ひどく疲れるんだ」。あらたと話していると、と彼は付け加えたが光江は気にも留めず、「あらまあ、いけませんわ。先生、お休みになってください。お床をとりましょう。お熱はどうです?大丈夫ですか?」と額に手を当てにくる。→基準からの逸脱1、逸脱2 

花村嘉英(2020)「心理学統計の検定を用いて佐藤愛子の『沢村校長の晩年』を考える」より
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花村嘉英
花村嘉英(はなむら よしひさ) 1961年生まれ、立教大学大学院文学研究科博士後期課程(ドイツ語学専攻)在学中に渡独。 1989年からドイツ・チュービンゲン大学に留学し、同大大学院新文献学部博士課程でドイツ語学・言語学(意味論)を専攻。帰国後、技術文(ドイツ語、英語)の機械翻訳に従事する。 2009年より中国の大学で日本語を教える傍ら、比較言語学(ドイツ語、英語、中国語、日本語)、文体論、シナジー論、翻訳学の研究を進める。テーマは、データベースを作成するテキスト共生に基づいたマクロの文学分析である。 著書に「計算文学入門−Thomas Mannのイロニーはファジィ推論といえるのか?」(新風舎:出版証明書付)、「从认知语言学的角度浅析鲁迅作品−魯迅をシナジーで読む」(華東理工大学出版社)、「日本語教育のためのプログラム−中国語話者向けの教授法から森鴎外のデータベースまで(日语教育计划书−面向中国人的日语教学法与森鸥外小说的数据库应用)」南京東南大学出版社、「从认知语言学的角度浅析纳丁・戈迪默-ナディン・ゴーディマと意欲」華東理工大学出版社、「計算文学入門(改訂版)−シナジーのメタファーの原点を探る」(V2ソリューション)、「小説をシナジーで読む 魯迅から莫言へーシナジーのメタファーのために」(V2ソリューション)がある。 論文には「論理文法の基礎−主要部駆動句構造文法のドイツ語への適用」、「人文科学から見た技術文の翻訳技法」、「サピアの『言語』と魯迅の『阿Q正伝』−魯迅とカオス」などがある。 学術関連表彰 栄誉証書 文献学 南京農業大学(2017年)、大連外国語大学(2017年)
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