2017年10月17日
ポドルスキはシュート1本。 ヴィッセルは世界的クラブになれるのか
眠気を誘う凡戦だった。そう書いたら、90分間走り抜いた両チームの選手に対して失礼だろうか。
それでも、浦和レッズとヴィッセル神戸の一戦は、お世辞にも「面白かった」と満足できる戦いではなかったことだけは主張しておこう。
浦和戦のポドルスキはわずかシュート1本に終わった
エクスキューズはある。浦和はすでにリーグ優勝の可能性が潰(つい)えており、来季のAFCチャンピオンズリーグ(ACL)の出場権確保も厳しくなっている。しかも、4日後には上海上港をホームに迎えるACL準決勝の大一番を控えているのだ。「選手たちが次の試合(ACL)に向けて力を温存したということはなかったと思っている」と堀孝史監督は否定したが、何もかかっていないリーグ戦に対するモチベーションを見出しにくかったのは確かだろう。
一方の神戸も、優勝争いにも、残留争いにも絡んでおらず、「何もかかっていない」試合であったのは同じだ。「消化試合だった」とは言わないものの、シーズン終盤に見られる中位同士の一戦にありがちな戦いだった。
両チームには共通項がある。補強により戦力を増して今季に臨み、優勝候補に挙げられながら、成績不振でシーズン途中に監督を交代。しかも、いずれもコーチからの昇格人事で、あくまで”暫定”の色合いはぬぐえない。新たなスタイルの構築へ向けて試行錯誤の段階ながら、新監督を招聘することが濃厚な来季に向けては、継続性を望めない。それでも、浦和にはアジア制覇という明確な目標があるものの、神戸にはそうした目的が存在しない。その意味で、よりモチベーションを見出しにくい状況にあったのは、神戸のほうだっただろう。
ところが面白いことに、ここ最近の神戸は好転の気配を示している。直近の4試合では3勝1分。しかも、うち3試合は無失点と、安定感抜群の戦いを見せているのだ。
そこには、ネルシーニョ監督の後を受け、第23節から指揮を執る吉田孝行監督の功績が大きい。
初陣となった横浜F・マリノス戦、続くジュビロ磐田戦では勝利を得られなかったが、第25節のガンバ大阪戦で初勝利を掴むと、北海道コンサドーレ札幌も撃破。攻撃力を誇る川崎フロンターレには勝ち切れなかったもののスコアレスドローを演じ、アルビレックス新潟には快勝を収めている。
現役時代はストライカーとしてならした吉田監督だが、再建のポイントは守備にあるようだ。プレスとブロックのバランスを保ち、相手に隙を与えない戦いを実践。一方で攻撃も縦一本にはならず、つなげるときはしっかりとボールを大事にする。この浦和戦でも、神戸のそうしたよさはしっかりと打ち出されていた。
吉田監督がもうひとつ、チームに求めているのは「裏抜け」だ。その要求に答えたのが、FW小川慶治朗だった。開始4分、GKキム・スンギュのロングフィード1本に抜け出すと、西川周作との1対1を制して見事に先制ゴールを奪っている。
「常に裏を狙えという指示は出ているし、そこは自分の特徴だと思うので、そういうところを出せたゴールだったと思います」
本人も胸を張る、電光石火の一撃だった。
もっともその頻度は決して高くなく、その後は決定的なチャンスをほとんど作れなかった。つなぎの意識は高く、ポゼッションで浦和を上回る時間帯もあったが、ディフェンスラインの背後を取る動きに欠け、相手に脅威を与えられず。注目のFWルーカス・ポドルスキもボールを受けに中盤に下がる機会が多く、ゴール近くでのプレーは限られた。
このポドルスキをはじめ、小川、FW渡邉千真、FW田中順也ら前線にリーグ屈指のタレントが揃っているものの、攻撃での迫力を生み出せないのが、今の神戸の課題だろう。
「ボールは持てているが、そのあとに何が起きているのかというところで、浦和の場合はポゼッションしながら必ず背後を狙ったり、目的を持ってやっている。自分たちはまだそこが足りない。小川(慶治朗)が裏を取ったような形をもっと目的を持ってやれば、よりよいサッカーができると思う」
吉田監督も現状の課題をそう吐露している。
試合は19分に同点ゴールを奪われ、1−1の引き分けに終わった。もっとも、本調子とは言えないながらも浦和相手に互角の戦いを演じられたのは、神戸にとっては悪くない結果だった。
試合後、ポドルスキに前体制との変化を聞くと、「どこかひとつが変わったわけではないので、細かく言うことはできない。ただ、足りないところもあるが、今、我々が結果を出しているという事実を見てもらいたい」と返された。
手応えがあるのか、あるいは不満を抱いているのか。うまくあしらわれてしまった感は否めないが、ただ、その表情からはシュートわずか1本に終わった自身のパフォーマンスに満足していないことだけはうかがえた。
結局、眠気を覚えた要因は両チームが置かれた状況よりも、そのスタイル――つまりリスクを取れなかった点にある。それは神戸だけでなく、浦和も同様だ。ともに体制変更後に、バランスを整え、勝ち点を積み上げられるようになってきた一方で、本来の魅力や迫力は失われてしまった。とりわけ神戸には、その傾向がより色濃く反映されていた。
「守備がよくなったし、いいチームになっていると思う。でも、怖さはなかった」
浦和のとある選手の神戸評だ。
ビッグネームを獲得し、世界に通じるチームを作り上げる。そんな壮大な目標を掲げるクラブとしては、「いいチーム」では物足りない。来季に向けてさらなる補強が噂されるなか、神戸ははっきりとしたカラーを打ち出し、「怖いチーム」へと変貌できるだろうか。
それでも、浦和レッズとヴィッセル神戸の一戦は、お世辞にも「面白かった」と満足できる戦いではなかったことだけは主張しておこう。
浦和戦のポドルスキはわずかシュート1本に終わった
エクスキューズはある。浦和はすでにリーグ優勝の可能性が潰(つい)えており、来季のAFCチャンピオンズリーグ(ACL)の出場権確保も厳しくなっている。しかも、4日後には上海上港をホームに迎えるACL準決勝の大一番を控えているのだ。「選手たちが次の試合(ACL)に向けて力を温存したということはなかったと思っている」と堀孝史監督は否定したが、何もかかっていないリーグ戦に対するモチベーションを見出しにくかったのは確かだろう。
一方の神戸も、優勝争いにも、残留争いにも絡んでおらず、「何もかかっていない」試合であったのは同じだ。「消化試合だった」とは言わないものの、シーズン終盤に見られる中位同士の一戦にありがちな戦いだった。
両チームには共通項がある。補強により戦力を増して今季に臨み、優勝候補に挙げられながら、成績不振でシーズン途中に監督を交代。しかも、いずれもコーチからの昇格人事で、あくまで”暫定”の色合いはぬぐえない。新たなスタイルの構築へ向けて試行錯誤の段階ながら、新監督を招聘することが濃厚な来季に向けては、継続性を望めない。それでも、浦和にはアジア制覇という明確な目標があるものの、神戸にはそうした目的が存在しない。その意味で、よりモチベーションを見出しにくい状況にあったのは、神戸のほうだっただろう。
ところが面白いことに、ここ最近の神戸は好転の気配を示している。直近の4試合では3勝1分。しかも、うち3試合は無失点と、安定感抜群の戦いを見せているのだ。
そこには、ネルシーニョ監督の後を受け、第23節から指揮を執る吉田孝行監督の功績が大きい。
初陣となった横浜F・マリノス戦、続くジュビロ磐田戦では勝利を得られなかったが、第25節のガンバ大阪戦で初勝利を掴むと、北海道コンサドーレ札幌も撃破。攻撃力を誇る川崎フロンターレには勝ち切れなかったもののスコアレスドローを演じ、アルビレックス新潟には快勝を収めている。
現役時代はストライカーとしてならした吉田監督だが、再建のポイントは守備にあるようだ。プレスとブロックのバランスを保ち、相手に隙を与えない戦いを実践。一方で攻撃も縦一本にはならず、つなげるときはしっかりとボールを大事にする。この浦和戦でも、神戸のそうしたよさはしっかりと打ち出されていた。
吉田監督がもうひとつ、チームに求めているのは「裏抜け」だ。その要求に答えたのが、FW小川慶治朗だった。開始4分、GKキム・スンギュのロングフィード1本に抜け出すと、西川周作との1対1を制して見事に先制ゴールを奪っている。
「常に裏を狙えという指示は出ているし、そこは自分の特徴だと思うので、そういうところを出せたゴールだったと思います」
本人も胸を張る、電光石火の一撃だった。
もっともその頻度は決して高くなく、その後は決定的なチャンスをほとんど作れなかった。つなぎの意識は高く、ポゼッションで浦和を上回る時間帯もあったが、ディフェンスラインの背後を取る動きに欠け、相手に脅威を与えられず。注目のFWルーカス・ポドルスキもボールを受けに中盤に下がる機会が多く、ゴール近くでのプレーは限られた。
このポドルスキをはじめ、小川、FW渡邉千真、FW田中順也ら前線にリーグ屈指のタレントが揃っているものの、攻撃での迫力を生み出せないのが、今の神戸の課題だろう。
「ボールは持てているが、そのあとに何が起きているのかというところで、浦和の場合はポゼッションしながら必ず背後を狙ったり、目的を持ってやっている。自分たちはまだそこが足りない。小川(慶治朗)が裏を取ったような形をもっと目的を持ってやれば、よりよいサッカーができると思う」
吉田監督も現状の課題をそう吐露している。
試合は19分に同点ゴールを奪われ、1−1の引き分けに終わった。もっとも、本調子とは言えないながらも浦和相手に互角の戦いを演じられたのは、神戸にとっては悪くない結果だった。
試合後、ポドルスキに前体制との変化を聞くと、「どこかひとつが変わったわけではないので、細かく言うことはできない。ただ、足りないところもあるが、今、我々が結果を出しているという事実を見てもらいたい」と返された。
手応えがあるのか、あるいは不満を抱いているのか。うまくあしらわれてしまった感は否めないが、ただ、その表情からはシュートわずか1本に終わった自身のパフォーマンスに満足していないことだけはうかがえた。
結局、眠気を覚えた要因は両チームが置かれた状況よりも、そのスタイル――つまりリスクを取れなかった点にある。それは神戸だけでなく、浦和も同様だ。ともに体制変更後に、バランスを整え、勝ち点を積み上げられるようになってきた一方で、本来の魅力や迫力は失われてしまった。とりわけ神戸には、その傾向がより色濃く反映されていた。
「守備がよくなったし、いいチームになっていると思う。でも、怖さはなかった」
浦和のとある選手の神戸評だ。
ビッグネームを獲得し、世界に通じるチームを作り上げる。そんな壮大な目標を掲げるクラブとしては、「いいチーム」では物足りない。来季に向けてさらなる補強が噂されるなか、神戸ははっきりとしたカラーを打ち出し、「怖いチーム」へと変貌できるだろうか。
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