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2014年05月23日

北島亭 (フレンチ、東京都新宿区、四ッ谷駅)

ル・マンジュ・トゥーが神経を覚醒させる、料理といいながらむしろそれを超えるような何かであるのにたいして、北島亭のそれは徹頭徹尾、ひたすらにおいしいご馳走であることに徹している。
衝撃的な美味さでありながら、決して期待を外れたり、意表をつかれるようなものではないし、そうなるまいとつとめていることも窺える。

北島シェフは伝説の三ッ星、トロワグロで修行した経歴を持つ。
トロワグロと言えば、天才ソーシェ・ジャンと、肉の名人といわれたピエール兄弟がつくりあげたもの。
その日に仕入れた素材をその日のうちに使い切るという、いまでは当たり前になったスタイルを築いたのも彼らだ。それまでフレンチは、長く素材を使い、鮮度の悪さを濃いソースでカバーするようなところも多かったのだ。
だからかどうか、北島シェフも毎朝、6時台のバスに乗って築地に通う生活を続けている。

北島シェフは様々な名言を残している。

"店の経営が「お金を得るための手段」だけになってしまったら、工夫をおこたって、かならず料理の質は落ちていきますよね。そういう人はあちこちで見てきた。いいものを作りたいとか、喜んでもらいたいとかいう気持ちがなくなったら最後、という生活なんです。"

今でも無欲の人というか、料理にだけ集中したいというシェフの心意気を、北島亭に訪れる人は誰しも感じているはずだ。味だけが最高のもてなしなのだということを、北島シェフほどわかっている人は、やはりいない。

北島シェフのスペシャリテは「雲丹のコンソメゼリー寄せ」
かれは肉を焼かせたら当代随一といわれる名手だけれど、じつはこれを食べて料理人の道を志した若者も数えきれないという。

たしかに、一度食べたら忘れなれなくなるくらい、濃度の高い想いと技術が込められた逸品だ。
もちろん、私にとっても、決して忘れられない味。
やはり、天才。

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posted by N's at 00:14 | TrackBack(0) | フレンチ

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