米民主主義の ” 自壊 ” は何に由来し、何故助長されるのか。
----------米国の民主主義が劣化し、政治的暴力が目立っている。
「トクヴィルと言うフランスの政治思想家がいる。
(フランス革命後の)19世紀前半に新大陸に渡り、米国の民主主義を具に見て回り『アメリカのデモクラシー』と言う書を著した」
「彼ほど深く、米国の本質を見抜いた人物はいない。
民主主義を支える制度が根差す社会や文化に目を凝らし、洞察した。」
「トクヴィルは、世界で最も進んだ真の民主主義に感銘を受けた。
その反面、未だ奴隷社会だった当時の米国に(人種と言う)分裂の種が潜んでいる事を痛切に受け止めた」
「言うまでもなく、彼らは白人ではない。
同じ人間として敬意を払うに値しない存在として、犬の如く扱われた。
米国はそうした(差別的)構造の上に成り立っており、その本性から簡単には逃れられない」
「だからこそ、トクヴィルは人種対立を民主主義の破壊リスクと考えた。」
----------人種問題は確かに米国の宿痾だ。それでもトクヴィルの時代と比べると、大きく改善されている。
「米国の民主主義を考える上で、彼は人種よりも、もっと核心的な問題を提起した。
個人の権利を尊重し、平等を追求していくと、どんな社会に行き着くのかと言う考察だ」
「民主主義では、平等に発言する権利があるからだ」
「民主主義と言う政体は、権威を弱める働きを自ずと持つ」
「真実も侵食されていく。真実が相対化されていくからだ」
「米国内の教会の乱立を見るがいい。絶対的な教義は見当たらない。
各派の解釈に沿って、教義が相対化されている」
「然し、人間同士が対等になり、複数の真実が併存すると如何なるか。
人は一段と個人主義的になり、何を信じていいか分からなくなる。
利己主義が広がり、社会の絆は弱くなる」
----------そうなったら、民主主義を支える諸制度は生命力をなくし、形骸化してしまう。
「そう言う事だ。米国の政体は個人の権利を尊重し、とことん平等を追求する真の民主主義であるが故に、自壊への種を胚胎している。トクヴィルはこの逆説を見て取った」
「とりわけ危惧したのが(地位の平等化が進み、上下関係がなくなると、逆に権威主義的指導者や独裁者と言った)『ストロングマン』を求める衝動が頭を擡げてくると言う事だった」
「何故なら、人間を取り巻く自然界はヒエラルキー(序列)に支配されているからだ。家族が良い例だ。
親子は対等ではない。幼い子は親(と言う権威)に寄り掛からないと生きていけない」
「これが自然の秩序だ。長い年月を経て骨の髄まで刷り込まれ、人間の最も深い部分に宿っている。
民主主義システムはそうではない。本能ではなく、理性に働き掛ける仕組みだ」
「(いくら理性が発達しても)人は本能から逃れられない。ストロングマンはそんな情理の裂け目に忍び込む。
『私に従えば救済される』と。
トクヴィルは200年近くも前に、民主社会に潜む独裁の危険を見抜いていたのだ」
CIA 元工作担当官 グレン・カール氏
愛媛新聞 レコンキスタの時代から
アレクシス・ド・トクヴィルは「アメリカのデモクラシー」を分冊出版した。
米国の民主政治・制度を知る上で必読の古典的名著らしい。
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