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2017年10月27日
監督が求めることと自分のやりたいこと。アントラーズで抜擢され、干された監督との付き合い方
■岩政大樹「現役目線」第30回
初の著書『PITCH LEVEL 例えば攻撃がうまくいかないとき改善する方法』が選手、ジャーナリストから「今年最高に面白い本」と絶賛される岩政大樹氏による最新寄稿。
選手に求められる、監督との適切な距離感
サッカーにおいて監督の存在は絶対です。「選手にとって“いい監督”とは試合に使ってくれる監督」とはよく言われる言葉で、選手は監督に必要とされなければ試合に出ることさえ叶いません。さらにサッカーの場合、選手を見る基準を数字で現すことができないことから、選手の評価には監督の趣向が少なからず反映され、選手は接する監督によって立ち位置を微妙に変化させなくてはなりません。
その付き合い方は、選手にとってとても大きな比重を占めます。それが外国人監督ならなおさらです。日本代表のハリルホジッチ監督も、お会いしたことはありませんが、かなりデリケートな付き合い方が必要なタイプに見えます。
監督の求めるものが明確に示される場合はまず、自分のやりたいことより、監督の求めるものを”やろうとする姿勢”を示すことが優先です。自分のやりたいことがどんなに正しいと思われることであっても、監督に「戦術を理解していない」「求めるものができない」と判断されてしまったら元も子もありません。試合に出続けて自分の立場を確立し、監督との信頼関係を築くことができるまでは「監督から見た自分の立ち位置」を客観的に見ることができなくてはなりません。
外国人監督だとそれは、より難しくなります。言語の違いにより言葉が意図したものと違って伝わってしまったり、文化の違いからそもそもの考え方が違っていたりするからです。
監督が変わるたびに「スタメンから外す候補」として見られていた
僕が所属した10年間、鹿島アントラーズは一貫してブラジル人監督でした。のべ5人の監督さんと付き合いました。
1年目のシーズン途中から退団することになる10年目のシーズン途中まで、まる9年間僕は、出場停止と怪我以外でスタメンを外されることがありませんでした。これはちょっとした僕の自慢ですが、そのことから僕を「不動のレギュラー」「スタメン安泰」と捉えていらっしゃった方も多かったのですが、実態は違いました。僕は監督が変わるたびにいつも「スタメンから外す候補」として見られていました。
監督の立場に立てばそれも理解できます。不器用で足が遅く、分かりやすい特徴はヘディングくらいしかないので、なぜ“イワマサ”が試合に出ているのか分からないのでしょう。僕にはいつも他の人以上に自分の存在意義を絶対的な結果で示し続ける必要がありました。
その中で9年間、僕が生き残り続けた要因は「常に100%」の姿勢でいたことが大きかったと思います。華麗な技術を駆使した芸術的なサッカーがイメージされるブラジルサッカーですが、彼らが共通して求めるものは実は華麗さではありません。
練習でも試合でも、やりたいプレーもやりたくないプレーも、調子がいい時も悪い時も、「常に100%」を続けること。彼らが求めることはいつもそれだけです。
元々僕にできることはヘディングとそれしかなかったですが、スーパーエリートが揃う鹿島アントラーズの中では異色に映ったのでしょう。彼らの求めるものと僕のスタイルが合っていたのか、彼らは次第に大きな信頼を置いてくれるようになりました。
監督に「干される」経験をすることに
それでも鹿島での最後の年となった2013年シーズンでは、俗に言う、監督に「干される」経験をすることになりました。当時の監督はトニーニョ・セレーゾ監督でした。
セレーゾ監督は僕をプロデビューさせてくれた監督です。1年目、僕はピッチ内でもピッチ外でもよくチームメイトからいじられていました。僕も新人だったので、それ自体は決して居心地が悪かったわけではありませんが、選手たちが僕を信頼していないことは明らかでした。そんな下手くそな男に真っ先に期待してくれたのがセレーゾ監督でした。毎日つきっきりで居残り練習をしてくださり、試合でもタイミングを見ながら大事に使ってくれました。
そんな彼が帰還したシーズン。今振り返ってもやり切れない気持ちが詰まった息苦しい一年でした。
最初のつまづきは開幕直前の肉離れでした。宮崎キャンプを終えて鹿島に戻ってきた後に受傷したその怪我は、僕には珍しく重めの肉離れでした。開幕戦には肉離れが完治どころか全く治っていない状態で出場しました。そんな状態だったので、試合中にまた出血をして悪化、そしてまた治らないまま試合に出る。そんなことを5月くらいまで繰り返してしまいました。
それは、それまで続けてきた僕のやり方でしたが、セレーゾ監督にはどう見えたのか。僕も鹿島でのキャリアの終焉を考えていた時代です。「それまで続けてきた僕のやり方」という判断は今でも間違いではなかったと思っていますが、僕とセレーゾ監督との間で少しだけボタンのかけ違いが起こっていたのかもしれません。
かけ違ったボタンは様々なところで姿を見せ始めました。
「ダイキの言うとおりにしていたら試合に使わないぞ」
セレーゾ監督は気難しいところがある監督でした。若手には特に厳しく、その分、期待もかけていました。僕はそれを手助けしたいと考え、若いときに薫陶を受けた経験から、セレーゾ監督との接し方を様々な伝え方で若い選手たちにアドバイスしていました。しかし、日本語を分からないセレーゾ監督は次第に僕に対して疑心暗鬼になっているようでした。冗談ぽく笑いながらでしたが、「ダイキの言うとおりにしていたら試合に使わないぞ」と若い選手たちに言うようになりました。僕はそれを笑顔で突っ込みながら、セレーゾ監督の目の奥に潜む危険な匂いを感じていました。
問題はここでも「それまで続けてきた僕のやり方」という僕の振る舞いだったのでしょう。僕はその頃、このコラムでも何度か触れてきましたが、若い選手をあらゆることでサポートすることを自分のスタイルとして考えるようになっていました。
しかし、セレーゾ監督はいち選手にそんなことは求めていない。もしくは、いち選手がそんなことをすることが理解できなかったのではないかと思います。僕らは言い争うことは一度もありませんでしたが、何か通じ合わないものを感じていました。
最終的にはチームが連敗をしたタイミングでスタメンを外され、そこからチームが何度負けてもスタメンのチャンスは巡ってきませんでした。
自分の人生に対して「不当」だと思っていた
僕はそれを「不当」だと思っていました。決してセレーゾ監督に対して、ではありません。自分の人生に対して、です。
セレーゾ監督は監督として自分のやり方を貫いたに過ぎません。僕もまた選手として自分のやり方を貫きました。「帰還」とはいえ7年の時を経ていたので、新監督としてもっとうまくやるやり方はあったと思います。しかし、僕もベテランです。僕にはそれも分かった上で「それまで続けてきた僕のやり方」で生きたかったのです。そしてそれが必ず、若い選手たちと新しいチームを作る上でセレーゾ監督のためにもなる、と考えていました。
「不当」であるとは、ただ自分の人生に対して。僕が僕の人生に対して不当であると思える場合は必ず、その痛みに対比していい事が起こる。それを信じた先が、次の年にタイで成し遂げることができたタイトルでした。
と、今となっては思い出話で振り返ることができますが、僕も散々揺れ動く中で過ごした時間でした。「自分だってまだまだ輝きたい!」そんな思いは当然ありました。ただ、若い時の「選手として成功したい」「輝きたい」が1番だった頃とは僕も違っていたんだと思います。
それはある意味、僕がもうJリーガーではなくなっていた、ということなのでしょう。そして、「それでいい」と、「それが僕のやり方だ」と決めつけた時点で、選手としての成功はもう終わっていたということなのでしょう。
初の著書『PITCH LEVEL 例えば攻撃がうまくいかないとき改善する方法』が選手、ジャーナリストから「今年最高に面白い本」と絶賛される岩政大樹氏による最新寄稿。
選手に求められる、監督との適切な距離感
サッカーにおいて監督の存在は絶対です。「選手にとって“いい監督”とは試合に使ってくれる監督」とはよく言われる言葉で、選手は監督に必要とされなければ試合に出ることさえ叶いません。さらにサッカーの場合、選手を見る基準を数字で現すことができないことから、選手の評価には監督の趣向が少なからず反映され、選手は接する監督によって立ち位置を微妙に変化させなくてはなりません。
その付き合い方は、選手にとってとても大きな比重を占めます。それが外国人監督ならなおさらです。日本代表のハリルホジッチ監督も、お会いしたことはありませんが、かなりデリケートな付き合い方が必要なタイプに見えます。
監督の求めるものが明確に示される場合はまず、自分のやりたいことより、監督の求めるものを”やろうとする姿勢”を示すことが優先です。自分のやりたいことがどんなに正しいと思われることであっても、監督に「戦術を理解していない」「求めるものができない」と判断されてしまったら元も子もありません。試合に出続けて自分の立場を確立し、監督との信頼関係を築くことができるまでは「監督から見た自分の立ち位置」を客観的に見ることができなくてはなりません。
外国人監督だとそれは、より難しくなります。言語の違いにより言葉が意図したものと違って伝わってしまったり、文化の違いからそもそもの考え方が違っていたりするからです。
監督が変わるたびに「スタメンから外す候補」として見られていた
僕が所属した10年間、鹿島アントラーズは一貫してブラジル人監督でした。のべ5人の監督さんと付き合いました。
1年目のシーズン途中から退団することになる10年目のシーズン途中まで、まる9年間僕は、出場停止と怪我以外でスタメンを外されることがありませんでした。これはちょっとした僕の自慢ですが、そのことから僕を「不動のレギュラー」「スタメン安泰」と捉えていらっしゃった方も多かったのですが、実態は違いました。僕は監督が変わるたびにいつも「スタメンから外す候補」として見られていました。
監督の立場に立てばそれも理解できます。不器用で足が遅く、分かりやすい特徴はヘディングくらいしかないので、なぜ“イワマサ”が試合に出ているのか分からないのでしょう。僕にはいつも他の人以上に自分の存在意義を絶対的な結果で示し続ける必要がありました。
その中で9年間、僕が生き残り続けた要因は「常に100%」の姿勢でいたことが大きかったと思います。華麗な技術を駆使した芸術的なサッカーがイメージされるブラジルサッカーですが、彼らが共通して求めるものは実は華麗さではありません。
練習でも試合でも、やりたいプレーもやりたくないプレーも、調子がいい時も悪い時も、「常に100%」を続けること。彼らが求めることはいつもそれだけです。
元々僕にできることはヘディングとそれしかなかったですが、スーパーエリートが揃う鹿島アントラーズの中では異色に映ったのでしょう。彼らの求めるものと僕のスタイルが合っていたのか、彼らは次第に大きな信頼を置いてくれるようになりました。
監督に「干される」経験をすることに
それでも鹿島での最後の年となった2013年シーズンでは、俗に言う、監督に「干される」経験をすることになりました。当時の監督はトニーニョ・セレーゾ監督でした。
セレーゾ監督は僕をプロデビューさせてくれた監督です。1年目、僕はピッチ内でもピッチ外でもよくチームメイトからいじられていました。僕も新人だったので、それ自体は決して居心地が悪かったわけではありませんが、選手たちが僕を信頼していないことは明らかでした。そんな下手くそな男に真っ先に期待してくれたのがセレーゾ監督でした。毎日つきっきりで居残り練習をしてくださり、試合でもタイミングを見ながら大事に使ってくれました。
そんな彼が帰還したシーズン。今振り返ってもやり切れない気持ちが詰まった息苦しい一年でした。
最初のつまづきは開幕直前の肉離れでした。宮崎キャンプを終えて鹿島に戻ってきた後に受傷したその怪我は、僕には珍しく重めの肉離れでした。開幕戦には肉離れが完治どころか全く治っていない状態で出場しました。そんな状態だったので、試合中にまた出血をして悪化、そしてまた治らないまま試合に出る。そんなことを5月くらいまで繰り返してしまいました。
それは、それまで続けてきた僕のやり方でしたが、セレーゾ監督にはどう見えたのか。僕も鹿島でのキャリアの終焉を考えていた時代です。「それまで続けてきた僕のやり方」という判断は今でも間違いではなかったと思っていますが、僕とセレーゾ監督との間で少しだけボタンのかけ違いが起こっていたのかもしれません。
かけ違ったボタンは様々なところで姿を見せ始めました。
「ダイキの言うとおりにしていたら試合に使わないぞ」
セレーゾ監督は気難しいところがある監督でした。若手には特に厳しく、その分、期待もかけていました。僕はそれを手助けしたいと考え、若いときに薫陶を受けた経験から、セレーゾ監督との接し方を様々な伝え方で若い選手たちにアドバイスしていました。しかし、日本語を分からないセレーゾ監督は次第に僕に対して疑心暗鬼になっているようでした。冗談ぽく笑いながらでしたが、「ダイキの言うとおりにしていたら試合に使わないぞ」と若い選手たちに言うようになりました。僕はそれを笑顔で突っ込みながら、セレーゾ監督の目の奥に潜む危険な匂いを感じていました。
問題はここでも「それまで続けてきた僕のやり方」という僕の振る舞いだったのでしょう。僕はその頃、このコラムでも何度か触れてきましたが、若い選手をあらゆることでサポートすることを自分のスタイルとして考えるようになっていました。
しかし、セレーゾ監督はいち選手にそんなことは求めていない。もしくは、いち選手がそんなことをすることが理解できなかったのではないかと思います。僕らは言い争うことは一度もありませんでしたが、何か通じ合わないものを感じていました。
最終的にはチームが連敗をしたタイミングでスタメンを外され、そこからチームが何度負けてもスタメンのチャンスは巡ってきませんでした。
自分の人生に対して「不当」だと思っていた
僕はそれを「不当」だと思っていました。決してセレーゾ監督に対して、ではありません。自分の人生に対して、です。
セレーゾ監督は監督として自分のやり方を貫いたに過ぎません。僕もまた選手として自分のやり方を貫きました。「帰還」とはいえ7年の時を経ていたので、新監督としてもっとうまくやるやり方はあったと思います。しかし、僕もベテランです。僕にはそれも分かった上で「それまで続けてきた僕のやり方」で生きたかったのです。そしてそれが必ず、若い選手たちと新しいチームを作る上でセレーゾ監督のためにもなる、と考えていました。
「不当」であるとは、ただ自分の人生に対して。僕が僕の人生に対して不当であると思える場合は必ず、その痛みに対比していい事が起こる。それを信じた先が、次の年にタイで成し遂げることができたタイトルでした。
と、今となっては思い出話で振り返ることができますが、僕も散々揺れ動く中で過ごした時間でした。「自分だってまだまだ輝きたい!」そんな思いは当然ありました。ただ、若い時の「選手として成功したい」「輝きたい」が1番だった頃とは僕も違っていたんだと思います。
それはある意味、僕がもうJリーガーではなくなっていた、ということなのでしょう。そして、「それでいい」と、「それが僕のやり方だ」と決めつけた時点で、選手としての成功はもう終わっていたということなのでしょう。
2017年10月24日
スペインの名指導者から苦言。「日本のダブルボランチは動きすぎだ」
「”ロシアワールドカップに向けてチームを成熟させる”という狙いだろう。日本のメンバーは試験的に入れ替わっていたが、4−2−3−1というフォーメーションは変わらず、それぞれのポジションに託された役割も変わっていない」
【写真】ニュージーランド戦でぼう然とした表情のハリルホジッチ
ミケル・エチャリはそう言って、ニュージーランド戦の分析を切り出した。
エチャリはスペインの古豪レアル・ソシエダで約20年間にわたり、強化、育成、分析とあらゆるポストを歴任。レアル・ソシエダBの監督として、ハビエル・デ・ペドロ、アグスティン・アランサバルなど多くのスペイン代表を育てている。他にもエイバルで監督として指揮を執り、アラベスではテクニカルディレクター、指導者養成学校の教授も経験。慧眼(けいがん)で知られ、その分析から「ミスター・パーフェクト」の異名を誇る。
「攻め寄せるのは悪くないが、危機管理が不足している場面が見られた。センターバック2人が孤立。もっと高いレベルになれば、何度かカウンターを浴びてもおかしくない」
エチャリは目を光らせた。ロシアW杯に向け、「リスクマネジメント」はひとつのテーマになりそうだ。
「ニュージーランドは最初、3−3−2−2のような布陣だった。中央部の守りを固めながら、2トップを生かす戦い方だろう。しかし日本の攻撃圧力が強かったことで、防戦一方になってしまう。
日本はボランチの山口蛍が積極的に攻撃参加。序盤、武藤嘉紀へ送ったロングボールの質は高かった。山口は中央部から崩そうと前線に近づき、ミドルシュートも放ち、ニュージーランドを脅かしている。
しかし、中央で山口、井手口陽介というボランチが同時に動くことで、チームのバランスは偏っていた。中央から無理押しで攻めるのは得策ではない。ダブルボランチというのは攻守のバランスを重んじ、サイドバックの攻撃参加を促すプレーが本筋である。長友佑都、酒井宏樹を動かすことで、日本はもっと有効な攻撃ができるだろう」
エチャリはボランチが自ら動き回ることで守備の綻(ほころ)びを作るよりも、周りを動かすことによって潤滑な攻撃を促し、攻守の両輪となることを求めた。
「そもそも中盤の2人が八方に動き回ることで、カウンターの脅威にさらされている(この点で長谷部誠は気が利いている)。例えば前半29分、槙野智章がカットしたボールは相手に再びカットされ、ディフェンスラインの裏を狙われている。吉田麻也は逆を取られ、ターンで遅れ、走り負けた。このとき、ボランチもサイドバックも前に出ていたことで、数的同数を作られてしまった。相手FWのレベルが高かったら……推して知るべしだ」
ボランチがポジションを明け渡すことで、強固とは言えないバックラインは相手の攻撃に晒されてしまう。結局のところ、中盤の慌ただしさが攻守の不安定さを生じさせている、とエチャリは読み解く。一方的に攻めていたのに、突如として流れを失ってしまう理由だ。
後半、日本は相手エリア近くで酒井、大迫勇也、久保裕也が絡み、持ち上がった山口がシュートを放っている。これがエリア内のディフェンスの腕に当たりPKを獲得。50分、大迫がこれを落ち着いた様子で決めた。
ところが59分、左サイドで井手口、長友という2人の選手が1人のアタッカーに翻弄されてしまう。易々とクロスを上げられ、相手FWにヘディングで叩き込まれた。このとき、酒井と吉田の間に入り込まれていた。
「守備の脆さは、リスクマネジメントの問題だろう。攻撃能力の高い選手はいるし、意識の高さは感じる。しかし8人の選手が攻めに転じ、センターバックが孤立している場面があった」
エチャリはそう言って、ひとつの提言をしている。
「ハリルホジッチ監督は杉本健勇、小林祐希を投入。さらに左サイドに乾貴士を入れ、優勢を取り戻している。乾が左サイドでボールを持ち、長友が攻撃に加わるようになって、一方的にニュージーランドを押し込んだ。
しかしあえて言えば、まだサイドからの攻撃の厚みが足りない。敵は5−4−1のような布陣に切り替え、人海戦術で中央を固めていただけに、中よりもサイドを深く切り崩せるように、サイドバックを上げるべきだろう。その代わり、ボランチ2人はカウンターに備えるポジションを取るべきだ」
エチャリは交代で出た2人の選手を評価し、ロシアW杯に向けた強化試合を総括している。
「小林はボールを動かすことでチームの攻撃をスムーズにしていた。また、乾は左サイドに深みを作った。事実、88分の日本の得点は乾が左サイドを崩し、ファーポストに上げたクロスを酒井がヘディングで折り返し、二列目から飛び込んだ倉田秋が詰めたものだ。
ニュージーランドのように守りを固めた相手と戦うのは簡単ではないが、W杯本大会ではそうした時間帯が巡ってくる(ブラジルW杯のギリシャ戦の後半のように)。その意味では、得点を取って勝ったことは収穫だろう。得点シーンは左サイドをえぐり、逆サイドまで酒井が上がって、”外から揺さぶって攻めた”理想形だった。
しかし、繰り返すが、攻撃しているときに自分たちのスペースをもう少し把握しておくべきだ。ボランチは(自ら攻撃するよりも)サイドの選手を動かすことで、必ず打撃を与えられる。自分たちが動きすぎると、相手に隙を与えることになる。最悪、センターバック2人+ボランチ2人の4人がいれば相手の逆襲には対応できる。しかしセンターバックが孤立するようでは、相手にスピードに乗られ、なす術(すべ)はない」
エチャリが指摘した守備の拙(つたな)さは、次のハイチ戦で浮き彫りになる。
【写真】ニュージーランド戦でぼう然とした表情のハリルホジッチ
ミケル・エチャリはそう言って、ニュージーランド戦の分析を切り出した。
エチャリはスペインの古豪レアル・ソシエダで約20年間にわたり、強化、育成、分析とあらゆるポストを歴任。レアル・ソシエダBの監督として、ハビエル・デ・ペドロ、アグスティン・アランサバルなど多くのスペイン代表を育てている。他にもエイバルで監督として指揮を執り、アラベスではテクニカルディレクター、指導者養成学校の教授も経験。慧眼(けいがん)で知られ、その分析から「ミスター・パーフェクト」の異名を誇る。
「攻め寄せるのは悪くないが、危機管理が不足している場面が見られた。センターバック2人が孤立。もっと高いレベルになれば、何度かカウンターを浴びてもおかしくない」
エチャリは目を光らせた。ロシアW杯に向け、「リスクマネジメント」はひとつのテーマになりそうだ。
「ニュージーランドは最初、3−3−2−2のような布陣だった。中央部の守りを固めながら、2トップを生かす戦い方だろう。しかし日本の攻撃圧力が強かったことで、防戦一方になってしまう。
日本はボランチの山口蛍が積極的に攻撃参加。序盤、武藤嘉紀へ送ったロングボールの質は高かった。山口は中央部から崩そうと前線に近づき、ミドルシュートも放ち、ニュージーランドを脅かしている。
しかし、中央で山口、井手口陽介というボランチが同時に動くことで、チームのバランスは偏っていた。中央から無理押しで攻めるのは得策ではない。ダブルボランチというのは攻守のバランスを重んじ、サイドバックの攻撃参加を促すプレーが本筋である。長友佑都、酒井宏樹を動かすことで、日本はもっと有効な攻撃ができるだろう」
エチャリはボランチが自ら動き回ることで守備の綻(ほころ)びを作るよりも、周りを動かすことによって潤滑な攻撃を促し、攻守の両輪となることを求めた。
「そもそも中盤の2人が八方に動き回ることで、カウンターの脅威にさらされている(この点で長谷部誠は気が利いている)。例えば前半29分、槙野智章がカットしたボールは相手に再びカットされ、ディフェンスラインの裏を狙われている。吉田麻也は逆を取られ、ターンで遅れ、走り負けた。このとき、ボランチもサイドバックも前に出ていたことで、数的同数を作られてしまった。相手FWのレベルが高かったら……推して知るべしだ」
ボランチがポジションを明け渡すことで、強固とは言えないバックラインは相手の攻撃に晒されてしまう。結局のところ、中盤の慌ただしさが攻守の不安定さを生じさせている、とエチャリは読み解く。一方的に攻めていたのに、突如として流れを失ってしまう理由だ。
後半、日本は相手エリア近くで酒井、大迫勇也、久保裕也が絡み、持ち上がった山口がシュートを放っている。これがエリア内のディフェンスの腕に当たりPKを獲得。50分、大迫がこれを落ち着いた様子で決めた。
ところが59分、左サイドで井手口、長友という2人の選手が1人のアタッカーに翻弄されてしまう。易々とクロスを上げられ、相手FWにヘディングで叩き込まれた。このとき、酒井と吉田の間に入り込まれていた。
「守備の脆さは、リスクマネジメントの問題だろう。攻撃能力の高い選手はいるし、意識の高さは感じる。しかし8人の選手が攻めに転じ、センターバックが孤立している場面があった」
エチャリはそう言って、ひとつの提言をしている。
「ハリルホジッチ監督は杉本健勇、小林祐希を投入。さらに左サイドに乾貴士を入れ、優勢を取り戻している。乾が左サイドでボールを持ち、長友が攻撃に加わるようになって、一方的にニュージーランドを押し込んだ。
しかしあえて言えば、まだサイドからの攻撃の厚みが足りない。敵は5−4−1のような布陣に切り替え、人海戦術で中央を固めていただけに、中よりもサイドを深く切り崩せるように、サイドバックを上げるべきだろう。その代わり、ボランチ2人はカウンターに備えるポジションを取るべきだ」
エチャリは交代で出た2人の選手を評価し、ロシアW杯に向けた強化試合を総括している。
「小林はボールを動かすことでチームの攻撃をスムーズにしていた。また、乾は左サイドに深みを作った。事実、88分の日本の得点は乾が左サイドを崩し、ファーポストに上げたクロスを酒井がヘディングで折り返し、二列目から飛び込んだ倉田秋が詰めたものだ。
ニュージーランドのように守りを固めた相手と戦うのは簡単ではないが、W杯本大会ではそうした時間帯が巡ってくる(ブラジルW杯のギリシャ戦の後半のように)。その意味では、得点を取って勝ったことは収穫だろう。得点シーンは左サイドをえぐり、逆サイドまで酒井が上がって、”外から揺さぶって攻めた”理想形だった。
しかし、繰り返すが、攻撃しているときに自分たちのスペースをもう少し把握しておくべきだ。ボランチは(自ら攻撃するよりも)サイドの選手を動かすことで、必ず打撃を与えられる。自分たちが動きすぎると、相手に隙を与えることになる。最悪、センターバック2人+ボランチ2人の4人がいれば相手の逆襲には対応できる。しかしセンターバックが孤立するようでは、相手にスピードに乗られ、なす術(すべ)はない」
エチャリが指摘した守備の拙(つたな)さは、次のハイチ戦で浮き彫りになる。
2017年10月22日
イニエスタ、バルサ生涯契約の「勝者」と「敗者」 英メディアに“負け組”とされた3人とは
“勝ち組”の筆頭はバルトメウ会長 メッシも恩恵を受けると指摘
スペイン代表MFアンドレス・イニエスタは所属するバルセロナと生涯契約を結び、残りのキャリアを愛するクラブに捧げることが決まった。英サッカー専門メディア「Squawka」では、イニエスタの契約更改によって影響を受けるバルサ関係者を“勝者”と“敗者”に分けて特集している。
イニエスタがバルサへの忠誠を誓ったことで“ウィナー”になったのは、まずジョゼップ・マリア・バルトメウ会長だ。来夏での契約満了が迫っていたイニエスタには移籍の噂も流れたが、残留が決定。バルトメウ会長はクラブのトップとして、生え抜きの司令塔を引き留めるという大仕事を成し遂げた。
さらに貴重な戦力の維持に成功した格好となるエルネスト・バルベルデ監督、イニエスタ退団ならキャプテンとしての負担が増える可能性の大きかったFWリオネル・メッシも、その恩恵を受ける“勝ち組”に分類された。カンテラ出身で、イニエスタの正統後継者と目されるMFカルレス・アレーニャもお手本となる先輩の残留がプラスに働くとされ、勝者と認められている。
その一方で、イニエスタの契約更新によりネガティブな影響を受ける可能性がある選手はこの特集で“ルーザー”と紹介されている。
中盤の盟友ブスケッツが“負け組”の理由は…
一人目はクラブOBの元スペイン代表MFシャビ・エルナンデス(アル・サッド)。スペインが誇るマエストロはバルセロナでの歴代最多出場記録(767試合)を持つが、33歳で歴代2位(639試合)の記録を持つイニエスタが生涯契約を結んだことで、記録を破られる可能性が出てきている。
二人目はMFデニス・スアレスだ。シャビの背番号6を受け継いだ逸材で、イニエスタがクラブを去ればレギュラー昇格に最も近い存在だった。19歳でまだ経験の浅いアレーニャにとってはイニエスタは最高の手本となる存在だが、すでに23歳のD・スアレスにとっては障壁になると考えられているようだ。
そして、もう一人の負け組はスペイン代表MFセルヒオ・ブスケッツ。代表チームでも長く共闘し、イニエスタとは抜群の連携を見せているが、問題となるのは守備の負担。記事ではイニエスタのポジショニングセンスは衰えていないとする一方で、フィジカル面での衰えを指摘。ブスケッツにかかる負担の大きさは増えている点を問題として挙げている。
また、選手やクラブスタッフではないが、「The Fans」ということでクラブを愛するファンたちには当然ながら“勝者”の称号が与えられている。バルサで通算30タイトルを獲得したイニエスタの残留は、多くのファンに歓喜の瞬間をもたらしている。
スペイン代表MFアンドレス・イニエスタは所属するバルセロナと生涯契約を結び、残りのキャリアを愛するクラブに捧げることが決まった。英サッカー専門メディア「Squawka」では、イニエスタの契約更改によって影響を受けるバルサ関係者を“勝者”と“敗者”に分けて特集している。
イニエスタがバルサへの忠誠を誓ったことで“ウィナー”になったのは、まずジョゼップ・マリア・バルトメウ会長だ。来夏での契約満了が迫っていたイニエスタには移籍の噂も流れたが、残留が決定。バルトメウ会長はクラブのトップとして、生え抜きの司令塔を引き留めるという大仕事を成し遂げた。
さらに貴重な戦力の維持に成功した格好となるエルネスト・バルベルデ監督、イニエスタ退団ならキャプテンとしての負担が増える可能性の大きかったFWリオネル・メッシも、その恩恵を受ける“勝ち組”に分類された。カンテラ出身で、イニエスタの正統後継者と目されるMFカルレス・アレーニャもお手本となる先輩の残留がプラスに働くとされ、勝者と認められている。
その一方で、イニエスタの契約更新によりネガティブな影響を受ける可能性がある選手はこの特集で“ルーザー”と紹介されている。
中盤の盟友ブスケッツが“負け組”の理由は…
一人目はクラブOBの元スペイン代表MFシャビ・エルナンデス(アル・サッド)。スペインが誇るマエストロはバルセロナでの歴代最多出場記録(767試合)を持つが、33歳で歴代2位(639試合)の記録を持つイニエスタが生涯契約を結んだことで、記録を破られる可能性が出てきている。
二人目はMFデニス・スアレスだ。シャビの背番号6を受け継いだ逸材で、イニエスタがクラブを去ればレギュラー昇格に最も近い存在だった。19歳でまだ経験の浅いアレーニャにとってはイニエスタは最高の手本となる存在だが、すでに23歳のD・スアレスにとっては障壁になると考えられているようだ。
そして、もう一人の負け組はスペイン代表MFセルヒオ・ブスケッツ。代表チームでも長く共闘し、イニエスタとは抜群の連携を見せているが、問題となるのは守備の負担。記事ではイニエスタのポジショニングセンスは衰えていないとする一方で、フィジカル面での衰えを指摘。ブスケッツにかかる負担の大きさは増えている点を問題として挙げている。
また、選手やクラブスタッフではないが、「The Fans」ということでクラブを愛するファンたちには当然ながら“勝者”の称号が与えられている。バルサで通算30タイトルを獲得したイニエスタの残留は、多くのファンに歓喜の瞬間をもたらしている。
2017年10月20日
世界屈指のFWやバルサ名司令塔も… 英メディア選出「文武両道のサッカー選手10人」
バルサ不動のDFはハーバード大でビジネスコース受講 ユベントス名DFは博士号取得
スポーツの競技に限らず、自らの肉体を究極まで磨き上げ、学問にも長けている“文武両道”タイプは注目される。それはサッカーでも同様で、英サッカーメディア「90min」スペイン語版では「サッカーも学業も優秀なビッグネーム10人」を選出。果たして世界的な“知性派選手”とは――。
◆ロベルト・レバンドフスキ(バイエルン・ミュンヘン/FW)
世界最高峰の1トップとして君臨するレバンドフスキは、このたび母国ワルシャワのスポーツ大学を卒業した。サッカー界から離れることなく、自身のキャリアについての論文をしたためる両立を見事に達成した。
◆ジョルジオ・キエッリーニ(ユベントス/DF)
33歳となった今でも世界最高峰のストッパーのキエッリーニ。実はトリノ大学を2010年に経営管理学の博士号を取得している。その守備力とともに、実生活でもインテリジェンスを見せつけている。
◆ジェラール・ピケ(バルセロナ/DF)
バルサ不動のセンターバックであるピケは、アメリカの有名校ハーバード大学のビジネスコースを受講したことでも知られる。ここ最近はカタルーニャ独立運動でのツイッターでの発言が物議を醸したが、かねてよりクラブ会長を目指すと公言し、有言実行でスポーツビジネスを学ぶなど、サッカー選手では唯一無二の存在と言えるだろう。
ユナイテッドの技巧派MFは弁護士視野
◆アンドレ・イニエスタ(バルセロナ/MF)
世界最高峰のゲームメーカーで知られるイニエスタだが、大学生活を両立していた時期がある。またスペインの国立教育物理研究所(INEF)にも籍を置くなど、名司令塔は今もなお学ぶ意欲を忘れていない。
◆セルジ・ロベルト(バルセロナ/MF)
バルセロナの下部組織出身選手は“文武両道”を目指すケースが多いが、ここ近年レギュラーに定着しつつあるセルジ・ロベルトもその一人だ。下部組織時代の元チームメイトとともに、企業経営を学んでいるという。
◆フアン・マタ(マンチェスター・ユナイテッド/MF)
スペイン屈指のテクニシャンであるマタも、イニエスタと同じくINEFに籍を置き、マーケティングを学んでいる。ちなみにマタのニックネームは「変人」だが、セカンドキャリアにとっては有益なものとなるだろう。
◆エステバン・グラネロ(エスパニョール/MF)
かつてレアル・マドリードに所属経験があり、攻撃の起点として評価されるグラネロ。実は大学生として心理学の学位を手にしている。相手心理を読む力が、ゲームメークにも役立っているのだろうか。
◆ヘンリク・ムヒタリアン(マンチェスター・ユナイテッド/MF)
マンチェスター・ユナイテッドきってのテクニシャンは、足元のプレーだけでなく頭脳も明晰だ。経営管理と経営に専念するだけでなく、弁護士になることを念頭に置いているのだという。
若き守護神は政治・社会学科の学位取得
◆シモン・ミニョレ(リバプール/GK)
リバプールの守護神であるミニョレは、政治・社会科学の学位を取得している。GKで29歳ということもあって現役生活はまだまだ長そうだが、引退後にはサッカーとは違う立場で何かを成し遂げる立場になるかもしれない。
◆マヌエル・エレーラ(オサスナ/GK)
36歳のベテランGKは、ベティス、レバンテ、サラゴサなどのクラブでプロ生活10年以上を送っていたが、経済に明るく、セカンドキャリアも安定した道を歩むと見られている。
紹介されたビッグネーム10人だけでなく、日本でも大学に通いながらプロサッカー選手としての実績を残している選手は多い。文武両道選手が注目されるのは、洋の東西を問わないようだ。
スポーツの競技に限らず、自らの肉体を究極まで磨き上げ、学問にも長けている“文武両道”タイプは注目される。それはサッカーでも同様で、英サッカーメディア「90min」スペイン語版では「サッカーも学業も優秀なビッグネーム10人」を選出。果たして世界的な“知性派選手”とは――。
◆ロベルト・レバンドフスキ(バイエルン・ミュンヘン/FW)
世界最高峰の1トップとして君臨するレバンドフスキは、このたび母国ワルシャワのスポーツ大学を卒業した。サッカー界から離れることなく、自身のキャリアについての論文をしたためる両立を見事に達成した。
◆ジョルジオ・キエッリーニ(ユベントス/DF)
33歳となった今でも世界最高峰のストッパーのキエッリーニ。実はトリノ大学を2010年に経営管理学の博士号を取得している。その守備力とともに、実生活でもインテリジェンスを見せつけている。
◆ジェラール・ピケ(バルセロナ/DF)
バルサ不動のセンターバックであるピケは、アメリカの有名校ハーバード大学のビジネスコースを受講したことでも知られる。ここ最近はカタルーニャ独立運動でのツイッターでの発言が物議を醸したが、かねてよりクラブ会長を目指すと公言し、有言実行でスポーツビジネスを学ぶなど、サッカー選手では唯一無二の存在と言えるだろう。
ユナイテッドの技巧派MFは弁護士視野
◆アンドレ・イニエスタ(バルセロナ/MF)
世界最高峰のゲームメーカーで知られるイニエスタだが、大学生活を両立していた時期がある。またスペインの国立教育物理研究所(INEF)にも籍を置くなど、名司令塔は今もなお学ぶ意欲を忘れていない。
◆セルジ・ロベルト(バルセロナ/MF)
バルセロナの下部組織出身選手は“文武両道”を目指すケースが多いが、ここ近年レギュラーに定着しつつあるセルジ・ロベルトもその一人だ。下部組織時代の元チームメイトとともに、企業経営を学んでいるという。
◆フアン・マタ(マンチェスター・ユナイテッド/MF)
スペイン屈指のテクニシャンであるマタも、イニエスタと同じくINEFに籍を置き、マーケティングを学んでいる。ちなみにマタのニックネームは「変人」だが、セカンドキャリアにとっては有益なものとなるだろう。
◆エステバン・グラネロ(エスパニョール/MF)
かつてレアル・マドリードに所属経験があり、攻撃の起点として評価されるグラネロ。実は大学生として心理学の学位を手にしている。相手心理を読む力が、ゲームメークにも役立っているのだろうか。
◆ヘンリク・ムヒタリアン(マンチェスター・ユナイテッド/MF)
マンチェスター・ユナイテッドきってのテクニシャンは、足元のプレーだけでなく頭脳も明晰だ。経営管理と経営に専念するだけでなく、弁護士になることを念頭に置いているのだという。
若き守護神は政治・社会学科の学位取得
◆シモン・ミニョレ(リバプール/GK)
リバプールの守護神であるミニョレは、政治・社会科学の学位を取得している。GKで29歳ということもあって現役生活はまだまだ長そうだが、引退後にはサッカーとは違う立場で何かを成し遂げる立場になるかもしれない。
◆マヌエル・エレーラ(オサスナ/GK)
36歳のベテランGKは、ベティス、レバンテ、サラゴサなどのクラブでプロ生活10年以上を送っていたが、経済に明るく、セカンドキャリアも安定した道を歩むと見られている。
紹介されたビッグネーム10人だけでなく、日本でも大学に通いながらプロサッカー選手としての実績を残している選手は多い。文武両道選手が注目されるのは、洋の東西を問わないようだ。
2017年10月18日
31歳で突然変異か。フットサルFリーグ 9年ぶりの日本出身得点王へ
11年目のFリーグに、ふたつの異変が起きている。
ひとつは、毎年のように下位に沈んでいた湘南ベルマーレの好調ぶり。過去プレーオフに一度も進出したことのない湘南だが、今季は第20節を終えて3位と好位置につけている。
得点ランキングでトップを走る府中アスレティックFCの渡邉知晃
そしてもうひとつの大きな変化は、得点ランキングに表れている。今季得点ランクを牽引しているのは、府中アスレティックFCに所属する日本代表FP(フィールドプレーヤー)の渡邉知晃だ。
Fリーグは開幕初年度の2007−2008シーズンにFP横江怜(よこえ・れお/ペスカドーラ町田)、2年目にFP稲田祐介(当時・バルドラール浦安)が得点王に輝いて以降は、外国籍選手あるいは帰化選手が常にランキングトップにいた。しかし今季は第20節終了現在、渡邉は28ゴールで2位のFPロドリゴ(湘南)に6得点差で得点ランキング1位に立っている。そのため、9シーズンぶり3度目となる純日本人得点王の誕生に大きな注目が集まっているのだ。
2009年に初めてFリーグのピッチに立った渡邉は、今シーズン開幕までの8シーズンで計105ゴールを積み重ねていた。1シーズンあたり平均約13ゴールを挙げている計算で、キャリアハイは2013−2014シーズンの18得点。最前線のピヴォでプレーし、ボレーシュートの技術はリーグ屈指。決勝などのビッグゲームにもめっぽう強い。
とはいえ、ここまでの大爆発ぶりはチームにとってもうれしい誤算だろう。なにせシーズン開幕前に谷本俊介監督と立てていた目標は20得点。その目標を早々に達成したあとも、このままいけば年間50得点という驚異的なペースでゴールを量産し続けている。Fリーグの年間最多ゴール記録は2015−2016シーズンFPヴィニシウス(シュライカー大阪)が打ち立てた年間48ゴール。この記録の更新さえも狙える勢いだ。
なぜ今季の渡邉は、キャリア平均4倍ものハイペースでゴールを決め続けることができているのか。日本代表でも一緒にプレーするチームメイトのFP皆本晃は、渡邉の変化をこう指摘する。
「反転シュートは明らかに増えました。昨シーズンは反転して決めたゴールは1点か2点しかなかったのが、今年はけっこう増えています。チームで(反転シュートを増やしていこうと)話したわけでもないので、『意外と反転するんだな』と驚いたくらい」
31歳のピヴォの進化を、ゴール数が増加した理由に挙げた。
FP完山徹一は「特別にボールを集めようとしているわけではないですし、トモ(渡邉)に点を獲らせようとか、何かを変えたということはないんですよね」と首をかしげる。そして「強烈なミドルシュートを打つとか、そういう選手ではないのですが、点を獲る場所に顔を出して決めてくれている印象はあります」と続けた。
また、FP柴田祐輔は渡邉のゴールへの意欲が変わったと証言する。「ゴールに対して、より貪欲になったのかなと思います。ゴールに対する執着心が見えるし、実際に得点も決めてくれている。それによって、よりパスが集まっていると思います」と、好循環が起きているようだ。
渡邉の変化について、チームを率いる谷本監督はいくつかの要因が重なっていると説明する。
「今季はプレシーズンからしっかりチームと一緒に時間を過ごせているなかで、味方との細かなコンビネーションがちゃんとできているのがひとつ。また、出場時間も伸びている。あとは、彼を生かそうとする周りの働きもあるでしょう。セットプレーも含めて、彼がどう生きるかを考えて組んでいるところもあります。もちろん彼も努力をしていますし、どうすればコンスタントに点を獲れるかを突きつめて考えていると思う。いろいろなバランスが取れているのが一番だと思います」
3シーズン前に名古屋オーシャンズから加入した渡邉だが、実はまだシーズンを通して府中でプレーをしたことがない。加入1シーズン目は、中国のプロチームからオファーを受けてシーズン途中で移籍。2シーズン目も、そのクラブがAFCフットサルクラブ選手権に出場する際、アジア人枠の助っ人として大会限定で期限付き移籍したからだ。
監督が要因のひとつとして挙げたセットプレーについては、本来はボレーのうまい渡邉を中心に戦術を組み立てたくても、シーズン途中でいなくなることがわかっていたので、昨季まではそれができなかった。しかし、今季はシーズン開幕前から一度もチームを離れていないため、渡邉を軸としたセットプレーができるようになり、チームメイトとの連係面も向上したという。また、同じピヴォのFP小山剛史の退団やFP三井健の負傷によって出場時間が増えたことも、ゴールラッシュの一助となっているようだ。
では、渡邉自身はどのように感じているのか。キーワードは「意識」だった。
「(得点の)バリエーションが増えたことは間違いないと思います。今シーズンは反転シュートから5〜6点は獲っていますからね。でも、特別な練習をしたというより、意識の問題だと思います。
ピヴォでボールを受けたとき、周りを生かすプレーのほうが好きだし、得意でした。(昨季までは)自分にボールが入るなと思ってトラップしたとき、いい落としをして点を獲らせることを最初に考えていたんです。そうすると反転シュートを打つときに2〜3秒遅れてしまうので、その間に相手に守備を整えられてしまっていた。でも、今年はボールをもらった瞬間に『反転してやろう』『自分で行こう』と瞬間的に思うようになったんです」
ボールを受けたときの選択肢が変わったことを、渡邉は明かした。
誰がゴールを決めても、1点は1点だ。これまで自分で点を獲りにいくことよりも、周囲に点を獲らせることを意識していた渡邉だが、今季は「俺が獲らないと勝てない」と思うようになったという。
「ゴールという目に見える形で、自分の存在価値を示したいんです。これまでは1試合のなかで1点獲れば『自分の仕事はできた』と思ってしまう部分があったのですが、今は2点目、3点目も決めたいと思うようになりました。
(皆本)晃とも代表合宿のときに話をしたのですが、長年チームにいた(小山)剛史くんもいなくなって、これからは俺と晃が府中の中心になっていくのは間違いありません。これで府中が下位争いしていたら、『皆本も渡邉も大したことないな』と思われてしまいます。
現在、府中にはGKクロモト、FPマルキーニョと外国人選手もいますが、年間30点、40点も獲ってくれる選手ではない。そうなったとき、俺や晃が助っ人外国人と同じ活躍をしないと府中は優勝できないし、上位にもいけない。だから、俺が点を獲らないといけないんです」
振り返れば、渡邉はそのキャリアのなかで「チームの絶対的なエース」という立ち位置にいたことがなかった。名古屋では外国籍選手やFリーグで4度の得点王に輝いた森岡薫(現・町田)がおり、日本代表でも森岡、高橋健介(浦安監督)、星翔太(浦安)といった選手たちがファーストチョイスだった。
責任ある「エースの座」を与えられたことで、渡邉の秘めていた能力が開花したのかもしれない。シーズンを折り返した今も「まだ半分、終わっただけだから」と語る府中の13番は、得点王を意識することなく、本能のままにゴールを求めていく。
ひとつは、毎年のように下位に沈んでいた湘南ベルマーレの好調ぶり。過去プレーオフに一度も進出したことのない湘南だが、今季は第20節を終えて3位と好位置につけている。
得点ランキングでトップを走る府中アスレティックFCの渡邉知晃
そしてもうひとつの大きな変化は、得点ランキングに表れている。今季得点ランクを牽引しているのは、府中アスレティックFCに所属する日本代表FP(フィールドプレーヤー)の渡邉知晃だ。
Fリーグは開幕初年度の2007−2008シーズンにFP横江怜(よこえ・れお/ペスカドーラ町田)、2年目にFP稲田祐介(当時・バルドラール浦安)が得点王に輝いて以降は、外国籍選手あるいは帰化選手が常にランキングトップにいた。しかし今季は第20節終了現在、渡邉は28ゴールで2位のFPロドリゴ(湘南)に6得点差で得点ランキング1位に立っている。そのため、9シーズンぶり3度目となる純日本人得点王の誕生に大きな注目が集まっているのだ。
2009年に初めてFリーグのピッチに立った渡邉は、今シーズン開幕までの8シーズンで計105ゴールを積み重ねていた。1シーズンあたり平均約13ゴールを挙げている計算で、キャリアハイは2013−2014シーズンの18得点。最前線のピヴォでプレーし、ボレーシュートの技術はリーグ屈指。決勝などのビッグゲームにもめっぽう強い。
とはいえ、ここまでの大爆発ぶりはチームにとってもうれしい誤算だろう。なにせシーズン開幕前に谷本俊介監督と立てていた目標は20得点。その目標を早々に達成したあとも、このままいけば年間50得点という驚異的なペースでゴールを量産し続けている。Fリーグの年間最多ゴール記録は2015−2016シーズンFPヴィニシウス(シュライカー大阪)が打ち立てた年間48ゴール。この記録の更新さえも狙える勢いだ。
なぜ今季の渡邉は、キャリア平均4倍ものハイペースでゴールを決め続けることができているのか。日本代表でも一緒にプレーするチームメイトのFP皆本晃は、渡邉の変化をこう指摘する。
「反転シュートは明らかに増えました。昨シーズンは反転して決めたゴールは1点か2点しかなかったのが、今年はけっこう増えています。チームで(反転シュートを増やしていこうと)話したわけでもないので、『意外と反転するんだな』と驚いたくらい」
31歳のピヴォの進化を、ゴール数が増加した理由に挙げた。
FP完山徹一は「特別にボールを集めようとしているわけではないですし、トモ(渡邉)に点を獲らせようとか、何かを変えたということはないんですよね」と首をかしげる。そして「強烈なミドルシュートを打つとか、そういう選手ではないのですが、点を獲る場所に顔を出して決めてくれている印象はあります」と続けた。
また、FP柴田祐輔は渡邉のゴールへの意欲が変わったと証言する。「ゴールに対して、より貪欲になったのかなと思います。ゴールに対する執着心が見えるし、実際に得点も決めてくれている。それによって、よりパスが集まっていると思います」と、好循環が起きているようだ。
渡邉の変化について、チームを率いる谷本監督はいくつかの要因が重なっていると説明する。
「今季はプレシーズンからしっかりチームと一緒に時間を過ごせているなかで、味方との細かなコンビネーションがちゃんとできているのがひとつ。また、出場時間も伸びている。あとは、彼を生かそうとする周りの働きもあるでしょう。セットプレーも含めて、彼がどう生きるかを考えて組んでいるところもあります。もちろん彼も努力をしていますし、どうすればコンスタントに点を獲れるかを突きつめて考えていると思う。いろいろなバランスが取れているのが一番だと思います」
3シーズン前に名古屋オーシャンズから加入した渡邉だが、実はまだシーズンを通して府中でプレーをしたことがない。加入1シーズン目は、中国のプロチームからオファーを受けてシーズン途中で移籍。2シーズン目も、そのクラブがAFCフットサルクラブ選手権に出場する際、アジア人枠の助っ人として大会限定で期限付き移籍したからだ。
監督が要因のひとつとして挙げたセットプレーについては、本来はボレーのうまい渡邉を中心に戦術を組み立てたくても、シーズン途中でいなくなることがわかっていたので、昨季まではそれができなかった。しかし、今季はシーズン開幕前から一度もチームを離れていないため、渡邉を軸としたセットプレーができるようになり、チームメイトとの連係面も向上したという。また、同じピヴォのFP小山剛史の退団やFP三井健の負傷によって出場時間が増えたことも、ゴールラッシュの一助となっているようだ。
では、渡邉自身はどのように感じているのか。キーワードは「意識」だった。
「(得点の)バリエーションが増えたことは間違いないと思います。今シーズンは反転シュートから5〜6点は獲っていますからね。でも、特別な練習をしたというより、意識の問題だと思います。
ピヴォでボールを受けたとき、周りを生かすプレーのほうが好きだし、得意でした。(昨季までは)自分にボールが入るなと思ってトラップしたとき、いい落としをして点を獲らせることを最初に考えていたんです。そうすると反転シュートを打つときに2〜3秒遅れてしまうので、その間に相手に守備を整えられてしまっていた。でも、今年はボールをもらった瞬間に『反転してやろう』『自分で行こう』と瞬間的に思うようになったんです」
ボールを受けたときの選択肢が変わったことを、渡邉は明かした。
誰がゴールを決めても、1点は1点だ。これまで自分で点を獲りにいくことよりも、周囲に点を獲らせることを意識していた渡邉だが、今季は「俺が獲らないと勝てない」と思うようになったという。
「ゴールという目に見える形で、自分の存在価値を示したいんです。これまでは1試合のなかで1点獲れば『自分の仕事はできた』と思ってしまう部分があったのですが、今は2点目、3点目も決めたいと思うようになりました。
(皆本)晃とも代表合宿のときに話をしたのですが、長年チームにいた(小山)剛史くんもいなくなって、これからは俺と晃が府中の中心になっていくのは間違いありません。これで府中が下位争いしていたら、『皆本も渡邉も大したことないな』と思われてしまいます。
現在、府中にはGKクロモト、FPマルキーニョと外国人選手もいますが、年間30点、40点も獲ってくれる選手ではない。そうなったとき、俺や晃が助っ人外国人と同じ活躍をしないと府中は優勝できないし、上位にもいけない。だから、俺が点を獲らないといけないんです」
振り返れば、渡邉はそのキャリアのなかで「チームの絶対的なエース」という立ち位置にいたことがなかった。名古屋では外国籍選手やFリーグで4度の得点王に輝いた森岡薫(現・町田)がおり、日本代表でも森岡、高橋健介(浦安監督)、星翔太(浦安)といった選手たちがファーストチョイスだった。
責任ある「エースの座」を与えられたことで、渡邉の秘めていた能力が開花したのかもしれない。シーズンを折り返した今も「まだ半分、終わっただけだから」と語る府中の13番は、得点王を意識することなく、本能のままにゴールを求めていく。
2017年10月17日
ポドルスキはシュート1本。 ヴィッセルは世界的クラブになれるのか
眠気を誘う凡戦だった。そう書いたら、90分間走り抜いた両チームの選手に対して失礼だろうか。
それでも、浦和レッズとヴィッセル神戸の一戦は、お世辞にも「面白かった」と満足できる戦いではなかったことだけは主張しておこう。
浦和戦のポドルスキはわずかシュート1本に終わった
エクスキューズはある。浦和はすでにリーグ優勝の可能性が潰(つい)えており、来季のAFCチャンピオンズリーグ(ACL)の出場権確保も厳しくなっている。しかも、4日後には上海上港をホームに迎えるACL準決勝の大一番を控えているのだ。「選手たちが次の試合(ACL)に向けて力を温存したということはなかったと思っている」と堀孝史監督は否定したが、何もかかっていないリーグ戦に対するモチベーションを見出しにくかったのは確かだろう。
一方の神戸も、優勝争いにも、残留争いにも絡んでおらず、「何もかかっていない」試合であったのは同じだ。「消化試合だった」とは言わないものの、シーズン終盤に見られる中位同士の一戦にありがちな戦いだった。
両チームには共通項がある。補強により戦力を増して今季に臨み、優勝候補に挙げられながら、成績不振でシーズン途中に監督を交代。しかも、いずれもコーチからの昇格人事で、あくまで”暫定”の色合いはぬぐえない。新たなスタイルの構築へ向けて試行錯誤の段階ながら、新監督を招聘することが濃厚な来季に向けては、継続性を望めない。それでも、浦和にはアジア制覇という明確な目標があるものの、神戸にはそうした目的が存在しない。その意味で、よりモチベーションを見出しにくい状況にあったのは、神戸のほうだっただろう。
ところが面白いことに、ここ最近の神戸は好転の気配を示している。直近の4試合では3勝1分。しかも、うち3試合は無失点と、安定感抜群の戦いを見せているのだ。
そこには、ネルシーニョ監督の後を受け、第23節から指揮を執る吉田孝行監督の功績が大きい。
初陣となった横浜F・マリノス戦、続くジュビロ磐田戦では勝利を得られなかったが、第25節のガンバ大阪戦で初勝利を掴むと、北海道コンサドーレ札幌も撃破。攻撃力を誇る川崎フロンターレには勝ち切れなかったもののスコアレスドローを演じ、アルビレックス新潟には快勝を収めている。
現役時代はストライカーとしてならした吉田監督だが、再建のポイントは守備にあるようだ。プレスとブロックのバランスを保ち、相手に隙を与えない戦いを実践。一方で攻撃も縦一本にはならず、つなげるときはしっかりとボールを大事にする。この浦和戦でも、神戸のそうしたよさはしっかりと打ち出されていた。
吉田監督がもうひとつ、チームに求めているのは「裏抜け」だ。その要求に答えたのが、FW小川慶治朗だった。開始4分、GKキム・スンギュのロングフィード1本に抜け出すと、西川周作との1対1を制して見事に先制ゴールを奪っている。
「常に裏を狙えという指示は出ているし、そこは自分の特徴だと思うので、そういうところを出せたゴールだったと思います」
本人も胸を張る、電光石火の一撃だった。
もっともその頻度は決して高くなく、その後は決定的なチャンスをほとんど作れなかった。つなぎの意識は高く、ポゼッションで浦和を上回る時間帯もあったが、ディフェンスラインの背後を取る動きに欠け、相手に脅威を与えられず。注目のFWルーカス・ポドルスキもボールを受けに中盤に下がる機会が多く、ゴール近くでのプレーは限られた。
このポドルスキをはじめ、小川、FW渡邉千真、FW田中順也ら前線にリーグ屈指のタレントが揃っているものの、攻撃での迫力を生み出せないのが、今の神戸の課題だろう。
「ボールは持てているが、そのあとに何が起きているのかというところで、浦和の場合はポゼッションしながら必ず背後を狙ったり、目的を持ってやっている。自分たちはまだそこが足りない。小川(慶治朗)が裏を取ったような形をもっと目的を持ってやれば、よりよいサッカーができると思う」
吉田監督も現状の課題をそう吐露している。
試合は19分に同点ゴールを奪われ、1−1の引き分けに終わった。もっとも、本調子とは言えないながらも浦和相手に互角の戦いを演じられたのは、神戸にとっては悪くない結果だった。
試合後、ポドルスキに前体制との変化を聞くと、「どこかひとつが変わったわけではないので、細かく言うことはできない。ただ、足りないところもあるが、今、我々が結果を出しているという事実を見てもらいたい」と返された。
手応えがあるのか、あるいは不満を抱いているのか。うまくあしらわれてしまった感は否めないが、ただ、その表情からはシュートわずか1本に終わった自身のパフォーマンスに満足していないことだけはうかがえた。
結局、眠気を覚えた要因は両チームが置かれた状況よりも、そのスタイル――つまりリスクを取れなかった点にある。それは神戸だけでなく、浦和も同様だ。ともに体制変更後に、バランスを整え、勝ち点を積み上げられるようになってきた一方で、本来の魅力や迫力は失われてしまった。とりわけ神戸には、その傾向がより色濃く反映されていた。
「守備がよくなったし、いいチームになっていると思う。でも、怖さはなかった」
浦和のとある選手の神戸評だ。
ビッグネームを獲得し、世界に通じるチームを作り上げる。そんな壮大な目標を掲げるクラブとしては、「いいチーム」では物足りない。来季に向けてさらなる補強が噂されるなか、神戸ははっきりとしたカラーを打ち出し、「怖いチーム」へと変貌できるだろうか。
それでも、浦和レッズとヴィッセル神戸の一戦は、お世辞にも「面白かった」と満足できる戦いではなかったことだけは主張しておこう。
浦和戦のポドルスキはわずかシュート1本に終わった
エクスキューズはある。浦和はすでにリーグ優勝の可能性が潰(つい)えており、来季のAFCチャンピオンズリーグ(ACL)の出場権確保も厳しくなっている。しかも、4日後には上海上港をホームに迎えるACL準決勝の大一番を控えているのだ。「選手たちが次の試合(ACL)に向けて力を温存したということはなかったと思っている」と堀孝史監督は否定したが、何もかかっていないリーグ戦に対するモチベーションを見出しにくかったのは確かだろう。
一方の神戸も、優勝争いにも、残留争いにも絡んでおらず、「何もかかっていない」試合であったのは同じだ。「消化試合だった」とは言わないものの、シーズン終盤に見られる中位同士の一戦にありがちな戦いだった。
両チームには共通項がある。補強により戦力を増して今季に臨み、優勝候補に挙げられながら、成績不振でシーズン途中に監督を交代。しかも、いずれもコーチからの昇格人事で、あくまで”暫定”の色合いはぬぐえない。新たなスタイルの構築へ向けて試行錯誤の段階ながら、新監督を招聘することが濃厚な来季に向けては、継続性を望めない。それでも、浦和にはアジア制覇という明確な目標があるものの、神戸にはそうした目的が存在しない。その意味で、よりモチベーションを見出しにくい状況にあったのは、神戸のほうだっただろう。
ところが面白いことに、ここ最近の神戸は好転の気配を示している。直近の4試合では3勝1分。しかも、うち3試合は無失点と、安定感抜群の戦いを見せているのだ。
そこには、ネルシーニョ監督の後を受け、第23節から指揮を執る吉田孝行監督の功績が大きい。
初陣となった横浜F・マリノス戦、続くジュビロ磐田戦では勝利を得られなかったが、第25節のガンバ大阪戦で初勝利を掴むと、北海道コンサドーレ札幌も撃破。攻撃力を誇る川崎フロンターレには勝ち切れなかったもののスコアレスドローを演じ、アルビレックス新潟には快勝を収めている。
現役時代はストライカーとしてならした吉田監督だが、再建のポイントは守備にあるようだ。プレスとブロックのバランスを保ち、相手に隙を与えない戦いを実践。一方で攻撃も縦一本にはならず、つなげるときはしっかりとボールを大事にする。この浦和戦でも、神戸のそうしたよさはしっかりと打ち出されていた。
吉田監督がもうひとつ、チームに求めているのは「裏抜け」だ。その要求に答えたのが、FW小川慶治朗だった。開始4分、GKキム・スンギュのロングフィード1本に抜け出すと、西川周作との1対1を制して見事に先制ゴールを奪っている。
「常に裏を狙えという指示は出ているし、そこは自分の特徴だと思うので、そういうところを出せたゴールだったと思います」
本人も胸を張る、電光石火の一撃だった。
もっともその頻度は決して高くなく、その後は決定的なチャンスをほとんど作れなかった。つなぎの意識は高く、ポゼッションで浦和を上回る時間帯もあったが、ディフェンスラインの背後を取る動きに欠け、相手に脅威を与えられず。注目のFWルーカス・ポドルスキもボールを受けに中盤に下がる機会が多く、ゴール近くでのプレーは限られた。
このポドルスキをはじめ、小川、FW渡邉千真、FW田中順也ら前線にリーグ屈指のタレントが揃っているものの、攻撃での迫力を生み出せないのが、今の神戸の課題だろう。
「ボールは持てているが、そのあとに何が起きているのかというところで、浦和の場合はポゼッションしながら必ず背後を狙ったり、目的を持ってやっている。自分たちはまだそこが足りない。小川(慶治朗)が裏を取ったような形をもっと目的を持ってやれば、よりよいサッカーができると思う」
吉田監督も現状の課題をそう吐露している。
試合は19分に同点ゴールを奪われ、1−1の引き分けに終わった。もっとも、本調子とは言えないながらも浦和相手に互角の戦いを演じられたのは、神戸にとっては悪くない結果だった。
試合後、ポドルスキに前体制との変化を聞くと、「どこかひとつが変わったわけではないので、細かく言うことはできない。ただ、足りないところもあるが、今、我々が結果を出しているという事実を見てもらいたい」と返された。
手応えがあるのか、あるいは不満を抱いているのか。うまくあしらわれてしまった感は否めないが、ただ、その表情からはシュートわずか1本に終わった自身のパフォーマンスに満足していないことだけはうかがえた。
結局、眠気を覚えた要因は両チームが置かれた状況よりも、そのスタイル――つまりリスクを取れなかった点にある。それは神戸だけでなく、浦和も同様だ。ともに体制変更後に、バランスを整え、勝ち点を積み上げられるようになってきた一方で、本来の魅力や迫力は失われてしまった。とりわけ神戸には、その傾向がより色濃く反映されていた。
「守備がよくなったし、いいチームになっていると思う。でも、怖さはなかった」
浦和のとある選手の神戸評だ。
ビッグネームを獲得し、世界に通じるチームを作り上げる。そんな壮大な目標を掲げるクラブとしては、「いいチーム」では物足りない。来季に向けてさらなる補強が噂されるなか、神戸ははっきりとしたカラーを打ち出し、「怖いチーム」へと変貌できるだろうか。
2017年09月21日
2017年09月18日
先制ゴールの浅野拓磨、若い世代の躍進誓う「上の世代を脅かしていきたい」
先制ゴールを決めた日本代表FW浅野拓磨がフラッシュインタビューに応じた。
2018 FIFAワールドカップロシア アジア最終予選 第9戦が31日に行われ、日本代表は埼玉スタジアム2002でグループB3位のオーストラリア代表と対戦した。日本は浅野拓磨と井手口陽介のゴールにより2‐0で勝利し、ロシア・ワールドカップへの出場権を獲得。6大会連続で、本大会への切符を勝ち取った。
試合後のフラッシュインタビューで、先制ゴールを決めた浅野拓磨は以下のように語った。
右ウイングで先発出場。41分、相手ディフェンスラインの裏に飛び出し、左足で合わせてゴールを決めた。このシーンについて聞かれると、「ありがとうございます。逆サイドでボールを持った時に狙っていたので。
(長友)佑都さんがいいボールを上げてくれたので、あわせるだけでした」と、左サイドバックの長友からのクロスのおかげだと答えた。スピードを生かし、何度も突破を見せていたことについては「それが僕の特徴。勝利に貢献したいと思っていたので良かったです」と話した。
2017年09月14日
杉本健勇が明かす残留への思い…海外移籍報道も「気持ちの整理はついていた」
日本代表は1日、さいたま市内でロシア・ワールドカップアジア最終予選サウジアラビア戦へ向けて練習を行った。FW杉本健勇が取材に応じ、海外移籍について胸の内を明かしている。
8月31日に行われたオーストラリア戦ではベンチ外となった杉本だが、「もう競争は始まっていると思う」と話し、サウジアラビア戦での活躍を誓っている。
「試合に出たらやってやろうという気持ちです。(豪州戦では)俺よりも年下の奴らがああやって活躍しているわけですから、俺らもやらなきゃいけないですし、俺らもあいつらに負けたらあかんと思いますしね」
また、1日になったことで欧州リーグの多くの移籍市場が閉鎖。先月にはスペイン方面から関心があると報じられながら、言及を避けてきた杉本は、セレッソ大阪残留を心に決めていたと初めて明かしている。
「気持ちの整理はついていました。こっち(代表へ)来る前くらいですかね。もっと早く決まっていたんですけどね。でも代表もあったし、タイミングも…」
「心もやし、セレッソに残るっていうのは決まっていたので、セレッソにおったら(残ると)言っていましたけど、タイミング的にちょっと(笑)」
さらに、「一年を通してJリーグで活躍したい」と思いを述べた杉本が、求めるものはただ一つ。タイトルだ。
「タイトルを取りたいですね。ルヴァンカップもこの前勝ちはできませんでしたけど、アウェイで勝ってくれることを見ています。何でもいいけど、タイトルほしいですね。一番はJリーグですけど」
8月31日に行われたオーストラリア戦ではベンチ外となった杉本だが、「もう競争は始まっていると思う」と話し、サウジアラビア戦での活躍を誓っている。
「試合に出たらやってやろうという気持ちです。(豪州戦では)俺よりも年下の奴らがああやって活躍しているわけですから、俺らもやらなきゃいけないですし、俺らもあいつらに負けたらあかんと思いますしね」
また、1日になったことで欧州リーグの多くの移籍市場が閉鎖。先月にはスペイン方面から関心があると報じられながら、言及を避けてきた杉本は、セレッソ大阪残留を心に決めていたと初めて明かしている。
「気持ちの整理はついていました。こっち(代表へ)来る前くらいですかね。もっと早く決まっていたんですけどね。でも代表もあったし、タイミングも…」
「心もやし、セレッソに残るっていうのは決まっていたので、セレッソにおったら(残ると)言っていましたけど、タイミング的にちょっと(笑)」
さらに、「一年を通してJリーグで活躍したい」と思いを述べた杉本が、求めるものはただ一つ。タイトルだ。
「タイトルを取りたいですね。ルヴァンカップもこの前勝ちはできませんでしたけど、アウェイで勝ってくれることを見ています。何でもいいけど、タイトルほしいですね。一番はJリーグですけど」
2017年09月11日
【ハリルJ選考理由・MF】長谷部と柴崎の復帰「うれしい」 香川は合宿で判断
日本サッカー協会が24日、ロシアW杯アジア最終予選のオーストラリア戦(31日、埼玉スタジアム2002)とサウジアラビア戦(9月5日、ジッダ)に出場する日本代表メンバー27人を発表した。ここでは会見でのバヒド・ハリルホジッチ監督の発言を元に、各ポジションの選考理由についてまとめた。MFは3月に右膝の手術を受けた長谷部誠(E・フランクフルト)が復帰。柴崎岳(ヘタフェ)も約2年ぶりの代表招集となった。
▽守備的MF 長谷部誠(E・フランクフルト)、山口蛍(C大阪)、井手口陽介(G大阪)、高萩洋次郎(FC東京)
日本代表の主将を務めてきた長谷部について、監督は「復帰したことはうれしい」と思いを語った。所属クラブでもドイツリーグ開幕戦でDFでフル出場している。「もしかしたら多すぎるというぐらいゲームをプレーしていますので、少し体を休ませながらコンディションを取り戻してもらいたいと思います」と注意深く日本代表に迎え入れる意向だ。
山口については「より攻撃のプレーを見せてもらいたい」。井手口は「我々が選手を見て評価しますけど、常に最も高い評価を得ています」と好調をキープできていると評価した。また、「まだ若い選手ですけど、自分を表現する場を与えることを私は恐れていません」とも語った。
高萩については「守備の面で修正点がいくつかあるかもしれません」とも話したが、「視野の広さを持っていて海外でプレーした経験もあります」と経験値を重視した。
▽攻撃的MF 小林祐希(ヘーレンフェーン)、柴崎岳(ヘタフェ)、香川真司(ドルトムント)
香川は6月7日のシリア戦で左肩を脱臼したが、「今、コンディションを取り戻しているところです」と見ている。
「彼の状態を直接見てどうするのかを決めていきたい」と合宿の動きから起用の可否を判断する。
小林は「彼はレギュラーとして、出続けていますし、そういった海外でのリズムにも慣れています。性格も強いです。
プレッシャーにも順応できると思います」と強気な性格にも期待。柴崎についても「ここ最近2試合をチェックして、非常に興味深い。彼の復帰はうれしいです」と好調をキープできていると分析した。
▽守備的MF 長谷部誠(E・フランクフルト)、山口蛍(C大阪)、井手口陽介(G大阪)、高萩洋次郎(FC東京)
日本代表の主将を務めてきた長谷部について、監督は「復帰したことはうれしい」と思いを語った。所属クラブでもドイツリーグ開幕戦でDFでフル出場している。「もしかしたら多すぎるというぐらいゲームをプレーしていますので、少し体を休ませながらコンディションを取り戻してもらいたいと思います」と注意深く日本代表に迎え入れる意向だ。
山口については「より攻撃のプレーを見せてもらいたい」。井手口は「我々が選手を見て評価しますけど、常に最も高い評価を得ています」と好調をキープできていると評価した。また、「まだ若い選手ですけど、自分を表現する場を与えることを私は恐れていません」とも語った。
高萩については「守備の面で修正点がいくつかあるかもしれません」とも話したが、「視野の広さを持っていて海外でプレーした経験もあります」と経験値を重視した。
▽攻撃的MF 小林祐希(ヘーレンフェーン)、柴崎岳(ヘタフェ)、香川真司(ドルトムント)
香川は6月7日のシリア戦で左肩を脱臼したが、「今、コンディションを取り戻しているところです」と見ている。
「彼の状態を直接見てどうするのかを決めていきたい」と合宿の動きから起用の可否を判断する。
小林は「彼はレギュラーとして、出続けていますし、そういった海外でのリズムにも慣れています。性格も強いです。
プレッシャーにも順応できると思います」と強気な性格にも期待。柴崎についても「ここ最近2試合をチェックして、非常に興味深い。彼の復帰はうれしいです」と好調をキープできていると分析した。