2017年09月18日
独国景気指標「ZEW景況感調査」発表前後のEURJPY反応分析(2017年9月19日18:00発表結果検証済)
以下、「T.指標予想要点」「U.過去調査詳細」を事前投稿し、「V.発表結果検証」を事後投稿しています。ブログの日付は事前投稿日となっています。指標発表後に事後投稿し、その日時は「V.発表結果検証」のタイトル行付近に記載しています。
2017年9月19日18:00に独国景気指標「ZEW景況感調査」が発表されます。今回発表は2017年9月分の集計結果です。
今回の市場予想と前回結果は次の通りです。市場予想は本記事作成時点の値です。
※ 市場予想は発表直前に確認しておきましょう。
※ 黄色欄は、後述する事前差異判別式の変数と解です。
本指標の特徴は以下の通りです。
以下のシナリオで取引に臨みます。
以上の詳細ないしは論拠は、以下の「T.調査・分析」に記しています。
公開情報や既出情報に基づく調査を行い、過去の指標と反応の関係を比較分析しています。方向に関する的中率に比べ、程度に関する的中率は残念ながら低いというのが実情です。利確・損切の目安は、過去平均値を最近の反応の大小と見比べて感覚的に微修正しています。
独国ZEW景況感指数(期待指数)は、独国の今後6カ月の景気見通し(「良い」「同じ」「悪い」)について、アナリスト・機関投資家・市場関係者など約350人を対象に行ったアンケート調査に基づく指標です。指数は、「良い」から「悪い」を引いた数で0が基準になっています。
一般に景況感調査は、プロが調査対象のときと無作為抽出した消費者かによって、事前参考すべき対象が異なります。プロが対象のときは直近の関連指標(含金利・株価)を参考にすべきだし、一般消費者が対象のときは調査月前半のマスコミ報道内容も参考にすると良いでしょう。
ZEWはプロが調査対象ゆえ、マスコミ報道内容よりも直近の指標結果を参考にした方が良いようです。
さて、本指標に絡む話にはオカルトが多いのです。
以下、そのオカルトの代表例を3つ挙げて、事実を述べておきます。他人の話を単なるオカルトと断じる都合上、出典は示せません。他人を非難したり論争をするつもりではなく、読者に事実さえ伝えられれば十分です。
まず、ZEW景況感調査の結果はECBの金融政策に影響を与えている、という解説記事を目にしたことがあります。
けれども、もしそうだとしても、景況感よりも物価指標や実態指標を中銀は重視するはずです。だから、この話が本当だとしても(ECBがZEWを参考にしていたとしても)、ECBの政策を予想する材料とはなりません。
これは「はず」の話ですが、大きな組織が大きな政策決定を事実の裏付けなく決定できる「はず」ないのです。
次に、ZEW景況感調査はIfo景況感指数よりも先に発表され、Ifo指数よりも1か月の先行性がある、という解説を見たこともあります。だから、ZEW指標が注目に値する、という話です。
こういう話は確かめずにはいられません。
詳細はIfo指数の記事で説明しますが、少なくとも2015年1月から2017年7月発表までの31回の結果を見比べる限り、そんな傾向はありません。
確かに、過去から現在に亘る指標結果の上昇基調や下降基調といった情報は、今回の取引でも参考にできます。がしかし、単月毎の指標結果の良し悪しを比べても、そんなものはアテになりません。上記期間におけるZEW指標とIfo指標とは、前月より翌月が良くなったか悪くなったかすら、一致しないことの方が多いのです。
そして最後に、独国ZEWは期待指数と現況指数とが発表されます。多くの資料では期待指数の方が現況指数より重要だという解説が見受けられます。既に終わった現状よりも、将来の景気動向の方が重要だという話は、何となく納得しやすい話です。
がしかし、2015年1月から2017年7月発表までの31回の実績を調べたところ、事後差異(市場予想と発表結果の大小関係)は、期待指数よりも現況指数との方が直後1分足の反応方向との一致率が高くなっています。
きちんと調べないと、事実はわかりません。
尤も、多くの解説では「期待指数の方が重要」と記載され、「何に対して」重要かが記されていません。だから、きっとそれら解説は間違っていないのでしょう。でも、その記事の読者が誰かを考えると、「何に対して」は「指標発表直後の反応に対して」であるべきです。
本指標に関する調査期間と、過去の反応程度・分布を下表に纏めておきます。
最も指標結果に素直に反応する直後1分足跳幅は、過去平均で8pipsしかありません。反応が小さいため、大きなトレンドが発生しているときには、指標発表結果の影響はすぐにトレンドに呑まれてしまいます。だから、こうした反応が小さい指標で取引するときは、例えば、
というやり方が良いでしょう。
個々の取引で大けがさえしなければ、これらを守れば年間を通してプラスにしやすくなるでしょう。
過去の発表結果と市場予想を下図に一覧します。
下図は発表結果と市場予想をプロットしています。市場予想は発表直前の値をプロットし、発表結果は後に修正値が発表されても定時発表値のままをプロットしています。
項目が多いため、個別項目毎に細かくグラフを眺める前に、見るべきポイントを絞り込みましょう。各項目毎に反応方向にどの程度影響しているのかを下表に纏めておきました。
上表の上3行は、独国期待指数と独国現況指数と欧州指数の各項目を、ひとつずつ反応方向との一致率を求めています。これは予備計算のようなもので、この予備計算は最も反応方向との一致率が高い項目に注目しています。
上から4行目は、事前差異(市場予想ー前回結果)と直前10-1分足の方向一致率が高くなるように、各項目の係数を求めています。
上から5行目は、事後差異(発表結果ー市場予想)と直後1分足の方向一致率が高くなるように、各項目の係数を求めています。
最下段6行目は、実体差異(前回改定値結果ー市場予想)と直後11分足の方向一致率が高くなるように、各項目の係数を求めています。
結果、それぞれの式の方向一致率は60%・76%・64%となりました。事後差異と直後1分足の方向一致率が高いので、素直に反応する指標だと言えるでしょう。
ともあれ、1✕独国期待指数の事後差異+2✕独国現況指数の事後差異、を判別式として採用すると、その解の符号(プラスが陽線、マイナスが陰線)と直後1分足の方向一致率が76%となります。
事後判別式係数から、直後1分足方向は独国現況指数の市場予想との差異が大きく影響することがわかりました。
独国現況指数は、2015年2月以降前回までの31回において、前月と当月とを比べて発表結果と市場予想の大小関係が入れ替わったことが13回あります(入れ替わり率42%)。入れ替わり頻度が高く、市場予想後追い型とは言えません。
過去の直前10-1分足・直前1分足・直後1分足・直後11分足の始値基準ローソク足を示します。
まず、直前10-1分足は、2016年7月以前を陽線率が高い時期、それ以降を陰線率が高い時期、と区別することができます。お手元のツールを使って月足チャートをご覧ください。2016年7月頃を境に月足は下降トレンドから上昇トレンドに転換しています。
よって、直前10-1分足の反応方向は、月足チャートのトレンド方向との不一致率がかなり高いように見受けられます。
そして、直前10-1分足は、過去平均跳幅が8pipsです。跳幅が10pips以上だったことは過去9回(頻度28%)あります。この9回の直後1分足跳幅は14pipsで、これは直後1分足跳幅の過去全平均8pipsより大きい、と言えます。そして、この9回の直前10-1分足と直後1分足の方向は7回(78%)一致しています。
つまり、直前10-1分足の反応が平均より少し大きく動いたときには、それが直後1分足の反応方向を示唆しており、反応程度も大きくなりがちです。
次に、直前1分足は陰線側への異常な偏りが見受けられます。
そして、直前1分足の過去平均跳幅は5pipsです。その跳幅が10pips以上だったことは過去5回(頻度16%)あります。この5回の直後1分足跳幅の平均は9pipsで、これは過去全平均8pipsとほぼ同じです。そして、このとき直前1分足と直後1分足の方向は1回も一致していません。この5回の直前1分足は全て陰線で、そのときの直後1分足は全て陽線です。
そして、直後1分足の過去平均跳幅と値幅の差は3pips(1ー値幅/跳幅=戻り比率37%)です。直後11分足のそれは5pips(戻り比率38%)です。反応が小さい指標では、これら戻り率が大きくなる傾向があります。戻り率が大きいことで、余計に勝ちにくい指標となるのです。
これら直後1分足や直後11分足の方向に関する詳細分析は、ローソク足観察よりも他の分析を参照する方が良いでしょう。
指標一致性分析は、指標の前回結果と市場予想の差(事前差異)と、発表結果と市場予想の差(事後差異)と、発表結果と前回結果の差(実態差異)を求め、そのプラス・マイナスと反応方向に偏りがないかを調べています。詳細は「指標一致性分析」をご参照願います。
反応一致性分析は、指標発表前後の反応方向に特徴的な偏りがないかを調べています。詳細は「反応一致性分析」をご参照願います。
反応性分析では、過去発表直後の1分足と11分足の跳幅と値幅を使います。この分析で十分なpipsが狙えそうな指標か否かが判断できます。詳細は「反応性分析」をご参照願います。
まず、指標一致性分析の結果を下表に示します。
事後差異は直後1分足との方向一致率が76%となっています。市場予想に対する発表結果の良し悪しには、素直に反応する傾向があります。
次に、反応一致性分析の結果を下表に示します。
直前1分足は陰線率が90%、直後1分足は陽線率が72%と、偏りが目立ちます。直前1分足と直後1分足の方向一致率は14%(不一致率86%)で、矛盾ありません。
ここで、もし直前1分足が陽線だった場合、直後1分足の陽線率をアテにすべきでしょうか。それとも、不一致率の高さをアテにして、直後1分足は陰線と見なすべきでしょうか。
わかりません。
このブログでは、単純な頻度確率よりも因果関係を含む確率をアテにしています。よって、直前1分足がもし陽線なら、直後1分足の方向は逆に陰線と見込みます。
また、直前10-1分足と直後1分足の方向一致率は69%、直後1分足と直後11分足の方向一致率は71%となっています。
最後に、反応性分析の結果を下表に示します。
直後1分足と直後11分足との方向一致率は71%です。そして、その71%の方向一致時だけに注目すると、直後1分足跳幅を直後11分足跳幅が超えて反応を伸ばしたことが85%です。
指標発表時点から見たその後の方向一致率が高く、且つ、反応を伸ばしているのだから、指標発表後に反応方向を確認したら早期追撃です。
がしかし、指標発表から1分を経過すると、直後1分足終値を超えて直後11分足終値が伸びていたことは、方向一致時こそ60%ですが、全ての場合を踏まえると43%しかありません。直後1分足と直後11分足とが反転したことは29%で、直後11分足が直後1分足の値幅を削ったことも29%あります。
早期追撃で得たポジションの長持ちは避けるべきであり、発表から1分過ぎたら利確の機会を窺う方が良いでしょう。
発表から1分を過ぎたら、追撃には向いていません(どちらに反応が進むかはわかりません)。
以下のシナリオで取引に臨みます。
以下は2017年9月19日20:30頃に追記しています。
本指標発表結果及び反応は次の通りでした。
結果は現況指数・期待指数ともに前回・予想を上回り、反応は陽線でした。
現況指数の直近ピークは2017年6月分の88.0です。今回結果(87.9)は僅かに届きませんでした。期待指数の直近ピークは2017年5月分の20.6です。それ以降、下降が続いていたので、上昇は4か月ぶりです。
つまり、全般的には今回の結果がかなり良かった、ということになります。
この「かなり良かった」結果を受けた反応は「大きく」、直後1分足を超えて直後11分足は反応を伸ばしました。直後1分足跳幅は12pips(過去平均8pips)、直後11分足値幅は16pips(過去平均8pips)、です。
さて、今回の指標結果に関するきちんとした解説記事が出ていたので見ておきました。
ロイターは、今週末の独総選挙が影響していないことと、EUR高への懸念が指標結果に現れていないことを、引用・指摘していました。ブルームバーグは、EUR高が最近進んでいないことと、独中銀月報が7-9月期も力強く成長する見通しを示したことを、引用・指摘していました。
なるほどね。
取引結果は次の通りでした。
17:21の高値134.11から、発表直前17:57に安値133.62を付けるまで、46分間で49pips強(約△1pips/分)の下降トレンドが起きていました。
参考までに、本指標のように反応が小さな指標発表では、発表直後1分間に5pips、10分間に10pipsぐらいが普通です。
反応の小さな指標の発表後10分間と同じぐらいのスピードで、本指標発表前の46分足は動いていたことになります。
けれども、そんな波に乗ってせっかく指標発表前に利確したのに、分析を外してしまって台無しにしたのが今回の取引でした。全体収支はプラスなので、まぁ構わないですが、本ブログでの取引方法の特徴一面が良く表れた取引でした。
事前調査・分析内容において、次回までに再検討を要するのは次の点です。
今回の実態差異判別式結果はマイナスとなっており、これには違和感があります。過去のデータから回帰する限り、実態差異判別式は、−1✕期待指数実態差異+2✕現況指数実態差異ー3✕欧州景況指数実態差異、です。
この判別式の解の符号と過去の直後11分足は、方向一致率が62%です。
がしかし、この式では、今回のように期待指数も現況指数も欧州景況指数も前回結果を上回っても、式の係数のマイナスが大きいため、実態差異判別式の解がマイナスになってしまいます。
繰り返しになりますが、けれどもこのこの判別式の解の符号と過去の直後11分足は、方向一致率が62%です。
この62%という数字は、期待指数(37%)・現況指数(56%)・欧州景況指数(48%)のそれぞれ単独の実態差異と直後11分足の方向一致率より高くなっています。だから、判別式としては有効です。
違和感を解消するためには、式の係数のマイナスを無くすか、マイナス寄与を小さくしなければいけません。もちろん、そうした判別式は、最も直後11分足との方向一致率が高くなる式ではなくなるでしょう。
どちらが良いのか、再検討しておきます。
現状分析において、事前準備していたシナリオに問題はありません。
下表に、本ブログを始めてからの本指標シナリオでの取引成績を纏めておきます。
本記事は、同じ指標の発表がある度に更新を繰り返して精度向上を図り、過去の教訓を次の発表時の取引で活かせるように努めています。がしかし、それでも的中率は75%程度に留まり、100%ではありません。詳細は「1. FXは上達するのか」をご参照ください。
そして、本記事は筆者個人の見解に基づいています。本記事に含まれる価格・データ・その他情報等は、本記事に添付されたリンク先とは関係ありません。また、取引や売買における意思決定を、本記事の記載通りに行うことは適切ではありません。そして、本記事の内容が資格を持った投資専門家の助言ではないことを明記しておきます。記載内容のオリジナリティや信頼性確保には努めているものの、それでも万全のチェックは行えていない可能性があります。
ポジションを持つ最終的なご判断は読者ご自身の責任となります。その点を予めご了承の上、本記事がFXを楽しむ一助となれば幸いです。
本記事における分析シート、一部乃至は一連の体系化された手順を、個人の取引以外の目的で使用・公開・二次利用を行う場合には、著作権者及びFX手法研究会に対し、連絡を取り何らかの合意を行う必要があります。
T.指標予想要点
2017年9月19日18:00に独国景気指標「ZEW景況感調査」が発表されます。今回発表は2017年9月分の集計結果です。
今回の市場予想と前回結果は次の通りです。市場予想は本記事作成時点の値です。
※ 市場予想は発表直前に確認しておきましょう。
※ 黄色欄は、後述する事前差異判別式の変数と解です。
本指標の特徴は以下の通りです。
- 多くの指標解説で期待指数に注目が集まりがちですが、指標発表直後の反応方向との一致率が高いのは現況指数の方です。現況指数の事後差異(発表結果ー市場予想)と直後1分足の方向一致率は75%です。期待指数のそれは46%しかありません。
- 直前10-1分足・直前1分足と直後1分足との方向一致率はそれぞれ69%・14%です。この数字から、本指標の取引参加者は、指標発表後の反応方向がほぼ掴めている可能性があります(自分だけがそのことを知らない、というのは癪ですよね)。
- 指標発表から1分を過ぎてからの追撃は避けた方が良さそうです。直後1分足終値を超えて直後11分足終値が反応を伸ばしたことは43%です。直後1分足や直後11分足の戻り率(1−跳幅/値幅)も40%弱と大きく、追撃で利幅を伸ばすことは難しい指標だと言えるでしょう。
以下のシナリオで取引に臨みます。
- 直前10-1分足は陰線と見込みます。
9月月足は現時点において陽線なので、過去の傾向に基づき、その逆方向に反応する可能性が高い、と見込みます。 - 直前1分足は陰線と見込みます。
但し、過去平均跳幅が5pipsしかありません。1・2pipsで利確しなければいけない場合が多いので、スプレッドが大きいFX会社で取引しているなら、取引は止めておいた方が良いでしょう。 - 直後1分足は、指標発表直前に直前1分足と逆方向にポジションを取得します(期待的中率86%)。
但し、直前10-1分足「跳幅」が10pips以上となったときは、直後1分足は同方向に反応すると見なし、その跳ねた方向に指標発表直前にポジション取得を優先します。
いずれにせよ、利確/損切は指標発表直後の跳ねで行います。 - 追撃するなら、指標発表から1分以内にポジションを取り、1分を過ぎたら早めに利確・損切します。
以上の詳細ないしは論拠は、以下の「T.調査・分析」に記しています。
U.過去調査詳細
公開情報や既出情報に基づく調査を行い、過去の指標と反応の関係を比較分析しています。方向に関する的中率に比べ、程度に関する的中率は残念ながら低いというのが実情です。利確・損切の目安は、過去平均値を最近の反応の大小と見比べて感覚的に微修正しています。
【1. 指標概要】
独国ZEW景況感指数(期待指数)は、独国の今後6カ月の景気見通し(「良い」「同じ」「悪い」)について、アナリスト・機関投資家・市場関係者など約350人を対象に行ったアンケート調査に基づく指標です。指数は、「良い」から「悪い」を引いた数で0が基準になっています。
一般に景況感調査は、プロが調査対象のときと無作為抽出した消費者かによって、事前参考すべき対象が異なります。プロが対象のときは直近の関連指標(含金利・株価)を参考にすべきだし、一般消費者が対象のときは調査月前半のマスコミ報道内容も参考にすると良いでしょう。
ZEWはプロが調査対象ゆえ、マスコミ報道内容よりも直近の指標結果を参考にした方が良いようです。
ーーー$€¥ーーー
さて、本指標に絡む話にはオカルトが多いのです。
以下、そのオカルトの代表例を3つ挙げて、事実を述べておきます。他人の話を単なるオカルトと断じる都合上、出典は示せません。他人を非難したり論争をするつもりではなく、読者に事実さえ伝えられれば十分です。
まず、ZEW景況感調査の結果はECBの金融政策に影響を与えている、という解説記事を目にしたことがあります。
けれども、もしそうだとしても、景況感よりも物価指標や実態指標を中銀は重視するはずです。だから、この話が本当だとしても(ECBがZEWを参考にしていたとしても)、ECBの政策を予想する材料とはなりません。
これは「はず」の話ですが、大きな組織が大きな政策決定を事実の裏付けなく決定できる「はず」ないのです。
次に、ZEW景況感調査はIfo景況感指数よりも先に発表され、Ifo指数よりも1か月の先行性がある、という解説を見たこともあります。だから、ZEW指標が注目に値する、という話です。
こういう話は確かめずにはいられません。
詳細はIfo指数の記事で説明しますが、少なくとも2015年1月から2017年7月発表までの31回の結果を見比べる限り、そんな傾向はありません。
確かに、過去から現在に亘る指標結果の上昇基調や下降基調といった情報は、今回の取引でも参考にできます。がしかし、単月毎の指標結果の良し悪しを比べても、そんなものはアテになりません。上記期間におけるZEW指標とIfo指標とは、前月より翌月が良くなったか悪くなったかすら、一致しないことの方が多いのです。
そして最後に、独国ZEWは期待指数と現況指数とが発表されます。多くの資料では期待指数の方が現況指数より重要だという解説が見受けられます。既に終わった現状よりも、将来の景気動向の方が重要だという話は、何となく納得しやすい話です。
がしかし、2015年1月から2017年7月発表までの31回の実績を調べたところ、事後差異(市場予想と発表結果の大小関係)は、期待指数よりも現況指数との方が直後1分足の反応方向との一致率が高くなっています。
きちんと調べないと、事実はわかりません。
尤も、多くの解説では「期待指数の方が重要」と記載され、「何に対して」重要かが記されていません。だから、きっとそれら解説は間違っていないのでしょう。でも、その記事の読者が誰かを考えると、「何に対して」は「指標発表直後の反応に対して」であるべきです。
ーーー$€¥ーーー
本指標に関する調査期間と、過去の反応程度・分布を下表に纏めておきます。
最も指標結果に素直に反応する直後1分足跳幅は、過去平均で8pipsしかありません。反応が小さいため、大きなトレンドが発生しているときには、指標発表結果の影響はすぐにトレンドに呑まれてしまいます。だから、こうした反応が小さい指標で取引するときは、例えば、
- まず、本指標にはトレンド方向を転換するほどの影響力がないことを頭に入れておく
- 事前に15分足チャートでトレンド方向と上下のサポート・レジスンタンスの位置を確認しておく
- トレンドに逆らわない方向に期待的中率が高ければ取引し、そうでなければ取引しない
- 指標発表後の追撃も同様
- トレンドに反する方向に反応を伸ばしても、サポートやレジスタンスを抜けることは滅多にないことを覚えておく
というやり方が良いでしょう。
個々の取引で大けがさえしなければ、これらを守れば年間を通してプラスにしやすくなるでしょう。
【2. 既出情報】
(2-1. 過去情報)
(2-1. 過去情報)
過去の発表結果と市場予想を下図に一覧します。
下図は発表結果と市場予想をプロットしています。市場予想は発表直前の値をプロットし、発表結果は後に修正値が発表されても定時発表値のままをプロットしています。
項目が多いため、個別項目毎に細かくグラフを眺める前に、見るべきポイントを絞り込みましょう。各項目毎に反応方向にどの程度影響しているのかを下表に纏めておきました。
上表の上3行は、独国期待指数と独国現況指数と欧州指数の各項目を、ひとつずつ反応方向との一致率を求めています。これは予備計算のようなもので、この予備計算は最も反応方向との一致率が高い項目に注目しています。
上から4行目は、事前差異(市場予想ー前回結果)と直前10-1分足の方向一致率が高くなるように、各項目の係数を求めています。
上から5行目は、事後差異(発表結果ー市場予想)と直後1分足の方向一致率が高くなるように、各項目の係数を求めています。
最下段6行目は、実体差異(前回改定値結果ー市場予想)と直後11分足の方向一致率が高くなるように、各項目の係数を求めています。
結果、それぞれの式の方向一致率は60%・76%・64%となりました。事後差異と直後1分足の方向一致率が高いので、素直に反応する指標だと言えるでしょう。
ともあれ、1✕独国期待指数の事後差異+2✕独国現況指数の事後差異、を判別式として採用すると、その解の符号(プラスが陽線、マイナスが陰線)と直後1分足の方向一致率が76%となります。
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事後判別式係数から、直後1分足方向は独国現況指数の市場予想との差異が大きく影響することがわかりました。
独国現況指数は、2015年2月以降前回までの31回において、前月と当月とを比べて発表結果と市場予想の大小関係が入れ替わったことが13回あります(入れ替わり率42%)。入れ替わり頻度が高く、市場予想後追い型とは言えません。
(2-2. 過去反応)
過去の直前10-1分足・直前1分足・直後1分足・直後11分足の始値基準ローソク足を示します。
まず、直前10-1分足は、2016年7月以前を陽線率が高い時期、それ以降を陰線率が高い時期、と区別することができます。お手元のツールを使って月足チャートをご覧ください。2016年7月頃を境に月足は下降トレンドから上昇トレンドに転換しています。
よって、直前10-1分足の反応方向は、月足チャートのトレンド方向との不一致率がかなり高いように見受けられます。
そして、直前10-1分足は、過去平均跳幅が8pipsです。跳幅が10pips以上だったことは過去9回(頻度28%)あります。この9回の直後1分足跳幅は14pipsで、これは直後1分足跳幅の過去全平均8pipsより大きい、と言えます。そして、この9回の直前10-1分足と直後1分足の方向は7回(78%)一致しています。
つまり、直前10-1分足の反応が平均より少し大きく動いたときには、それが直後1分足の反応方向を示唆しており、反応程度も大きくなりがちです。
次に、直前1分足は陰線側への異常な偏りが見受けられます。
そして、直前1分足の過去平均跳幅は5pipsです。その跳幅が10pips以上だったことは過去5回(頻度16%)あります。この5回の直後1分足跳幅の平均は9pipsで、これは過去全平均8pipsとほぼ同じです。そして、このとき直前1分足と直後1分足の方向は1回も一致していません。この5回の直前1分足は全て陰線で、そのときの直後1分足は全て陽線です。
そして、直後1分足の過去平均跳幅と値幅の差は3pips(1ー値幅/跳幅=戻り比率37%)です。直後11分足のそれは5pips(戻り比率38%)です。反応が小さい指標では、これら戻り率が大きくなる傾向があります。戻り率が大きいことで、余計に勝ちにくい指標となるのです。
これら直後1分足や直後11分足の方向に関する詳細分析は、ローソク足観察よりも他の分析を参照する方が良いでしょう。
【3. 定型分析】
指標一致性分析は、指標の前回結果と市場予想の差(事前差異)と、発表結果と市場予想の差(事後差異)と、発表結果と前回結果の差(実態差異)を求め、そのプラス・マイナスと反応方向に偏りがないかを調べています。詳細は「指標一致性分析」をご参照願います。
反応一致性分析は、指標発表前後の反応方向に特徴的な偏りがないかを調べています。詳細は「反応一致性分析」をご参照願います。
反応性分析では、過去発表直後の1分足と11分足の跳幅と値幅を使います。この分析で十分なpipsが狙えそうな指標か否かが判断できます。詳細は「反応性分析」をご参照願います。
まず、指標一致性分析の結果を下表に示します。
事後差異は直後1分足との方向一致率が76%となっています。市場予想に対する発表結果の良し悪しには、素直に反応する傾向があります。
次に、反応一致性分析の結果を下表に示します。
直前1分足は陰線率が90%、直後1分足は陽線率が72%と、偏りが目立ちます。直前1分足と直後1分足の方向一致率は14%(不一致率86%)で、矛盾ありません。
ここで、もし直前1分足が陽線だった場合、直後1分足の陽線率をアテにすべきでしょうか。それとも、不一致率の高さをアテにして、直後1分足は陰線と見なすべきでしょうか。
わかりません。
このブログでは、単純な頻度確率よりも因果関係を含む確率をアテにしています。よって、直前1分足がもし陽線なら、直後1分足の方向は逆に陰線と見込みます。
また、直前10-1分足と直後1分足の方向一致率は69%、直後1分足と直後11分足の方向一致率は71%となっています。
最後に、反応性分析の結果を下表に示します。
直後1分足と直後11分足との方向一致率は71%です。そして、その71%の方向一致時だけに注目すると、直後1分足跳幅を直後11分足跳幅が超えて反応を伸ばしたことが85%です。
指標発表時点から見たその後の方向一致率が高く、且つ、反応を伸ばしているのだから、指標発表後に反応方向を確認したら早期追撃です。
がしかし、指標発表から1分を経過すると、直後1分足終値を超えて直後11分足終値が伸びていたことは、方向一致時こそ60%ですが、全ての場合を踏まえると43%しかありません。直後1分足と直後11分足とが反転したことは29%で、直後11分足が直後1分足の値幅を削ったことも29%あります。
早期追撃で得たポジションの長持ちは避けるべきであり、発表から1分過ぎたら利確の機会を窺う方が良いでしょう。
発表から1分を過ぎたら、追撃には向いていません(どちらに反応が進むかはわかりません)。
【4. シナリオ作成】
以下のシナリオで取引に臨みます。
- 直前10-1分足は陰線と見込みます。
9月月足は現時点において陽線なので、過去の傾向に基づき、その逆方向に反応する可能性が高い、と見込みます。 - 直前1分足は陰線と見込みます。
但し、過去平均跳幅が5pipsしかありません。1・2pipsで利確しなければいけない場合が多いので、スプレッドが大きいFX会社で取引しているなら、取引は止めておいた方が良いでしょう。 - 直後1分足は、指標発表直前に直前1分足と逆方向にポジションを取得します(期待的中率86%)。
但し、直前10-1分足「跳幅」が10pips以上となったときは、直後1分足は同方向に反応すると見なし、その跳ねた方向に指標発表直前にポジション取得を優先します。
いずれにせよ、利確/損切は指標発表直後の跳ねで行います。 - 追撃するなら、指標発表から1分以内にポジションを取り、1分を過ぎたら早めに利確・損切します。
以上
2017年9月19日18:00発表
以下は2017年9月19日20:30頃に追記しています。
V.発表結果検証
【5. 発表結果】
(5-1. 指標結果)
本指標発表結果及び反応は次の通りでした。
結果は現況指数・期待指数ともに前回・予想を上回り、反応は陽線でした。
現況指数の直近ピークは2017年6月分の88.0です。今回結果(87.9)は僅かに届きませんでした。期待指数の直近ピークは2017年5月分の20.6です。それ以降、下降が続いていたので、上昇は4か月ぶりです。
つまり、全般的には今回の結果がかなり良かった、ということになります。
この「かなり良かった」結果を受けた反応は「大きく」、直後1分足を超えて直後11分足は反応を伸ばしました。直後1分足跳幅は12pips(過去平均8pips)、直後11分足値幅は16pips(過去平均8pips)、です。
さて、今回の指標結果に関するきちんとした解説記事が出ていたので見ておきました。
ロイターは、今週末の独総選挙が影響していないことと、EUR高への懸念が指標結果に現れていないことを、引用・指摘していました。ブルームバーグは、EUR高が最近進んでいないことと、独中銀月報が7-9月期も力強く成長する見通しを示したことを、引用・指摘していました。
なるほどね。
(5-2. 取引結果)
取引結果は次の通りでした。
17:21の高値134.11から、発表直前17:57に安値133.62を付けるまで、46分間で49pips強(約△1pips/分)の下降トレンドが起きていました。
参考までに、本指標のように反応が小さな指標発表では、発表直後1分間に5pips、10分間に10pipsぐらいが普通です。
反応の小さな指標の発表後10分間と同じぐらいのスピードで、本指標発表前の46分足は動いていたことになります。
けれども、そんな波に乗ってせっかく指標発表前に利確したのに、分析を外してしまって台無しにしたのが今回の取引でした。全体収支はプラスなので、まぁ構わないですが、本ブログでの取引方法の特徴一面が良く表れた取引でした。
【6. 分析検証】
(6-1. 分析検証)
事前調査・分析内容において、次回までに再検討を要するのは次の点です。
今回の実態差異判別式結果はマイナスとなっており、これには違和感があります。過去のデータから回帰する限り、実態差異判別式は、−1✕期待指数実態差異+2✕現況指数実態差異ー3✕欧州景況指数実態差異、です。
この判別式の解の符号と過去の直後11分足は、方向一致率が62%です。
がしかし、この式では、今回のように期待指数も現況指数も欧州景況指数も前回結果を上回っても、式の係数のマイナスが大きいため、実態差異判別式の解がマイナスになってしまいます。
繰り返しになりますが、けれどもこのこの判別式の解の符号と過去の直後11分足は、方向一致率が62%です。
この62%という数字は、期待指数(37%)・現況指数(56%)・欧州景況指数(48%)のそれぞれ単独の実態差異と直後11分足の方向一致率より高くなっています。だから、判別式としては有効です。
違和感を解消するためには、式の係数のマイナスを無くすか、マイナス寄与を小さくしなければいけません。もちろん、そうした判別式は、最も直後11分足との方向一致率が高くなる式ではなくなるでしょう。
どちらが良いのか、再検討しておきます。
(6-2. シナリオ検証)
現状分析において、事前準備していたシナリオに問題はありません。
下表に、本ブログを始めてからの本指標シナリオでの取引成績を纏めておきます。
以上
ーーー注記ーーー
本記事は、同じ指標の発表がある度に更新を繰り返して精度向上を図り、過去の教訓を次の発表時の取引で活かせるように努めています。がしかし、それでも的中率は75%程度に留まり、100%ではありません。詳細は「1. FXは上達するのか」をご参照ください。
そして、本記事は筆者個人の見解に基づいています。本記事に含まれる価格・データ・その他情報等は、本記事に添付されたリンク先とは関係ありません。また、取引や売買における意思決定を、本記事の記載通りに行うことは適切ではありません。そして、本記事の内容が資格を持った投資専門家の助言ではないことを明記しておきます。記載内容のオリジナリティや信頼性確保には努めているものの、それでも万全のチェックは行えていない可能性があります。
ポジションを持つ最終的なご判断は読者ご自身の責任となります。その点を予めご了承の上、本記事がFXを楽しむ一助となれば幸いです。
ーーー注記ーーー
本記事における分析シート、一部乃至は一連の体系化された手順を、個人の取引以外の目的で使用・公開・二次利用を行う場合には、著作権者及びFX手法研究会に対し、連絡を取り何らかの合意を行う必要があります。
以上
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