新規記事の投稿を行うことで、非表示にすることが可能です。
2017年11月19日
4-3-2. 欧州経済実態指標(2017年11月最終版)
昨年2016年の欧州GDPは19.3兆USDです。そのうち独国が17.9%、英国が13.6%、仏国が12.8%、伊国が9.6%を占めています。
欧州GDPは、発表結果と反応方向とがあまり関係ありません。おそらく、各国毎の発表が先行しているため、その時々にEURレートへの折込みが行われるからでしょう。むしろ、反応があるのは独国GDPですが、これも速報値ぐらいしか反応しません。と言っても、GDPで20%にも達しない地域が、1%にも満たない変化しかしない訳です。
欧州実態指標でEURがあまり反応に結び付かないことは、当然と言えば当然のことです。
11月14日に発表された独国7-9月期GDP速報値は、前期比が+0.8%、前年比が+2.8%でした。速報値では直近ピークだった2014年1-3月期の+2.4%を上回りました。11月23日に発表された同期改定値も前期比・前年比ともに同値でした。
(分析事例) 独国四半期GDP速報値(2017年8月15日発表結果検証済)
本指標への反応は、指標結果よりもそのときどきのトレンドの影響が大きいようです。その結果、直後11分足終値は直後1分足終値よりも反応を伸ばしがちです。追撃は早期参加し、じっくり利確のタイミングを計ることに適しています。
10月31日に発表された欧州7-9月期GDP速報値は、前期比+0.6%、前年比+2.5%でした。前期に引き続き、年率で+2%を超える成長を続けています。ECBは慎重なものの、欧州の成長率は安定して上昇基調を維持しています。11月14日に発表された同期改定値も、前期比・前年比ともに同値でした。確定値は12月7日発表予定です。
最も影響力が強い独国経済も、実はGDP比で言えばEU全体に対し20%を下回っています。とは言え、個別実態指標となると、独国のものしか反応にほぼ結び付きません。
10月30日に発表された独国9月分小売売上高指数は、前月比+0.5%、前年比+4,1%でした。
11月30日に発表された独国10月分小売売上高指数は、前月比△1.2%、前年比△1.4%でした。前年比の動きを見ると、2016年以降は激しい上下動を繰り返しながら下降基調となっていました。それが2017年2月分以降は、上昇基調に転じたように見受けられていました。一転、今回は2017年4月分以来のマイナスとなり、少なくとも2013年以降で2か月続けてマイナスになったことがない実績を踏まえると、次回はプラスの可能性があります。
製造業の受注と生産のLT(リードタイム)は、受注が3〜6か月程度先行すると見るのが一般的です(業種間のばらつきが大きい)。それを同時に表しているのが景気指標ですが、製造業PMI改定値(最終値に相当)には、先行きへの不安の兆候がまだ見受けられません。
11月6日に発表された独国9月分製造業受注前月比は+1.0%でした。翌11月7日に発表された独国9月分鉱工業生産指数前月比は△1.6%でした。
次回発表は、10月分製造業受注が12月6日、10月分鉱工業生産指数は12月7日の予定です。
11月9日に発表された独国9月分貿易収支は+241億EURでした。2017年に入っての貿易黒字は1860億EURです。
10月分は、12月8日に発表予定です。
欧州GDPは、発表結果と反応方向とがあまり関係ありません。おそらく、各国毎の発表が先行しているため、その時々にEURレートへの折込みが行われるからでしょう。むしろ、反応があるのは独国GDPですが、これも速報値ぐらいしか反応しません。と言っても、GDPで20%にも達しない地域が、1%にも満たない変化しかしない訳です。
欧州実態指標でEURがあまり反応に結び付かないことは、当然と言えば当然のことです。
【4-3-2.(1) 経済成長】
11月14日に発表された独国7-9月期GDP速報値は、前期比が+0.8%、前年比が+2.8%でした。速報値では直近ピークだった2014年1-3月期の+2.4%を上回りました。11月23日に発表された同期改定値も前期比・前年比ともに同値でした。
(分析事例) 独国四半期GDP速報値(2017年8月15日発表結果検証済)
本指標への反応は、指標結果よりもそのときどきのトレンドの影響が大きいようです。その結果、直後11分足終値は直後1分足終値よりも反応を伸ばしがちです。追撃は早期参加し、じっくり利確のタイミングを計ることに適しています。
ーーー$€¥ーーー
10月31日に発表された欧州7-9月期GDP速報値は、前期比+0.6%、前年比+2.5%でした。前期に引き続き、年率で+2%を超える成長を続けています。ECBは慎重なものの、欧州の成長率は安定して上昇基調を維持しています。11月14日に発表された同期改定値も、前期比・前年比ともに同値でした。確定値は12月7日発表予定です。
【4-3-2.(2) 実態指標】
最も影響力が強い独国経済も、実はGDP比で言えばEU全体に対し20%を下回っています。とは言え、個別実態指標となると、独国のものしか反応にほぼ結び付きません。
(2-1) 小売
10月30日に発表された独国9月分小売売上高指数は、前月比+0.5%、前年比+4,1%でした。
11月30日に発表された独国10月分小売売上高指数は、前月比△1.2%、前年比△1.4%でした。前年比の動きを見ると、2016年以降は激しい上下動を繰り返しながら下降基調となっていました。それが2017年2月分以降は、上昇基調に転じたように見受けられていました。一転、今回は2017年4月分以来のマイナスとなり、少なくとも2013年以降で2か月続けてマイナスになったことがない実績を踏まえると、次回はプラスの可能性があります。
(2-2) 生産
製造業の受注と生産のLT(リードタイム)は、受注が3〜6か月程度先行すると見るのが一般的です(業種間のばらつきが大きい)。それを同時に表しているのが景気指標ですが、製造業PMI改定値(最終値に相当)には、先行きへの不安の兆候がまだ見受けられません。
11月6日に発表された独国9月分製造業受注前月比は+1.0%でした。翌11月7日に発表された独国9月分鉱工業生産指数前月比は△1.6%でした。
次回発表は、10月分製造業受注が12月6日、10月分鉱工業生産指数は12月7日の予定です。
【4-3-2.(3) 貿易指標】
11月9日に発表された独国9月分貿易収支は+241億EURでした。2017年に入っての貿易黒字は1860億EURです。
10月分は、12月8日に発表予定です。
以上
2017年10月25日
欧州中銀(ECB)金融政策発表前後のEURJPY反応分析(2017年10月26日20:45発表結果検証済)
以下、「T.指標予想要点」「U.過去調査詳細」を事前投稿し、「V.発表結果検証」を事後投稿しています。ブログの日付は事前投稿日となっています。指標発表後に事後投稿し、その日時は「V.発表結果検証」のタイトル行付近に記載しています。
2017年10月26日20:45に欧州金融政策発が発表されます。21:30からはECB総裁の記者会見が予定されており、政策変更がない場合、発表後すぐにそちらを睨んだ動きへと移行します。
今回の市場予想と前回結果は次の通りです。
金融政策発表時には、何らかの変更が予想されている場合とそうでない場合とで、全く様相が異なります。以下、特に断らない限り「今回は現状維持」という予想を前提に話を進めます。
すなわち、過去に政策金利・付利で変更が行われた2015年12月(付利を△0.2%から△0.3%に変更)、2016年3月(政策金利を0.05%から0%に、付利を△0.3%から△0.4%に変更)の2回を除いたデータに基づく分析を行っています。
そうした「市場予想通り現状維持」だった場合の本指標の特徴は以下の通りです。
以下のシナリオで取引に臨みます。
以上の詳細ないしは論拠は、以下の「T.調査・分析」に記しています。
公開情報や既出情報に基づく調査を行い、過去の指標と反応の関係を比較分析しています。方向に関する的中率に比べ、程度に関する的中率は残念ながら低いというのが実情です。利確・損切の目安は、過去平均値を最近の反応の大小と見比べて感覚的に微修正しています。
以前、黒田日銀総裁が言ったように金融政策の手段は多岐に亘ります。
まず「政策金利」とは、中銀が市中銀行に対して融資をする際の金利のことを指しており、日本の場合には「無担保コール翌日物金利」を指しています。
以前は金利政策のことを指して「公定歩合」と呼ばれていました。がしかし、現在は金利が自由化されているため、公定歩合による金利操作を行うことができません。それで、日銀が無担保コール翌日物市場という短期金融市場に直接介入して短期金利を操作しているのです。
公定歩合(「基準割引率および基準貸付利率」)というものは残っているものの、これは短期金融市場における金利上限として機能しているだけであり、政策金利ではありません。
そして、ECBの「預金ファシリティー金利」とは日銀における「付利」に相当します。
市中銀行の貸出金利は、付利の水準が貸出金利下限として機能するため、付利の上げ下げが中銀金融政策の手段たり得ます。
但し、日欧のように付利がマイナスになることを「マイナス金利」といい、これは自国資金が他国通貨での運用に流れるため、通貨安を招くと批判を受けています。
また、米日欧の中銀が相次いで実施した中銀による国債等の買い入れ施策は、買入にせよ売却にせよ、そのペース(規模)を制御することで金融政策たり得ています。
かつてのような金利操作だけでは政策効果が薄まってしまい、何だかこうした中銀金融政策の多様化が進んでいます。がしかし、その本質が緩和か引締のどちらかに過ぎない以上、多様化は弊害の少ない規模拡大を模索しているだけなのです。
本指標に関する期間推移と相関分布を下図に纏めておきます。先述の通り、政策金利・付利で変更が行われた2015年12月・2016年3月の2回を除いたデータです。
最も指標結果に素直に反応する直後1分足跳幅は過去平均で21pipsです。そして、この平均値21pips以下の反応だったことが65%(およそ3回に2回)に達しています。たまに大きく反応するものの、通常の反応はそれほどでもない、と見なしておけば良いでしょう。
過去の発表結果と市場予想を下図に一覧します。この図は、政策金利や付利の変更が行われたときも含めて図示しています。
こんなグラフを見ても、ECBが次にどうするかなんてわかりません。
過去の直前10-1分足・直前1分足・直後1分足・直後11分足の始値基準ローソク足を示します。
この(2-2. 過去反応)の項は、始値基準ローソク足こそ、政策変更が行われた2015年12月・2016年3月を含めていますが、以下の文章による分析ではそれらを含めていません。
直前10-1分足は、過去平均跳幅が7pipsです。その跳幅が10pips以上だったことは過去3回(頻度15%)あります。
この3回の直後1分足跳幅は26pipsで、これは直後1分足跳幅の過去全平均21pipsより少し大きくなっています。また、この3回の直前10-1分足と直後1分足の方向は1回(33%)だけ一致しています。どちらかと言えば、直前10-1分足跳幅が大きくても、直後1分足は直前10-1分足によって反応方向が示唆されている訳ではないようです。
次に、直前1分足の過去平均跳幅は12pipsです。その跳幅が30pips以上だったことは過去3回(頻度15%)あります。
この3回の直後1分足跳幅は60pipsで、これは直後1分足跳幅の過去全平均21pipsよりかなり大きくなっています(実際には3回のうち1回が124pipsだったため)。また、この3回の直前1分足と直後1分足の方向は1回(33%)一致しています。どちらかと言えば、直前10-1分足跳幅が大きくても、直後1分足は直前10-1分足によって反応方向が示唆されている訳ではないようです。
そして、直後1分足の過去平均跳幅と値幅の差は8pips(1ー値幅/跳幅=戻り比率38%)です。直後11分足のそれは9pips(戻り比率39%)です。直後1分足・直後11分足ともに戻り比率がほぼ40%あり、高値(安値)掴みには気を付けた方が良いでしょう。
金融政策発表時には、指標一致性分析を行いません。
反応一致性分析は、指標発表前後の反応方向に特徴的な偏りがないかを調べています。詳細は「反応一致性分析」をご参照願います。
反応性分析では、過去発表直後の1分足と11分足の跳幅と値幅を使います。この分析で十分なpipsが狙えそうな指標か否かが判断できます。詳細は「反応性分析」をご参照願います。
まず、反応一致性分析の結果を下表に示します。
直前1分足の陰線率が100%と、異常な偏りが見受けられます。本ブログでの判定ルールで、同値終了時はカウントしない、という点はご承知おきください(直前1分足始値と終値が同値のとき)。
直後1分足・直後11分足の陽線率はそれぞれ79%・68%と、これも異常な偏りが見受けられます。
また、直前1分足と直後1分足、直前1分足と直後11分足、直後1分足と直後11分足の方向一致率は、それぞれ12%・24%・79%となっています。
がしかし、直前1分足と直後1分足、直前1分足と直後11分足の方向一致率の低さは、直前1分足の陰線率が異常に高く、直後1分足と直後11分足の陽線率が高いことによって生じているだけです。
どちらに反応するかを決め打ちするのに、先に形成されたローソク足が陽線でも陰線でも、後で形成されるローソク足がそれに応じた方向に反応する、という訳ではないので、信頼度はいまひとつだと言えます。
次に、反応性分析の結果を下表に示します。
直後1分足と直後11分足との方向一致率は79%です。そして、その79%の方向一致時だけに注目したとき、直後1分足跳幅を直後11分足跳幅が超えて反応を伸ばしたことは100%です。本指標は、直後1分足跳幅を超えて直後11分足跳幅が形成される可能性が極めて高い、と言えます。
指標発表時点から見たその後の方向一致率が高く、且つ、反応を伸ばしているのだから、指標発表後に反応方向を確認したら、追撃は早期開始です。
がしかし、指標発表から1分を経過すると、直後1分足終値を超えて直後11分足終値が伸びていたことは32%しかありません。32%なら逆張りした方がマシです。
よって、早期追撃で得たポジションは、指標発表から1分を過ぎたら早めに利確した方が良いということです。但し、3回に2回は発表から11分経過後には、値を戻しつつある可能性が高いことを忘れないようにしましょう。
以下のシナリオで取引に臨みます。
以下は2017年10月29日に追記しています。
本指標発表結果及び反応は次の通りでした。
政策金利と付利は「市場予想通り変更なし」でした。ただ、600億EURの債券買い入れの規模を、来年1月から300億ユーロへと減らしました。緩和政策の縮小開始しました。
その結果、EURは売られて、欧州時間始め(17:00)頃の134.4円から、週末28日05:00には131.9円まで、250pipsの下降となりました。
取引結果は次の通りでした。
シナリオ通りの取引ができず、失敗しました。
まず直前1分足は予定通りショートで確保したものの、先に指標発表前のロングを取ろうとしたところ約定できず、ロングが取れたのが20:45:01です。その結果、ショート解消もできず、一時両建てとなってしまいました。
このポジション取得のまずさもさておき、今回はシナリオ外取引も合算して利益確保できたものの、後述するようにそもそもシナリオが負けシナリオでした。
事前調査分析内容を、以下に検証します
事前準備していたシナリオは次の通りです。
下表に、本ブログを始めてからの本指標シナリオでの取引成績を纏めておきます。
本記事は、同じ指標の発表がある度に更新を繰り返して精度向上を図り、過去の教訓を次の発表時の取引で活かせるように努めています。がしかし、それでも的中率は75%程度に留まり、100%ではありません。詳細は「1. FXは上達するのか」をご参照ください。
そして、本記事は筆者個人の見解に基づいています。本記事に含まれる価格・データ・その他情報等は、本記事に添付されたリンク先とは関係ありません。また、取引や売買における意思決定を、本記事の記載通りに行うことは適切ではありません。そして、本記事の内容が資格を持った投資専門家の助言ではないことを明記しておきます。記載内容のオリジナリティや信頼性確保には努めているものの、それでも万全のチェックは行えていない可能性があります。
ポジションを持つ最終的なご判断は読者ご自身の責任となります。その点を予めご了承の上、本記事がFXを楽しむ一助となれば幸いです。
本記事における分析シート、一部乃至は一連の体系化された手順を、個人の取引以外の目的で使用・公開・二次利用を行う場合には、著作権者及びFX手法研究会に対し、連絡を取り何らかの合意を行う必要があります。
T.指標予想要点
2017年10月26日20:45に欧州金融政策発が発表されます。21:30からはECB総裁の記者会見が予定されており、政策変更がない場合、発表後すぐにそちらを睨んだ動きへと移行します。
今回の市場予想と前回結果は次の通りです。
金融政策発表時には、何らかの変更が予想されている場合とそうでない場合とで、全く様相が異なります。以下、特に断らない限り「今回は現状維持」という予想を前提に話を進めます。
すなわち、過去に政策金利・付利で変更が行われた2015年12月(付利を△0.2%から△0.3%に変更)、2016年3月(政策金利を0.05%から0%に、付利を△0.3%から△0.4%に変更)の2回を除いたデータに基づく分析を行っています。
そうした「市場予想通り現状維持」だった場合の本指標の特徴は以下の通りです。
- 発表前から大きく動くことが多く、その動きが発表後の反応方向と関係ありません。そして、発表後初期反応の影響はせいぜい数分間と見なした方が良く、発表から11分経過後に1分後の値幅を伸ばしていたことは32%しかありません。
発表前からばたばたと動いて、どちらに伸びるかなんてわかりません。 - 過去の直前1分足の陰線率は100%、直後1分足の陽線率は79%と、ちょっと異常な偏りがあります。これら確率を見て逆張りは論外です。それぞれのローソク足で逆張りは論外なので、選択肢は「順張り決め打ち」か「取引しない」の2通りです。
- ポジション取得以前の動きと因果関係がありそうなシナリオは次の通りです。
ひとつは、発表後に追撃ポジションを取り、それが直後1分足値幅より小さいポイントなら、発表から1分を過ぎてからもっと利幅を伸ばせる確率が非常に高くなります。がしかし、このポジションは長持ちすべきではありません。発表から11分後に1分後の値幅を伸ばしていたことは32%しかないからです。
よって、もうひとつは発表後1分を過ぎてから逆張りの機会を狙う、というものです。但し、これは逆張りになるので、チャンスを待ってチャンスが無ければ取引しない、という意思が必要です。
チャンスとは、例えば直後1分足終値を超えて反応を伸ばして、何らかのチャートポイント付近(レジスタンスやサポート)に達したとき、です。
また、直後1分足値幅を超えた反応が戻るとき、直後1分足終値がレジスタンスやサポートになることが多いでしょう。このレジスタンスやサポートを抜けられずに値を戻しやすい、ということです。
以下のシナリオで取引に臨みます。
- 直前1分足は陰線と見込みます。
- 直後1分足は陽線と見込みます。
- 追撃は早期開始・短期利確を狙います。また、発表から1分を過ぎて直後1分足終値よりも値幅が大きくなったときに、逆張りでの短期取引を狙います。
以上の詳細ないしは論拠は、以下の「T.調査・分析」に記しています。
U.過去調査詳細
公開情報や既出情報に基づく調査を行い、過去の指標と反応の関係を比較分析しています。方向に関する的中率に比べ、程度に関する的中率は残念ながら低いというのが実情です。利確・損切の目安は、過去平均値を最近の反応の大小と見比べて感覚的に微修正しています。
【1. 指標概要】
以前、黒田日銀総裁が言ったように金融政策の手段は多岐に亘ります。
まず「政策金利」とは、中銀が市中銀行に対して融資をする際の金利のことを指しており、日本の場合には「無担保コール翌日物金利」を指しています。
以前は金利政策のことを指して「公定歩合」と呼ばれていました。がしかし、現在は金利が自由化されているため、公定歩合による金利操作を行うことができません。それで、日銀が無担保コール翌日物市場という短期金融市場に直接介入して短期金利を操作しているのです。
公定歩合(「基準割引率および基準貸付利率」)というものは残っているものの、これは短期金融市場における金利上限として機能しているだけであり、政策金利ではありません。
そして、ECBの「預金ファシリティー金利」とは日銀における「付利」に相当します。
市中銀行の貸出金利は、付利の水準が貸出金利下限として機能するため、付利の上げ下げが中銀金融政策の手段たり得ます。
但し、日欧のように付利がマイナスになることを「マイナス金利」といい、これは自国資金が他国通貨での運用に流れるため、通貨安を招くと批判を受けています。
また、米日欧の中銀が相次いで実施した中銀による国債等の買い入れ施策は、買入にせよ売却にせよ、そのペース(規模)を制御することで金融政策たり得ています。
かつてのような金利操作だけでは政策効果が薄まってしまい、何だかこうした中銀金融政策の多様化が進んでいます。がしかし、その本質が緩和か引締のどちらかに過ぎない以上、多様化は弊害の少ない規模拡大を模索しているだけなのです。
ーーー$€¥ーーー
本指標に関する期間推移と相関分布を下図に纏めておきます。先述の通り、政策金利・付利で変更が行われた2015年12月・2016年3月の2回を除いたデータです。
最も指標結果に素直に反応する直後1分足跳幅は過去平均で21pipsです。そして、この平均値21pips以下の反応だったことが65%(およそ3回に2回)に達しています。たまに大きく反応するものの、通常の反応はそれほどでもない、と見なしておけば良いでしょう。
【2. 既出情報】
(2-1. 過去情報)
(2-1. 過去情報)
過去の発表結果と市場予想を下図に一覧します。この図は、政策金利や付利の変更が行われたときも含めて図示しています。
こんなグラフを見ても、ECBが次にどうするかなんてわかりません。
(2-2. 過去反応)
過去の直前10-1分足・直前1分足・直後1分足・直後11分足の始値基準ローソク足を示します。
この(2-2. 過去反応)の項は、始値基準ローソク足こそ、政策変更が行われた2015年12月・2016年3月を含めていますが、以下の文章による分析ではそれらを含めていません。
直前10-1分足は、過去平均跳幅が7pipsです。その跳幅が10pips以上だったことは過去3回(頻度15%)あります。
この3回の直後1分足跳幅は26pipsで、これは直後1分足跳幅の過去全平均21pipsより少し大きくなっています。また、この3回の直前10-1分足と直後1分足の方向は1回(33%)だけ一致しています。どちらかと言えば、直前10-1分足跳幅が大きくても、直後1分足は直前10-1分足によって反応方向が示唆されている訳ではないようです。
次に、直前1分足の過去平均跳幅は12pipsです。その跳幅が30pips以上だったことは過去3回(頻度15%)あります。
この3回の直後1分足跳幅は60pipsで、これは直後1分足跳幅の過去全平均21pipsよりかなり大きくなっています(実際には3回のうち1回が124pipsだったため)。また、この3回の直前1分足と直後1分足の方向は1回(33%)一致しています。どちらかと言えば、直前10-1分足跳幅が大きくても、直後1分足は直前10-1分足によって反応方向が示唆されている訳ではないようです。
そして、直後1分足の過去平均跳幅と値幅の差は8pips(1ー値幅/跳幅=戻り比率38%)です。直後11分足のそれは9pips(戻り比率39%)です。直後1分足・直後11分足ともに戻り比率がほぼ40%あり、高値(安値)掴みには気を付けた方が良いでしょう。
【3. 定型分析】
金融政策発表時には、指標一致性分析を行いません。
反応一致性分析は、指標発表前後の反応方向に特徴的な偏りがないかを調べています。詳細は「反応一致性分析」をご参照願います。
反応性分析では、過去発表直後の1分足と11分足の跳幅と値幅を使います。この分析で十分なpipsが狙えそうな指標か否かが判断できます。詳細は「反応性分析」をご参照願います。
まず、反応一致性分析の結果を下表に示します。
直前1分足の陰線率が100%と、異常な偏りが見受けられます。本ブログでの判定ルールで、同値終了時はカウントしない、という点はご承知おきください(直前1分足始値と終値が同値のとき)。
直後1分足・直後11分足の陽線率はそれぞれ79%・68%と、これも異常な偏りが見受けられます。
また、直前1分足と直後1分足、直前1分足と直後11分足、直後1分足と直後11分足の方向一致率は、それぞれ12%・24%・79%となっています。
がしかし、直前1分足と直後1分足、直前1分足と直後11分足の方向一致率の低さは、直前1分足の陰線率が異常に高く、直後1分足と直後11分足の陽線率が高いことによって生じているだけです。
どちらに反応するかを決め打ちするのに、先に形成されたローソク足が陽線でも陰線でも、後で形成されるローソク足がそれに応じた方向に反応する、という訳ではないので、信頼度はいまひとつだと言えます。
次に、反応性分析の結果を下表に示します。
直後1分足と直後11分足との方向一致率は79%です。そして、その79%の方向一致時だけに注目したとき、直後1分足跳幅を直後11分足跳幅が超えて反応を伸ばしたことは100%です。本指標は、直後1分足跳幅を超えて直後11分足跳幅が形成される可能性が極めて高い、と言えます。
指標発表時点から見たその後の方向一致率が高く、且つ、反応を伸ばしているのだから、指標発表後に反応方向を確認したら、追撃は早期開始です。
がしかし、指標発表から1分を経過すると、直後1分足終値を超えて直後11分足終値が伸びていたことは32%しかありません。32%なら逆張りした方がマシです。
よって、早期追撃で得たポジションは、指標発表から1分を過ぎたら早めに利確した方が良いということです。但し、3回に2回は発表から11分経過後には、値を戻しつつある可能性が高いことを忘れないようにしましょう。
【4. シナリオ作成】
以下のシナリオで取引に臨みます。
- 直前1分足は陰線と見込みます。
- 直後1分足は陽線と見込みます。
- 追撃は早期開始・短期利確を狙います。また、発表から1分を過ぎて直後1分足終値よりも値幅が大きくなったときに、逆張りでの短期取引を狙います。
以上
2017年10月26日20:45発表
以下は2017年10月29日に追記しています。
V.発表結果検証
【5. 発表結果】
(5-1. 指標結果)
本指標発表結果及び反応は次の通りでした。
政策金利と付利は「市場予想通り変更なし」でした。ただ、600億EURの債券買い入れの規模を、来年1月から300億ユーロへと減らしました。緩和政策の縮小開始しました。
その結果、EURは売られて、欧州時間始め(17:00)頃の134.4円から、週末28日05:00には131.9円まで、250pipsの下降となりました。
(5-2. 取引結果)
取引結果は次の通りでした。
シナリオ通りの取引ができず、失敗しました。
まず直前1分足は予定通りショートで確保したものの、先に指標発表前のロングを取ろうとしたところ約定できず、ロングが取れたのが20:45:01です。その結果、ショート解消もできず、一時両建てとなってしまいました。
このポジション取得のまずさもさておき、今回はシナリオ外取引も合算して利益確保できたものの、後述するようにそもそもシナリオが負けシナリオでした。
【6. 分析検証】
(6-1. 分析検証)
事前調査分析内容を、以下に検証します
- 分析では、政策金利と付利についてのみ扱っていました。前週末の勉強が不徹底です。その結果、「発表後初期反応の影響はせいぜい数分間と見なした方が良く、発表から11分経過後に1分後の値幅を伸ばしていたことは32%しかありません」という、いつもの「市場予想通り現状維持」とは全く違う動きとなりました。
- 今回は指標発表の直前・直後の取引を行うべきではありませんでした。
過去の直前1分足の陰線率は100%、直後1分足の陽線率は79%でしたが、今回は直前1分足が陽線、直後1分足が陰線でした。
(6-2. シナリオ検証)
事前準備していたシナリオは次の通りです。
- 直前1分足は陰線と見込みました。結果は陽線です。
- 直後1分足は陽線と見込みました。結果は陰線です。
- 追撃は早期開始・短期利確を狙いました。また、発表から1分を過ぎて直後1分足終値よりも値幅が大きくなったときに、逆張りでの短期取引を狙いました。結果こそ当たりましたが、こんなものは当たったことになりません。
下表に、本ブログを始めてからの本指標シナリオでの取引成績を纏めておきます。
以上
ーーー注記ーーー
本記事は、同じ指標の発表がある度に更新を繰り返して精度向上を図り、過去の教訓を次の発表時の取引で活かせるように努めています。がしかし、それでも的中率は75%程度に留まり、100%ではありません。詳細は「1. FXは上達するのか」をご参照ください。
そして、本記事は筆者個人の見解に基づいています。本記事に含まれる価格・データ・その他情報等は、本記事に添付されたリンク先とは関係ありません。また、取引や売買における意思決定を、本記事の記載通りに行うことは適切ではありません。そして、本記事の内容が資格を持った投資専門家の助言ではないことを明記しておきます。記載内容のオリジナリティや信頼性確保には努めているものの、それでも万全のチェックは行えていない可能性があります。
ポジションを持つ最終的なご判断は読者ご自身の責任となります。その点を予めご了承の上、本記事がFXを楽しむ一助となれば幸いです。
ーーー注記ーーー
本記事における分析シート、一部乃至は一連の体系化された手順を、個人の取引以外の目的で使用・公開・二次利用を行う場合には、著作権者及びFX手法研究会に対し、連絡を取り何らかの合意を行う必要があります。
以上
2017年10月23日
独国景気指標「PMI速報値」発表前後のEURJPY反応分析(2017年10月24日16:30発表結果検証済)
以下、「T.調査・分析」を事前投稿し、「U.結果・検証」を事後投稿しています。ブログの日付は事前投稿日となっています。指標発表後に事後投稿し、その日時は「U.結果・検証」のタイトル行付近に記載しています。
2017年10月24日16:30に独国景気指標「PMI速報値」が発表されます。発表内容は「総合」「製造業」「サービス業」で、今回発表されるのは2017年10月分の集計結果です。
本指標発表時刻30分前には仏国PMI速報値が発表され、30分後には欧州PMI速報値が発表されます。本来ならば、本指標も含めて30分毎に発表されるこれら指標を通して取引を行う方が望ましいはずです。とは言え、30分毎に3回の発表だと、お勤めの方は隙を見てちょちょっと取引という訳にもいきません。いずれ、30分毎の関連取引を続けて行うための準備や研究にも着手したい、と思います。
ともあれ、一連のPMI速報値において最も重要で注目を集めているのは、欧州で最も経済規模が大きい独国PMI速報値です。
今回の市場予想と前回結果は次の通りです。市場予想は本記事投稿時点(10月22日)の値です。市場予想は、発表前に確認しておきましょう。
本指標の特徴は以下の通りです。
以上の本指標特徴と、後述する調査・分析結果を踏まえて、以下のシナリオで取引に臨みます。
以上の詳細ないしは論拠は、以下の「T.調査・分析」に記しています。
公開情報や既出情報に基づく調査を行い、過去の指標と反応の関係を比較分析しています。方向に関する的中率に比べ、程度に関する的中率は残念ながら低いというのが実情です。利確・損切の目安は、過去平均値を最近の反応の大小と見比べて感覚的に微修正しています。
PMIは、企業購買担当者に直接調査して算出されるため、景気実態を正確に反映した先行指標と言われています。
一般論として、製造業の材料・部品調達は、数か月先の取引先動向や製品需要から仕入れを行うため、それだけの先行性があると考えられます。それよりは先行性が劣るものの、サービス業の仕入れも機会喪失を避けるため、消費者の動向に先んじようと必死です。
がしかし、だからと言って製造業景況感の方がサービス業景況感よりも先行性がある訳とは限りません。
昔と違って、流通経路が可視化・効率化され、企業購買部門の力量が向上し、今では商社を通じた海外取引は決して多くありません。サービス業の仕入れに至っては、国内外を問わず、ほぼ消費動向とリアルタイムで一致しつつあるのです。
指数の解釈は、50%を上回ると景気拡大・50%を下回ると景気後退、です。
指数の意義は、景気転換をGDPよりも先行示唆することと、です。
本指標の指標発表後の反応の跳幅・値幅の期間毎の推移を下図に示します。
最も指標結果に素直に反応する直後1分足跳幅が10pipsにも届いていません。期間毎の反応は、以前からほぼ変化がありません。直近の反応程度も同様です。
過去の発表結果と市場予想を下図に一覧します。下図は発表結果と市場予想をプロットしています。そして、発表結果は後に修正値が発表されても、このグラフでは修正していません。
グラフは、「総合」と「製造業」とが明確な上昇基調です。一方、「サービス業」は前回こそ大きく改善したものの、上昇基調とは言えません。これらグラフ推移から、反応方向と相関が高い回帰式を求めました。下表は2015年1月から2017年6月までの29回分のデータに基づいています。
上表から、事後差異と、事後差異に最も素直に反応すると見なせる直後1分足との方向一致率は、製造業>総合>サービス業、の順です。直後1分足の方向は、1✕総合の差異+3✕製造業の差異ー1✕サービス業の差異、で求めた解の符号との一致率が高くなります(プラスなら陽線、マイナスなら陰線)。一致率は83%です。
次に、上式の差異に実態差異を代入し、その結果を先行発表されているZEWと対比してみます。
ZEWは、同月集計結果が先に発表される総合指数です(製造業もサービス業も含めた企業景況感)です。両指標間にもし相関があるなら、それは事前差異(市場予想ー前回結果)や事後差異(発表結果ー市場予想)でなく、実態差異(発表結果ー前回結果)の一致率が高くなるはずです。
ZEWは現況指数と期待指数からなります。ここでは、それらの差異を加えた合成値を求め、その各実態差異と本指標の実態差異との方向一致率を求めました。対比期間は、2015年1月から前回2017年9月分までです。
同月発表のZEW期待指数の実態差異は、本指標と一致率が高いと言えないことがわかりました。最もアテになるZEW期待指数との方向一致率も、本指標は58%しかありません。
よって、単月毎の指標結果を比較する限り、ZEWと本指標は同じ景気指標であるにも関わらず、前月との増減方向すら一致しないことが確認できました。
過去の直前10-1分足・直前1分足・直後1分足・直後11分足の始値基準ローソク足を示します。
過去ローソク足の特徴を捉える分析では、過去の反応自体が小さいと、通常の値動きとの分離解釈が難しくなります。
まず、直前10-1分足は、過去平均跳幅が10pipsです。但し、この平均値には2016年3月分データが含まれています。同月のみ、直前10-1分足跳幅が58pipsと異常に高くなっています。この58pipsを除いて、過去32回の過去平均跳幅を集計すると9pipsとなります。あまり変わりませんね。面倒だから、過去平均は10pipsとして特徴を調べておきます。
直前10-1分足跳幅が15pips以上だったことは過去3回(頻度9%)あります。
この3回の直後1分足跳幅は1回が27pipsと大きいものの、2回は12pipsと5pipsです。直前10-1分足が大きく跳ねても、それが直後1分足も大きく跳ねる予兆とは言えません。
次に、この3回の直前10-1分足と直後1分足の方向は3回とも一致しています(一致率100%)。事例が3回しかないものの、一致率100%ならアテにできます。
次に、直前1分足の過去平均跳幅は4pipsです。この跳幅が10pips以上だったことは過去1回(頻度3%)です。
この1回の直後1分足跳幅は11pipsで、これは過去全平均8pipsと大して変わりません。また、このとき直前1分足と直後1分足の方向は一致しています。
つまり、直前1分足が大きく動いたときには、指標発表直後の反応方向を示唆している可能性があります。その反応が大きいか小さいかは、1回しか事例がないのでわかりません。
そして、直後1分足の過去平均跳幅は8pipsです。この跳幅が15pipsを超えたことは過去2回(頻度6%)しかなく、本指標が安定して反応が小さいことがわかります。この2回の直後1分足が15pips以上となったときは、直後11分足跳幅が直後1分足跳幅を2回とも超えています。
直後11分足は、過去平均跳幅が16pips、過去平均値幅が11pipsです。
平均値を見る限り、直後1分足跳幅よりも直後11分足跳幅は8pipsしか大きくなく、直後1分足終値より直後11分足跳幅も10pipsしか大きくありません。本指標の利確の目安は、安全を見てその半分だとすると、せいぜい4〜5pipsということになります。
反応性分析では、過去発表直後の1分足と11分足の跳幅と値幅を使います。この分析で十分なpipsが狙えそうな指標か否かが判断できます。詳細は「反応性分析」をご参照願います。
反応一致性分析は、指標発表前後の反応方向に特徴的な偏りがないかを調べています。詳細は「反応一致性分析」をご参照願います。
指標一致性分析は、指標の前回結果と市場予想の差(事前差異)と、発表結果と市場予想の差(事後差異)と、発表結果と前回結果の差(実態差異)を求め、そのプラス・マイナスと反応方向に偏りがないかを調べています。詳細は「指標一致性分析」をご参照願います。
まず、指標一致性分析の結果を下図に示します。
市場予想は前回結果に対し低めになりがちです(事前差異のマイナス率が67%)。がしかし、発表結果は市場予想よりも高めになりがちです(事後差異のプラス率が61%)。市場予想があまりアテにならない指標だと言えるでしょう。
そして、事前差異と直後1分足の方向一致率が25%(不一致率75%)です。今回の事前差異はマイナスなので、直前10-1分足が陽線となる期待的中率は75%ということになります。
また、事後差異と直後1分足の方向一致率は84%で、これは発表結果の良し悪しに素直に反応する指標だということです。
次に、反応一致性分析の結果を下図に示します。
直前1分足の陰線率が77%となっており、異常な偏りがあります。
そして、どのローソク足も他のローソク足との方向一致率が30%以下もしくは70%以上にはなっていません。つまり、本指標は反応方向に偏りがなく、取引参加者は発表結果を予見できている訳ではありません。
最後に、反応性分析の結果を下図に示します。
直後1分足と直後11分足との方向一致率は66%です。そして、その66%の方向一致時だけに着目すると、直後1分足と直後11分足の跳値同士・終値同士で反応が伸びたことは各90%・81%です。
方向一致率が高く、直後1分足跳幅を超えて直後11分足跳幅が伸びた確率も高いので、反応方向を確認したら早期追撃開始です。
一方、直後1分足終値がついた時点では、それからも反応が伸び続けて直後11分足終値が直後1分足終値を超えた確率が53%です。本指標はしつこい追撃には向いていません。
以下のシナリオで取引に臨みます。
以下は2017年10月25日に追記しています。
本指標発表結果及び反応は次の通りでした。
結果は、総合とサービス業が前回・予想を下回り、製造業が前回を下回ったものの予想を上回り、反応は陰線でした。
市場予想は、本記事作成時から総合と製造業が僅かに上方に改定されていました。
どの項目も前回を下回ったものの、どの項目もグラフ推移が下降に転じたようには見えません。
取引結果は次の通りでした。
負けました。大したことはありません。
事前調査・分析内容を以下に検証しておきます。
事前準備していたシナリオは次の通りです。
下表に、本ブログを始めてからの本指標シナリオでの取引成績を纏めておきます。
本記事は、同じ指標の発表がある度に更新を繰り返して精度向上を図り、過去の教訓を次の発表時の取引で活かせるように努めています。がしかし、それでも的中率は75%程度に留まり、100%ではありません。詳細は「1. FXは上達するのか」をご参照ください。
そして、本記事は筆者個人の見解に基づいています。本記事に含まれる価格・データ・その他情報等は、本記事に添付されたリンク先とは関係ありません。また、取引や売買における意思決定を、本記事の記載通りに行うことは適切ではありません。そして、本記事の内容が資格を持った投資専門家の助言ではないことを明記しておきます。記載内容のオリジナリティや信頼性確保には努めているものの、それでも万全のチェックは行えていない可能性があります。
ポジションを持つ最終的なご判断は読者ご自身の責任となります。その点を予めご了承の上、本記事がFXを楽しむ一助となれば幸いです。
本記事における分析シート、一部乃至は一連の体系化された手順を、個人の取引以外の目的で使用・公開・二次利用を行う場合には、著作権者及びFX手法研究会に対し、連絡を取り何らかの合意を行う必要があります。
2017年10月24日16:30に独国景気指標「PMI速報値」が発表されます。発表内容は「総合」「製造業」「サービス業」で、今回発表されるのは2017年10月分の集計結果です。
本指標発表時刻30分前には仏国PMI速報値が発表され、30分後には欧州PMI速報値が発表されます。本来ならば、本指標も含めて30分毎に発表されるこれら指標を通して取引を行う方が望ましいはずです。とは言え、30分毎に3回の発表だと、お勤めの方は隙を見てちょちょっと取引という訳にもいきません。いずれ、30分毎の関連取引を続けて行うための準備や研究にも着手したい、と思います。
ともあれ、一連のPMI速報値において最も重要で注目を集めているのは、欧州で最も経済規模が大きい独国PMI速報値です。
今回の市場予想と前回結果は次の通りです。市場予想は本記事投稿時点(10月22日)の値です。市場予想は、発表前に確認しておきましょう。
本指標の特徴は以下の通りです。
- PMIは、速報値で取引を行い、改定値では取引しません。改定値は反応が小さくなりがちです。
改定値では、製造業とサービス業が別の日に発表されます。製造業は、事後差異(発表結果ー市場予想)が0となることが多く、反応方向が指標結果からは読み取れません。サービス業は、事後差異にプラスかマイナスの符号が付くことは多いものの、やはり反応は小さくなりがちです。 - 速報値は速報であるだけなく、製造業・サービス業が同時に発表されるため、対象範囲の広さに応じて影響(反応)が大きくなりがちです。尤も、それでも反応(直後1分足跳幅平均)は独国・欧州ともに小さい(10pips未満)です。
- 本指標の実態差異(発表結果ー前回結果)は、先行発表されたZEW実態差異との方向一致率は高くありません。同じ景気指標でも、単月毎の増減方向は50%前後です。
それならむしろ、事前差異(市場予想ー前回結果)と直後1分足の方向一致率が25%(不一致率75%)となっているので、そちらの方がよっぽどアテになります。
直後1分足は、事後差異(発表結果ー市場予想)との方向一致率が84%で、かなり素直に反応します。直後1分足と直後11分足の方向一致率66%で、あまり高くありません。。
以上の本指標特徴と、後述する調査・分析結果を踏まえて、以下のシナリオで取引に臨みます。
- 直前1分足は陰線と見込みます。
論拠は、過去の陰線率が77%と、異常な偏りがあるからです。 - 直後1分足は陽線と見込み、指標発表直前にポジションを取得し、発表直後の跳ねで利確/損切します。
論拠は、指標一致性分析の結果、事前差異と直後1分足の方向一致率が25%(不一致率75%)です。今回の事前差異はマイナスなので、直前10-1分足が陽線となる期待的中率は75%ということになります。
但し、過去のローソク足検証の結果から、直前10-1分足が15pips以上跳ねたときか、直前1分足が10pips以上跳ねたときは、それらの値幅方向に直後1分足は反応すると見込みます。指標発表直前にポジションを取り、発表直後の跳ねで利確/損切は同じです。 - 追撃は、初期反応を確認したら早期開始し、発表から1分が過ぎたら利確の機会を探ります。
論拠は、直後1分足と直後11分足の方向一致率こそ66%とやや心もとないものの、両者方向一致時には直後11分足跳幅が直後1分足跳幅を超えて反応を伸ばしたことが90%と高いため、です。
以上の詳細ないしは論拠は、以下の「T.調査・分析」に記しています。
T.調査・分析
公開情報や既出情報に基づく調査を行い、過去の指標と反応の関係を比較分析しています。方向に関する的中率に比べ、程度に関する的中率は残念ながら低いというのが実情です。利確・損切の目安は、過去平均値を最近の反応の大小と見比べて感覚的に微修正しています。
【1. 指標概要】
PMIは、企業購買担当者に直接調査して算出されるため、景気実態を正確に反映した先行指標と言われています。
一般論として、製造業の材料・部品調達は、数か月先の取引先動向や製品需要から仕入れを行うため、それだけの先行性があると考えられます。それよりは先行性が劣るものの、サービス業の仕入れも機会喪失を避けるため、消費者の動向に先んじようと必死です。
がしかし、だからと言って製造業景況感の方がサービス業景況感よりも先行性がある訳とは限りません。
昔と違って、流通経路が可視化・効率化され、企業購買部門の力量が向上し、今では商社を通じた海外取引は決して多くありません。サービス業の仕入れに至っては、国内外を問わず、ほぼ消費動向とリアルタイムで一致しつつあるのです。
指数の解釈は、50%を上回ると景気拡大・50%を下回ると景気後退、です。
指数の意義は、景気転換をGDPよりも先行示唆することと、です。
ーーー$€¥ーーー
本指標の指標発表後の反応の跳幅・値幅の期間毎の推移を下図に示します。
最も指標結果に素直に反応する直後1分足跳幅が10pipsにも届いていません。期間毎の反応は、以前からほぼ変化がありません。直近の反応程度も同様です。
【2. 既出情報】
(2-1. 過去情報)
(2-1. 過去情報)
過去の発表結果と市場予想を下図に一覧します。下図は発表結果と市場予想をプロットしています。そして、発表結果は後に修正値が発表されても、このグラフでは修正していません。
グラフは、「総合」と「製造業」とが明確な上昇基調です。一方、「サービス業」は前回こそ大きく改善したものの、上昇基調とは言えません。これらグラフ推移から、反応方向と相関が高い回帰式を求めました。下表は2015年1月から2017年6月までの29回分のデータに基づいています。
上表から、事後差異と、事後差異に最も素直に反応すると見なせる直後1分足との方向一致率は、製造業>総合>サービス業、の順です。直後1分足の方向は、1✕総合の差異+3✕製造業の差異ー1✕サービス業の差異、で求めた解の符号との一致率が高くなります(プラスなら陽線、マイナスなら陰線)。一致率は83%です。
ーーー$€¥ーーー
次に、上式の差異に実態差異を代入し、その結果を先行発表されているZEWと対比してみます。
ZEWは、同月集計結果が先に発表される総合指数です(製造業もサービス業も含めた企業景況感)です。両指標間にもし相関があるなら、それは事前差異(市場予想ー前回結果)や事後差異(発表結果ー市場予想)でなく、実態差異(発表結果ー前回結果)の一致率が高くなるはずです。
ZEWは現況指数と期待指数からなります。ここでは、それらの差異を加えた合成値を求め、その各実態差異と本指標の実態差異との方向一致率を求めました。対比期間は、2015年1月から前回2017年9月分までです。
同月発表のZEW期待指数の実態差異は、本指標と一致率が高いと言えないことがわかりました。最もアテになるZEW期待指数との方向一致率も、本指標は58%しかありません。
よって、単月毎の指標結果を比較する限り、ZEWと本指標は同じ景気指標であるにも関わらず、前月との増減方向すら一致しないことが確認できました。
(2-2. 過去反応)
過去の直前10-1分足・直前1分足・直後1分足・直後11分足の始値基準ローソク足を示します。
過去ローソク足の特徴を捉える分析では、過去の反応自体が小さいと、通常の値動きとの分離解釈が難しくなります。
まず、直前10-1分足は、過去平均跳幅が10pipsです。但し、この平均値には2016年3月分データが含まれています。同月のみ、直前10-1分足跳幅が58pipsと異常に高くなっています。この58pipsを除いて、過去32回の過去平均跳幅を集計すると9pipsとなります。あまり変わりませんね。面倒だから、過去平均は10pipsとして特徴を調べておきます。
直前10-1分足跳幅が15pips以上だったことは過去3回(頻度9%)あります。
この3回の直後1分足跳幅は1回が27pipsと大きいものの、2回は12pipsと5pipsです。直前10-1分足が大きく跳ねても、それが直後1分足も大きく跳ねる予兆とは言えません。
次に、この3回の直前10-1分足と直後1分足の方向は3回とも一致しています(一致率100%)。事例が3回しかないものの、一致率100%ならアテにできます。
次に、直前1分足の過去平均跳幅は4pipsです。この跳幅が10pips以上だったことは過去1回(頻度3%)です。
この1回の直後1分足跳幅は11pipsで、これは過去全平均8pipsと大して変わりません。また、このとき直前1分足と直後1分足の方向は一致しています。
つまり、直前1分足が大きく動いたときには、指標発表直後の反応方向を示唆している可能性があります。その反応が大きいか小さいかは、1回しか事例がないのでわかりません。
そして、直後1分足の過去平均跳幅は8pipsです。この跳幅が15pipsを超えたことは過去2回(頻度6%)しかなく、本指標が安定して反応が小さいことがわかります。この2回の直後1分足が15pips以上となったときは、直後11分足跳幅が直後1分足跳幅を2回とも超えています。
直後11分足は、過去平均跳幅が16pips、過去平均値幅が11pipsです。
平均値を見る限り、直後1分足跳幅よりも直後11分足跳幅は8pipsしか大きくなく、直後1分足終値より直後11分足跳幅も10pipsしか大きくありません。本指標の利確の目安は、安全を見てその半分だとすると、せいぜい4〜5pipsということになります。
【3. 定型分析】
反応性分析では、過去発表直後の1分足と11分足の跳幅と値幅を使います。この分析で十分なpipsが狙えそうな指標か否かが判断できます。詳細は「反応性分析」をご参照願います。
反応一致性分析は、指標発表前後の反応方向に特徴的な偏りがないかを調べています。詳細は「反応一致性分析」をご参照願います。
指標一致性分析は、指標の前回結果と市場予想の差(事前差異)と、発表結果と市場予想の差(事後差異)と、発表結果と前回結果の差(実態差異)を求め、そのプラス・マイナスと反応方向に偏りがないかを調べています。詳細は「指標一致性分析」をご参照願います。
まず、指標一致性分析の結果を下図に示します。
市場予想は前回結果に対し低めになりがちです(事前差異のマイナス率が67%)。がしかし、発表結果は市場予想よりも高めになりがちです(事後差異のプラス率が61%)。市場予想があまりアテにならない指標だと言えるでしょう。
そして、事前差異と直後1分足の方向一致率が25%(不一致率75%)です。今回の事前差異はマイナスなので、直前10-1分足が陽線となる期待的中率は75%ということになります。
また、事後差異と直後1分足の方向一致率は84%で、これは発表結果の良し悪しに素直に反応する指標だということです。
次に、反応一致性分析の結果を下図に示します。
直前1分足の陰線率が77%となっており、異常な偏りがあります。
そして、どのローソク足も他のローソク足との方向一致率が30%以下もしくは70%以上にはなっていません。つまり、本指標は反応方向に偏りがなく、取引参加者は発表結果を予見できている訳ではありません。
最後に、反応性分析の結果を下図に示します。
直後1分足と直後11分足との方向一致率は66%です。そして、その66%の方向一致時だけに着目すると、直後1分足と直後11分足の跳値同士・終値同士で反応が伸びたことは各90%・81%です。
方向一致率が高く、直後1分足跳幅を超えて直後11分足跳幅が伸びた確率も高いので、反応方向を確認したら早期追撃開始です。
一方、直後1分足終値がついた時点では、それからも反応が伸び続けて直後11分足終値が直後1分足終値を超えた確率が53%です。本指標はしつこい追撃には向いていません。
【4. シナリオ作成】
以下のシナリオで取引に臨みます。
- 直前1分足は陰線と見込みます。
論拠は、過去の陰線率が77%と、異常な偏りがあるからです。 - 直後1分足は陽線と見込み、指標発表直前にポジションを取得し、発表直後の跳ねで利確/損切します。
論拠は、指標一致性分析の結果、事前差異と直後1分足の方向一致率が25%(不一致率75%)です。今回の事前差異はマイナスなので、直前10-1分足が陽線となる期待的中率は75%ということになります。
但し、過去のローソク足検証の結果から、直前10-1分足が15pips以上跳ねたときか、直前1分足が10pips以上跳ねたときは、それらの値幅方向に直後1分足は反応すると見込みます。指標発表直前にポジションを取り、発表直後の跳ねで利確/損切は同じです。 - 追撃は、初期反応を確認したら早期開始し、発表から1分が過ぎたら利確の機会を探ります。
論拠は、直後1分足と直後11分足の方向一致率こそ66%とやや心もとないものの、両者方向一致時には直後11分足跳幅が直後1分足跳幅を超えて反応を伸ばしたことが90%と高いため、です。
以上
2017年10月24日発表
以下は2017年10月25日に追記しています。
V.発表結果検証
【5. 発表結果】
(5-1. 指標結果)
本指標発表結果及び反応は次の通りでした。
結果は、総合とサービス業が前回・予想を下回り、製造業が前回を下回ったものの予想を上回り、反応は陰線でした。
市場予想は、本記事作成時から総合と製造業が僅かに上方に改定されていました。
どの項目も前回を下回ったものの、どの項目もグラフ推移が下降に転じたようには見えません。
(5-2. 取引結果)
取引結果は次の通りでした。
負けました。大したことはありません。
【6. 分析検証】
(6-1. 分析検証)
事前調査・分析内容を以下に検証しておきます。
- 直後1分足跳幅は僅か2pips、直後11分足跳幅も僅かに6pipsの反応でした。
これでは事前分析なんかしても、あまり意味がありません。 - 事後差異はプラスとなり、実態差異はマイナスでした。
それにも関わらず、直後1分足は陰線、直後11分足は陽線となりました。
確率上の問題もあるので、すぐに判別式を見なおす必要はありませんが、次回も続けて外すようならば、判別式におかしな点がないかを見直します。 - 10月17日に発表されたZEWは、実態差異がプラスでした。本指標の今回実態差異はマイナスなので、今回もZEWとは指標結果の実態差異方向が一致しませんでした。一致するかしないかが半々ですから、仕方ありません。
(6-2. シナリオ検証)
事前準備していたシナリオは次の通りです。
- 直前1分足は陰線と見込みました。結果は陽線でした。
- 直後1分足は陽線と見込み、指標発表直前にポジションを取得し、発表直後の跳ねで利確/損切しました。結果は陰線でした。
論拠とした事前差異と直後1分足の方向一致率25%(不一致率75%)が一致しました。これは確率上の問題なので仕方ありません。 - 追撃は、初期反応を確認したら早期開始し、発表から1分が過ぎたら利確の機会を探る方針で臨みました。結果は、直後11分足は最終的に陽線へと反転したので、時間を限っていたことが効を奏しました。
下表に、本ブログを始めてからの本指標シナリオでの取引成績を纏めておきます。
以上
ーーー注記ーーー
本記事は、同じ指標の発表がある度に更新を繰り返して精度向上を図り、過去の教訓を次の発表時の取引で活かせるように努めています。がしかし、それでも的中率は75%程度に留まり、100%ではありません。詳細は「1. FXは上達するのか」をご参照ください。
そして、本記事は筆者個人の見解に基づいています。本記事に含まれる価格・データ・その他情報等は、本記事に添付されたリンク先とは関係ありません。また、取引や売買における意思決定を、本記事の記載通りに行うことは適切ではありません。そして、本記事の内容が資格を持った投資専門家の助言ではないことを明記しておきます。記載内容のオリジナリティや信頼性確保には努めているものの、それでも万全のチェックは行えていない可能性があります。
ポジションを持つ最終的なご判断は読者ご自身の責任となります。その点を予めご了承の上、本記事がFXを楽しむ一助となれば幸いです。
ーーー注記ーーー
本記事における分析シート、一部乃至は一連の体系化された手順を、個人の取引以外の目的で使用・公開・二次利用を行う場合には、著作権者及びFX手法研究会に対し、連絡を取り何らかの合意を行う必要があります。
以上
2017年09月24日
独国景気指標「Ifo景況感調査」発表前後のEURJPY反応分析(2017年9月25日17:00発表結果検証済)
以下、「T.指標予想要点」「U.過去調査詳細」を事前投稿し、「V.発表結果検証」を事後投稿しています。ブログの日付は事前投稿日となっています。指標発表後に事後投稿し、その日時は「V.発表結果検証」のタイトル行付近に記載しています。
2017年9月25日17:00に独国景気指標「Ifo景況指数」が発表されます。今回発表は2017年9月分の集計結果です。
今回の市場予想と前回結果は次の通りです。市場予想は本記事作成時点(9月24日08:00頃)の値です。
※ 市場予想は発表直前に確認しておきましょう。
※ 黄色欄は、後述する事前差異判別式の変数と解です。
本指標の特徴は以下の通りです。
以上の本指標特徴を踏まえ、後記詳述した調査・分析結果に基づき、以下のシナリオで取引に臨みます。
無理に取引するような指標ではありません。
注意すべき点は、週末の独総選挙の結果が出て初めての株取引が行われる時間帯です。トレンドが発生していたら、本指標の影響なんて呑み込まれてしまいます。
以上の詳細ないしは論拠は、以下の「T.調査・分析」に記しています。
公開情報や既出情報に基づく調査を行い、過去の指標と反応の関係を比較分析しています。方向に関する的中率に比べ、程度に関する的中率は残念ながら低いというのが実情です。利確・損切の目安は、過去平均値を最近の反応の大小と見比べて感覚的に微修正しています。
Ifo景況感指数は、約7000社の企業が対象のアンケート調査結果を指数化したものです。調査は「現在」と「半年後」について「生産」「在庫」「受注」「価格」「雇用」に関わる質問に「良い」「同じ」「悪い」で回答します。2000年を100とし、現況と先行きを加重平均して「景況指数」が算出されています。
関連指標には「ZEW景況感指数」と「PMI速報値」があります。
一部で「鉱工業生産との関連性が高いと言われている」「調査対象が7000社の企業担当者のため経済実態を正確に把握できる」という解説も見受けられます。それら記事には、出典・論拠が明らかにされていなかったので、いずれ検証します。
本指標に関する調査期間と、過去の反応程度・分布を下表に纏めておきます。
最も指標結果に素直に反応する直後1分足跳幅は、過去平均で8pipsです。反応は小さな指標ということになります。
直後1分足跳幅の分布は8pips以下に62%が集中しています。ざっくり、20pips以上跳ねたことは10%弱、14pips以上跳ねたことは20%しかありません。含益が出たらさっさと利確しないと、欲張ると勝てない指標です。
取引前には、上下10-20pips付近に何かチャートポイントがないか、確認しておきましょう。
過去の発表結果と市場予想を下図に一覧します。
下図は発表結果と市場予想をプロットしています。市場予想は発表直前の値をプロットし、発表結果は後に修正値が発表されても定時発表値のままをプロットしています。
項目が多いため、個別項目毎に細かくグラフを眺める前に、見るべきポイントを絞り込みましょう。各項目毎に反応方向にどの程度影響しているのかを下表に纏めておきました。
上表の上3行は、各項目をひとつずつ反応方向との一致率を求めています。これは予備計算のようなもので、この予備計算は最も反応方向との一致率が高い項目に注目しています。
この結果から、本指標は予想や結果がどうあれ、どちらに反応するかがわからないということが言えます。
次に、各項目毎にはどちらに反応するかがわからなくても、複数の項目の総合的な良し悪しで反応方向が決まるかどうかを調べてみます。
上から4行目は、事前差異(市場予想ー前回結果)と直前10-1分足の方向一致率が高くなるように、各項目の係数を求めています。
上から5行目は、事後差異(発表結果ー市場予想)と直後1分足の方向一致率が高くなるように、各項目の係数を求めています。
最下段6行目は、実体差異(前回改定値結果ー市場予想)と直後11分足の方向一致率が高くなるように、各項目の係数を求めています。
いずれも、各項目単独よりは反応方向との相関が高まるものの、大した相関ではありません。
景況指数と景況感は、2015年2月分から前回2017年7月分までの31回の発表で、発表結果と市場予想の大小関係が前月と翌月とで入れ替わったことは12回(入れ替わり率39%)です。現況指数は13回(同42%)です。
過去12回に限れば、入れ替わり率は、景況指数25%・景況感42%・現況分析17%です。
本指標は市場予想後追い型です。現在は上昇基調のため、今回の発表結果は市場予想を上回る可能性が高い(期待的中率61%)ということになります。
ZEW景況感調査はIfo景況感指数よりも先に発表され、Ifo指数よりも1か月の先行性がある、という解説を見たこともあります。だから、ZEW指標が注目に値する、という話です。
こういう話は確かめずにはいられません。
指標間一致率の有無を調べるためには、市場予想が絡まない実態差異(発表結果ー前回結果)の一致率を見るべきです。
下図に、本指標発表月を基準とし、ZEW発表月をずらして実態差異一致率を調べました。
結果、少なくとも2015年1月から2017年8月発表までの32回の結果を見比べる限り、一方を前後2か月ずらしても、そんな傾向(先行性・遅行性の関係)はありません。むしろ、同月発表結果の方向一致率が63%と、最も高くなっています。
相関がないとは言えないものの、高い一致率ではありません。
つまり、過去から現在に亘る指標結果の上昇基調や下降基調といった情報は、今回の取引でも参考にできます。がしかし、単月毎の指標結果の良し悪しを比べても、そんなものはアテになりません。上記期間におけるZEW指標とIfo指標とは、前月より翌月が良くなったか悪くなったかすら、一致しないことの方が多いのです。
過去の直前10-1分足・直前1分足・直後1分足・直後11分足の始値基準ローソク足を示します。
まず、直前10-1分足は、過去平均跳幅が8pipsです。その跳幅が10pips以上だったことは過去9回(頻度28%)あります。この9回の直後1分足跳幅は9pipsで、これは直後1分足跳幅の過去全平均9pipsと同じです。そして、この9回の直前10-1分足と直後1分足の方向は6回(67%)一致しています。
次に、直前1分足は、上ヒゲが1-2pips、下ヒゲがほとんどない、という特徴があります。
直前1分足の過去平均跳幅が5pipsです。その跳幅が10pips以上だったことは過去5回(頻度16%)あります。この5回の直後1分足跳幅の平均は9pipsで、これは直後1分足跳幅の過去全平均9pipsと同じです。そして、この5回の直前1分足と直後1分足の方向は1回も一致していません。
そもそも、直前1分足は陰線ばかりだし、直後1分足は陽線ばかりです。
そして、直後1分足の過去平均跳幅と値幅の差は2pips(1ー値幅/跳幅=戻り比率25%)です。直後11分足のそれは6pips(戻り比率43%)です。反応が小さな指標の特徴として、戻り率が大きくなるので、高値(安値)掴みには気を付けましょう。
指標一致性分析は、指標の前回結果と市場予想の差(事前差異)と、発表結果と市場予想の差(事後差異)と、発表結果と前回結果の差(実態差異)を求め、そのプラス・マイナスと反応方向に偏りがないかを調べています。詳細は「指標一致性分析」をご参照願います。
反応一致性分析は、指標発表前後の反応方向に特徴的な偏りがないかを調べています。詳細は「反応一致性分析」をご参照願います。
反応性分析では、過去発表直後の1分足と11分足の跳幅と値幅を使います。この分析で十分なpipsが狙えそうな指標か否かが判断できます。詳細は「反応性分析」をご参照願います。
まず、指標一致性分析の結果を下表に示します。
事後差異のプラス率が72%となっており、市場予想が発表結果に対して低めに偏っています。
但し、ローソク足の方向は各差異との関係が高くありません。事後差異と直後1分足の方向一致率をご覧ください。59%しか一致していません。
これは重要な情報です。発表結果が市場予想より良くても悪くても、指標発表直後の反応方向にあまり関係ないのです。こういう指標で指標一致性分析は意味を持ちません。
次に、反応一致性分析の結果を下表に示します。
直前1分足は陰線率が93%、直後1分足は陽線率が79%と、偏りが目立ちます。直前1分足と直後1分足との方向一致率は10%で、矛盾はありません。
これほど偏りがあるなら、過去の傾向に対して逆張りは考えられません。上記確率に従うか取引しないかが選択肢です。
最後に、反応性分析の結果を下表に示します。
直後1分足と直後11分足との方向一致率は75%です。そして、その75%の方向一致時だけに注目し、直後1分足跳幅を直後11分足跳幅が超えて反応を伸ばしたことは86%です。
指標発表時点から見たその後の方向一致率が高く、且つ、反応を伸ばしているのだから、指標発表後に反応方向を確認したら、追撃を早期開始です。
がしかし、指標発表から1分を経過すると、直後1分足終値を超えて直後11分足終値が伸びていたことは46%と、50%を切っています。直後1分足と直後11分足とが反転したことが25%、直後11分足は直後1分足の値幅を削ったことが29%です。
よって、早期追撃で得たポジションは、発表から1分を過ぎたら早期利確すべきであり、そしてその後の追撃にはあまり適していません。
以上の本指標特徴を踏まえ、後記詳述した調査・分析結果に基づき、以下のシナリオで取引に臨みます。
無理に取引するような指標ではありません。
注意すべき点は、総選挙の結果が出て初めての株取引が行われる時間帯です。トレンドが発生していたら、本指標の影響なんて呑み込まれてしまいます。
以下は2017年9月25日21:00頃に追記しています。
本指標発表結果及び反応は次の通りでした。
結果は、景況指数・景況感・現況分析の全てが前回・予想を下回り、反応は陰線でした。
景況指数は2017年6月分の水準に、景況感は2017年7月分の水準に、現況分析は2017年5月分の水準に、それぞれ戻しました。いずれも2017年7月分・8月分がピークだったため、まだ下降に転じたというほどではありません。
反応は、定刻で5・6秒程度停滞し、それから「ぐん」っと落ちた感じでした。
分析対象外となりますが、上図直後11分足の後はジリジリと値を戻し、17:16には指標発表時点の値にあと3pipsまで戻しました。がしかし、その後は18:45まで下降し、指標発表時点から65pipsの下降となりました。
指標への直接的な反応はおそらく17:01安値の△16pipsまでなのでしょう。その後、18:00頃には独10年債・米10年債の金利低下が起きました。この金利低下も結果で、真因は独選挙結果を受けて連立過半数に目処が立っていないことが、何となくEUR売りに繋がったのではないでしょうか。
取引結果は次の通りでした。
後述するように、発表時刻を跨いだ取引は、分析を外したものの、ポジションを取ったタイミングの問題か、損切にならずに済みました。
がしかし、そのせいで初期反応を陽線と間違えて、陽線側への追撃ポジションを取ってしまって損切です。
事前調査分析内容を以下に検証します。
まず、9月19日に発表されたZEWは、前回を上回っていました。がしかし、前述の通り、Ifoは前回を下回りました。
次に、直前1分足は同値で、直後1分足との方向一致判定が無効となりました。
事前準備していたシナリオは次の通りです。
直前1分足は陰線と見込んでいました。結果は同値終了で判定外です。•直後1分足は陽線と見込みます。
直後1分足の陽線と見込んでいました。結果は陰線で、分析を外しました。
追撃は、シナリオ上の問題はありません。負けたのは、方向を見誤ったため、です。
下表に、本ブログを始めてからの本指標シナリオでの取引成績を纏めておきます。
本記事は、同じ指標の発表がある度に更新を繰り返して精度向上を図り、過去の教訓を次の発表時の取引で活かせるように努めています。がしかし、それでも的中率は75%程度に留まり、100%ではありません。詳細は「1. FXは上達するのか」をご参照ください。
そして、本記事は筆者個人の見解に基づいています。本記事に含まれる価格・データ・その他情報等は、本記事に添付されたリンク先とは関係ありません。また、取引や売買における意思決定を、本記事の記載通りに行うことは適切ではありません。そして、本記事の内容が資格を持った投資専門家の助言ではないことを明記しておきます。記載内容のオリジナリティや信頼性確保には努めているものの、それでも万全のチェックは行えていない可能性があります。
ポジションを持つ最終的なご判断は読者ご自身の責任となります。その点を予めご了承の上、本記事がFXを楽しむ一助となれば幸いです。
本記事における分析シート、一部乃至は一連の体系化された手順を、個人の取引以外の目的で使用・公開・二次利用を行う場合には、著作権者及びFX手法研究会に対し、連絡を取り何らかの合意を行う必要があります。
T.指標予想要点
2017年9月25日17:00に独国景気指標「Ifo景況指数」が発表されます。今回発表は2017年9月分の集計結果です。
今回の市場予想と前回結果は次の通りです。市場予想は本記事作成時点(9月24日08:00頃)の値です。
※ 市場予想は発表直前に確認しておきましょう。
※ 黄色欄は、後述する事前差異判別式の変数と解です。
本指標の特徴は以下の通りです。
- 本指標の指標分析には、あまり意味がありません。
本指標結果を予想するため、例えば、ZEW景況感調査との先行性・遅行性を論じた解説や、PMI速報値の関係を論じた解説が散見されます。これら指標間では、長期的な上昇・下降といった傾向が一致しがちでも、単月毎の指標結果の良し悪しがあまり一致しません。
そもそも、本指標の過去傾向を見る限り、事後差異(発表結果ー市場予想)と直後1分足の方向一致率が59%しかありません。発表結果が市場予想より良くても悪くても、指標発表直後の反応方向にあまり関係ないのです。だから、他の指標との関係性を論じる意味はありません。 - 最も指標結果に素直に反応する直後1分足跳幅は、過去平均で僅か8pipsです。その分布は8pips以下に62%が集中しています。ざっくり、20pips以上跳ねたことは10%弱、14pips以上跳ねたことは20%しかありません。含益が出たらさっさと利確しておかないと勝てません。取引前には、上下10-20pips付近に何かチャートポイントがないか、確認しておきましょう。
- 直前1分足は直後1分足との方向一致率が10%(不一致率90%)となっています。直前1分足の陰線率は93%、直後1分足の陽線率は79%と、異常な偏りがあるためです。これだけ偏りがあると、過去傾向への逆張りは避けて、順張りするか取引しないかが選択肢となります。
そして、指標結果の影響は短時間に限られています。指標発表から1分を経過すると、そのまま同方向に反応を伸ばすか反転するかがほぼ50%となっています。よって、追撃にも向いていません。
以上の本指標特徴を踏まえ、後記詳述した調査・分析結果に基づき、以下のシナリオで取引に臨みます。
- 直前1分足は陰線と見込みます。
直前1分足の過去陰線率は93%と、極端な偏りがあります。但し、過去平均跳幅は僅か5pipsなので、2・3pips取れたら利確した方が良いでしょう。 - 直後1分足は陽線と見込みます。
直後1分足の過去陽線率は79%と、異常な偏りがあります。但し、過去平均跳幅は僅か8pipsなので、4・5pips取れたら利確した方が良いでしょう。ポジションは、指標発表直前に取り、発表直後の跳ねで利確/損切です。 - 追撃を行うなら、初期反応を確認したら早期開始で、指標発表から1分を過ぎたら、早めに利確します。1分以内であっても数pips取れれば利確した方が良い指標です。
追撃にあたっては、直後1分足終値を超えて直後11分足終値が伸びていたことは46%と、50%を切っていることを覚えておきましょう。
無理に取引するような指標ではありません。
注意すべき点は、週末の独総選挙の結果が出て初めての株取引が行われる時間帯です。トレンドが発生していたら、本指標の影響なんて呑み込まれてしまいます。
以上の詳細ないしは論拠は、以下の「T.調査・分析」に記しています。
U.過去調査詳細
公開情報や既出情報に基づく調査を行い、過去の指標と反応の関係を比較分析しています。方向に関する的中率に比べ、程度に関する的中率は残念ながら低いというのが実情です。利確・損切の目安は、過去平均値を最近の反応の大小と見比べて感覚的に微修正しています。
【1. 指標概要】
Ifo景況感指数は、約7000社の企業が対象のアンケート調査結果を指数化したものです。調査は「現在」と「半年後」について「生産」「在庫」「受注」「価格」「雇用」に関わる質問に「良い」「同じ」「悪い」で回答します。2000年を100とし、現況と先行きを加重平均して「景況指数」が算出されています。
関連指標には「ZEW景況感指数」と「PMI速報値」があります。
一部で「鉱工業生産との関連性が高いと言われている」「調査対象が7000社の企業担当者のため経済実態を正確に把握できる」という解説も見受けられます。それら記事には、出典・論拠が明らかにされていなかったので、いずれ検証します。
ーーー$€¥ーーー
本指標に関する調査期間と、過去の反応程度・分布を下表に纏めておきます。
最も指標結果に素直に反応する直後1分足跳幅は、過去平均で8pipsです。反応は小さな指標ということになります。
直後1分足跳幅の分布は8pips以下に62%が集中しています。ざっくり、20pips以上跳ねたことは10%弱、14pips以上跳ねたことは20%しかありません。含益が出たらさっさと利確しないと、欲張ると勝てない指標です。
取引前には、上下10-20pips付近に何かチャートポイントがないか、確認しておきましょう。
【2. 既出情報】
(2-1. 過去情報)
(2-1. 過去情報)
過去の発表結果と市場予想を下図に一覧します。
下図は発表結果と市場予想をプロットしています。市場予想は発表直前の値をプロットし、発表結果は後に修正値が発表されても定時発表値のままをプロットしています。
項目が多いため、個別項目毎に細かくグラフを眺める前に、見るべきポイントを絞り込みましょう。各項目毎に反応方向にどの程度影響しているのかを下表に纏めておきました。
上表の上3行は、各項目をひとつずつ反応方向との一致率を求めています。これは予備計算のようなもので、この予備計算は最も反応方向との一致率が高い項目に注目しています。
この結果から、本指標は予想や結果がどうあれ、どちらに反応するかがわからないということが言えます。
次に、各項目毎にはどちらに反応するかがわからなくても、複数の項目の総合的な良し悪しで反応方向が決まるかどうかを調べてみます。
上から4行目は、事前差異(市場予想ー前回結果)と直前10-1分足の方向一致率が高くなるように、各項目の係数を求めています。
上から5行目は、事後差異(発表結果ー市場予想)と直後1分足の方向一致率が高くなるように、各項目の係数を求めています。
最下段6行目は、実体差異(前回改定値結果ー市場予想)と直後11分足の方向一致率が高くなるように、各項目の係数を求めています。
いずれも、各項目単独よりは反応方向との相関が高まるものの、大した相関ではありません。
ーーー$€¥ーーー
景況指数と景況感は、2015年2月分から前回2017年7月分までの31回の発表で、発表結果と市場予想の大小関係が前月と翌月とで入れ替わったことは12回(入れ替わり率39%)です。現況指数は13回(同42%)です。
過去12回に限れば、入れ替わり率は、景況指数25%・景況感42%・現況分析17%です。
本指標は市場予想後追い型です。現在は上昇基調のため、今回の発表結果は市場予想を上回る可能性が高い(期待的中率61%)ということになります。
ーーー$€¥ーーー
ZEW景況感調査はIfo景況感指数よりも先に発表され、Ifo指数よりも1か月の先行性がある、という解説を見たこともあります。だから、ZEW指標が注目に値する、という話です。
こういう話は確かめずにはいられません。
指標間一致率の有無を調べるためには、市場予想が絡まない実態差異(発表結果ー前回結果)の一致率を見るべきです。
下図に、本指標発表月を基準とし、ZEW発表月をずらして実態差異一致率を調べました。
結果、少なくとも2015年1月から2017年8月発表までの32回の結果を見比べる限り、一方を前後2か月ずらしても、そんな傾向(先行性・遅行性の関係)はありません。むしろ、同月発表結果の方向一致率が63%と、最も高くなっています。
相関がないとは言えないものの、高い一致率ではありません。
つまり、過去から現在に亘る指標結果の上昇基調や下降基調といった情報は、今回の取引でも参考にできます。がしかし、単月毎の指標結果の良し悪しを比べても、そんなものはアテになりません。上記期間におけるZEW指標とIfo指標とは、前月より翌月が良くなったか悪くなったかすら、一致しないことの方が多いのです。
(2-2. 過去反応)
過去の直前10-1分足・直前1分足・直後1分足・直後11分足の始値基準ローソク足を示します。
まず、直前10-1分足は、過去平均跳幅が8pipsです。その跳幅が10pips以上だったことは過去9回(頻度28%)あります。この9回の直後1分足跳幅は9pipsで、これは直後1分足跳幅の過去全平均9pipsと同じです。そして、この9回の直前10-1分足と直後1分足の方向は6回(67%)一致しています。
次に、直前1分足は、上ヒゲが1-2pips、下ヒゲがほとんどない、という特徴があります。
直前1分足の過去平均跳幅が5pipsです。その跳幅が10pips以上だったことは過去5回(頻度16%)あります。この5回の直後1分足跳幅の平均は9pipsで、これは直後1分足跳幅の過去全平均9pipsと同じです。そして、この5回の直前1分足と直後1分足の方向は1回も一致していません。
そもそも、直前1分足は陰線ばかりだし、直後1分足は陽線ばかりです。
そして、直後1分足の過去平均跳幅と値幅の差は2pips(1ー値幅/跳幅=戻り比率25%)です。直後11分足のそれは6pips(戻り比率43%)です。反応が小さな指標の特徴として、戻り率が大きくなるので、高値(安値)掴みには気を付けましょう。
【3. 定型分析】
指標一致性分析は、指標の前回結果と市場予想の差(事前差異)と、発表結果と市場予想の差(事後差異)と、発表結果と前回結果の差(実態差異)を求め、そのプラス・マイナスと反応方向に偏りがないかを調べています。詳細は「指標一致性分析」をご参照願います。
反応一致性分析は、指標発表前後の反応方向に特徴的な偏りがないかを調べています。詳細は「反応一致性分析」をご参照願います。
反応性分析では、過去発表直後の1分足と11分足の跳幅と値幅を使います。この分析で十分なpipsが狙えそうな指標か否かが判断できます。詳細は「反応性分析」をご参照願います。
まず、指標一致性分析の結果を下表に示します。
事後差異のプラス率が72%となっており、市場予想が発表結果に対して低めに偏っています。
但し、ローソク足の方向は各差異との関係が高くありません。事後差異と直後1分足の方向一致率をご覧ください。59%しか一致していません。
これは重要な情報です。発表結果が市場予想より良くても悪くても、指標発表直後の反応方向にあまり関係ないのです。こういう指標で指標一致性分析は意味を持ちません。
次に、反応一致性分析の結果を下表に示します。
直前1分足は陰線率が93%、直後1分足は陽線率が79%と、偏りが目立ちます。直前1分足と直後1分足との方向一致率は10%で、矛盾はありません。
これほど偏りがあるなら、過去の傾向に対して逆張りは考えられません。上記確率に従うか取引しないかが選択肢です。
最後に、反応性分析の結果を下表に示します。
直後1分足と直後11分足との方向一致率は75%です。そして、その75%の方向一致時だけに注目し、直後1分足跳幅を直後11分足跳幅が超えて反応を伸ばしたことは86%です。
指標発表時点から見たその後の方向一致率が高く、且つ、反応を伸ばしているのだから、指標発表後に反応方向を確認したら、追撃を早期開始です。
がしかし、指標発表から1分を経過すると、直後1分足終値を超えて直後11分足終値が伸びていたことは46%と、50%を切っています。直後1分足と直後11分足とが反転したことが25%、直後11分足は直後1分足の値幅を削ったことが29%です。
よって、早期追撃で得たポジションは、発表から1分を過ぎたら早期利確すべきであり、そしてその後の追撃にはあまり適していません。
【4. シナリオ作成】
以上の本指標特徴を踏まえ、後記詳述した調査・分析結果に基づき、以下のシナリオで取引に臨みます。
- 直前1分足は陰線と見込みます。
直前1分足の過去陰線率は93%と、極端な偏りがあります。但し、過去平均跳幅は僅か5pipsなので、2・3pips取れたら利確した方が良いでしょう。 - 直後1分足は陽線と見込みます。
直後1分足の過去陽線率は79%と、異常な偏りがあります。但し、過去平均跳幅は僅か8pipsなので、4・5pips取れたら利確した方が良いでしょう。ポジションは、指標発表直前に取り、発表直後の跳ねで利確/損切です。 - 追撃を行うなら、初期反応を確認したら早期開始で、指標発表から1分を過ぎたら、早めに利確します。
指標発表から1分経過時点で、直後1分足終値を超えて直後11分足終値が伸びていたことは46%と、50%を切っています。
無理に取引するような指標ではありません。
注意すべき点は、総選挙の結果が出て初めての株取引が行われる時間帯です。トレンドが発生していたら、本指標の影響なんて呑み込まれてしまいます。
以上
2017年9月25日17:00発表
以下は2017年9月25日21:00頃に追記しています。
V.発表結果検証
【5. 発表結果】
(5-1. 指標結果)
本指標発表結果及び反応は次の通りでした。
結果は、景況指数・景況感・現況分析の全てが前回・予想を下回り、反応は陰線でした。
景況指数は2017年6月分の水準に、景況感は2017年7月分の水準に、現況分析は2017年5月分の水準に、それぞれ戻しました。いずれも2017年7月分・8月分がピークだったため、まだ下降に転じたというほどではありません。
反応は、定刻で5・6秒程度停滞し、それから「ぐん」っと落ちた感じでした。
分析対象外となりますが、上図直後11分足の後はジリジリと値を戻し、17:16には指標発表時点の値にあと3pipsまで戻しました。がしかし、その後は18:45まで下降し、指標発表時点から65pipsの下降となりました。
指標への直接的な反応はおそらく17:01安値の△16pipsまでなのでしょう。その後、18:00頃には独10年債・米10年債の金利低下が起きました。この金利低下も結果で、真因は独選挙結果を受けて連立過半数に目処が立っていないことが、何となくEUR売りに繋がったのではないでしょうか。
(5-2. 取引結果)
取引結果は次の通りでした。
後述するように、発表時刻を跨いだ取引は、分析を外したものの、ポジションを取ったタイミングの問題か、損切にならずに済みました。
がしかし、そのせいで初期反応を陽線と間違えて、陽線側への追撃ポジションを取ってしまって損切です。
【6. 分析検証】
(6-1. 分析検証)
事前調査分析内容を以下に検証します。
まず、9月19日に発表されたZEWは、前回を上回っていました。がしかし、前述の通り、Ifoは前回を下回りました。
次に、直前1分足は同値で、直後1分足との方向一致判定が無効となりました。
(6-2. シナリオ検証)
事前準備していたシナリオは次の通りです。
直前1分足は陰線と見込んでいました。結果は同値終了で判定外です。•直後1分足は陽線と見込みます。
直後1分足の陽線と見込んでいました。結果は陰線で、分析を外しました。
追撃は、シナリオ上の問題はありません。負けたのは、方向を見誤ったため、です。
下表に、本ブログを始めてからの本指標シナリオでの取引成績を纏めておきます。
以上
ーーー注記ーーー
本記事は、同じ指標の発表がある度に更新を繰り返して精度向上を図り、過去の教訓を次の発表時の取引で活かせるように努めています。がしかし、それでも的中率は75%程度に留まり、100%ではありません。詳細は「1. FXは上達するのか」をご参照ください。
そして、本記事は筆者個人の見解に基づいています。本記事に含まれる価格・データ・その他情報等は、本記事に添付されたリンク先とは関係ありません。また、取引や売買における意思決定を、本記事の記載通りに行うことは適切ではありません。そして、本記事の内容が資格を持った投資専門家の助言ではないことを明記しておきます。記載内容のオリジナリティや信頼性確保には努めているものの、それでも万全のチェックは行えていない可能性があります。
ポジションを持つ最終的なご判断は読者ご自身の責任となります。その点を予めご了承の上、本記事がFXを楽しむ一助となれば幸いです。
ーーー注記ーーー
本記事における分析シート、一部乃至は一連の体系化された手順を、個人の取引以外の目的で使用・公開・二次利用を行う場合には、著作権者及びFX手法研究会に対し、連絡を取り何らかの合意を行う必要があります。
以上
2017年09月18日
独国景気指標「ZEW景況感調査」発表前後のEURJPY反応分析(2017年9月19日18:00発表結果検証済)
以下、「T.指標予想要点」「U.過去調査詳細」を事前投稿し、「V.発表結果検証」を事後投稿しています。ブログの日付は事前投稿日となっています。指標発表後に事後投稿し、その日時は「V.発表結果検証」のタイトル行付近に記載しています。
2017年9月19日18:00に独国景気指標「ZEW景況感調査」が発表されます。今回発表は2017年9月分の集計結果です。
今回の市場予想と前回結果は次の通りです。市場予想は本記事作成時点の値です。
※ 市場予想は発表直前に確認しておきましょう。
※ 黄色欄は、後述する事前差異判別式の変数と解です。
本指標の特徴は以下の通りです。
以下のシナリオで取引に臨みます。
以上の詳細ないしは論拠は、以下の「T.調査・分析」に記しています。
公開情報や既出情報に基づく調査を行い、過去の指標と反応の関係を比較分析しています。方向に関する的中率に比べ、程度に関する的中率は残念ながら低いというのが実情です。利確・損切の目安は、過去平均値を最近の反応の大小と見比べて感覚的に微修正しています。
独国ZEW景況感指数(期待指数)は、独国の今後6カ月の景気見通し(「良い」「同じ」「悪い」)について、アナリスト・機関投資家・市場関係者など約350人を対象に行ったアンケート調査に基づく指標です。指数は、「良い」から「悪い」を引いた数で0が基準になっています。
一般に景況感調査は、プロが調査対象のときと無作為抽出した消費者かによって、事前参考すべき対象が異なります。プロが対象のときは直近の関連指標(含金利・株価)を参考にすべきだし、一般消費者が対象のときは調査月前半のマスコミ報道内容も参考にすると良いでしょう。
ZEWはプロが調査対象ゆえ、マスコミ報道内容よりも直近の指標結果を参考にした方が良いようです。
さて、本指標に絡む話にはオカルトが多いのです。
以下、そのオカルトの代表例を3つ挙げて、事実を述べておきます。他人の話を単なるオカルトと断じる都合上、出典は示せません。他人を非難したり論争をするつもりではなく、読者に事実さえ伝えられれば十分です。
まず、ZEW景況感調査の結果はECBの金融政策に影響を与えている、という解説記事を目にしたことがあります。
けれども、もしそうだとしても、景況感よりも物価指標や実態指標を中銀は重視するはずです。だから、この話が本当だとしても(ECBがZEWを参考にしていたとしても)、ECBの政策を予想する材料とはなりません。
これは「はず」の話ですが、大きな組織が大きな政策決定を事実の裏付けなく決定できる「はず」ないのです。
次に、ZEW景況感調査はIfo景況感指数よりも先に発表され、Ifo指数よりも1か月の先行性がある、という解説を見たこともあります。だから、ZEW指標が注目に値する、という話です。
こういう話は確かめずにはいられません。
詳細はIfo指数の記事で説明しますが、少なくとも2015年1月から2017年7月発表までの31回の結果を見比べる限り、そんな傾向はありません。
確かに、過去から現在に亘る指標結果の上昇基調や下降基調といった情報は、今回の取引でも参考にできます。がしかし、単月毎の指標結果の良し悪しを比べても、そんなものはアテになりません。上記期間におけるZEW指標とIfo指標とは、前月より翌月が良くなったか悪くなったかすら、一致しないことの方が多いのです。
そして最後に、独国ZEWは期待指数と現況指数とが発表されます。多くの資料では期待指数の方が現況指数より重要だという解説が見受けられます。既に終わった現状よりも、将来の景気動向の方が重要だという話は、何となく納得しやすい話です。
がしかし、2015年1月から2017年7月発表までの31回の実績を調べたところ、事後差異(市場予想と発表結果の大小関係)は、期待指数よりも現況指数との方が直後1分足の反応方向との一致率が高くなっています。
きちんと調べないと、事実はわかりません。
尤も、多くの解説では「期待指数の方が重要」と記載され、「何に対して」重要かが記されていません。だから、きっとそれら解説は間違っていないのでしょう。でも、その記事の読者が誰かを考えると、「何に対して」は「指標発表直後の反応に対して」であるべきです。
本指標に関する調査期間と、過去の反応程度・分布を下表に纏めておきます。
最も指標結果に素直に反応する直後1分足跳幅は、過去平均で8pipsしかありません。反応が小さいため、大きなトレンドが発生しているときには、指標発表結果の影響はすぐにトレンドに呑まれてしまいます。だから、こうした反応が小さい指標で取引するときは、例えば、
というやり方が良いでしょう。
個々の取引で大けがさえしなければ、これらを守れば年間を通してプラスにしやすくなるでしょう。
過去の発表結果と市場予想を下図に一覧します。
下図は発表結果と市場予想をプロットしています。市場予想は発表直前の値をプロットし、発表結果は後に修正値が発表されても定時発表値のままをプロットしています。
項目が多いため、個別項目毎に細かくグラフを眺める前に、見るべきポイントを絞り込みましょう。各項目毎に反応方向にどの程度影響しているのかを下表に纏めておきました。
上表の上3行は、独国期待指数と独国現況指数と欧州指数の各項目を、ひとつずつ反応方向との一致率を求めています。これは予備計算のようなもので、この予備計算は最も反応方向との一致率が高い項目に注目しています。
上から4行目は、事前差異(市場予想ー前回結果)と直前10-1分足の方向一致率が高くなるように、各項目の係数を求めています。
上から5行目は、事後差異(発表結果ー市場予想)と直後1分足の方向一致率が高くなるように、各項目の係数を求めています。
最下段6行目は、実体差異(前回改定値結果ー市場予想)と直後11分足の方向一致率が高くなるように、各項目の係数を求めています。
結果、それぞれの式の方向一致率は60%・76%・64%となりました。事後差異と直後1分足の方向一致率が高いので、素直に反応する指標だと言えるでしょう。
ともあれ、1✕独国期待指数の事後差異+2✕独国現況指数の事後差異、を判別式として採用すると、その解の符号(プラスが陽線、マイナスが陰線)と直後1分足の方向一致率が76%となります。
事後判別式係数から、直後1分足方向は独国現況指数の市場予想との差異が大きく影響することがわかりました。
独国現況指数は、2015年2月以降前回までの31回において、前月と当月とを比べて発表結果と市場予想の大小関係が入れ替わったことが13回あります(入れ替わり率42%)。入れ替わり頻度が高く、市場予想後追い型とは言えません。
過去の直前10-1分足・直前1分足・直後1分足・直後11分足の始値基準ローソク足を示します。
まず、直前10-1分足は、2016年7月以前を陽線率が高い時期、それ以降を陰線率が高い時期、と区別することができます。お手元のツールを使って月足チャートをご覧ください。2016年7月頃を境に月足は下降トレンドから上昇トレンドに転換しています。
よって、直前10-1分足の反応方向は、月足チャートのトレンド方向との不一致率がかなり高いように見受けられます。
そして、直前10-1分足は、過去平均跳幅が8pipsです。跳幅が10pips以上だったことは過去9回(頻度28%)あります。この9回の直後1分足跳幅は14pipsで、これは直後1分足跳幅の過去全平均8pipsより大きい、と言えます。そして、この9回の直前10-1分足と直後1分足の方向は7回(78%)一致しています。
つまり、直前10-1分足の反応が平均より少し大きく動いたときには、それが直後1分足の反応方向を示唆しており、反応程度も大きくなりがちです。
次に、直前1分足は陰線側への異常な偏りが見受けられます。
そして、直前1分足の過去平均跳幅は5pipsです。その跳幅が10pips以上だったことは過去5回(頻度16%)あります。この5回の直後1分足跳幅の平均は9pipsで、これは過去全平均8pipsとほぼ同じです。そして、このとき直前1分足と直後1分足の方向は1回も一致していません。この5回の直前1分足は全て陰線で、そのときの直後1分足は全て陽線です。
そして、直後1分足の過去平均跳幅と値幅の差は3pips(1ー値幅/跳幅=戻り比率37%)です。直後11分足のそれは5pips(戻り比率38%)です。反応が小さい指標では、これら戻り率が大きくなる傾向があります。戻り率が大きいことで、余計に勝ちにくい指標となるのです。
これら直後1分足や直後11分足の方向に関する詳細分析は、ローソク足観察よりも他の分析を参照する方が良いでしょう。
指標一致性分析は、指標の前回結果と市場予想の差(事前差異)と、発表結果と市場予想の差(事後差異)と、発表結果と前回結果の差(実態差異)を求め、そのプラス・マイナスと反応方向に偏りがないかを調べています。詳細は「指標一致性分析」をご参照願います。
反応一致性分析は、指標発表前後の反応方向に特徴的な偏りがないかを調べています。詳細は「反応一致性分析」をご参照願います。
反応性分析では、過去発表直後の1分足と11分足の跳幅と値幅を使います。この分析で十分なpipsが狙えそうな指標か否かが判断できます。詳細は「反応性分析」をご参照願います。
まず、指標一致性分析の結果を下表に示します。
事後差異は直後1分足との方向一致率が76%となっています。市場予想に対する発表結果の良し悪しには、素直に反応する傾向があります。
次に、反応一致性分析の結果を下表に示します。
直前1分足は陰線率が90%、直後1分足は陽線率が72%と、偏りが目立ちます。直前1分足と直後1分足の方向一致率は14%(不一致率86%)で、矛盾ありません。
ここで、もし直前1分足が陽線だった場合、直後1分足の陽線率をアテにすべきでしょうか。それとも、不一致率の高さをアテにして、直後1分足は陰線と見なすべきでしょうか。
わかりません。
このブログでは、単純な頻度確率よりも因果関係を含む確率をアテにしています。よって、直前1分足がもし陽線なら、直後1分足の方向は逆に陰線と見込みます。
また、直前10-1分足と直後1分足の方向一致率は69%、直後1分足と直後11分足の方向一致率は71%となっています。
最後に、反応性分析の結果を下表に示します。
直後1分足と直後11分足との方向一致率は71%です。そして、その71%の方向一致時だけに注目すると、直後1分足跳幅を直後11分足跳幅が超えて反応を伸ばしたことが85%です。
指標発表時点から見たその後の方向一致率が高く、且つ、反応を伸ばしているのだから、指標発表後に反応方向を確認したら早期追撃です。
がしかし、指標発表から1分を経過すると、直後1分足終値を超えて直後11分足終値が伸びていたことは、方向一致時こそ60%ですが、全ての場合を踏まえると43%しかありません。直後1分足と直後11分足とが反転したことは29%で、直後11分足が直後1分足の値幅を削ったことも29%あります。
早期追撃で得たポジションの長持ちは避けるべきであり、発表から1分過ぎたら利確の機会を窺う方が良いでしょう。
発表から1分を過ぎたら、追撃には向いていません(どちらに反応が進むかはわかりません)。
以下のシナリオで取引に臨みます。
以下は2017年9月19日20:30頃に追記しています。
本指標発表結果及び反応は次の通りでした。
結果は現況指数・期待指数ともに前回・予想を上回り、反応は陽線でした。
現況指数の直近ピークは2017年6月分の88.0です。今回結果(87.9)は僅かに届きませんでした。期待指数の直近ピークは2017年5月分の20.6です。それ以降、下降が続いていたので、上昇は4か月ぶりです。
つまり、全般的には今回の結果がかなり良かった、ということになります。
この「かなり良かった」結果を受けた反応は「大きく」、直後1分足を超えて直後11分足は反応を伸ばしました。直後1分足跳幅は12pips(過去平均8pips)、直後11分足値幅は16pips(過去平均8pips)、です。
さて、今回の指標結果に関するきちんとした解説記事が出ていたので見ておきました。
ロイターは、今週末の独総選挙が影響していないことと、EUR高への懸念が指標結果に現れていないことを、引用・指摘していました。ブルームバーグは、EUR高が最近進んでいないことと、独中銀月報が7-9月期も力強く成長する見通しを示したことを、引用・指摘していました。
なるほどね。
取引結果は次の通りでした。
17:21の高値134.11から、発表直前17:57に安値133.62を付けるまで、46分間で49pips強(約△1pips/分)の下降トレンドが起きていました。
参考までに、本指標のように反応が小さな指標発表では、発表直後1分間に5pips、10分間に10pipsぐらいが普通です。
反応の小さな指標の発表後10分間と同じぐらいのスピードで、本指標発表前の46分足は動いていたことになります。
けれども、そんな波に乗ってせっかく指標発表前に利確したのに、分析を外してしまって台無しにしたのが今回の取引でした。全体収支はプラスなので、まぁ構わないですが、本ブログでの取引方法の特徴一面が良く表れた取引でした。
事前調査・分析内容において、次回までに再検討を要するのは次の点です。
今回の実態差異判別式結果はマイナスとなっており、これには違和感があります。過去のデータから回帰する限り、実態差異判別式は、−1✕期待指数実態差異+2✕現況指数実態差異ー3✕欧州景況指数実態差異、です。
この判別式の解の符号と過去の直後11分足は、方向一致率が62%です。
がしかし、この式では、今回のように期待指数も現況指数も欧州景況指数も前回結果を上回っても、式の係数のマイナスが大きいため、実態差異判別式の解がマイナスになってしまいます。
繰り返しになりますが、けれどもこのこの判別式の解の符号と過去の直後11分足は、方向一致率が62%です。
この62%という数字は、期待指数(37%)・現況指数(56%)・欧州景況指数(48%)のそれぞれ単独の実態差異と直後11分足の方向一致率より高くなっています。だから、判別式としては有効です。
違和感を解消するためには、式の係数のマイナスを無くすか、マイナス寄与を小さくしなければいけません。もちろん、そうした判別式は、最も直後11分足との方向一致率が高くなる式ではなくなるでしょう。
どちらが良いのか、再検討しておきます。
現状分析において、事前準備していたシナリオに問題はありません。
下表に、本ブログを始めてからの本指標シナリオでの取引成績を纏めておきます。
本記事は、同じ指標の発表がある度に更新を繰り返して精度向上を図り、過去の教訓を次の発表時の取引で活かせるように努めています。がしかし、それでも的中率は75%程度に留まり、100%ではありません。詳細は「1. FXは上達するのか」をご参照ください。
そして、本記事は筆者個人の見解に基づいています。本記事に含まれる価格・データ・その他情報等は、本記事に添付されたリンク先とは関係ありません。また、取引や売買における意思決定を、本記事の記載通りに行うことは適切ではありません。そして、本記事の内容が資格を持った投資専門家の助言ではないことを明記しておきます。記載内容のオリジナリティや信頼性確保には努めているものの、それでも万全のチェックは行えていない可能性があります。
ポジションを持つ最終的なご判断は読者ご自身の責任となります。その点を予めご了承の上、本記事がFXを楽しむ一助となれば幸いです。
本記事における分析シート、一部乃至は一連の体系化された手順を、個人の取引以外の目的で使用・公開・二次利用を行う場合には、著作権者及びFX手法研究会に対し、連絡を取り何らかの合意を行う必要があります。
T.指標予想要点
2017年9月19日18:00に独国景気指標「ZEW景況感調査」が発表されます。今回発表は2017年9月分の集計結果です。
今回の市場予想と前回結果は次の通りです。市場予想は本記事作成時点の値です。
※ 市場予想は発表直前に確認しておきましょう。
※ 黄色欄は、後述する事前差異判別式の変数と解です。
本指標の特徴は以下の通りです。
- 多くの指標解説で期待指数に注目が集まりがちですが、指標発表直後の反応方向との一致率が高いのは現況指数の方です。現況指数の事後差異(発表結果ー市場予想)と直後1分足の方向一致率は75%です。期待指数のそれは46%しかありません。
- 直前10-1分足・直前1分足と直後1分足との方向一致率はそれぞれ69%・14%です。この数字から、本指標の取引参加者は、指標発表後の反応方向がほぼ掴めている可能性があります(自分だけがそのことを知らない、というのは癪ですよね)。
- 指標発表から1分を過ぎてからの追撃は避けた方が良さそうです。直後1分足終値を超えて直後11分足終値が反応を伸ばしたことは43%です。直後1分足や直後11分足の戻り率(1−跳幅/値幅)も40%弱と大きく、追撃で利幅を伸ばすことは難しい指標だと言えるでしょう。
以下のシナリオで取引に臨みます。
- 直前10-1分足は陰線と見込みます。
9月月足は現時点において陽線なので、過去の傾向に基づき、その逆方向に反応する可能性が高い、と見込みます。 - 直前1分足は陰線と見込みます。
但し、過去平均跳幅が5pipsしかありません。1・2pipsで利確しなければいけない場合が多いので、スプレッドが大きいFX会社で取引しているなら、取引は止めておいた方が良いでしょう。 - 直後1分足は、指標発表直前に直前1分足と逆方向にポジションを取得します(期待的中率86%)。
但し、直前10-1分足「跳幅」が10pips以上となったときは、直後1分足は同方向に反応すると見なし、その跳ねた方向に指標発表直前にポジション取得を優先します。
いずれにせよ、利確/損切は指標発表直後の跳ねで行います。 - 追撃するなら、指標発表から1分以内にポジションを取り、1分を過ぎたら早めに利確・損切します。
以上の詳細ないしは論拠は、以下の「T.調査・分析」に記しています。
U.過去調査詳細
公開情報や既出情報に基づく調査を行い、過去の指標と反応の関係を比較分析しています。方向に関する的中率に比べ、程度に関する的中率は残念ながら低いというのが実情です。利確・損切の目安は、過去平均値を最近の反応の大小と見比べて感覚的に微修正しています。
【1. 指標概要】
独国ZEW景況感指数(期待指数)は、独国の今後6カ月の景気見通し(「良い」「同じ」「悪い」)について、アナリスト・機関投資家・市場関係者など約350人を対象に行ったアンケート調査に基づく指標です。指数は、「良い」から「悪い」を引いた数で0が基準になっています。
一般に景況感調査は、プロが調査対象のときと無作為抽出した消費者かによって、事前参考すべき対象が異なります。プロが対象のときは直近の関連指標(含金利・株価)を参考にすべきだし、一般消費者が対象のときは調査月前半のマスコミ報道内容も参考にすると良いでしょう。
ZEWはプロが調査対象ゆえ、マスコミ報道内容よりも直近の指標結果を参考にした方が良いようです。
ーーー$€¥ーーー
さて、本指標に絡む話にはオカルトが多いのです。
以下、そのオカルトの代表例を3つ挙げて、事実を述べておきます。他人の話を単なるオカルトと断じる都合上、出典は示せません。他人を非難したり論争をするつもりではなく、読者に事実さえ伝えられれば十分です。
まず、ZEW景況感調査の結果はECBの金融政策に影響を与えている、という解説記事を目にしたことがあります。
けれども、もしそうだとしても、景況感よりも物価指標や実態指標を中銀は重視するはずです。だから、この話が本当だとしても(ECBがZEWを参考にしていたとしても)、ECBの政策を予想する材料とはなりません。
これは「はず」の話ですが、大きな組織が大きな政策決定を事実の裏付けなく決定できる「はず」ないのです。
次に、ZEW景況感調査はIfo景況感指数よりも先に発表され、Ifo指数よりも1か月の先行性がある、という解説を見たこともあります。だから、ZEW指標が注目に値する、という話です。
こういう話は確かめずにはいられません。
詳細はIfo指数の記事で説明しますが、少なくとも2015年1月から2017年7月発表までの31回の結果を見比べる限り、そんな傾向はありません。
確かに、過去から現在に亘る指標結果の上昇基調や下降基調といった情報は、今回の取引でも参考にできます。がしかし、単月毎の指標結果の良し悪しを比べても、そんなものはアテになりません。上記期間におけるZEW指標とIfo指標とは、前月より翌月が良くなったか悪くなったかすら、一致しないことの方が多いのです。
そして最後に、独国ZEWは期待指数と現況指数とが発表されます。多くの資料では期待指数の方が現況指数より重要だという解説が見受けられます。既に終わった現状よりも、将来の景気動向の方が重要だという話は、何となく納得しやすい話です。
がしかし、2015年1月から2017年7月発表までの31回の実績を調べたところ、事後差異(市場予想と発表結果の大小関係)は、期待指数よりも現況指数との方が直後1分足の反応方向との一致率が高くなっています。
きちんと調べないと、事実はわかりません。
尤も、多くの解説では「期待指数の方が重要」と記載され、「何に対して」重要かが記されていません。だから、きっとそれら解説は間違っていないのでしょう。でも、その記事の読者が誰かを考えると、「何に対して」は「指標発表直後の反応に対して」であるべきです。
ーーー$€¥ーーー
本指標に関する調査期間と、過去の反応程度・分布を下表に纏めておきます。
最も指標結果に素直に反応する直後1分足跳幅は、過去平均で8pipsしかありません。反応が小さいため、大きなトレンドが発生しているときには、指標発表結果の影響はすぐにトレンドに呑まれてしまいます。だから、こうした反応が小さい指標で取引するときは、例えば、
- まず、本指標にはトレンド方向を転換するほどの影響力がないことを頭に入れておく
- 事前に15分足チャートでトレンド方向と上下のサポート・レジスンタンスの位置を確認しておく
- トレンドに逆らわない方向に期待的中率が高ければ取引し、そうでなければ取引しない
- 指標発表後の追撃も同様
- トレンドに反する方向に反応を伸ばしても、サポートやレジスタンスを抜けることは滅多にないことを覚えておく
というやり方が良いでしょう。
個々の取引で大けがさえしなければ、これらを守れば年間を通してプラスにしやすくなるでしょう。
【2. 既出情報】
(2-1. 過去情報)
(2-1. 過去情報)
過去の発表結果と市場予想を下図に一覧します。
下図は発表結果と市場予想をプロットしています。市場予想は発表直前の値をプロットし、発表結果は後に修正値が発表されても定時発表値のままをプロットしています。
項目が多いため、個別項目毎に細かくグラフを眺める前に、見るべきポイントを絞り込みましょう。各項目毎に反応方向にどの程度影響しているのかを下表に纏めておきました。
上表の上3行は、独国期待指数と独国現況指数と欧州指数の各項目を、ひとつずつ反応方向との一致率を求めています。これは予備計算のようなもので、この予備計算は最も反応方向との一致率が高い項目に注目しています。
上から4行目は、事前差異(市場予想ー前回結果)と直前10-1分足の方向一致率が高くなるように、各項目の係数を求めています。
上から5行目は、事後差異(発表結果ー市場予想)と直後1分足の方向一致率が高くなるように、各項目の係数を求めています。
最下段6行目は、実体差異(前回改定値結果ー市場予想)と直後11分足の方向一致率が高くなるように、各項目の係数を求めています。
結果、それぞれの式の方向一致率は60%・76%・64%となりました。事後差異と直後1分足の方向一致率が高いので、素直に反応する指標だと言えるでしょう。
ともあれ、1✕独国期待指数の事後差異+2✕独国現況指数の事後差異、を判別式として採用すると、その解の符号(プラスが陽線、マイナスが陰線)と直後1分足の方向一致率が76%となります。
ーーー$€¥ーーー
事後判別式係数から、直後1分足方向は独国現況指数の市場予想との差異が大きく影響することがわかりました。
独国現況指数は、2015年2月以降前回までの31回において、前月と当月とを比べて発表結果と市場予想の大小関係が入れ替わったことが13回あります(入れ替わり率42%)。入れ替わり頻度が高く、市場予想後追い型とは言えません。
(2-2. 過去反応)
過去の直前10-1分足・直前1分足・直後1分足・直後11分足の始値基準ローソク足を示します。
まず、直前10-1分足は、2016年7月以前を陽線率が高い時期、それ以降を陰線率が高い時期、と区別することができます。お手元のツールを使って月足チャートをご覧ください。2016年7月頃を境に月足は下降トレンドから上昇トレンドに転換しています。
よって、直前10-1分足の反応方向は、月足チャートのトレンド方向との不一致率がかなり高いように見受けられます。
そして、直前10-1分足は、過去平均跳幅が8pipsです。跳幅が10pips以上だったことは過去9回(頻度28%)あります。この9回の直後1分足跳幅は14pipsで、これは直後1分足跳幅の過去全平均8pipsより大きい、と言えます。そして、この9回の直前10-1分足と直後1分足の方向は7回(78%)一致しています。
つまり、直前10-1分足の反応が平均より少し大きく動いたときには、それが直後1分足の反応方向を示唆しており、反応程度も大きくなりがちです。
次に、直前1分足は陰線側への異常な偏りが見受けられます。
そして、直前1分足の過去平均跳幅は5pipsです。その跳幅が10pips以上だったことは過去5回(頻度16%)あります。この5回の直後1分足跳幅の平均は9pipsで、これは過去全平均8pipsとほぼ同じです。そして、このとき直前1分足と直後1分足の方向は1回も一致していません。この5回の直前1分足は全て陰線で、そのときの直後1分足は全て陽線です。
そして、直後1分足の過去平均跳幅と値幅の差は3pips(1ー値幅/跳幅=戻り比率37%)です。直後11分足のそれは5pips(戻り比率38%)です。反応が小さい指標では、これら戻り率が大きくなる傾向があります。戻り率が大きいことで、余計に勝ちにくい指標となるのです。
これら直後1分足や直後11分足の方向に関する詳細分析は、ローソク足観察よりも他の分析を参照する方が良いでしょう。
【3. 定型分析】
指標一致性分析は、指標の前回結果と市場予想の差(事前差異)と、発表結果と市場予想の差(事後差異)と、発表結果と前回結果の差(実態差異)を求め、そのプラス・マイナスと反応方向に偏りがないかを調べています。詳細は「指標一致性分析」をご参照願います。
反応一致性分析は、指標発表前後の反応方向に特徴的な偏りがないかを調べています。詳細は「反応一致性分析」をご参照願います。
反応性分析では、過去発表直後の1分足と11分足の跳幅と値幅を使います。この分析で十分なpipsが狙えそうな指標か否かが判断できます。詳細は「反応性分析」をご参照願います。
まず、指標一致性分析の結果を下表に示します。
事後差異は直後1分足との方向一致率が76%となっています。市場予想に対する発表結果の良し悪しには、素直に反応する傾向があります。
次に、反応一致性分析の結果を下表に示します。
直前1分足は陰線率が90%、直後1分足は陽線率が72%と、偏りが目立ちます。直前1分足と直後1分足の方向一致率は14%(不一致率86%)で、矛盾ありません。
ここで、もし直前1分足が陽線だった場合、直後1分足の陽線率をアテにすべきでしょうか。それとも、不一致率の高さをアテにして、直後1分足は陰線と見なすべきでしょうか。
わかりません。
このブログでは、単純な頻度確率よりも因果関係を含む確率をアテにしています。よって、直前1分足がもし陽線なら、直後1分足の方向は逆に陰線と見込みます。
また、直前10-1分足と直後1分足の方向一致率は69%、直後1分足と直後11分足の方向一致率は71%となっています。
最後に、反応性分析の結果を下表に示します。
直後1分足と直後11分足との方向一致率は71%です。そして、その71%の方向一致時だけに注目すると、直後1分足跳幅を直後11分足跳幅が超えて反応を伸ばしたことが85%です。
指標発表時点から見たその後の方向一致率が高く、且つ、反応を伸ばしているのだから、指標発表後に反応方向を確認したら早期追撃です。
がしかし、指標発表から1分を経過すると、直後1分足終値を超えて直後11分足終値が伸びていたことは、方向一致時こそ60%ですが、全ての場合を踏まえると43%しかありません。直後1分足と直後11分足とが反転したことは29%で、直後11分足が直後1分足の値幅を削ったことも29%あります。
早期追撃で得たポジションの長持ちは避けるべきであり、発表から1分過ぎたら利確の機会を窺う方が良いでしょう。
発表から1分を過ぎたら、追撃には向いていません(どちらに反応が進むかはわかりません)。
【4. シナリオ作成】
以下のシナリオで取引に臨みます。
- 直前10-1分足は陰線と見込みます。
9月月足は現時点において陽線なので、過去の傾向に基づき、その逆方向に反応する可能性が高い、と見込みます。 - 直前1分足は陰線と見込みます。
但し、過去平均跳幅が5pipsしかありません。1・2pipsで利確しなければいけない場合が多いので、スプレッドが大きいFX会社で取引しているなら、取引は止めておいた方が良いでしょう。 - 直後1分足は、指標発表直前に直前1分足と逆方向にポジションを取得します(期待的中率86%)。
但し、直前10-1分足「跳幅」が10pips以上となったときは、直後1分足は同方向に反応すると見なし、その跳ねた方向に指標発表直前にポジション取得を優先します。
いずれにせよ、利確/損切は指標発表直後の跳ねで行います。 - 追撃するなら、指標発表から1分以内にポジションを取り、1分を過ぎたら早めに利確・損切します。
以上
2017年9月19日18:00発表
以下は2017年9月19日20:30頃に追記しています。
V.発表結果検証
【5. 発表結果】
(5-1. 指標結果)
本指標発表結果及び反応は次の通りでした。
結果は現況指数・期待指数ともに前回・予想を上回り、反応は陽線でした。
現況指数の直近ピークは2017年6月分の88.0です。今回結果(87.9)は僅かに届きませんでした。期待指数の直近ピークは2017年5月分の20.6です。それ以降、下降が続いていたので、上昇は4か月ぶりです。
つまり、全般的には今回の結果がかなり良かった、ということになります。
この「かなり良かった」結果を受けた反応は「大きく」、直後1分足を超えて直後11分足は反応を伸ばしました。直後1分足跳幅は12pips(過去平均8pips)、直後11分足値幅は16pips(過去平均8pips)、です。
さて、今回の指標結果に関するきちんとした解説記事が出ていたので見ておきました。
ロイターは、今週末の独総選挙が影響していないことと、EUR高への懸念が指標結果に現れていないことを、引用・指摘していました。ブルームバーグは、EUR高が最近進んでいないことと、独中銀月報が7-9月期も力強く成長する見通しを示したことを、引用・指摘していました。
なるほどね。
(5-2. 取引結果)
取引結果は次の通りでした。
17:21の高値134.11から、発表直前17:57に安値133.62を付けるまで、46分間で49pips強(約△1pips/分)の下降トレンドが起きていました。
参考までに、本指標のように反応が小さな指標発表では、発表直後1分間に5pips、10分間に10pipsぐらいが普通です。
反応の小さな指標の発表後10分間と同じぐらいのスピードで、本指標発表前の46分足は動いていたことになります。
けれども、そんな波に乗ってせっかく指標発表前に利確したのに、分析を外してしまって台無しにしたのが今回の取引でした。全体収支はプラスなので、まぁ構わないですが、本ブログでの取引方法の特徴一面が良く表れた取引でした。
【6. 分析検証】
(6-1. 分析検証)
事前調査・分析内容において、次回までに再検討を要するのは次の点です。
今回の実態差異判別式結果はマイナスとなっており、これには違和感があります。過去のデータから回帰する限り、実態差異判別式は、−1✕期待指数実態差異+2✕現況指数実態差異ー3✕欧州景況指数実態差異、です。
この判別式の解の符号と過去の直後11分足は、方向一致率が62%です。
がしかし、この式では、今回のように期待指数も現況指数も欧州景況指数も前回結果を上回っても、式の係数のマイナスが大きいため、実態差異判別式の解がマイナスになってしまいます。
繰り返しになりますが、けれどもこのこの判別式の解の符号と過去の直後11分足は、方向一致率が62%です。
この62%という数字は、期待指数(37%)・現況指数(56%)・欧州景況指数(48%)のそれぞれ単独の実態差異と直後11分足の方向一致率より高くなっています。だから、判別式としては有効です。
違和感を解消するためには、式の係数のマイナスを無くすか、マイナス寄与を小さくしなければいけません。もちろん、そうした判別式は、最も直後11分足との方向一致率が高くなる式ではなくなるでしょう。
どちらが良いのか、再検討しておきます。
(6-2. シナリオ検証)
現状分析において、事前準備していたシナリオに問題はありません。
下表に、本ブログを始めてからの本指標シナリオでの取引成績を纏めておきます。
以上
ーーー注記ーーー
本記事は、同じ指標の発表がある度に更新を繰り返して精度向上を図り、過去の教訓を次の発表時の取引で活かせるように努めています。がしかし、それでも的中率は75%程度に留まり、100%ではありません。詳細は「1. FXは上達するのか」をご参照ください。
そして、本記事は筆者個人の見解に基づいています。本記事に含まれる価格・データ・その他情報等は、本記事に添付されたリンク先とは関係ありません。また、取引や売買における意思決定を、本記事の記載通りに行うことは適切ではありません。そして、本記事の内容が資格を持った投資専門家の助言ではないことを明記しておきます。記載内容のオリジナリティや信頼性確保には努めているものの、それでも万全のチェックは行えていない可能性があります。
ポジションを持つ最終的なご判断は読者ご自身の責任となります。その点を予めご了承の上、本記事がFXを楽しむ一助となれば幸いです。
ーーー注記ーーー
本記事における分析シート、一部乃至は一連の体系化された手順を、個人の取引以外の目的で使用・公開・二次利用を行う場合には、著作権者及びFX手法研究会に対し、連絡を取り何らかの合意を行う必要があります。
以上
2017年09月06日
欧州中銀(ECB)金融政策発表前後のEURJPY反応分析(2017年9月7日20:45発表結果検証済)
以下、「T.指標予想要点」「U.過去調査詳細」を事前投稿し、「V.発表結果検証」を事後投稿しています。ブログの日付は事前投稿日となっています。指標発表後に事後投稿し、その日時は「V.発表結果検証」のタイトル行付近に記載しています。
2017年9月7日20:45に欧州金融政策発が発表されます。21:30からはECB総裁の記者会見が予定されており、政策変更がない場合、発表後すぐにそちらを睨んだ動きへと移行します。
今回の市場予想と前回結果(7月20日)は次の通りです。市場予想は本記事作成時点の値です。
金融政策発表時には、何らかの変更が予想されている場合とそうでない場合とで、全く様相が異なります。以下、特に断らない限り「今回は現状維持」という予想を前提に話を進めます。
すなわち、過去に政策金利・付利で変更が行われた2015年12月(付利を△0.2%から△0.3%に変更)、2016年3月(政策金利を0.05%から0%に、付利を△0.3%から△0.4%に変更)の2回を除いたデータに基づく分析を行っています。
本指標の特徴は以下の通りです。
以下のシナリオで取引に臨みます。
以上の詳細ないしは論拠は、以下の「T.調査・分析」に記しています。
公開情報や既出情報に基づく調査を行い、過去の指標と反応の関係を比較分析しています。方向に関する的中率に比べ、程度に関する的中率は残念ながら低いというのが実情です。利確・損切の目安は、過去平均値を最近の反応の大小と見比べて感覚的に微修正しています。
以前、黒田日銀総裁が言ったように金融政策の手段は多岐に亘ります。
まず「政策金利」とは、中銀が市中銀行に対して融資をする際の金利のことを指しており、日本の場合には「無担保コール翌日物金利」を指しています。
以前は金利政策のことを指して「公定歩合」と呼ばれていました。がしかし、現在は金利が自由化されているため、公定歩合による金利操作を行うことができません。それで、日銀が無担保コール翌日物市場という短期金融市場に直接介入して短期金利を操作しているのです。
公定歩合(「基準割引率および基準貸付利率」)というものは残っているものの、これは短期金融市場における金利上限として機能しているだけであり、政策金利ではありません。
そして、ECBの「預金ファシリティー金利」とは日銀における「付利」に相当します。
市中銀行の貸出金利は、付利の水準が貸出金利下限として機能するため、付利の上げ下げが中銀金融政策の手段たり得ます。
但し、日欧のように付利がマイナスになることを「マイナス金利」といい、これは自国資金が他国通貨での運用に流れるため、通貨安を招くと批判を受けています。
また、米日欧の中銀が相次いで実施した中銀による国債等の買い入れ施策は、買入にせよ売却にせよ、そのペース(規模)を制御することで金融政策たり得ています。
かつてのような金利操作だけでは政策効果が薄まってしまい、何だかこうした中銀金融政策の多様化が進んでいます。がしかし、その本質が緩和か引締のどちらかに過ぎない以上、多様化は弊害の少ない規模拡大を模索しているだけなのです。
直近の流れを追っておきましょう。
前々回6月8日のECB理事会では、追加利 下げに関する文言が削除されました。
当時の解説記事等に依れば、これは「追加緩和に前向きな姿勢から中立姿勢に修正された」という報道が目立っていました。そして、今後の展開は「9月7日理事会で緩和文言が削除され、2018年からテーパリングが開始される」との報道も一部で見受けられました。
そして6月28日、上記解説記事の流れで「ECBが9月にも緩和策縮小を発表する可能性がある」という憶測記事が配信されました。ところが、このとき独金利とEURは高騰し、DAX(独株価)が一気にどかんと下がりました。翌29日にはECB関係筋の話として、この憶測は打ち消されています。
ECB幹部が緩和縮小着手を宣伝すると、独選挙に影響を与えかねないことがわかりました。そして、いちいちECBの緩和政策に難癖をつけていた独財務相も、コロッと態度を変えることもわかりました。独財務相は「急なのは良くない」とか言ったそうです。よく言うわ。
前回7月20日のECB理事会はこうした流れを受けて無難、先のジャクソンホールでのECB総裁講演でも無難な話題に終始していました。ちなみに、7月20日の理事会終了後の記者会見でECB総裁は、先の6月28日の報道について「そうは言っておらず、緩和縮小の議論を始められるかも知れないのかも知れない、と言ったのだ」という旨、答えています。
もうECBが独政権与党の選挙の足を引っ張るかも知れないかも知れないことをするとは思えません。
独総選挙は9月24日です。
本指標に関する調査期間と、過去の反応程度・分布を下表に纏めておきます。先述の通り、政策金利・付利で変更が行われた2015年12月・2016年3月の2回を除いたデータです。
最も指標結果に素直に反応する直後1分足跳幅は過去平均で21pipsです。そして、この平均値21pips以下の反応だったことが68%(3回に2回)に達しています。たまに大きく反応するものの、通常の反応は小さいと見なした方が良いでしょう。
過去の発表結果と市場予想を下図に一覧します。
下図は発表結果と市場予想をプロットしています。市場予想は発表直前の値をプロットし、発表結果は後に修正値が発表されても定時発表値のままをプロットしています。
こんなグラフを見ても、ECBが次にどうするかなんてわかりません。
過去の直前10-1分足・直前1分足・直後1分足・直後11分足の始値基準ローソク足を示します。
この(2-2. 過去反応)の項は、始値基準ローソク足こそ、政策変更が行われた2015年12月・2016年3月を含めていますが、以下の文章による分析ではそれらを含めていません。
直前10-1分足は、過去平均跳幅が7pipsです。その跳幅が10pips以上だったことは過去3回(頻度16%)あります。
この3回の直後1分足跳幅は26pipsで、これは直後1分足跳幅の過去全平均21pipsより少し大きくなっています。また、この3回の直前10-1分足と直後1分足の方向は1回(33%)一致しています。どちらかと言えば、直前10-1分足跳幅が大きくても、直後1分足は直前10-1分足によって反応方向が示唆されている訳ではないようです。
次に、直前1分足の過去平均跳幅は12pipsです。その跳幅が30pips以上だったことは過去3回(頻度16%)あります。
この3回の直後1分足跳幅は60pipsで、これは直後1分足跳幅の過去全平均21pipsよりかなり大きくなっています(実際には3回のうち1回が124pipsだったため)。また、この3回の直前10-1分足と直後1分足の方向は1回(33%)一致しています。どちらかと言えば、直前10-1分足跳幅が大きくても、直後1分足は直前10-1分足によって反応方向が示唆されている訳ではないようです。
そして、直後1分足の過去平均跳幅と値幅の差は7pips(1ー値幅/跳幅=戻り比率33%)です。直後11分足のそれは10pips(戻り比率42%)です。直後11分足の戻り比率が40%を超えており、高値(安値)掴みには気を付けた方が良いでしょう。
金融政策発表時には、指標一致性分析を行いません。
反応一致性分析は、指標発表前後の反応方向に特徴的な偏りがないかを調べています。詳細は「反応一致性分析」をご参照願います。
反応性分析では、過去発表直後の1分足と11分足の跳幅と値幅を使います。この分析で十分なpipsが狙えそうな指標か否かが判断できます。詳細は「反応性分析」をご参照願います。
まず、反応一致性分析の結果を下表に示します。
直前1分足の陰線率が100%と、異常な偏りが見受けられます。本ブログでの判定ルールで、同値終了時はカウントしない、という点はご承知おきください(直前1分足始値と終値が同値のとき)。
直後1分足・直後11分足の陽線率はそれぞれ78%・67%と、これも異常な偏りが見受けられます。
また、直前1分足と直後1分足、直前1分足と直後11分足、直後1分足と直後11分足の方向一致率は、それぞれ13%・25%・78%となっています。
がしかし、直前1分足と直後1分足、直前1分足と直後11分足の方向一致率の低さは、直前1分足の陰線率が異常に高く、直後1分足と直後11分足の陽線率が高いことによって生じているだけです。
どちらに反応するかを決め打ちするのに、先に形成されたローソク足が陽線でも陰線でも、後で形成されるローソク足がそれに応じた方向に反応する、という訳ではないので、信頼度はいまひとつだと言えます。
次に、反応性分析の結果を下表に示します。
直後1分足と直後11分足との方向一致率は78%です。そして、その75%の方向一致時だけに注目したとき、直後1分足跳幅を直後11分足跳幅が超えて反応を伸ばしたことは100%です。本指標は、直後1分足跳幅を超えて直後11分足跳幅が形成される可能性が極めて高い、と言えます。
指標発表時点から見たその後の方向一致率が高く、且つ、反応を伸ばしているのだから、指標発表後に反応方向を確認したら、追撃は早期開始です。
がしかし、指標発表から1分を経過すると、直後1分足終値を超えて直後11分足終値が伸びていたことは33%しかありません。33%なら逆張りした方がマシです。
よって、早期追撃で得たポジションは、指標発表から1分を過ぎたら早めに利確した方が良いということです。但し、3回に2回は発表から11分経過後には、値を戻しつつある可能性が高いことを忘れないようにしましょう。
以下のシナリオで取引に臨みます。
以下は2017年9月7日23:20頃に追記しています。
本指標発表結果及び反応は次の通りでした。
ECB理事会結論は「市場予想通り現状維持」でした。
発表後、ECB総裁が記者会見を行い、動きはそちらで生じました(EUR高騰)。記者会見の要点は「次回理事会で、資産買い入れを縮小(緩和縮小)することに合意した」というものです。その際、「EUR高は既にインフレ率に影響を与えており、緩和縮小方法の検討にあたってEUR相場が中心課題となる」旨、申し添えています。
その後、縮小方法について解説記事がいくつか出ています。
ロイターは「資産買い入れ規模を2018年から400億EURか200億EURに縮小する2通りに、延長期間を6か月か9か月にすることの2通り、で組み合わせで4通りの選択肢がある」旨、ECB関係者の発言として取り上げていました。この選択肢を中心に、次回10月26日の理事会で決定を行う可能性が高い、という話です。ただ、今回理事会での中心議題は「買入総額」についてで、それは償還債券資金の再投資に関わります。そして「買入終了以前に利上げを行わないこと」を合意しました。
取引結果は次の通りでした。
直後1分足・11分足の上ヒゲは、発表後5秒ぐらいに形成されたものです。結果的には分析通り陽線ですが、これを分析を当てたと言って良いかと言えば、ちょっと微妙です。
事前調査分析内容には問題ありません。
本発表に限った話じゃありませんが、最近は反応方向が良く当たります。
古くからご参考頂いている方は、お気づきと思いますが、このブログの事前分析は、経済情勢なんかほどほどの分析で済ませて、過去の指標の特徴を捉えるだけで70%ぐらい反応方向を当てているのです。
だから、一部の方からは「?」も頂きますが、それは逆に私の方も不思議に思うところです。なぜなら、経済指標に対してテクニカル的な分析を行うと、「伝統的でない」ことに異論がでます。けれども、そういう指摘をした方と話してみると(メールでやり取りしてみると)、移動平均線は参考にしている、と言うのです。
どうも分かり合えないみたいですが、本質的に同じなのです。
だらだらポジションを持つ取引が好きか、そんなのやってられないか、の違いだけです。
事前準備していたシナリオには問題ありません。
下表に、本ブログを始めてからの本指標シナリオでの取引成績を纏めておきます。
本記事は、同じ指標の発表がある度に更新を繰り返して精度向上を図り、過去の教訓を次の発表時の取引で活かせるように努めています。がしかし、それでも的中率は75%程度に留まり、100%ではありません。詳細は「1. FXは上達するのか」をご参照ください。
そして、本記事は筆者個人の見解に基づいています。本記事に含まれる価格・データ・その他情報等は、本記事に添付されたリンク先とは関係ありません。また、取引や売買における意思決定を、本記事の記載通りに行うことは適切ではありません。そして、本記事の内容が資格を持った投資専門家の助言ではないことを明記しておきます。記載内容のオリジナリティや信頼性確保には努めているものの、それでも万全のチェックは行えていない可能性があります。
ポジションを持つ最終的なご判断は読者ご自身の責任となります。その点を予めご了承の上、本記事がFXを楽しむ一助となれば幸いです。
本記事における分析シート、一部乃至は一連の体系化された手順を、個人の取引以外の目的で使用・公開・二次利用を行う場合には、著作権者及びFX手法研究会に対し、連絡を取り何らかの合意を行う必要があります。
T.指標予想要点
2017年9月7日20:45に欧州金融政策発が発表されます。21:30からはECB総裁の記者会見が予定されており、政策変更がない場合、発表後すぐにそちらを睨んだ動きへと移行します。
今回の市場予想と前回結果(7月20日)は次の通りです。市場予想は本記事作成時点の値です。
金融政策発表時には、何らかの変更が予想されている場合とそうでない場合とで、全く様相が異なります。以下、特に断らない限り「今回は現状維持」という予想を前提に話を進めます。
すなわち、過去に政策金利・付利で変更が行われた2015年12月(付利を△0.2%から△0.3%に変更)、2016年3月(政策金利を0.05%から0%に、付利を△0.3%から△0.4%に変更)の2回を除いたデータに基づく分析を行っています。
本指標の特徴は以下の通りです。
- 発表前から大きく動くことが多く、その動きが発表後の反応方向と関係ありません。そして、発表後初期反応の影響はせいぜい数分間と見なした方が良く、発表から11分経過後に1分後の値幅を伸ばしていたことは33%しかありません。
発表前からばたばたと動いて、どちらに伸びるかがわかりません。 - 過去の直前1分足の陰線率は100%、直後1分足の陽線率は78%と、ちょっと異常な偏りがあります。これら確率を見て逆張りは論外です。それぞれのローソク足で逆張りは論外なので、選択肢は「順張り決め打ち」か「取引しない」の2通りです。
- ポジション取得以前の動きと因果関係がありそうなシナリオは次の通りです。
ひとつは、発表後に追撃ポジションを取り、それが直後1分足値幅より小さいポイントなら、発表から1分を過ぎてからもっと利幅を伸ばせる確率が非常に高くなります。がしかし、このポジションは長持ちすべきではありません。発表から11分後に1分後の値幅を伸ばしていたことは33%しかないからです。
よって、もうひとつは発表後1分を過ぎてから逆張りの機会を狙う、というものです。但し、これは逆張りになるので、チャンスを待ってチャンスが無ければ取引しない、という意思が必要です。
チャンスとは、例えば直後1分足終値を超えて反応を伸ばして、何らかのチャートポイント付近(レジスタンスやサポート)に達したとき、です。
また、直後1分足値幅を超えた反応が戻るとき、直後1分足終値がレジスタンスやサポートになることが多いでしょう。このレジスタンスやサポートを抜けて値を戻しやすい、ということです。
以下のシナリオで取引に臨みます。
- 直前1分足は陰線と見込みます。
- 直後1分足は陽線と見込みます。
- 追撃は早期開始・短期利確を狙います。また、発表から1分を過ぎて直後1分足終値よりも値幅が大きくなったときに、逆張りでの短期取引を狙います。
以上の詳細ないしは論拠は、以下の「T.調査・分析」に記しています。
U.過去調査詳細
公開情報や既出情報に基づく調査を行い、過去の指標と反応の関係を比較分析しています。方向に関する的中率に比べ、程度に関する的中率は残念ながら低いというのが実情です。利確・損切の目安は、過去平均値を最近の反応の大小と見比べて感覚的に微修正しています。
【1. 指標概要】
以前、黒田日銀総裁が言ったように金融政策の手段は多岐に亘ります。
まず「政策金利」とは、中銀が市中銀行に対して融資をする際の金利のことを指しており、日本の場合には「無担保コール翌日物金利」を指しています。
以前は金利政策のことを指して「公定歩合」と呼ばれていました。がしかし、現在は金利が自由化されているため、公定歩合による金利操作を行うことができません。それで、日銀が無担保コール翌日物市場という短期金融市場に直接介入して短期金利を操作しているのです。
公定歩合(「基準割引率および基準貸付利率」)というものは残っているものの、これは短期金融市場における金利上限として機能しているだけであり、政策金利ではありません。
そして、ECBの「預金ファシリティー金利」とは日銀における「付利」に相当します。
市中銀行の貸出金利は、付利の水準が貸出金利下限として機能するため、付利の上げ下げが中銀金融政策の手段たり得ます。
但し、日欧のように付利がマイナスになることを「マイナス金利」といい、これは自国資金が他国通貨での運用に流れるため、通貨安を招くと批判を受けています。
また、米日欧の中銀が相次いで実施した中銀による国債等の買い入れ施策は、買入にせよ売却にせよ、そのペース(規模)を制御することで金融政策たり得ています。
かつてのような金利操作だけでは政策効果が薄まってしまい、何だかこうした中銀金融政策の多様化が進んでいます。がしかし、その本質が緩和か引締のどちらかに過ぎない以上、多様化は弊害の少ない規模拡大を模索しているだけなのです。
ーーー$€¥ーーー
直近の流れを追っておきましょう。
前々回6月8日のECB理事会では、追加利 下げに関する文言が削除されました。
当時の解説記事等に依れば、これは「追加緩和に前向きな姿勢から中立姿勢に修正された」という報道が目立っていました。そして、今後の展開は「9月7日理事会で緩和文言が削除され、2018年からテーパリングが開始される」との報道も一部で見受けられました。
そして6月28日、上記解説記事の流れで「ECBが9月にも緩和策縮小を発表する可能性がある」という憶測記事が配信されました。ところが、このとき独金利とEURは高騰し、DAX(独株価)が一気にどかんと下がりました。翌29日にはECB関係筋の話として、この憶測は打ち消されています。
ECB幹部が緩和縮小着手を宣伝すると、独選挙に影響を与えかねないことがわかりました。そして、いちいちECBの緩和政策に難癖をつけていた独財務相も、コロッと態度を変えることもわかりました。独財務相は「急なのは良くない」とか言ったそうです。よく言うわ。
前回7月20日のECB理事会はこうした流れを受けて無難、先のジャクソンホールでのECB総裁講演でも無難な話題に終始していました。ちなみに、7月20日の理事会終了後の記者会見でECB総裁は、先の6月28日の報道について「そうは言っておらず、緩和縮小の議論を始められるかも知れないのかも知れない、と言ったのだ」という旨、答えています。
もうECBが独政権与党の選挙の足を引っ張るかも知れないかも知れないことをするとは思えません。
独総選挙は9月24日です。
ーーー$€¥ーーー
本指標に関する調査期間と、過去の反応程度・分布を下表に纏めておきます。先述の通り、政策金利・付利で変更が行われた2015年12月・2016年3月の2回を除いたデータです。
最も指標結果に素直に反応する直後1分足跳幅は過去平均で21pipsです。そして、この平均値21pips以下の反応だったことが68%(3回に2回)に達しています。たまに大きく反応するものの、通常の反応は小さいと見なした方が良いでしょう。
【2. 既出情報】
(2-1. 過去情報)
(2-1. 過去情報)
過去の発表結果と市場予想を下図に一覧します。
下図は発表結果と市場予想をプロットしています。市場予想は発表直前の値をプロットし、発表結果は後に修正値が発表されても定時発表値のままをプロットしています。
こんなグラフを見ても、ECBが次にどうするかなんてわかりません。
(2-2. 過去反応)
過去の直前10-1分足・直前1分足・直後1分足・直後11分足の始値基準ローソク足を示します。
この(2-2. 過去反応)の項は、始値基準ローソク足こそ、政策変更が行われた2015年12月・2016年3月を含めていますが、以下の文章による分析ではそれらを含めていません。
直前10-1分足は、過去平均跳幅が7pipsです。その跳幅が10pips以上だったことは過去3回(頻度16%)あります。
この3回の直後1分足跳幅は26pipsで、これは直後1分足跳幅の過去全平均21pipsより少し大きくなっています。また、この3回の直前10-1分足と直後1分足の方向は1回(33%)一致しています。どちらかと言えば、直前10-1分足跳幅が大きくても、直後1分足は直前10-1分足によって反応方向が示唆されている訳ではないようです。
次に、直前1分足の過去平均跳幅は12pipsです。その跳幅が30pips以上だったことは過去3回(頻度16%)あります。
この3回の直後1分足跳幅は60pipsで、これは直後1分足跳幅の過去全平均21pipsよりかなり大きくなっています(実際には3回のうち1回が124pipsだったため)。また、この3回の直前10-1分足と直後1分足の方向は1回(33%)一致しています。どちらかと言えば、直前10-1分足跳幅が大きくても、直後1分足は直前10-1分足によって反応方向が示唆されている訳ではないようです。
そして、直後1分足の過去平均跳幅と値幅の差は7pips(1ー値幅/跳幅=戻り比率33%)です。直後11分足のそれは10pips(戻り比率42%)です。直後11分足の戻り比率が40%を超えており、高値(安値)掴みには気を付けた方が良いでしょう。
【3. 定型分析】
金融政策発表時には、指標一致性分析を行いません。
反応一致性分析は、指標発表前後の反応方向に特徴的な偏りがないかを調べています。詳細は「反応一致性分析」をご参照願います。
反応性分析では、過去発表直後の1分足と11分足の跳幅と値幅を使います。この分析で十分なpipsが狙えそうな指標か否かが判断できます。詳細は「反応性分析」をご参照願います。
まず、反応一致性分析の結果を下表に示します。
直前1分足の陰線率が100%と、異常な偏りが見受けられます。本ブログでの判定ルールで、同値終了時はカウントしない、という点はご承知おきください(直前1分足始値と終値が同値のとき)。
直後1分足・直後11分足の陽線率はそれぞれ78%・67%と、これも異常な偏りが見受けられます。
また、直前1分足と直後1分足、直前1分足と直後11分足、直後1分足と直後11分足の方向一致率は、それぞれ13%・25%・78%となっています。
がしかし、直前1分足と直後1分足、直前1分足と直後11分足の方向一致率の低さは、直前1分足の陰線率が異常に高く、直後1分足と直後11分足の陽線率が高いことによって生じているだけです。
どちらに反応するかを決め打ちするのに、先に形成されたローソク足が陽線でも陰線でも、後で形成されるローソク足がそれに応じた方向に反応する、という訳ではないので、信頼度はいまひとつだと言えます。
次に、反応性分析の結果を下表に示します。
直後1分足と直後11分足との方向一致率は78%です。そして、その75%の方向一致時だけに注目したとき、直後1分足跳幅を直後11分足跳幅が超えて反応を伸ばしたことは100%です。本指標は、直後1分足跳幅を超えて直後11分足跳幅が形成される可能性が極めて高い、と言えます。
指標発表時点から見たその後の方向一致率が高く、且つ、反応を伸ばしているのだから、指標発表後に反応方向を確認したら、追撃は早期開始です。
がしかし、指標発表から1分を経過すると、直後1分足終値を超えて直後11分足終値が伸びていたことは33%しかありません。33%なら逆張りした方がマシです。
よって、早期追撃で得たポジションは、指標発表から1分を過ぎたら早めに利確した方が良いということです。但し、3回に2回は発表から11分経過後には、値を戻しつつある可能性が高いことを忘れないようにしましょう。
【4. シナリオ作成】
以下のシナリオで取引に臨みます。
- 直前1分足は陰線と見込みます。
- 直後1分足は陽線と見込みます。
- 追撃は早期開始・短期利確を狙います。また、発表から1分を過ぎて直後1分足終値よりも値幅が大きくなったときに、逆張りでの短期取引を狙います。
以上
2017年9月7日20:45発表
以下は2017年9月7日23:20頃に追記しています。
V.発表結果検証
【5. 発表結果】
(5-1. 指標結果)
本指標発表結果及び反応は次の通りでした。
ECB理事会結論は「市場予想通り現状維持」でした。
発表後、ECB総裁が記者会見を行い、動きはそちらで生じました(EUR高騰)。記者会見の要点は「次回理事会で、資産買い入れを縮小(緩和縮小)することに合意した」というものです。その際、「EUR高は既にインフレ率に影響を与えており、緩和縮小方法の検討にあたってEUR相場が中心課題となる」旨、申し添えています。
その後、縮小方法について解説記事がいくつか出ています。
ロイターは「資産買い入れ規模を2018年から400億EURか200億EURに縮小する2通りに、延長期間を6か月か9か月にすることの2通り、で組み合わせで4通りの選択肢がある」旨、ECB関係者の発言として取り上げていました。この選択肢を中心に、次回10月26日の理事会で決定を行う可能性が高い、という話です。ただ、今回理事会での中心議題は「買入総額」についてで、それは償還債券資金の再投資に関わります。そして「買入終了以前に利上げを行わないこと」を合意しました。
(5-2. 取引結果)
取引結果は次の通りでした。
直後1分足・11分足の上ヒゲは、発表後5秒ぐらいに形成されたものです。結果的には分析通り陽線ですが、これを分析を当てたと言って良いかと言えば、ちょっと微妙です。
【6. 分析検証】
(6-1. 分析検証)
事前調査分析内容には問題ありません。
本発表に限った話じゃありませんが、最近は反応方向が良く当たります。
古くからご参考頂いている方は、お気づきと思いますが、このブログの事前分析は、経済情勢なんかほどほどの分析で済ませて、過去の指標の特徴を捉えるだけで70%ぐらい反応方向を当てているのです。
だから、一部の方からは「?」も頂きますが、それは逆に私の方も不思議に思うところです。なぜなら、経済指標に対してテクニカル的な分析を行うと、「伝統的でない」ことに異論がでます。けれども、そういう指摘をした方と話してみると(メールでやり取りしてみると)、移動平均線は参考にしている、と言うのです。
どうも分かり合えないみたいですが、本質的に同じなのです。
だらだらポジションを持つ取引が好きか、そんなのやってられないか、の違いだけです。
(6-2. シナリオ検証)
事前準備していたシナリオには問題ありません。
下表に、本ブログを始めてからの本指標シナリオでの取引成績を纏めておきます。
以上
ーーー注記ーーー
本記事は、同じ指標の発表がある度に更新を繰り返して精度向上を図り、過去の教訓を次の発表時の取引で活かせるように努めています。がしかし、それでも的中率は75%程度に留まり、100%ではありません。詳細は「1. FXは上達するのか」をご参照ください。
そして、本記事は筆者個人の見解に基づいています。本記事に含まれる価格・データ・その他情報等は、本記事に添付されたリンク先とは関係ありません。また、取引や売買における意思決定を、本記事の記載通りに行うことは適切ではありません。そして、本記事の内容が資格を持った投資専門家の助言ではないことを明記しておきます。記載内容のオリジナリティや信頼性確保には努めているものの、それでも万全のチェックは行えていない可能性があります。
ポジションを持つ最終的なご判断は読者ご自身の責任となります。その点を予めご了承の上、本記事がFXを楽しむ一助となれば幸いです。
ーーー注記ーーー
本記事における分析シート、一部乃至は一連の体系化された手順を、個人の取引以外の目的で使用・公開・二次利用を行う場合には、著作権者及びFX手法研究会に対し、連絡を取り何らかの合意を行う必要があります。
以上
2017年09月03日
4-3. 欧州経済指標(2017年9月版)
欧州の経済指標発表前後の取引はEURJPYで行っています。
欧州経済指標発表前後のEURJPYは、トレンドの影響が強く指標結果の影響が弱い、という傾向を感じています。おそらく、各国毎の発表が先行しているため、その時々にEURレートに折込済という場合が多いのでしょう。だから、指標発表結果への反応方向は素直なものの、反応程度が小さく反応期間が短い、という感触を持っています。
以下、9月版は8月版を順次改訂していきます。
8月は大きな動きがありませんでした。
直近の大きな動きをなぞっておきます。
2016年6月の英EU離脱国民投票は、離脱賛成が52%を占めて、英国のEU離脱が決定しました。2017年4-5月に行われた仏大統領選では、第一回投票の上位2名が、マクロン候補(得票率24%)とルペン候補(得票率21.3%)となりました。極右候補のルペン氏が2位となったことで、開票翌日月曜のEURJPYは400pipsもの窓を開けて上昇しました。第二回投票で66%を得票したマクロン候補は大統領に選出され、6月の仏下院選で与党連立が350議席(総数577)を占めました。
ひとまず政治課題に目鼻がついたこの頃から、ECB緩和政策の継続是非について話題に挙がることが増えました。6月28日、「ECB総裁が政策微調整の可能性を示唆」との報道があり、ECBが9月にも緩和策縮小を発表する可能性があるという憶測が報道されました。その結果、独金利とEURは高騰し、DAX(独株価)はどかんと下がりました。
翌29日にはECB関係筋の話として、この憶測は打ち消されています。
ECB幹部が緩和縮小への着手を積極的に宣伝すると、独選挙に影響を与えかねないことがわかりました。そして、いちいちECBの緩和政策に難癖をつけていた独財務相も、コロッと態度を変えることもわかりました。
ならば、もうECBが独政権与党の足を引っ張るとは思えません。独総選挙は9月24日です。
8月10日に報道された世論調査結果によると、独首相支持率は59%(7月調査では69%)でした。独首相はこの選挙で勝利すれば4期目を狙うことになります。
9月発表で見るべき経済指標は、第2週(9月4日〜8日)のECB金融政策発表ぐらいしかありません。下旬(24日)の独総選挙が終わるまで、それどころじゃありません。
欧州経済指標発表前後のEURJPYは、トレンドの影響が強く指標結果の影響が弱い、という傾向を感じています。おそらく、各国毎の発表が先行しているため、その時々にEURレートに折込済という場合が多いのでしょう。だから、指標発表結果への反応方向は素直なものの、反応程度が小さく反応期間が短い、という感触を持っています。
以下、9月版は8月版を順次改訂していきます。
8月は大きな動きがありませんでした。
直近の大きな動きをなぞっておきます。
2016年6月の英EU離脱国民投票は、離脱賛成が52%を占めて、英国のEU離脱が決定しました。2017年4-5月に行われた仏大統領選では、第一回投票の上位2名が、マクロン候補(得票率24%)とルペン候補(得票率21.3%)となりました。極右候補のルペン氏が2位となったことで、開票翌日月曜のEURJPYは400pipsもの窓を開けて上昇しました。第二回投票で66%を得票したマクロン候補は大統領に選出され、6月の仏下院選で与党連立が350議席(総数577)を占めました。
ひとまず政治課題に目鼻がついたこの頃から、ECB緩和政策の継続是非について話題に挙がることが増えました。6月28日、「ECB総裁が政策微調整の可能性を示唆」との報道があり、ECBが9月にも緩和策縮小を発表する可能性があるという憶測が報道されました。その結果、独金利とEURは高騰し、DAX(独株価)はどかんと下がりました。
翌29日にはECB関係筋の話として、この憶測は打ち消されています。
ECB幹部が緩和縮小への着手を積極的に宣伝すると、独選挙に影響を与えかねないことがわかりました。そして、いちいちECBの緩和政策に難癖をつけていた独財務相も、コロッと態度を変えることもわかりました。
ならば、もうECBが独政権与党の足を引っ張るとは思えません。独総選挙は9月24日です。
8月10日に報道された世論調査結果によると、独首相支持率は59%(7月調査では69%)でした。独首相はこの選挙で勝利すれば4期目を狙うことになります。
9月発表で見るべき経済指標は、第2週(9月4日〜8日)のECB金融政策発表ぐらいしかありません。下旬(24日)の独総選挙が終わるまで、それどころじゃありません。
ーーー$€¥ーーー
- 4-3-1. 欧州政策決定指標
9月7日のECB理事会結論は「市場予想通り現状維持」でした。
発表後、ECB総裁が記者会見を行い、動きはそちらで生じました(EUR高騰)。記者会見の要点は「次回理事会で、資産買い入れを縮小(緩和縮小)することに合意した」というものです。その際、「EUR高は既にインフレ率に影響を与えており、緩和縮小方法の検討にあたってEUR相場が中心課題となる」旨、申し添えています。
その後、縮小方法について解説記事がいくつか出ています。
ロイターは「資産買い入れ規模を2018年から400億EURか200億EURに縮小する2通りに、延長期間を6か月か9か月にすることの2通り、で組み合わせで4通りの選択肢がある」旨、ECB関係者の発言として取り上げていました。この選択肢を中心に、次回10月26日の理事会で決定を行う可能性が高い、という話です。ただ、今回理事会での中心議題は「買入総額」についてで、それは償還債券資金の再投資に関わります。そして「買入終了以前に利上げを行わないこと」を合意しました。ーーー$€¥ーーー - 4-3-2. 欧州経済実態指標
以上
4-3-1. 欧州政策決定指標(2017年9月版)
ECB総裁発言が絡むときは要注意です。発言の影響が大きく、内容的に明言できないことも多いため、市場が誤解して大きく反応することも多々あります。すると翌日、本人ないしはECB関係筋の話として打ち消されるのです。それでまた一気に逆方向に反応してしまいます。
だったら、最初から狙っている方向はEUR高/EUR安とはっきり言えば良いのに、と思います(言えません。G20の合意に基づき、各国政府・中銀は為替誘導を目的とした発言を行わないことになっています)。
9月7日のECB理事会結論は「市場予想通り現状維持」でした。
発表後、ECB総裁が記者会見を行い、動きはそちらで生じました(EUR高騰)。記者会見の要点は「次回理事会で、資産買い入れを縮小(緩和縮小)することに合意した」というものです。その際、「EUR高は既にインフレ率に影響を与えており、緩和縮小方法の検討にあたってEUR相場が中心課題となる」旨、申し添えています。
その後、縮小方法について解説記事がいくつか出ています。
ロイターは「資産買い入れ規模を2018年から400億EURか200億EURに縮小する2通りに、延長期間を6か月か9か月にすることの2通り、で組み合わせで4通りの選択肢がある」旨、ECB関係者の発言として取り上げていました。この選択肢を中心に、次回10月26日の理事会で決定を行う可能性が高い、という話です。ただ、今回理事会での中心議題は「買入総額」についてで、それは償還債券資金の再投資に関わります。そして「買入終了以前に利上げを行わないこと」を合意しました。
次回は10月26日です。
(分析事例) ECB金融政策(2017年9月7日発表結果検証済)
ECB金融政策発表時には、発表前から大きく動くことが多く、その動きが発表後の反応方向と関係ありません。そして、発表後初期反応の影響はせいぜい数分間と見なした方が良く、発表から11分経過後に1分後の値幅を伸ばしていたことは3分の1程度です。
過去の直前1分足の陰線率や直後1分足の陽線率はちょっと異常な偏りがあります。これら確率を見て逆張りは論外です。それぞれのローソク足で逆張りは論外なので、選択肢は「順張り決め打ち」か「取引しない」の2通りです。
発表後に追撃ポジションを取り、それが直後1分足値幅より小さいポイントなら、発表から1分を過ぎてからもっと利幅を伸ばせる確率が非常に高くなります。がしかし、このポジションは長持ちすべきではありません。発表から11分後に1分後の値幅を伸ばしていたことが3分の1程度しかないからです。
逆に、発表後1分を過ぎてから逆張りの機会を狙う、というやり方もあります。但し、これは逆張りになるので、直上直下のレジスタンスやサポート到達を待って取引しないと、勝率を下げてしまいます。
欧州の政策決定過程は非常にわかりにくい仕組です。
欧州理事会(EU首脳会議)は、各国首脳と欧州委員会委員長とEU大統領によって構成されています。閣僚理事会は各加盟国から1名ずつ代表が選出され、各国が持ち回りで議長国を務めます。欧州委員会は各加盟国から1名ずつ選出された委員によって構成されています。欧州議会の議席配分は人口によって割り振られています。
で、どこが予算案を作ってどうやって配分するのかがわかりにくいのです。
ともあれ、そうしたEU施策を実務に落とし込むのは「EUの巨大な官僚機構」と言われる組織です。この官僚機構への不満が加盟国では広がっています。一転、この官僚機構の既得権を脅かすことはEU解体です。離脱する英国に対し、猛烈に厳しい条件なんて、その上の政治家が何とかするでしょう。欧州にはしっかりした政治家も歴史的に多いのです。だから、英国にとって最も恐れるべきことは、この官僚機構の猛烈な事務遅延ではないでしょうか。第二の英国が現れて最も困るのは、この官僚機構なのです。
独国景気指標は、ZEW・PMI速報値・Ifo・PMI改定値の順に発表されます。PMI改定値はほぼ反応しないため取引しません。別々の指標であっても、全体的に上昇基調・下降基調というのは、グラフを見ればほぼ向きと期間が一致します。
問題は、単月毎だと、ZEW・PMI速報値・Ifoの実態差異(発表結果ー前回結果)の符号(プラス・マイナス)の一致率が低いことです。単月毎の予想では、先に発表された指標結果が後で発表される指標結果の改善・悪化すらアテにならない、ということです。よって、毎回の指標結果予想の論拠は、単月データに基づくものでなく、トレンドの有無に基づくものでなければいけません。
9月19日に発表された独国ZEW景況感調査は、現況指数が87.9、期待指数が17.0でした。
現況指数の直近ピークは2017年6月分の88.0です。今回結果はそれに僅かに届きませんでした。期待指数の直近ピークは2017年5月分の20.6です。それ以降、下降が続いていたので、上昇は4か月ぶりでした。
全般的には今回の結果がかなり良かった、ということになります。
反応は、直後1分足跳幅が12pips(過去平均8pips)、直後11分足値幅が16pips(過去平均8pips)、でした。現況指数・期待指数ともに前回・予想を上回れば、平均以上の素直に反応することが確かめられました。
次回は10月17日に発表予定です。
(分析事例) 独国ZEW景況感調査(2017年9月19日発表結果検証済)
ZEWは期待指数と現況指数とが発表され、指標発表後の反応方向に影響するのは現況指数です。よく「期待指数が重要」との解説を見かけますが、重要かもしれなくても期待指数の良し悪しは反応方向との一致率が低くなっています。
今回9月分発表結果を折込むと、直前1分足の陰線率が90%・直後1分足の陽線率は73%となり、異常な偏りがあります。そして、直前1分足と直後1分足の方向一致率が13%(不一致率87%)で、矛盾はありません。但し、直前1分足・直後1分足ともに反応は小さいので、大して利幅が稼げる訳ではありません。
追撃は、反応方向確認後に早期開始し、1分を過ぎたら利確の機会を窺い、ポジションの長持ちは避けるべきです。
直後1分足と直後11分足との方向一致率は72%で、その71%の方向一致時だけに注目すると、直後1分足跳幅を直後11分足跳幅が超えて反応を伸ばしたことが86%です。この数字が、指標発表後に反応方向を確認したら早期追撃の論拠です。
がしかし、指標発表から1分を経過すると、直後1分足終値を超えて直後11分足終値が伸びていたことは、直後1分足と直後11分足の方向が一致しても62%しかなく、反転することも含めると45%と、50%を切っています。これが、早期追撃開始で得たポジションの長持ちは避けるべき、とする論拠です。
PMIは、速報値で取引を行い、改定値では取引しません。改定値は反応が小さくなりがちだからです。
改定値では、製造業とサービス業が別の日に発表されます。製造業は、事後差異(発表結果ー市場予想)が0となることが多く、反応方向が指標結果からは読み取れません。サービス業は、事後差異にプラスかマイナスの符号が付くことは多いものの、やはり反応は小さくなりがちです。
速報値は速報であるだけなく、製造業・サービス業が同時に発表されるため、対象範囲の広さに応じて影響(反応)が大きくなりがちです。尤も、それでも反応(直後1分足跳幅平均)は独国・欧州ともに6pipsと、大したことはありません。
9月22日に発表された独国9月分PMI速報値は、総合・製造業・サービス業のいずれも前回・予想を上回りました。グラフ推移は急上昇と言っても良く、いずれも直近のピークを上回っています。
次回発表は10月24日です。
(分析事例) 独国PMI速報値(2017年7月24日発表結果検証済)
本指標の実態差異(発表結果ー前回結果)は、先行発表されるZEWとの実態差異の方向一致率は62%です。それほど高い数字ではないものの、無視するにも中途半端に高い数字です。
むしろアテになるのは、事前差異(市場予想ー前回結果)と直後1分足の方向一致率が25%(不一致率75%)となっている点です。
直後1分足は、事後差異(発表結果ー市場予想)との方向一致率が84%で、かなり素直に反応します。直後1分足と直後11分足の方向一致率66%で、あまり高くありません。
8月24日に発表された独国Ifo景況感指数は115.9(前回116.0)で、景況感は107.9(前回107.3)、現況分析は124.6(前回125.4)と、まちまちの結果になりました。
(分析事例) 独国Ifo景況指数(2017年8月25日発表結果検証済)
Ifoの指標結果分析にはあまり意味がありません。
まず、ZEW景況感調査との先行性・遅行性を論じた解説が散見されます。がしかし、本指標との実態差異(発表結果ー前回結果)の一致率は、一方の指標を前後2か月までずらしても50%以下です。少なくとも単月毎のZEWの結果良し悪しは、本指標結果予想には確率的に無意味です。
また、本指標の過去の傾向は、指標結果の良し悪しと反応方向の相関が低く、指標予想を当ててもどちらに反応するかがわかりません。特に、強いトレンドを生じているときには、本指標の反応は小さく影響期間が短いため、指標結果なんてほぼ役に立たないのです。
欧州景気指標はPMI速報値のみ取引し、ZEW景況感調査やPMI改定値(最終値に相当)では取引しません。
9月22日に発表された欧州9月分PMI速報値は、製造業が58.2(前回改定値57.4)、サービス業が55.6(前回改定値54.7)、でした。製造業は直近のピークの前月分を上抜け、サービス業も2017年2月以降も2013年以降でかなり高水準なままで上下しています。
次回発表は10月24日が予定されています。
(分析事例) 欧州PMI速報値(2017年6月23日発表結果検証済)
最近の製造業は、市場予想後追い型で推移しています。どちらかと言えば、指標結果が良ければ陰線、悪ければ陽線で反応しがちです。実態差異のマイナス率が77%に達していますが、実態差異と直後11分足の方向一致率は33%しかありません。
これが本指標の特徴です。
直後1分足は、直前1分足との方向一致率が15%(不一致率85%)です。追撃は指標発表後すぐに開始して、発表から1分を過ぎると利確の機会を探るべきです。直後1分足と直後11分足の終値を比べたとき、反応を伸ばしたことが32%、値幅を削ったことは36%、反転したことは32%、と追撃ポジションの長持ちには向いていません。
ECBは、実質的にインフレ目標(前年比2%付近で以下)を設定しています。現在、その近辺まで回復したという見方と、まだ目標付近で安定していないという見方があり、ECB政策に絡むだけに本指標は重要視されています。
ECBとIMFの2017年インフレ率は各1.5%・1.6%、2018年は各1.4%・1.5%と見込まれています。ECBは慎重です。
6月28日に市場を混乱させたECB総裁発言の「秋に政策微調整可否のための状況確認」は、この前年比が秋までに目標近辺に到達するという意味ではない、と思われます。数字がなかなか2%を超えないことを表向きの理由に挙げて、秋の独総選挙が終わるまで新たな情勢判断を不用意に出来ない、と受け取る方がしっくりきます。
8月31日に発表された8月分HICP前年比速報値は、前回結果をやや上回りました。コアHICP前年比は上昇基調を継続しており、HICP前年比は少し前まで下降基調転換を懸念されていたものの、こちらも上昇に転じたかも知れません。
次回発表は9月29日です。
(分析事例) HICP(消費者物価指数)速報値(2017年7月31日発表結果検証済)
欧州物価指標(HICP)は取引に向かない指標です。
速報値は反応が小さため、反応方向が指標結果に対しあまり素直ではありません(トレンドに飲み込まれがちです)。だから、指標分析の意味がありません。そして、改定値は速報値とほぼ結果が一致します。結果が一致するのにEURが動くのは、指標の影響ではありません。
8月31日に発表された独国8月分雇用統計の結果は、失業率が5.7%(6・7月分同値)、失業者数前月差は△0.5万人(7月分△0.9万人)でした。失業率は2014年以降ほぼ単調に低下し、最近は低下が加速していたものの、この3か月は停滞しています。失業者数前月差は、2015年1月分以降プラスだったことが4回しかありません。
次回発表は9月30日です。
8月31日に発表された欧州7月分失業率は+9.1%でした。各国平均で9.1%という数字に驚きますが、これでも2013年9月の12.2%をピークにほぼ毎月単調に低下しています。
次回発表は10月2日です。
だったら、最初から狙っている方向はEUR高/EUR安とはっきり言えば良いのに、と思います(言えません。G20の合意に基づき、各国政府・中銀は為替誘導を目的とした発言を行わないことになっています)。
【4-3-1.(1) 政策決定指標】
9月7日のECB理事会結論は「市場予想通り現状維持」でした。
発表後、ECB総裁が記者会見を行い、動きはそちらで生じました(EUR高騰)。記者会見の要点は「次回理事会で、資産買い入れを縮小(緩和縮小)することに合意した」というものです。その際、「EUR高は既にインフレ率に影響を与えており、緩和縮小方法の検討にあたってEUR相場が中心課題となる」旨、申し添えています。
その後、縮小方法について解説記事がいくつか出ています。
ロイターは「資産買い入れ規模を2018年から400億EURか200億EURに縮小する2通りに、延長期間を6か月か9か月にすることの2通り、で組み合わせで4通りの選択肢がある」旨、ECB関係者の発言として取り上げていました。この選択肢を中心に、次回10月26日の理事会で決定を行う可能性が高い、という話です。ただ、今回理事会での中心議題は「買入総額」についてで、それは償還債券資金の再投資に関わります。そして「買入終了以前に利上げを行わないこと」を合意しました。
次回は10月26日です。
(分析事例) ECB金融政策(2017年9月7日発表結果検証済)
ECB金融政策発表時には、発表前から大きく動くことが多く、その動きが発表後の反応方向と関係ありません。そして、発表後初期反応の影響はせいぜい数分間と見なした方が良く、発表から11分経過後に1分後の値幅を伸ばしていたことは3分の1程度です。
過去の直前1分足の陰線率や直後1分足の陽線率はちょっと異常な偏りがあります。これら確率を見て逆張りは論外です。それぞれのローソク足で逆張りは論外なので、選択肢は「順張り決め打ち」か「取引しない」の2通りです。
発表後に追撃ポジションを取り、それが直後1分足値幅より小さいポイントなら、発表から1分を過ぎてからもっと利幅を伸ばせる確率が非常に高くなります。がしかし、このポジションは長持ちすべきではありません。発表から11分後に1分後の値幅を伸ばしていたことが3分の1程度しかないからです。
逆に、発表後1分を過ぎてから逆張りの機会を狙う、というやり方もあります。但し、これは逆張りになるので、直上直下のレジスタンスやサポート到達を待って取引しないと、勝率を下げてしまいます。
【4-3-1.(2) 財政政策】
欧州の政策決定過程は非常にわかりにくい仕組です。
欧州理事会(EU首脳会議)は、各国首脳と欧州委員会委員長とEU大統領によって構成されています。閣僚理事会は各加盟国から1名ずつ代表が選出され、各国が持ち回りで議長国を務めます。欧州委員会は各加盟国から1名ずつ選出された委員によって構成されています。欧州議会の議席配分は人口によって割り振られています。
で、どこが予算案を作ってどうやって配分するのかがわかりにくいのです。
ともあれ、そうしたEU施策を実務に落とし込むのは「EUの巨大な官僚機構」と言われる組織です。この官僚機構への不満が加盟国では広がっています。一転、この官僚機構の既得権を脅かすことはEU解体です。離脱する英国に対し、猛烈に厳しい条件なんて、その上の政治家が何とかするでしょう。欧州にはしっかりした政治家も歴史的に多いのです。だから、英国にとって最も恐れるべきことは、この官僚機構の猛烈な事務遅延ではないでしょうか。第二の英国が現れて最も困るのは、この官僚機構なのです。
【4-3-1.(3) 景気指標】
独国景気指標は、ZEW・PMI速報値・Ifo・PMI改定値の順に発表されます。PMI改定値はほぼ反応しないため取引しません。別々の指標であっても、全体的に上昇基調・下降基調というのは、グラフを見ればほぼ向きと期間が一致します。
問題は、単月毎だと、ZEW・PMI速報値・Ifoの実態差異(発表結果ー前回結果)の符号(プラス・マイナス)の一致率が低いことです。単月毎の予想では、先に発表された指標結果が後で発表される指標結果の改善・悪化すらアテにならない、ということです。よって、毎回の指標結果予想の論拠は、単月データに基づくものでなく、トレンドの有無に基づくものでなければいけません。
(3-1) 独国ZEW景況感調査
9月19日に発表された独国ZEW景況感調査は、現況指数が87.9、期待指数が17.0でした。
現況指数の直近ピークは2017年6月分の88.0です。今回結果はそれに僅かに届きませんでした。期待指数の直近ピークは2017年5月分の20.6です。それ以降、下降が続いていたので、上昇は4か月ぶりでした。
全般的には今回の結果がかなり良かった、ということになります。
反応は、直後1分足跳幅が12pips(過去平均8pips)、直後11分足値幅が16pips(過去平均8pips)、でした。現況指数・期待指数ともに前回・予想を上回れば、平均以上の素直に反応することが確かめられました。
次回は10月17日に発表予定です。
(分析事例) 独国ZEW景況感調査(2017年9月19日発表結果検証済)
ZEWは期待指数と現況指数とが発表され、指標発表後の反応方向に影響するのは現況指数です。よく「期待指数が重要」との解説を見かけますが、重要かもしれなくても期待指数の良し悪しは反応方向との一致率が低くなっています。
今回9月分発表結果を折込むと、直前1分足の陰線率が90%・直後1分足の陽線率は73%となり、異常な偏りがあります。そして、直前1分足と直後1分足の方向一致率が13%(不一致率87%)で、矛盾はありません。但し、直前1分足・直後1分足ともに反応は小さいので、大して利幅が稼げる訳ではありません。
追撃は、反応方向確認後に早期開始し、1分を過ぎたら利確の機会を窺い、ポジションの長持ちは避けるべきです。
直後1分足と直後11分足との方向一致率は72%で、その71%の方向一致時だけに注目すると、直後1分足跳幅を直後11分足跳幅が超えて反応を伸ばしたことが86%です。この数字が、指標発表後に反応方向を確認したら早期追撃の論拠です。
がしかし、指標発表から1分を経過すると、直後1分足終値を超えて直後11分足終値が伸びていたことは、直後1分足と直後11分足の方向が一致しても62%しかなく、反転することも含めると45%と、50%を切っています。これが、早期追撃開始で得たポジションの長持ちは避けるべき、とする論拠です。
(3-2) 独国PMI速報値
PMIは、速報値で取引を行い、改定値では取引しません。改定値は反応が小さくなりがちだからです。
改定値では、製造業とサービス業が別の日に発表されます。製造業は、事後差異(発表結果ー市場予想)が0となることが多く、反応方向が指標結果からは読み取れません。サービス業は、事後差異にプラスかマイナスの符号が付くことは多いものの、やはり反応は小さくなりがちです。
速報値は速報であるだけなく、製造業・サービス業が同時に発表されるため、対象範囲の広さに応じて影響(反応)が大きくなりがちです。尤も、それでも反応(直後1分足跳幅平均)は独国・欧州ともに6pipsと、大したことはありません。
9月22日に発表された独国9月分PMI速報値は、総合・製造業・サービス業のいずれも前回・予想を上回りました。グラフ推移は急上昇と言っても良く、いずれも直近のピークを上回っています。
次回発表は10月24日です。
(分析事例) 独国PMI速報値(2017年7月24日発表結果検証済)
本指標の実態差異(発表結果ー前回結果)は、先行発表されるZEWとの実態差異の方向一致率は62%です。それほど高い数字ではないものの、無視するにも中途半端に高い数字です。
むしろアテになるのは、事前差異(市場予想ー前回結果)と直後1分足の方向一致率が25%(不一致率75%)となっている点です。
直後1分足は、事後差異(発表結果ー市場予想)との方向一致率が84%で、かなり素直に反応します。直後1分足と直後11分足の方向一致率66%で、あまり高くありません。
(3-3) 独国Ifo景況指数
8月24日に発表された独国Ifo景況感指数は115.9(前回116.0)で、景況感は107.9(前回107.3)、現況分析は124.6(前回125.4)と、まちまちの結果になりました。
(分析事例) 独国Ifo景況指数(2017年8月25日発表結果検証済)
Ifoの指標結果分析にはあまり意味がありません。
まず、ZEW景況感調査との先行性・遅行性を論じた解説が散見されます。がしかし、本指標との実態差異(発表結果ー前回結果)の一致率は、一方の指標を前後2か月までずらしても50%以下です。少なくとも単月毎のZEWの結果良し悪しは、本指標結果予想には確率的に無意味です。
また、本指標の過去の傾向は、指標結果の良し悪しと反応方向の相関が低く、指標予想を当ててもどちらに反応するかがわかりません。特に、強いトレンドを生じているときには、本指標の反応は小さく影響期間が短いため、指標結果なんてほぼ役に立たないのです。
(3-4) 欧州PMI速報値
欧州景気指標はPMI速報値のみ取引し、ZEW景況感調査やPMI改定値(最終値に相当)では取引しません。
9月22日に発表された欧州9月分PMI速報値は、製造業が58.2(前回改定値57.4)、サービス業が55.6(前回改定値54.7)、でした。製造業は直近のピークの前月分を上抜け、サービス業も2017年2月以降も2013年以降でかなり高水準なままで上下しています。
次回発表は10月24日が予定されています。
(分析事例) 欧州PMI速報値(2017年6月23日発表結果検証済)
最近の製造業は、市場予想後追い型で推移しています。どちらかと言えば、指標結果が良ければ陰線、悪ければ陽線で反応しがちです。実態差異のマイナス率が77%に達していますが、実態差異と直後11分足の方向一致率は33%しかありません。
これが本指標の特徴です。
直後1分足は、直前1分足との方向一致率が15%(不一致率85%)です。追撃は指標発表後すぐに開始して、発表から1分を過ぎると利確の機会を探るべきです。直後1分足と直後11分足の終値を比べたとき、反応を伸ばしたことが32%、値幅を削ったことは36%、反転したことは32%、と追撃ポジションの長持ちには向いていません。
【4-3-1.(4) 物価指標】
ECBは、実質的にインフレ目標(前年比2%付近で以下)を設定しています。現在、その近辺まで回復したという見方と、まだ目標付近で安定していないという見方があり、ECB政策に絡むだけに本指標は重要視されています。
ECBとIMFの2017年インフレ率は各1.5%・1.6%、2018年は各1.4%・1.5%と見込まれています。ECBは慎重です。
6月28日に市場を混乱させたECB総裁発言の「秋に政策微調整可否のための状況確認」は、この前年比が秋までに目標近辺に到達するという意味ではない、と思われます。数字がなかなか2%を超えないことを表向きの理由に挙げて、秋の独総選挙が終わるまで新たな情勢判断を不用意に出来ない、と受け取る方がしっくりきます。
8月31日に発表された8月分HICP前年比速報値は、前回結果をやや上回りました。コアHICP前年比は上昇基調を継続しており、HICP前年比は少し前まで下降基調転換を懸念されていたものの、こちらも上昇に転じたかも知れません。
次回発表は9月29日です。
(分析事例) HICP(消費者物価指数)速報値(2017年7月31日発表結果検証済)
欧州物価指標(HICP)は取引に向かない指標です。
速報値は反応が小さため、反応方向が指標結果に対しあまり素直ではありません(トレンドに飲み込まれがちです)。だから、指標分析の意味がありません。そして、改定値は速報値とほぼ結果が一致します。結果が一致するのにEURが動くのは、指標の影響ではありません。
【4-3-1.(5) 雇用指標】
8月31日に発表された独国8月分雇用統計の結果は、失業率が5.7%(6・7月分同値)、失業者数前月差は△0.5万人(7月分△0.9万人)でした。失業率は2014年以降ほぼ単調に低下し、最近は低下が加速していたものの、この3か月は停滞しています。失業者数前月差は、2015年1月分以降プラスだったことが4回しかありません。
次回発表は9月30日です。
8月31日に発表された欧州7月分失業率は+9.1%でした。各国平均で9.1%という数字に驚きますが、これでも2013年9月の12.2%をピークにほぼ毎月単調に低下しています。
次回発表は10月2日です。
以上
2017年09月02日
4-3-2. 欧州経済実態指標(2017年9月版)
昨年2016年の欧州GDPは19.3兆USDです。そのうち独国が17.9%、英国が13.6%、仏国が12.8%、伊国が9.6%を占めています。
欧州GDPは、発表結果と反応方向とがあまり関係ありません。おそらく、各国毎の発表が先行しているため、その時々にEURレートへの折込みが行われるからでしょう。
5月23日に独国1-3月期GDP改定値が発表されました。結果は、前期比が+0.6%で、前年比が+1.7%、でした。前年比は、2016年7-9月期から3期続けて同値継続となっています。
7月20日に独国財務省は月報を公表し、(a) 国内経済は好調、(b) 英国のEU離脱交渉やトランプ米大統領による貿易政策は不確定要素、(c) 展望は順調な成長と予想、との内容でした。4-6月期は、1-3月期の前期比+0.6%と同様の成長率となる見込み、です。
8月15日に発表された独国4-6月期GDP速報値は、前期比+0.6%・前年比+0.8%でした。独国財務省による前期比見通しは正しかった訳です。前年比は改定値で上方修正されなければ、4期ぶりに成長鈍化となります。8月25日に発表された改定値は、前期比・前年比ともに速報値同値でした。
(分析事例) 独国四半期GDP速報値(2017年8月15日発表結果検証済)
本指標への反応は、指標結果よりもそのときどきのトレンドの影響が大きいようです。その結果、直後11分足終値は直後1分足終値よりも反応を伸ばしがちです。追撃は早期参加し、じっくり利確のタイミングを計ることに適しています。
最も影響力が強い独国経済も、実はGDP比で言えばEU全体に対し20%を下回っています。
8月31日に発表された独国7月分小売売上高指数は、前期比△1.2%、前年比+2.7%でした。前年比の動きを見ると、毎月の上下動が激しいものの、2016年2月以降は全体的にやや下降ぎみでした。2017年2月以降は、それが上昇に転じたように見えていたものの、今回は上げはやや小さめでした。まだ上昇基調というには少し弱いように見えます。
次回発表は9月29日です。
製造業の受注と生産のLT(リードタイム)は、受注が3〜6か月程度先行すると見るのが一般的です(業種間のばらつきが大きい)。それを同時に表しているのが景気指標ですが、製造業PMI改定値(最終値に相当)には、先行きへの不安の兆候がまだ見受けられません。
8月4日に発表された独国6月分鉱工業受注前月比は+1.0%でした。内需は+5.1%で好調、外需は△2.0%でした。てっきりEUR高が原因かと思ったら、EU諸国からの需要が△2.4%となっています。この結果について、独経済省は「小幅な拡大が続く」との見方を示しています。
9月6日に発表された独国7月分製造業新規受注前月比は△0.7%でした。マイナス転換は3か月ぶりです。
次回は10月6日に発表されます。
8月7日に発表された独国6月分鉱工業生産前月比は△1.1%でした。
9月7日に発表された独国7月分鉱工業生産前月比は0%でした。2016年3月分以降、マイナスの次はプラス転換が6回続いていましたが、今回はプラスに至りませんでした。
次回は10月9日に発表されます。
8月8日に発表された独国6月分貿易収支は+223億EUR(5月分+220億EUR)でした。輸出好調には違いないものの、独国内景気が好調で輸入も増えている結果、増加ペースが落ち始めました。
9月8日に発表された独国7月分貿易収支は+195億EURでした。
次回は10月10日に発表予定です。
8月17日に発表された欧州6月分貿易収支は+266億EUR(5月分+214億EUR)でした。欧州貿易収支は毎月の上下動があるものの、全体として増加基調です。数字を見比べてみると、独国の輸出の強さが良くわかります。
9月15日に発表された欧州7月分貿易収支は+232億EURでした。
次回は10月16日に発表予定です。
欧州GDPは、発表結果と反応方向とがあまり関係ありません。おそらく、各国毎の発表が先行しているため、その時々にEURレートへの折込みが行われるからでしょう。
【4-3-2.(1) 経済成長】
5月23日に独国1-3月期GDP改定値が発表されました。結果は、前期比が+0.6%で、前年比が+1.7%、でした。前年比は、2016年7-9月期から3期続けて同値継続となっています。
7月20日に独国財務省は月報を公表し、(a) 国内経済は好調、(b) 英国のEU離脱交渉やトランプ米大統領による貿易政策は不確定要素、(c) 展望は順調な成長と予想、との内容でした。4-6月期は、1-3月期の前期比+0.6%と同様の成長率となる見込み、です。
8月15日に発表された独国4-6月期GDP速報値は、前期比+0.6%・前年比+0.8%でした。独国財務省による前期比見通しは正しかった訳です。前年比は改定値で上方修正されなければ、4期ぶりに成長鈍化となります。8月25日に発表された改定値は、前期比・前年比ともに速報値同値でした。
(分析事例) 独国四半期GDP速報値(2017年8月15日発表結果検証済)
本指標への反応は、指標結果よりもそのときどきのトレンドの影響が大きいようです。その結果、直後11分足終値は直後1分足終値よりも反応を伸ばしがちです。追撃は早期参加し、じっくり利確のタイミングを計ることに適しています。
【4-3-2.(2) 実態指標】
最も影響力が強い独国経済も、実はGDP比で言えばEU全体に対し20%を下回っています。
(2-1) 小売
8月31日に発表された独国7月分小売売上高指数は、前期比△1.2%、前年比+2.7%でした。前年比の動きを見ると、毎月の上下動が激しいものの、2016年2月以降は全体的にやや下降ぎみでした。2017年2月以降は、それが上昇に転じたように見えていたものの、今回は上げはやや小さめでした。まだ上昇基調というには少し弱いように見えます。
次回発表は9月29日です。
(2-2) 生産
製造業の受注と生産のLT(リードタイム)は、受注が3〜6か月程度先行すると見るのが一般的です(業種間のばらつきが大きい)。それを同時に表しているのが景気指標ですが、製造業PMI改定値(最終値に相当)には、先行きへの不安の兆候がまだ見受けられません。
8月4日に発表された独国6月分鉱工業受注前月比は+1.0%でした。内需は+5.1%で好調、外需は△2.0%でした。てっきりEUR高が原因かと思ったら、EU諸国からの需要が△2.4%となっています。この結果について、独経済省は「小幅な拡大が続く」との見方を示しています。
9月6日に発表された独国7月分製造業新規受注前月比は△0.7%でした。マイナス転換は3か月ぶりです。
次回は10月6日に発表されます。
8月7日に発表された独国6月分鉱工業生産前月比は△1.1%でした。
9月7日に発表された独国7月分鉱工業生産前月比は0%でした。2016年3月分以降、マイナスの次はプラス転換が6回続いていましたが、今回はプラスに至りませんでした。
次回は10月9日に発表されます。
【4-3-2.(3) 貿易指標】
8月8日に発表された独国6月分貿易収支は+223億EUR(5月分+220億EUR)でした。輸出好調には違いないものの、独国内景気が好調で輸入も増えている結果、増加ペースが落ち始めました。
9月8日に発表された独国7月分貿易収支は+195億EURでした。
次回は10月10日に発表予定です。
8月17日に発表された欧州6月分貿易収支は+266億EUR(5月分+214億EUR)でした。欧州貿易収支は毎月の上下動があるものの、全体として増加基調です。数字を見比べてみると、独国の輸出の強さが良くわかります。
9月15日に発表された欧州7月分貿易収支は+232億EURでした。
次回は10月16日に発表予定です。
以上
2017年08月28日
4-3. 欧州経済指標DB(2017年8月最終版)
欧州の経済指標発表前後の取引はEURJPYで行っています。
欧州経済指標発表前後のEURJPYは、トレンドの影響が強く指標結果の影響が弱い、という傾向を感じています。おそらく、各国毎の発表が先行しているため、その時々にEURレートに折込済という場合が多いのでしょう。だから、指標発表結果への反応方向は素直なものの、反応程度が小さく反応期間が短い、という感触を持っています。
8月は大きな動きがありませんでした。
直近の大きな動きをなぞっておきます。
2016年6月の英EU離脱国民投票は、離脱賛成が52%を占めて、英国のEU離脱が決定しました。2017年4-5月に行われた仏大統領選では、第一回投票の上位2名が、マクロン候補(得票率24%)とルペン候補(得票率21.3%)となりました。極右候補のルペン氏が2位となったことで、開票翌日月曜のEURJPYは400pipsもの窓を開けて上昇しました。第二回投票で66%を得票したマクロン候補は大統領に選出され、6月の仏下院選で与党連立が350議席(総数577)を占めました。
ひとまず政治課題に目鼻がついたこの頃から、ECB緩和政策の継続是非について話題に挙がることが増えました。6月28日、「ECB総裁が政策微調整の可能性を示唆」との報道があり、ECBが9月にも緩和策縮小を発表する可能性があるという憶測が報道されました。その結果、独金利とEURは高騰し、DAX(独株価)はどかんと下がりました。
翌29日にはECB関係筋の話として、この憶測は打ち消されています。
ECB幹部が緩和縮小への着手を積極的に宣伝すると、独選挙に影響を与えかねないことがわかりました。そして、いちいちECBの緩和政策に難癖をつけていた独財務相も、コロッと態度を変えることもわかりました。
ならば、もうECBが独政権与党の足を引っ張るとは思えません。独総選挙は9月24日です。
8月10日に報道された世論調査結果によると、独首相支持率は59%(7月調査では69%)でした。独首相はこの選挙で勝利すれば4期目を狙うことになります。
9月発表で見るべき経済指標は、第2週(9月4日〜8日)のECB金融政策発表ぐらいしかありません。下旬(24日)の独総選挙が終わるまで、それどころじゃありません。
7月6日に6月のECB理事会議事要旨が公表されました。議事要旨では「インフレ見通しに確信が必要」との記載に対し、市場(プロフェッショナル)は独国10年債利率を跳ね上げました。つまり、市場は既にインフレ率改善を先取りしてを確信しているのです。
そして、7月20日にECB理事会の結論は「市場予想通り現状維持」でした。
理事会後の記者会見でECB総裁は、最も市場の関心があった資産買入プログラム変更の可能性について質問を受けました。回答は次の通りです。
曰く「まだそのような時点に至っていない。フォワードガイダンスは変更しないということや、将来の変更を討議する具体的日程は設定しないことで、理事会は一致している。つまり(先月末に大騒ぎになった発言は)単に討議が秋に実施されると言っただけだ」です。
ECBの複数の政策立案者は、今後の資産買い入れ施策を決定するのは10月の可能性が高く、12月では遅すぎると考えている旨、7月21日に報道されています。
8月23日にECB総裁は、ECBによるQEとフォワードガイダンスは成功との認識を示し、こうした非伝統的な金融政策は欧州と米国で成功した、と述べました。
(分析事例) ECB金融政策(2017年7月20日発表結果)
発表から1分を過ぎると、その後の反転率が異常に高いという特徴があります。これは、いつも声明発表から45分後にECB総裁の記者会見があるからです。この記者会見でその後の反応方向は決まりがちです。
現ECB総裁は「そうは言っていない」と平気で前言を翻せるマジックを使うのです。周囲があきれても、それでEURが動く以上ぶつくさ言っても仕方ありません。事前にECBが誘導したいのが通貨高か通貨安かに強い確信がない限り、こんな取引に参加しても仕方がありません。
欧州の政策決定過程は非常にわかりにくい仕組です。
欧州理事会(EU首脳会議)は、各国首脳と欧州委員会委員長とEU大統領によって構成されています。閣僚理事会は各加盟国から1名ずつ代表が選出され、各国が持ち回りで議長国を務めます。欧州委員会は各加盟国から1名ずつ選出された委員によって構成されています。欧州議会の議席配分は人口によって割り振られています。
で、どこが予算案を作ってどうやって配分するのかがわかりにくいのです。
ともあれ、そうしたEU施策を実務に落とし込むのは「EUの巨大な官僚機構」と言われる組織です。この官僚機構への不満が加盟国では広がっています。一転、この官僚機構の既得権を脅かすことはEU解体です。離脱する英国に対し、猛烈に厳しい条件なんて、その上の政治家が何とかするでしょう。欧州にはしっかりした政治家も歴史的に多いのです。だから、英国にとって最も恐れるべきことは、この官僚機構の猛烈な事務遅延ではないでしょうか。第二の英国が現れて最も困るのは、この官僚機構なのです。
8月22日に発表された独国8月分ZEW景況指数は、期待指数が前回を大きく下回り(10.0、前回は17.5)、現況指数が前回を僅かに上回りました(86.7、前回は86.4)。
期待指数は、2017年2月分の水準まで低下し、同年5月分をピークとした下降基調転換の可能性があります(3か月連続で前回結果を下回りました)。グラフ推移の印象からは、来月に2017年2月分水準を下抜けると、下降基調がはっきりします。
現況指数は、前回を僅かに上回ったものの、グラフ推移の印象から言えば、頭を押さえられています。こちらは、2016年7月以降継続している上昇基調がまだ維持されていると見なせ、先行して下降基調に転じた可能性がある期待指数とは様子が異なります。6月分現況指数は2011年7月以来の最大値(88.0)で、その水準はまだ維持されています。
8月23日に発表された独国8月分PMI速報値は、製造業が59.4で直近ピークの2017年5月分に並び、サービス業が53.4でした。この結果を受けて、直後1分足は2015年以降で最も大きく反応(跳幅27pips・値幅24pips)しました。
8月24日に発表された独国Ifo景況感指数は115.9(前回116.0)で、景況感は107.9(前回107.3)、現況分析は124.6(前回125.4)と、まちまちの結果になりました。
(分析事例) 独国ZEW景況感調査(2017年8月22日発表結果検証済)
(分析事例) 独国PMI速報値(2017年7月24日発表結果検証済)
(分析事例) 独国Ifo景況指数(2017年8月25日発表結果検証済)
独国景気指標は、ZEW・PMI速報値・Ifo・PMI改定値の順に発表されます。PMI改定値はほぼ反応しないため取引しません。別々の指標であっても、全体的に上昇基調・下降基調というのは、グラフを見ればほぼ向きと期間が一致します。
問題は、単月毎のZEW・PMI速報値・Ifoの実態差異(発表結果ー前回結果)の符号(プラス・マイナス)の一致率が低いことです。単月毎の予想では、先に発表された指標結果が後で発表される指標結果の改善・悪化すらアテにならない、ということです。よって、毎回の指標結果予想の論拠は、単月データに基づくものでなく、トレンドの有無に基づくものでなければいけません。
ZEWは期待指数と現況指数とが発表され、指標発表後の反応方向に影響するのは現況指数です。よく「期待指数が重要」との解説を見かけますが、重要かもしれなくても期待指数の良し悪しは反応方向との一致率が低くなっています。
Ifoの指標結果分析にはあまり意味がありません。
まず、ZEW景況感調査との先行性・遅行性を論じた解説が散見されます。がしかし、本指標との実態差異(発表結果ー前回結果)の一致率は、一方の指標を前後2か月までずらしても50%以下です。少なくとも単月毎のZEWの結果良し悪しは、本指標結果予想には確率的に無意味です。
また、本指標の過去の傾向は、指標結果の良し悪しと反応方向の相関が低く、指標予想を当ててもどちらに反応するかがわかりません。特に、強いトレンドを生じているときには、本指標の反応は小さく影響期間が短いため、指標結果なんてほぼ役に立たないのです。
8月23日に発表された欧州8月分PMI速報値は、製造業が57.4(前回56.6)、サービス業が54.9(前回55.4)、となりました。製造業は直近のピーク2017年6月の57.3を上抜け、2017年2月以降のサービス業も2013年以降で高水準で上下しています。
(分析事例) 欧州PMI速報値(2017年6月23日発表結果検証済)
欧州景気指標はPMI速報値のみ取引し、ZEW景況感調査やPMI改定値(最終値に相当)では取引しません。
欧州PMIは、速報値と改定値で実態差異(発表結果ー市場予想)の符号の一致傾向も高いものの、改定値は事後差異(発表結果ー市場予想)がほとんどの場合に0となります。過去、速報値結果で改定値予想がほぼ正確に予想されています。よって、PMI改定値発表直後の反応は、たいてい指標結果に関係ありません。
欧州ZEW景況感調査は、独国ZEW景況指数と同時発表されます。欧州結果は反応にほぼ影響しません。
よって、PMI速報値ぐらいしか取引できないのです。
欧州物価指標(HICP)は取引に向かない指標です。
速報値は反応が小さため、反応方向が指標結果に対しあまり素直ではありません(トレンドに飲み込まれがちです)。だから、指標分析の意味がありません。そして、改定値は速報値とほぼ結果が一致します。結果が一致するのにEURが動くのは、指標の影響ではありません。
ECBは、実質的にインフレ目標(前年比2%付近で以下)を設定しています。現在、その近辺まで回復したという見方と、まだ目標付近で安定していないという見方があり、ECB政策に絡むだけに本指標は重要視されています。
ECBとIMFの2017年インフレ率は各1.5%・1.6%、2018年は各1.4%・1.5%と見込まれています。ECBは慎重です。
6月28日に市場を混乱させたECB総裁発言の「秋に政策微調整可否のための状況確認」は、この前年比が秋までに目標近辺に到達するという意味ではない、と思われます。数字がなかなか2%を超えないことを表向きの理由に挙げて、秋の独総選挙が終わるまで新たな情勢判断を不用意に出来ない、と受け取る方がしっくりきます。
8月31日に発表された8月分HICP前年比速報値は、前回結果をやや上回りました。コアHICP前年比は上昇基調を継続しており、HICP前年比は少し前まで下降基調転換を懸念されていたものの、こちらも上昇に転じたかも知れません。
(分析事例) HICP(消費者物価指数)速報値(2017年7月31日発表結果検証済)
8月31日に発表された独国8月分雇用統計の結果は、失業率が5.7%(6・7月分同値)、失業者数前月差は△0.5万人(7月分△0.9万人)でした。失業率は2014年以降ほぼ単調に低下し、最近は低下が加速していたものの、この3か月は停滞しています。失業者数前月差は、2015年1月分以降プラスだったことが4回しかありません。
8月31日に発表された欧州7月分失業率は+9.1%でした。各国平均で9.1%という数字に驚きますが、これでも2013年9月の12.2%をピークにほぼ毎月単調に低下しています。
昨年2016年の欧州GDPは19.3兆USDです。そのうち独国が17.9%、英国が13.6%、仏国が12.8%、伊国が9.6%を占めています。
欧州GDPは、発表結果と反応方向とがあまり関係ありません。おそらく、各国毎の発表が先行しているため、その時々にEURレートへの折込みが行われるからでしょう。
5月23日に独国1-3月期GDP改定値が発表されました。結果は、前期比が+0.6%で、前年比が+1.7%、でした。前年比は、2016年7-9月期から3期続けて同値継続となっています。
7月20日に独国財務省は月報を公表し、(a) 国内経済は好調、(b) 英国のEU離脱交渉やトランプ米大統領による貿易政策は不確定要素、(c) 展望は順調な成長と予想、との内容でした。4-6月期は、1-3月期の前期比+0.6%と同様の成長率となる見込み、です。
8月15日に発表された独国4-6月期GDP速報値は、前期比+0.6%・前年比+0.8%でした。独国財務省による前期比見通しは正しかった訳です。前年比は改定値で上方修正されなければ、4期ぶりに成長鈍化となります。8月25日に発表された改定値は、前期比・前年比ともに速報値同値でした。
(分析事例) 独国四半期GDP速報値(2017年8月15日発表結果検証済)
最も影響力が強い独国経済も、実はGDP比で言えばEU全体に対し20%を下回っています。
(2-1) 小売
8月31日に発表された独国7月分小売売上高指数は、前期比△1.2%、前年比+2.7%でした。前年比の動きを見ると、毎月の上下動が激しいものの、2016年2月以降は全体的にやや下降ぎみでした。2017年2月以降は、それが上昇に転じたように見えていたものの、今回は上げはやや小さめでした。まだ上昇基調というには少し弱いように見えます。
(2-2) 生産
製造業の受注と生産のLT(リードタイム)は、受注が3〜6か月程度先行すると見るのが一般的です(業種間のばらつきが大きい)。それを同時に表しているのが景気指標ですが、製造業PMI改定値(最終値に相当)には、先行きへの不安の兆候がまだ見受けられません。
8月4日に発表された独国6月分鉱工業受注指数前月比は+1.0%でした。内需は+5.1%で好調、外需は△2.0%でした。てっきりEUR高が原因かと思ったら、EU諸国からの需要が△2.4%となっています。この結果について、独経済省は「小幅な拡大が続く」との見方を示しています。
8月7日に発表された独国6月分鉱工業生産前月比は△1.1%でした。
8月8日に発表された独国6月分貿易収支は+223億EUR(5月分+220億EUR)でした。輸出好調には違いないものの、独国内景気が好調で輸入も増えている結果、増加ペースが落ち始めました。
8月17日に発表された欧州6月分貿易収支は+266億EUR(5月分+214億EUR)でした。欧州貿易収支は毎月の上下動があるものの、全体として増加基調です。数字を見比べてみると、独国の輸出の強さが良くわかります。
欧州経済指標発表前後のEURJPYは、トレンドの影響が強く指標結果の影響が弱い、という傾向を感じています。おそらく、各国毎の発表が先行しているため、その時々にEURレートに折込済という場合が多いのでしょう。だから、指標発表結果への反応方向は素直なものの、反応程度が小さく反応期間が短い、という感触を持っています。
【4-3-1. 8月概観】
8月は大きな動きがありませんでした。
直近の大きな動きをなぞっておきます。
2016年6月の英EU離脱国民投票は、離脱賛成が52%を占めて、英国のEU離脱が決定しました。2017年4-5月に行われた仏大統領選では、第一回投票の上位2名が、マクロン候補(得票率24%)とルペン候補(得票率21.3%)となりました。極右候補のルペン氏が2位となったことで、開票翌日月曜のEURJPYは400pipsもの窓を開けて上昇しました。第二回投票で66%を得票したマクロン候補は大統領に選出され、6月の仏下院選で与党連立が350議席(総数577)を占めました。
ひとまず政治課題に目鼻がついたこの頃から、ECB緩和政策の継続是非について話題に挙がることが増えました。6月28日、「ECB総裁が政策微調整の可能性を示唆」との報道があり、ECBが9月にも緩和策縮小を発表する可能性があるという憶測が報道されました。その結果、独金利とEURは高騰し、DAX(独株価)はどかんと下がりました。
翌29日にはECB関係筋の話として、この憶測は打ち消されています。
ECB幹部が緩和縮小への着手を積極的に宣伝すると、独選挙に影響を与えかねないことがわかりました。そして、いちいちECBの緩和政策に難癖をつけていた独財務相も、コロッと態度を変えることもわかりました。
ならば、もうECBが独政権与党の足を引っ張るとは思えません。独総選挙は9月24日です。
8月10日に報道された世論調査結果によると、独首相支持率は59%(7月調査では69%)でした。独首相はこの選挙で勝利すれば4期目を狙うことになります。
9月発表で見るべき経済指標は、第2週(9月4日〜8日)のECB金融政策発表ぐらいしかありません。下旬(24日)の独総選挙が終わるまで、それどころじゃありません。
【4-3-2. 政策決定指標】
(1) 金融政策
7月6日に6月のECB理事会議事要旨が公表されました。議事要旨では「インフレ見通しに確信が必要」との記載に対し、市場(プロフェッショナル)は独国10年債利率を跳ね上げました。つまり、市場は既にインフレ率改善を先取りしてを確信しているのです。
そして、7月20日にECB理事会の結論は「市場予想通り現状維持」でした。
理事会後の記者会見でECB総裁は、最も市場の関心があった資産買入プログラム変更の可能性について質問を受けました。回答は次の通りです。
曰く「まだそのような時点に至っていない。フォワードガイダンスは変更しないということや、将来の変更を討議する具体的日程は設定しないことで、理事会は一致している。つまり(先月末に大騒ぎになった発言は)単に討議が秋に実施されると言っただけだ」です。
ECBの複数の政策立案者は、今後の資産買い入れ施策を決定するのは10月の可能性が高く、12月では遅すぎると考えている旨、7月21日に報道されています。
8月23日にECB総裁は、ECBによるQEとフォワードガイダンスは成功との認識を示し、こうした非伝統的な金融政策は欧州と米国で成功した、と述べました。
(分析事例) ECB金融政策(2017年7月20日発表結果)
発表から1分を過ぎると、その後の反転率が異常に高いという特徴があります。これは、いつも声明発表から45分後にECB総裁の記者会見があるからです。この記者会見でその後の反応方向は決まりがちです。
現ECB総裁は「そうは言っていない」と平気で前言を翻せるマジックを使うのです。周囲があきれても、それでEURが動く以上ぶつくさ言っても仕方ありません。事前にECBが誘導したいのが通貨高か通貨安かに強い確信がない限り、こんな取引に参加しても仕方がありません。
(2) 財政政策
欧州の政策決定過程は非常にわかりにくい仕組です。
欧州理事会(EU首脳会議)は、各国首脳と欧州委員会委員長とEU大統領によって構成されています。閣僚理事会は各加盟国から1名ずつ代表が選出され、各国が持ち回りで議長国を務めます。欧州委員会は各加盟国から1名ずつ選出された委員によって構成されています。欧州議会の議席配分は人口によって割り振られています。
で、どこが予算案を作ってどうやって配分するのかがわかりにくいのです。
ともあれ、そうしたEU施策を実務に落とし込むのは「EUの巨大な官僚機構」と言われる組織です。この官僚機構への不満が加盟国では広がっています。一転、この官僚機構の既得権を脅かすことはEU解体です。離脱する英国に対し、猛烈に厳しい条件なんて、その上の政治家が何とかするでしょう。欧州にはしっかりした政治家も歴史的に多いのです。だから、英国にとって最も恐れるべきことは、この官僚機構の猛烈な事務遅延ではないでしょうか。第二の英国が現れて最も困るのは、この官僚機構なのです。
(3) 景気指標
8月22日に発表された独国8月分ZEW景況指数は、期待指数が前回を大きく下回り(10.0、前回は17.5)、現況指数が前回を僅かに上回りました(86.7、前回は86.4)。
期待指数は、2017年2月分の水準まで低下し、同年5月分をピークとした下降基調転換の可能性があります(3か月連続で前回結果を下回りました)。グラフ推移の印象からは、来月に2017年2月分水準を下抜けると、下降基調がはっきりします。
現況指数は、前回を僅かに上回ったものの、グラフ推移の印象から言えば、頭を押さえられています。こちらは、2016年7月以降継続している上昇基調がまだ維持されていると見なせ、先行して下降基調に転じた可能性がある期待指数とは様子が異なります。6月分現況指数は2011年7月以来の最大値(88.0)で、その水準はまだ維持されています。
8月23日に発表された独国8月分PMI速報値は、製造業が59.4で直近ピークの2017年5月分に並び、サービス業が53.4でした。この結果を受けて、直後1分足は2015年以降で最も大きく反応(跳幅27pips・値幅24pips)しました。
8月24日に発表された独国Ifo景況感指数は115.9(前回116.0)で、景況感は107.9(前回107.3)、現況分析は124.6(前回125.4)と、まちまちの結果になりました。
(分析事例) 独国ZEW景況感調査(2017年8月22日発表結果検証済)
(分析事例) 独国PMI速報値(2017年7月24日発表結果検証済)
(分析事例) 独国Ifo景況指数(2017年8月25日発表結果検証済)
独国景気指標は、ZEW・PMI速報値・Ifo・PMI改定値の順に発表されます。PMI改定値はほぼ反応しないため取引しません。別々の指標であっても、全体的に上昇基調・下降基調というのは、グラフを見ればほぼ向きと期間が一致します。
問題は、単月毎のZEW・PMI速報値・Ifoの実態差異(発表結果ー前回結果)の符号(プラス・マイナス)の一致率が低いことです。単月毎の予想では、先に発表された指標結果が後で発表される指標結果の改善・悪化すらアテにならない、ということです。よって、毎回の指標結果予想の論拠は、単月データに基づくものでなく、トレンドの有無に基づくものでなければいけません。
ZEWは期待指数と現況指数とが発表され、指標発表後の反応方向に影響するのは現況指数です。よく「期待指数が重要」との解説を見かけますが、重要かもしれなくても期待指数の良し悪しは反応方向との一致率が低くなっています。
Ifoの指標結果分析にはあまり意味がありません。
まず、ZEW景況感調査との先行性・遅行性を論じた解説が散見されます。がしかし、本指標との実態差異(発表結果ー前回結果)の一致率は、一方の指標を前後2か月までずらしても50%以下です。少なくとも単月毎のZEWの結果良し悪しは、本指標結果予想には確率的に無意味です。
また、本指標の過去の傾向は、指標結果の良し悪しと反応方向の相関が低く、指標予想を当ててもどちらに反応するかがわかりません。特に、強いトレンドを生じているときには、本指標の反応は小さく影響期間が短いため、指標結果なんてほぼ役に立たないのです。
ーーー$€¥ーーー
8月23日に発表された欧州8月分PMI速報値は、製造業が57.4(前回56.6)、サービス業が54.9(前回55.4)、となりました。製造業は直近のピーク2017年6月の57.3を上抜け、2017年2月以降のサービス業も2013年以降で高水準で上下しています。
(分析事例) 欧州PMI速報値(2017年6月23日発表結果検証済)
欧州景気指標はPMI速報値のみ取引し、ZEW景況感調査やPMI改定値(最終値に相当)では取引しません。
欧州PMIは、速報値と改定値で実態差異(発表結果ー市場予想)の符号の一致傾向も高いものの、改定値は事後差異(発表結果ー市場予想)がほとんどの場合に0となります。過去、速報値結果で改定値予想がほぼ正確に予想されています。よって、PMI改定値発表直後の反応は、たいてい指標結果に関係ありません。
欧州ZEW景況感調査は、独国ZEW景況指数と同時発表されます。欧州結果は反応にほぼ影響しません。
よって、PMI速報値ぐらいしか取引できないのです。
(4) 物価指標
欧州物価指標(HICP)は取引に向かない指標です。
速報値は反応が小さため、反応方向が指標結果に対しあまり素直ではありません(トレンドに飲み込まれがちです)。だから、指標分析の意味がありません。そして、改定値は速報値とほぼ結果が一致します。結果が一致するのにEURが動くのは、指標の影響ではありません。
ECBは、実質的にインフレ目標(前年比2%付近で以下)を設定しています。現在、その近辺まで回復したという見方と、まだ目標付近で安定していないという見方があり、ECB政策に絡むだけに本指標は重要視されています。
ECBとIMFの2017年インフレ率は各1.5%・1.6%、2018年は各1.4%・1.5%と見込まれています。ECBは慎重です。
6月28日に市場を混乱させたECB総裁発言の「秋に政策微調整可否のための状況確認」は、この前年比が秋までに目標近辺に到達するという意味ではない、と思われます。数字がなかなか2%を超えないことを表向きの理由に挙げて、秋の独総選挙が終わるまで新たな情勢判断を不用意に出来ない、と受け取る方がしっくりきます。
8月31日に発表された8月分HICP前年比速報値は、前回結果をやや上回りました。コアHICP前年比は上昇基調を継続しており、HICP前年比は少し前まで下降基調転換を懸念されていたものの、こちらも上昇に転じたかも知れません。
(分析事例) HICP(消費者物価指数)速報値(2017年7月31日発表結果検証済)
(5) 雇用指標
8月31日に発表された独国8月分雇用統計の結果は、失業率が5.7%(6・7月分同値)、失業者数前月差は△0.5万人(7月分△0.9万人)でした。失業率は2014年以降ほぼ単調に低下し、最近は低下が加速していたものの、この3か月は停滞しています。失業者数前月差は、2015年1月分以降プラスだったことが4回しかありません。
8月31日に発表された欧州7月分失業率は+9.1%でした。各国平均で9.1%という数字に驚きますが、これでも2013年9月の12.2%をピークにほぼ毎月単調に低下しています。
【4-3-3. 経済実態指標】
昨年2016年の欧州GDPは19.3兆USDです。そのうち独国が17.9%、英国が13.6%、仏国が12.8%、伊国が9.6%を占めています。
(1) 経済成長
欧州GDPは、発表結果と反応方向とがあまり関係ありません。おそらく、各国毎の発表が先行しているため、その時々にEURレートへの折込みが行われるからでしょう。
5月23日に独国1-3月期GDP改定値が発表されました。結果は、前期比が+0.6%で、前年比が+1.7%、でした。前年比は、2016年7-9月期から3期続けて同値継続となっています。
7月20日に独国財務省は月報を公表し、(a) 国内経済は好調、(b) 英国のEU離脱交渉やトランプ米大統領による貿易政策は不確定要素、(c) 展望は順調な成長と予想、との内容でした。4-6月期は、1-3月期の前期比+0.6%と同様の成長率となる見込み、です。
8月15日に発表された独国4-6月期GDP速報値は、前期比+0.6%・前年比+0.8%でした。独国財務省による前期比見通しは正しかった訳です。前年比は改定値で上方修正されなければ、4期ぶりに成長鈍化となります。8月25日に発表された改定値は、前期比・前年比ともに速報値同値でした。
(分析事例) 独国四半期GDP速報値(2017年8月15日発表結果検証済)
(2) 実態指標
最も影響力が強い独国経済も、実はGDP比で言えばEU全体に対し20%を下回っています。
(2-1) 小売
8月31日に発表された独国7月分小売売上高指数は、前期比△1.2%、前年比+2.7%でした。前年比の動きを見ると、毎月の上下動が激しいものの、2016年2月以降は全体的にやや下降ぎみでした。2017年2月以降は、それが上昇に転じたように見えていたものの、今回は上げはやや小さめでした。まだ上昇基調というには少し弱いように見えます。
(2-2) 生産
製造業の受注と生産のLT(リードタイム)は、受注が3〜6か月程度先行すると見るのが一般的です(業種間のばらつきが大きい)。それを同時に表しているのが景気指標ですが、製造業PMI改定値(最終値に相当)には、先行きへの不安の兆候がまだ見受けられません。
8月4日に発表された独国6月分鉱工業受注指数前月比は+1.0%でした。内需は+5.1%で好調、外需は△2.0%でした。てっきりEUR高が原因かと思ったら、EU諸国からの需要が△2.4%となっています。この結果について、独経済省は「小幅な拡大が続く」との見方を示しています。
8月7日に発表された独国6月分鉱工業生産前月比は△1.1%でした。
【4-3-4. 収支関係指標】
8月8日に発表された独国6月分貿易収支は+223億EUR(5月分+220億EUR)でした。輸出好調には違いないものの、独国内景気が好調で輸入も増えている結果、増加ペースが落ち始めました。
8月17日に発表された欧州6月分貿易収支は+266億EUR(5月分+214億EUR)でした。欧州貿易収支は毎月の上下動があるものの、全体として増加基調です。数字を見比べてみると、独国の輸出の強さが良くわかります。
以上