2016年09月30日
[ネタバレあり]サイレント・ランニング(1972)〜未来は青春の終わり
『サイレント・ランニング』 Silent Running (1972・米)
監督/ダグラス・トランブル
脚本/デリック・ウォシュバーン、マイケル・チミノ、スティーブン・ボッコ
製作/マイケル・グラスコフ
音楽/ピーター・シャイケル
主題歌/ジョーン・バエズ『リジョイス・イン・ザ・サン』
撮影/チャールズ・F・ウェラー
編集/アーロン・ステル
出演:ブルース・ダーン、クリフ・ポッツ、ロン・リフキン、ジェッセ・ヴィント
【映画ネタバレ】1972年:サイレント・ランニング
<ネタバレあり! 結末まで掲載しています!>
物語はいつとも知れない遥かな未来・・・地球上から全ての植物が絶滅し、わずかな標本が土星軌道の外にいる3隻のアメリカン航空の「宇宙貨物船(Space Freighters)」の船体に取り付けられた温室ドームに保存されていた。
3隻のうちの1隻「ヴァリー・フォージ」の4人の乗組員のうち、フリーマン・ローウェル(ブルース・ダーン)だけは植物の価値を重視し、勤務に精励していたが、他の3人は人工的に管理された地球の方が便利で快適だと主張しており、勤務ぶりも杜撰だった。互いに相容れない価値観をぶつけ合いながらも、4人はドームの植物の管理を続けていた。
そんなある日、地球から植物保存計画の断念が伝えられ、ドームを破棄・爆破して帰還せよとの命令が下る。退屈な任務から解放されてさっさと地球に帰りたいと思う3人の乗組員が破壊の準備を続ける一方、植物が絶滅することに耐えられないフリーマンは、地球からの帰還命令に背き、仲間を殺害して、「ヒューイ」「ルーイ」「デューイ」と名づけた3体のドローン(ロボット)と、ヴァリー・フォージ号の唯一爆破を免れたドームとともに、事故を装い宇宙に深く潜行して逃亡する道を選んだ。
地球では土星の環に衝突する際に、船はローウェルもろとも破壊されるだろうと予測されていたため、もはや、未だ彼が宇宙を漂っていることを知る存在はいない。ローウェルは自分の運命を知る由もないまま、ひたすらドーム内の自然を守ることだけに、ヒューイとデューイと勤しむようになる。
淋しさからヒューイとデューイに対して人間同様に接するようになっていたローウェルだったが、彼らが死んだ乗組員達と全く同じ度合いで心の隙間を埋めてくれるまでには至らなかった。自分が正しいと疑わない信条のために、仕方なく殺してしまった乗組員達。価値観が違っていても、ローウェルは自分が彼らを嫌っていたわけではないことを実感し、自分の犯した罪に苛まれるようになる。
その頃からドーム内の植物が枯れ始めるようになってしまった。いくら調べても、ローウェルですらその原因を見出すことができない。加えて不注意による事故で、彼はヒューイを破損させてしまった。出来る限りの修理はしてやったものの、ヒューイは以前のように役目を果たせなくなってしまった。乗組員らを殺害してまで守ろうとしたローウェルの大切な‘世界’が、目前で崩壊しようとしていたが、ローウェルには何を成す術も残っていない。地球にいつか自然を蘇らせたいという彼の夢は、果たせぬまま消え去ろうとしていた。
そこへ、地球が送り出した捜索隊が、ローウェルの船の位置を確認し、救助に向かっているという連絡が入ってきたのだ。とは言え、これは必ずしもローウェルにとって朗報ではなかった。地球側から改めて、残った一つのドームを爆破して救助を待つように命令もされてしまったからだ。
ローウェルはドームを守るという自分に課した使命もこれまでかと放心し、救助されることに安堵することなどなかった。だが、「太陽から随分と遠ざかっていたから探すのに手間取った」という地球からの通信の一言が、彼を生き返らせる。ドーム内の植物が枯れ始めていたのは太陽の光が不足していたからだと、ローウェルは遂に気づいたのだ。ローウェルは急いで日照に代わる人工のライトを、ドーム内のいたる場所に設置する。
そしてデューイを呼び寄せ、「これからはお前がこの植物達の面倒を見てくれ」と言う。そうして破損したヒューイだけを連れて船の本体に戻り、デューイを乗せたドームを船体から切り離すのだった。
その後、宇宙船本体を自爆させる準備を静かに進める。一人でここまで生き延びたローウェルを地球側の通信士は英雄だと褒め称えたが、そんな栄誉に甘んじるつもりなど彼にはなかった。ローウェルはいくつかの爆弾を保存ケースから取り出しながら、最後にデューイに少年期の頃の想い出を語って聞かせる。それは自分の名前を記した紙を瓶に入れ、誰かにそれが発見されるだろうかと思いながら、海に流したという内容だった。
語り終えると同時に船は大爆発を起こし、宇宙には何も起こらなかったような静けさが戻る。ラストは植物に水やりをするデューイを乗せたドームが、どこへともなく宇宙を漂い続けるシーンで終る。
<END>
タイトルの通り、静かに、永遠に進み続けるお話です。悲しいというより、切ないといった感じでしょうか。もともと、この映画は「未来に残したいSF映画100本」(エンターブレインムック:2014年発行)で知りました。この映画はそこで17位でしたね。
派手なCGも無く穏やかな、けれども胸に迫ってくるSF映画。宇宙船の造形が工業デザイン的でカッコいいです。ドローンのデザインもセンスが良く、凡百のSF映画のヒューマノイド型ロボットとは一線を隔しています。このデザインは、R2D2へと引き継がれていますね。心に残るシーンが沢山ある、傑作のSF映画です。
あと、ご存知かもしれませんが、「ヒューイ」「ルーイ」「デューイ」はドナルドダックのおいの名前ですね。
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サササッ 三|ノシ・з・|┐ それではまた!