2012年09月24日
暮らしの中の自然 鉄
暮らしの中の自然 鉄(刃物)、そば切り包丁
慨要
元素記号の Fe は、ラテン語での名称「ferrum」に由来する。
日本語では、鈍い黒さから「くろがね(黒鉄、黒い金属)」と呼ばれていた。
道具の材料として、人類にとって最も身近な金属元素の1つで、
様々な器具や構造物に使われる。
鉄を最初に使い始めたのはヒッタイトである。
ヒッタイト以前の紀元前18世紀ごろ、すでに製鉄技術があったことが発掘された鉄によって
明らかになっている。鉄器時代以降、鉄は最も重要な金属の1つであり、産業革命以降、
益々その重要性は増した。鉄は、炭素などの合金元素の存在により、より硬い鋼となる。
生体内での鉄分の役割
鉄の生物学的役割は非常に重要である。
赤血球の中に含まれるヘモグロビンは、鉄のイオンを利用して酸素を運搬している。
ヘモグロビン1分子には4つの鉄(U)イオンが存在し、それぞれがポルフィリンという
有機化合物と錯体を形成した状態で存在する。
この錯体はヘムと呼ばれ、ミオグロビン、カタラーゼ、シトクロムなどのタンパク質にも
含まれる。
ヘモグロビンと酸素分子の結合は弱く、筋肉のような酸素を利用する組織に到着すると
容易に酸素を放出することができる。
フェリチンは鉄を貯蔵する機能を持つタンパク質ファミリーである。その核は鉄(V)
イオン、酸化物イオン、水酸化物イオン、リン酸イオンからなる巨大なクラスター
(オキソヒドロキソリン酸鉄)で、分子あたり4500個もの鉄イオンを含む。
おもな鉄含有タンパク質
タンパク質名 1分子中の鉄原子数 機能
ヘモグロビン 4 血液中のO2輸送
ミオグロビン 1 骨格筋細胞中のO2貯蔵
トランスフェリン 2 血液中のFe3+輸送
フェリチン 4500以下 肝臓、脾臓、骨髄などの細胞中でのFe3+貯蔵
ヘモシデリン 103〜104 Feの貯蔵
カタラーゼ 4 H2O2の分解
シトクロムc 1 電子移動
鉄-硫黄タンパク質 2〜8 電子移動
鉄分の吸収
肉や魚のミオグロビンやヘモグロビンに由来するポルフィリンと結合した鉄はヘム鉄と
呼ばれ、非ヘム鉄と比較して2-3倍体内への吸収率が高い。
非ヘム鉄は、ビタミンCと一緒に摂取すると、水溶性の高いFe2+に還元されて体内への吸収が
促進されるが、玄米などの全粒穀物に含まれるフィチン酸、お茶や野菜類に含まれる
ポリフェノールなどは非ヘム鉄の吸収を阻害する。
鉄分の不足
体内の鉄分が不足すると、酸素の運搬量が十分でなくなり鉄欠乏性貧血を起こすことが
あるため、鉄分を十分に補充する必要がある。
鉄分は、レバーやホウレンソウなどの食品に多く含まれ、その他に鉄分を多く含む食品は、
ひじき、海苔、ゴマ、パセリ、アサリ、シジミなどである。
これらを摂取することで鉄分の不足が改善される。
また鉄の溶解度が小さい土壌で育てられる植物などでは、鉄吸収が不足することで植物の
成長が止まり黄化することがある。この症状は、土壌に水溶性型の鉄肥料を与えるなど
すると一時的に改善されるが、植物中に含まれる鉄量が増えるわけではなく、ビタミンAの
含有量が増えることがわかっている。
したがって、鉄肥料を与えることは植物中の鉄分ではなくビタミンAを増やすことに役立つ。
植物の鉄欠乏を長期的に改善するには、土壌に大量の硫黄を投入するなどして、土壌質を
変える必要がある。
なお陸上植物に限らず、藻類も微量の鉄を必要とする。
鉄分の過剰
一方で、過剰な鉄の摂取は生体にとって有害である。
自由な鉄原子は過酸化物と反応しフリーラジカルを生成し、これが DNA やタンパク質、
および脂質を破壊するためである。
細胞中で鉄を束縛するトランスフェリンの量を超えて鉄を摂取すると、これによって自由な
鉄原子が生じ、鉄中毒となる。
余剰の鉄はフェリチンやヘモジデリンにも貯蔵隔離される。
過剰の鉄はこれらのタンパク質に結合していない自由鉄を生じる。
自由鉄がフェントン反応を介してヒドロキシラジカル(OH?)等の活性酸素を発生させる。
発生した活性酸素は細胞のタンパク質やDNAを損傷させる。
活性酸素が各臓器を攻撃し、肝臓には肝炎、肝硬変、肝臓がんを、膵臓には糖尿病、
膵臓癌を、心臓には心不全を引き起こす。
ヒトの体には鉄を排出する効率的なメカニズムがなく、粘膜や粘液に含まれる1-2mg/日
程度の少量の鉄が排出されるだけであるため、ヒトが吸収できる鉄の量は1-2mg/日程度と
非常に少ない。
しかし血中の鉄分が一定限度を超えると、鉄の吸収をコントロールしている消化器官の
細胞が破壊される。
この為、高濃度の鉄が蓄積すると、ヒトの心臓や肝臓に恒久的な損傷が及ぶ事があり、
最悪の場合は死に至ることもある。
鉄中毒の治療には、デフェロキサミンが投与される。
鉄分の許容量
米国科学アカデミーが公表している DRI 指数によれば、ヒトが1日のうちに許容できる
鉄分は、大人で45 mg、14歳以下の子供は40 mgまでである。摂取量が体重1 kgあたり20 mgを
超えると鉄中毒の症状を呈する。
鉄の致死量は体重1 kgあたり60 mgである。
6歳以下の子供が鉄中毒で死亡する主な原因として、硫酸鉄を含んだ大人向けの錠剤を
飲み過ぎるケースがあげられる。
なお、遺伝的な要因により、鉄の吸収ができない人々もいる。
第六染色体のHLA-H遺伝子に缺陥を持つ人は、過剰に鉄を摂取するとヘモクロマトーシスなど
の鉄分過剰症になり、肝臓あるいは心臓に異変を来す事がある。
ヘモクロマトーシスを患う人は、白人では全体の0.3 - 0.8 %と推定されているが、
多くの人は自分が鉄過剰症であることに気づいていないため、一般に鉄分補給のための
錠剤を摂取する場合は、特に鉄欠乏症でない限り、医師に相談することが望ましい。
鉄分の推奨量
鉄分の摂取についての必要量、推奨量は、以下の式で表される。
推定平均必要量=基本的鉄損失 ÷ 吸収率(0.15)
推定平均推奨量=推定平均必要量 × 1.2
20歳前後の男性の鉄分損失量は0.9 mg/日であるので、必要量は6.0 mg/日、
推奨量は7.2 mg/日、となる。
月経のある女性の鉄分の必要量は、以下の式で表される。
推定平均必要量=(基本的鉄損失+月経血による鉄損失(0.55 mg/日)) ÷ 吸収率(0.15)
20歳前後の女性の鉄分損失量は0.76 mg/日であるので、必要量は8.7 mg/日、
推奨量は10.5 mg/日、となる。
鉄分の耐用上限量は、0.8 mg/kg体重/日とされる。70kgの成人で56 mg/日が上限となる。
慨要
元素記号の Fe は、ラテン語での名称「ferrum」に由来する。
日本語では、鈍い黒さから「くろがね(黒鉄、黒い金属)」と呼ばれていた。
道具の材料として、人類にとって最も身近な金属元素の1つで、
様々な器具や構造物に使われる。
鉄を最初に使い始めたのはヒッタイトである。
ヒッタイト以前の紀元前18世紀ごろ、すでに製鉄技術があったことが発掘された鉄によって
明らかになっている。鉄器時代以降、鉄は最も重要な金属の1つであり、産業革命以降、
益々その重要性は増した。鉄は、炭素などの合金元素の存在により、より硬い鋼となる。
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生体内での鉄分の役割
鉄の生物学的役割は非常に重要である。
赤血球の中に含まれるヘモグロビンは、鉄のイオンを利用して酸素を運搬している。
ヘモグロビン1分子には4つの鉄(U)イオンが存在し、それぞれがポルフィリンという
有機化合物と錯体を形成した状態で存在する。
この錯体はヘムと呼ばれ、ミオグロビン、カタラーゼ、シトクロムなどのタンパク質にも
含まれる。
ヘモグロビンと酸素分子の結合は弱く、筋肉のような酸素を利用する組織に到着すると
容易に酸素を放出することができる。
フェリチンは鉄を貯蔵する機能を持つタンパク質ファミリーである。その核は鉄(V)
イオン、酸化物イオン、水酸化物イオン、リン酸イオンからなる巨大なクラスター
(オキソヒドロキソリン酸鉄)で、分子あたり4500個もの鉄イオンを含む。
おもな鉄含有タンパク質
タンパク質名 1分子中の鉄原子数 機能
ヘモグロビン 4 血液中のO2輸送
ミオグロビン 1 骨格筋細胞中のO2貯蔵
トランスフェリン 2 血液中のFe3+輸送
フェリチン 4500以下 肝臓、脾臓、骨髄などの細胞中でのFe3+貯蔵
ヘモシデリン 103〜104 Feの貯蔵
カタラーゼ 4 H2O2の分解
シトクロムc 1 電子移動
鉄-硫黄タンパク質 2〜8 電子移動
鉄分の吸収
肉や魚のミオグロビンやヘモグロビンに由来するポルフィリンと結合した鉄はヘム鉄と
呼ばれ、非ヘム鉄と比較して2-3倍体内への吸収率が高い。
非ヘム鉄は、ビタミンCと一緒に摂取すると、水溶性の高いFe2+に還元されて体内への吸収が
促進されるが、玄米などの全粒穀物に含まれるフィチン酸、お茶や野菜類に含まれる
ポリフェノールなどは非ヘム鉄の吸収を阻害する。
鉄分の不足
体内の鉄分が不足すると、酸素の運搬量が十分でなくなり鉄欠乏性貧血を起こすことが
あるため、鉄分を十分に補充する必要がある。
鉄分は、レバーやホウレンソウなどの食品に多く含まれ、その他に鉄分を多く含む食品は、
ひじき、海苔、ゴマ、パセリ、アサリ、シジミなどである。
これらを摂取することで鉄分の不足が改善される。
また鉄の溶解度が小さい土壌で育てられる植物などでは、鉄吸収が不足することで植物の
成長が止まり黄化することがある。この症状は、土壌に水溶性型の鉄肥料を与えるなど
すると一時的に改善されるが、植物中に含まれる鉄量が増えるわけではなく、ビタミンAの
含有量が増えることがわかっている。
したがって、鉄肥料を与えることは植物中の鉄分ではなくビタミンAを増やすことに役立つ。
植物の鉄欠乏を長期的に改善するには、土壌に大量の硫黄を投入するなどして、土壌質を
変える必要がある。
なお陸上植物に限らず、藻類も微量の鉄を必要とする。
鉄分の過剰
一方で、過剰な鉄の摂取は生体にとって有害である。
自由な鉄原子は過酸化物と反応しフリーラジカルを生成し、これが DNA やタンパク質、
および脂質を破壊するためである。
細胞中で鉄を束縛するトランスフェリンの量を超えて鉄を摂取すると、これによって自由な
鉄原子が生じ、鉄中毒となる。
余剰の鉄はフェリチンやヘモジデリンにも貯蔵隔離される。
過剰の鉄はこれらのタンパク質に結合していない自由鉄を生じる。
自由鉄がフェントン反応を介してヒドロキシラジカル(OH?)等の活性酸素を発生させる。
発生した活性酸素は細胞のタンパク質やDNAを損傷させる。
活性酸素が各臓器を攻撃し、肝臓には肝炎、肝硬変、肝臓がんを、膵臓には糖尿病、
膵臓癌を、心臓には心不全を引き起こす。
ヒトの体には鉄を排出する効率的なメカニズムがなく、粘膜や粘液に含まれる1-2mg/日
程度の少量の鉄が排出されるだけであるため、ヒトが吸収できる鉄の量は1-2mg/日程度と
非常に少ない。
しかし血中の鉄分が一定限度を超えると、鉄の吸収をコントロールしている消化器官の
細胞が破壊される。
この為、高濃度の鉄が蓄積すると、ヒトの心臓や肝臓に恒久的な損傷が及ぶ事があり、
最悪の場合は死に至ることもある。
鉄中毒の治療には、デフェロキサミンが投与される。
鉄分の許容量
米国科学アカデミーが公表している DRI 指数によれば、ヒトが1日のうちに許容できる
鉄分は、大人で45 mg、14歳以下の子供は40 mgまでである。摂取量が体重1 kgあたり20 mgを
超えると鉄中毒の症状を呈する。
鉄の致死量は体重1 kgあたり60 mgである。
6歳以下の子供が鉄中毒で死亡する主な原因として、硫酸鉄を含んだ大人向けの錠剤を
飲み過ぎるケースがあげられる。
なお、遺伝的な要因により、鉄の吸収ができない人々もいる。
第六染色体のHLA-H遺伝子に缺陥を持つ人は、過剰に鉄を摂取するとヘモクロマトーシスなど
の鉄分過剰症になり、肝臓あるいは心臓に異変を来す事がある。
ヘモクロマトーシスを患う人は、白人では全体の0.3 - 0.8 %と推定されているが、
多くの人は自分が鉄過剰症であることに気づいていないため、一般に鉄分補給のための
錠剤を摂取する場合は、特に鉄欠乏症でない限り、医師に相談することが望ましい。
鉄分の推奨量
鉄分の摂取についての必要量、推奨量は、以下の式で表される。
推定平均必要量=基本的鉄損失 ÷ 吸収率(0.15)
推定平均推奨量=推定平均必要量 × 1.2
20歳前後の男性の鉄分損失量は0.9 mg/日であるので、必要量は6.0 mg/日、
推奨量は7.2 mg/日、となる。
月経のある女性の鉄分の必要量は、以下の式で表される。
推定平均必要量=(基本的鉄損失+月経血による鉄損失(0.55 mg/日)) ÷ 吸収率(0.15)
20歳前後の女性の鉄分損失量は0.76 mg/日であるので、必要量は8.7 mg/日、
推奨量は10.5 mg/日、となる。
鉄分の耐用上限量は、0.8 mg/kg体重/日とされる。70kgの成人で56 mg/日が上限となる。
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