これは単純に言えば、「型式指定制度」により車の完成検査をメーカー自身が行うからだ。
この制度のお陰でメーカーは、一旦指定を得れば大量生産が可能になる。
新車販売時に1台1台検査を受ける必要がなく、メーカーと消費者の双方にとって合理的な仕組みの様に映る。
然し実際は、この構造に落とし穴がある。
自分の買おうとしている車が、制度上不正な要素を孕んでいると疑う人は先ずいないし、増してやそれに気付くはずもない。
これに対し完成車メーカーと部品メーカーなど企業間取引ならプロ同士の為専門的な知識や眼力、様々な関連情報から不正に気付く事があり得る。
消費者向け販売と企業間取引では大きな情報格差があり、メーカーを信じるしかない消費者にとって、型式指定制度は「ブラックボックス」と言える。
内容の正当性は手続の正当性の上に成り立つ。
そうでなければ単なる「お手盛り」だ。
制度の見直しが必要なら、それは正面から改正議論に付さなければならない。
所定の手続きを無視する背景に何があるのか。
消費者相手で発覚し難い事に加え、安全性能への過信、過去も同様にやって来た「実績」が、問題が起きても「違法とは知らなかった」と言い逃れできると言う甘い考えを生んできたのではないか。
自分や周囲にどの様な事が起こるか、想像力が欠如している。
不祥事を防ぐには、コンプライアンスも必要だが、最も重要なのは責任を持って職務に当たる人材を見極め、処遇する人事制度への改革だ。
現在、産業界では「ジョブ型」の人事制度の導入が進んでいる。
行政の役割にも触れておきたい。
「法と市場の対話」が遅れている。
東京都立大教授 白石 賢 1962年横浜市出身。 北海道大博士(法学)。
経済企画庁(現内閣府)などを経て2008年から首都大学東京(現東京都立大)教授。
専門は行動法・経済学、経済刑法。 著書に「企業犯罪・不祥事の法政策」など。
愛媛新聞 視標から
時代に合った制度に進化させないといけないらしい。
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