クリスティ短編集Ⅰ（新潮社）: アガサクリスティーを無人島で読む

2024年08月03日

クリスティ短編集Ⅰ（新潮社）

クリスティ短編集Ⅰ

このブログは
アガサクリスティーが好きすぎて
無人島になにを持って行きたいかと聞かれたら
｢アガサクリスティーの本｣と答えるくらいの熱量があります
この本のこの作品のココが好き
または
この本のこういう所が見所！
というのを紹介していくブログです
自分の独断と偏見で★を付けていますが完全好みの問題なので、皆様とは違う価値観かもしれません。
ご容赦願います

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クリスティ短編集Ⅰ

バラエティーに富んで楽しめる度★★★
スターがそろい踏み度　　　　　★★★
無人島に持っていきたい度　　　★★★
　
これは早川文庫ではなく新潮文庫になります

１３篇の短編が入ってる短編集です。ポアロものが３篇、マープルものが５編、パーカーパインものが３篇、有名な探偵が出てこないけどもとても面白い短編の２編、といったところです。

この短編が好きなのは有名な戯曲『検察側の証人』が入ってる事や、自分の大好きな短編の『うぐいす荘』が入ってる事です。
なるべくネタバレをせずにこの短編集を紹介していきます

検察側の証人★★★
自分は幸運にも小説を読んだ後でBBCドラマを見たので小説を読んだときの驚きを新鮮に楽しめたのです。ドラマになると監督や脚本でかなり作品の印象が変わってくる物なので、いろいろ道徳面で問題があるんだろうなと思いました。（そういう作品なんです）舞台で何度もされてる作品だし、言いたいことはひとつ”検察側の証人”であるその人が全てだということです。

うぐいす荘★★★
早川文庫の『ナイチンゲール荘』と同じお話です。出版社と題名と訳者の違いだと思います。自分はこの作品が好きなので別で詳しく書いています。よろしければそちらも読んでみてください。

エジプト墓地の冒険★★☆
ポアロの短編です。ポアロの相棒、ヘイスティングㇲの語りが重要な短編です。事件解決のためにエジプトに1週間もかけて行ってしまうお話、しかもこだわりお洒落さんのポアロは、ピカピカの磨かれた靴が砂まみれ、ほこりまみれになるのも厭わずに不気味な謎に挑みます。

ダヴェンハイム氏の失踪★☆☆
銀行の頭取が失踪した事件を、ポアロの旧友のジャップ警部から聞き、解決できるか賭けをするお話。解決のトリックが意外とシンプルというのもありますが、それよりも、自分としては銀行の頭取とはいえ、中年男性が行方不明になるなんて、ちっともわくわくしない設定でしたので、びっくりしました。なのでジャップ警部との賭けはどうなるのか？それを自分は楽しんだ作品です。

イタリア貴族の怪死★☆☆
食事をしていたとされる3人の紳士のうち1人が死体で発見される。後の２人はどこか分からない。アガサはグルメなんだろうなと思わされるお話でもあります。楽しんで書いたのではないかと思われます。お米のスフレもデザートとして出てきて、私としては興味が湧きました。

火曜日の夜のつどい★★★
安楽椅子探偵といわれるジェーンマープルの話です。”火曜クラブ”の最初の話になります。”火曜クラブ”というのは、ジェーンマープルの甥の作家のレイモンド・ウエストが発起人となって、親戚や仲間たちで謎解きをしようという”集い”のことです。ミスマープルは、甥のレイモンド・ウエストや他の参加者にとっては最初”単なる編み物をしている、ごく単純なよくあるおばあさん”とみられていて、謎解きの仲間にも無視されています。しかし、話を聞いてるだけのジェーンマープルが最後に謎を鮮やかに解いていくことで、一目置かれるというお話になっています。アイザック・アシモフの書いた推理小説『黒後家蜘蛛の会』というシリーズがありますが、その給仕のヘンリーに当たるのがミスマープル、という構図になっています。気になる方はそちらも読んでみられてはどうでしょうか。

アスタ―ティーの神殿★☆☆
火曜クラブの続きになります。第一話の”火曜日の夜つどい”で、ミスマープルは鮮やかに謎を解いているので、すでに一目おかれている状態です。そしてこの”アスタ―ティーの神殿”というお話はイギリスの方ならば誰でも知っている神話らしいのです。それをふまえたお話です。正直、その神話を知っていなければ、謎を解くのは難しいです。日本でいえば”ももたろう”のお話とかそんな感じでしょうか。神秘的な雰囲気のものです。もちろん、ミスマープルが最後には謎を解き明かします。

金塊事件★☆☆
火曜クラブの話です。レイモンドのかかわった話を自らの謎として、解決を提案する話。このお話はミスマープルのセリフで”おまえはロマンチックなんだよ”と甥のレイモンドに言うところがありますが、なるほど、そんな感じの話です。男のロマンを皮肉ってるかもしれません。

舗道の血痕★★☆
火曜クラブのお話。話し方の工夫が必要になってくる謎です。舗道に血痕があったはずなのに、後で見た時にはすでに血痕はなくなってるという不気味な雰囲気が事件を予見させます。死体も出てこないのに？話し手のとりとめのない話し方のためにややこしくなっている気がします。なのでちょっとずるいなと思わないでもない事件ですが、謎を解いた後でもちょっと不気味な気がするのは実際ありそうな話だからでしょうか？

動機対機会★☆☆
火曜クラブの話。遺言書のサインのお話。トリックは実に簡単。ミステリーの内容が”殺人”ではないせいか小学生向けのミステリーの本でも良く読みました。しかし、トリックはちょっとずるい気がしますね。どうしてかというと、、、、それはお読みになった方が良いでしょう。

中年の人妻の事件★★☆
”あなたは幸福ですか？もし幸福でなかったらパーカーパイン氏に相談に来なさい”という怪しげな新聞広告から始まるストーリーです。パーカーパインは、実はアガサの小説の短編シリーズの探偵の１人でもあります。人生の悩みを依頼人から聞き、その悩みの本質を、人間性を読み取り依頼人の幸福を取り戻す話です。ミステリーでもトリックのある話でもありませんが、これは相談者の悩みにとって、最高に幸福になれる物語でしょう！後は読んでのお楽しみに！

悩める淑女の事件★★☆
これもパーカーパイン氏の話。これは宝石が出てくるお話。どうやって依頼人の悩みを解決するのかなと思っていると”なるほど、こうくるか！”と読者をすがすがしく（？）裏切る話です。（褒めています）

あるサラリーマンの冒険★☆☆
パーカーパインの話。そしてこの短編集の最後を締める物語となっています。ミステリーというカテゴリーには入らないかも。まじめに働いてきたサラリーマンに、裏切らない”幸福”を考えてくれるパーカーパインの温かさがあります。これを書いたアガサの”男の人ってこういう夢があるんでしょ？”って見透かしたようなまなざしを感じます。楽しい作品となっています。