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2024年09月17日

三浦綾子の「道ありき」で寄与危険を考える1

1 寄与危険とは 

 寄与危険は、危険因子曝露(要因Aあり)群の罹患(要因B)リスクと非曝露(要因Aなし)群の罹患(要因B)リスクとの差で示される(表1)。リスク差ともいう。すなわち、「危険因子の曝露(要因Aあり)によって罹患リスクがどれだけ増えたか」「危険因子に曝露されなければ(要因Aなし)罹患リスクがどれだけ減少するか(危険因子が集団に与える影響の大きさ)」を示す。公衆衛生対策で重要な指標であり、もしその要因が除去されたらどれだけ疾病を予防できるかを意味している。

表1
要因Aあり 要因Bありa 要因Bなしb 縦計a+b
要因Aなし 要因Bありc 要因Bなしd 縦計c+d
要因Bあり 要因Aありa 要因Aなしc 横計a+c
要因Bなし 要因Aありb 要因Aなしd 横計b+d

寄与危険=危険因子曝露(要因Aあり)群の罹患リスク−危険因子非曝露(要因Aなし)群の罹患リスク
=a/a+b − c/c+d

寄与危険割合 
 寄与危険割合は、寄与危険が曝露(要因Aあり)群の罹患リスクに占める割合を示す。すなわち、「危険因子曝露(要因Aあり)群のなかで発症(罹患)したもののうち、真に曝露が影響して罹患(発症)した者は何%であるか」を示す。

寄与危険割合=危険因子曝露(要因Aあり)群の罹患リスク−危険因子非曝露(要因Aなし)群の罹患リスク/危険因子曝露(要因Aあり)群の罹患リスク
  =((a/a+b)−(c/c+d))/ a/a+b x 100

花村嘉英(2021)「三浦綾子の『道ありき』で寄与危険を考える」より

三浦綾子の「道ありき」でオッズ比を考える4

3 まとめ

 三浦綾子の「道ありき」でレントゲンの影ありの読みと影なしの読みでカリエスに関しクロス集計表を作成し、行要素と列要素の関連を計算した。オッズ比で事象の起こりやすさを計算し、統計データから得られた数字の意味を考えた。オッズ比の分析に関心がある人は、試してもらいたい。  

参考文献

中村好一 基礎から学ぶ楽しい保険統計 医学書院 2016
花村嘉英 計算文学入門−Thomas Mannのイロニーはファジィ推論といえるのか? 新風舎 2005
花村嘉英 三浦綾子の「道ありき」で執筆脳を考える ブログ「シナジーのメタファー」2020
オッズ比 Wikipedia 

三浦綾子の「道ありき」でオッズ比を考える3

表2の数字を(1)を公式に当てはめてオッズ比を計算する。

表3
影あり カリエスあり1 カリエスなし4 縦計5
影なし カリエスあり4 カリエスなし1 縦計5
カリエスあり 影あり1 影なし4 横計5
カリエスなし 影あり4 影なし1 横計5

要因Aありのオッズ=1/4=0.25
要因Aなしのオッズ=4/1=4
オッズ比=0.25÷4=0.06 オッズ比は、0.06ということになる。

花村嘉英(2020)「三浦綾子の『道ありき』でオッズ比を考える」より

三浦綾子の「道ありき」でオッズ比を考える2

表2
わたしは、医学にはしろうとである。しかし、尿の回数が多いと言えば、少なくとも検尿ぐらいはするだろうと思った。それがいきなり尿のでなくなる薬と聞いて、この病院にいてもラチがあかないと考えた。
カリエスあり影2 カリエスなし影1

熱がでると解熱剤、下痢をすると下痢止め、咳が出れば咳止め、というのは一番信頼できない医師のすることではないだろうか。何よりもその原因を調べた上で、適当な処置がなされなければならないはずだった。わたしが退院を考えたのは、このことだけではなかった。カリエスあり影2 カリエスなし影1

その頃、私の背中がちょっとでも動かすと辺に痛むのだ。院内の外科医に見てもらうと、「神経だ。若い娘のことは、よく背中が痛むことがある。いちいち気にとめる必要はない」と言った。しかし、動かすと痛いのだから、もしかしたらカリエスではないかと尋ねてみた。カリエスあり影2 カリエスなし影1

医師は怒った。「レントゲン写真にも変化がない。神経だ」再び叱られて、いたし方なくわたしは病室に帰ってきた。わたしは、療養生活七年目であった。もう、客観的に自分の病状をとらえることができるはずである。カリエスあり影2 カリエスなし影1

誰でも最初のうちは、病気のことがよくわからないから、いらぬ神経を使うが、少なくとも六年の経験というものは、それほど神経質にはさせないはずである。医師が何を言おうと、わたしは病状からしてカリエスだろうと見当をつけた。カリエスの患者の話を聞くと、そのほとんどが、幾度か医師の誤診にあっているのだ。
カリエスあり影1 カリエスなし影2

指数のため、レントゲンの影ありは、カリエスあり1なし4、影なしは、カリエスあり4なし1になる。

花村嘉英(2020)「三浦綾子の『道ありき』でオッズ比を考える」より

三浦綾子の「道ありき」でオッズ比を考える1

1 オッズ比とは

 ある事象の起こりやすさを二つの群で比較する統計の尺度である。オッズ比の考え方は、2x2分割表であり、a/bが要因Aあり群の要因Bのオッズ、c/dが要因Aなし群の要因Bのオッズで、両者の比(a/b)/(c/d)=ad/ bcがオッズ比である。

表1
要因A あり a b a+b
要因A なし c d c+d
要因B あり a c a+c
要因B なし b d b+d

n=a+b+c+d
要因Aありのオッズ=a/b
要因Aなしのオッズ=c/d
オッズ比=(a/b)/(c/d)=ad/bc

 オッズ比が1とは、対象とする事象の起こりやすさが両群で同じということであり、1より大きいとは、事象が第1群(第2群)でより起こりやすいということである。オッズ比は必ず0以上である。第1群(第2群)のオッズが0に近づけばオッズ比は0(∞)に近づく。但し、bやcが0の場合、オッズ比の公式の分母に0が入るため、オッズ比が無限大(∞)になり95%信頼区間もできなくなる。そこで4つのセルに0.5を加えて、(a+0.5)x(d+0.5)/ (b+0.5)x(c+0.5)をオッズ比とする。これは、ウォルフ−ハルディンの補正と呼ばれている。

花村嘉英(2020)「三浦綾子の『道ありき』でオッズ比を考える」より

三浦綾子の「道ありき」でファイ係数を考える4

3 まとめ  

 三浦綾子の「道ありき」の虚無ありの読みと虚無なしの読みで結核に関しクロス集計表を作成し、行要素と列要素の関連の強さを計算した。ファイ係数から感度や特異度そして正確度や適合度も計算し、統計データから得られた数字の意味を考えた。ファイ係数の分析に関心がある人は、試してもらいたい。 

参考文献

花村嘉英 計算文学入門−Thomas Mannのイロニーはファジィ推論といえるのか? 新風舎 2005
https://best-biostatistics.com/design/kouraku2.html (いちばんやさしい医療統計)
https://ash-d.click/2018/01/08/st_0108/(性別と購入の関連性)
https://www.cresco.co.jp/blog/entry/5987/(感度とか特異度)

三浦綾子の「道ありき」でファイ係数を考える3

さらに表4の数字を公式(1)に当てはめてファイ係数を計算する。

表4

虚無あり 結核あり4 結核なし2 縦計6
虚無なし 結核あり3 結核なし4 縦計7
結核あり 虚無あり4 虚無なし3 横計7
結核なし 虚無あり2 虚無なし4 横計6

(2)4 x 4 - 2 x 3 / √7 x 6 x 6 x 7 = 0.23 

 ファイ係数、即ち、行要素と列要素の関連の強さは、弱い関連があるになる。次に、その他の関連する数字を見てみよう。 
 感度= a ÷ (a + c)のため、4÷ (4+2)=0.67。結核ありの真性の割合である。
 特異度 = d ÷ (b+ d) のため、4 ÷ (3+4)=0.57。結核なしの真性の割合である。
 正確度=(a + d)÷(a +b+ c + d) のため、(4 + 4 )÷ (4 +3+ 2+ 4) =0.62。全体の真性の割合である。
 適合度= a÷(a +b) のため、4÷ (4+3)=0.57。虚無ありと判定したものが正解である割合である。

花村嘉英(2021)「三浦綾子の『道ありき』でファイ係数を考える」より

三浦綾子の「道ありき」でファイ係数を考える2

2 三浦綾子の「道ありき」でクロス集計表を分析する

表3

N病院に入院して四カ月がたったが、依然としてわたしの熱はつづき、身体はやせていた。しかし、その熱の原因を知ることはできなかった。排尿の回数が多くなり、時には夜七、八回おきることがあった。医師に言うと、驚いたことに、尿のでない薬をくれるというのである。虚無あり結核1 虚無なし結核1

わたしは、医学にはしろうとである。しかし、尿の回数が多いと言えば、少なくとも検尿ぐらいはするだろうと思った。それがいきなり尿のでなくなる薬と聞いて、この病院にいてもラチがあかないと考えた。
虚無あり結核1 虚無なし結核2

熱がでると解熱剤、下痢をすると下痢止め、咳が出れば咳止め、というのは一番信頼できない医師のすることではないだろうか。何よりもその原因を調べた上で、適当な処置がなされなければならないはずだった。わたしが退院を考えたのは、このことだけではなかった。虚無あり結核2 虚無なし結核2

その頃、私の背中がちょっとでも動かすと辺に痛むのだ。院内の外科医に見てもらうと、「神経だ。若い娘のことは、よく背中が痛むことがある。いちいち気にとめる必要はない」と言った。しかし、動かすと痛いのだから、もしかしたらカリエスではないかと尋ねてみた。虚無あり結核1 虚無なし結核1

医師は怒った。「レントゲン写真にも変化がない。神経だ」再び叱られて、いたし方なくわたしは病室に帰ってきた。わたしは、療養生活七年目であった。もう、客観的に自分の病状をとらえることができるはずである。誰でも最初のうちは、病気のことがよくわからないから、いらぬ神経を使うが、少なくとも六年の経験というものは、それほど神経質にはさせないはずである。医師が何を言おうと、わたしは病状からしてカリエスだろうと見当をつけた。虚無あり結核1 虚無なし結核1

連関を見るため、表3の数字を加算する。

花村嘉英(2021)「三浦綾子の『道ありき』でファイ係数を考える」より

三浦綾子の「道ありき」でファイ係数を考える1

1 ファイ係数

ファイ係数は、2行x2行のクロス集計表における行要素と列要素の関連の強さを示す指標である。例えば、

表1
喫煙 肺がんありA 肺がんなしB 計N1
非喫煙 肺がんありC 肺がんなしD 計N2
肺がんあり 喫煙A 非喫煙C 計M1
肺がんなし 喫煙B 非喫煙D 計M2

ファイ係数は、次の式で求められる。絶対値が大きいほど関連が強い。 
(1)φ = A x D –B x C /√M1 x M2 x N1 x N2

表2
係数(絶対値)  評価
〜0.2      殆ど関連なし。
0.2〜0.4      弱い関連あり。
0.4〜0.7 中程度の関連あり。
0.7〜1 強い関連あり。

 その他の関連する数字として、感度や特異度そして正確度や適合度がある。
感度とは、ある対象に与えた刺激とそれに対する応答の関係に関わる指標である。 感度 = a ÷ (a + c)で計算できる。問題があることを見逃さない割合ともいえる。
 特異度とは、臨床検査の性格を決める指標の1つで、ある検査について「陰性のものを正しく陰性と判定する確率」として定義される値である。特異度 = d ÷ (b+ d)で計算できる。問題のないことをむやみに疑わないことを表す指標である。
 正確度とは、全体の正解率であり、(a + d)÷(a +b+ c + d) で計算できる。正答の数を全体の数で割る。
 適合度とは、問題ありとなったとき、それがどれだけ実際に問題があるのかを表す指標である。適合度 = a÷(a +b) で計算できる。

花村嘉英(2021)「三浦綾子の『道ありき』でファイ係数を考える」より

三浦綾子の「道ありき」から見えてくるバラツキについて7

3 まとめ
 
 リレーショナル・データベースの数字及びそこから求めた標準偏差により、「道ありき」に関して部分的ではあるが、既存の分析例が説明できている。従って、この小論の分析方法、即ちデータベースを作成する文学研究は、データ間のリンクなど人の目には見えないものを提供してくれるため、これまでよりも客観性を上げることに成功している。

【参考文献】

大村 平 統計のはなし−基礎・応用・娯楽 日科技連 1984
花村嘉英 計算文学入門−Thomas Mannのイロニーはファジィ推論といえるのか? 新風舎 2005
花村嘉英 从认知语言学的角度浅析鲁迅作品−魯迅をシナジーで読む 華東理工大学出版社 2015
花村嘉英 日语教育计划书−面向中国人的日语教学法与森鸥外小说的数据库应用 日本語教育のためのプログラム−中国語話者向けの教授法から森鴎外のデータベースまで 南京東南大学出版社 2017
花村嘉英 从认知语言学的角度浅析纳丁・戈迪默 ナディン・ゴーディマと意欲 華東理工大学出版社 2018
三浦綾子 道ありき 新潮文庫 2004
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花村嘉英
花村嘉英(はなむら よしひさ) 1961年生まれ、立教大学大学院文学研究科博士後期課程(ドイツ語学専攻)在学中に渡独。 1989年からドイツ・チュービンゲン大学に留学し、同大大学院新文献学部博士課程でドイツ語学・言語学(意味論)を専攻。帰国後、技術文(ドイツ語、英語)の機械翻訳に従事する。 2009年より中国の大学で日本語を教える傍ら、比較言語学(ドイツ語、英語、中国語、日本語)、文体論、シナジー論、翻訳学の研究を進める。テーマは、データベースを作成するテキスト共生に基づいたマクロの文学分析である。 著書に「計算文学入門−Thomas Mannのイロニーはファジィ推論といえるのか?」(新風舎:出版証明書付)、「从认知语言学的角度浅析鲁迅作品−魯迅をシナジーで読む」(華東理工大学出版社)、「日本語教育のためのプログラム−中国語話者向けの教授法から森鴎外のデータベースまで(日语教育计划书−面向中国人的日语教学法与森鸥外小说的数据库应用)」南京東南大学出版社、「从认知语言学的角度浅析纳丁・戈迪默-ナディン・ゴーディマと意欲」華東理工大学出版社、「計算文学入門(改訂版)−シナジーのメタファーの原点を探る」(V2ソリューション)、「小説をシナジーで読む 魯迅から莫言へーシナジーのメタファーのために」(V2ソリューション)がある。 論文には「論理文法の基礎−主要部駆動句構造文法のドイツ語への適用」、「人文科学から見た技術文の翻訳技法」、「サピアの『言語』と魯迅の『阿Q正伝』−魯迅とカオス」などがある。 学術関連表彰 栄誉証書 文献学 南京農業大学(2017年)、大連外国語大学(2017年)
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