2009年02月05日
『闇に抗う自動人形(オートマタ)』(前編) part2
「く、来るな……。来るなぁーーっ!!」
恐怖から来るあまりの重圧に耐えかねたのか、ノゾミは全身の蔓状の触手をいっぱいに広げ、二人の少女目掛けて伸ばしていった。タングステンで出来たワイヤーよりも強力なノゾミの蔓は、一旦絡めば人間の手では引きちぎることも出来ず
力を込めて突き刺せば3cmの鋼板すら容易く貫通させることが出来る強力なものだ。
そんなものが10本近く唸りを上げて二人を包み込むように突っ込んできた。勿論、下手に受けようものならその体はたちまちのうちに串刺しにされてしまうだろう。
だが、蔓が少女達の体を貫こうとしたその瞬間、少女達は残像すら残さずその場からシュン!と掻き消えた。
まるで、最初からそこにはいなかったかのように。
「?!バカな!どこに……」
慌てたノゾミが消えた二人を捉えようと体を捩ったその時、
ズルリ
ノゾミが捩った腰がそのまま胴体から真っ二つに離れた。
「え」
突然下半身の踏ん張りを失ったノゾミは、真横になった視界のまま人工芝の上にどさりと崩れ落ちた。
「あれ?なんで?なんで私倒れているの……」
何が起こったのかよくわからないノゾミの目に飛び込んできたのは、青い血を盛大に吹き上げて立っている、自分の『下半身』だった。
その後ろには、剣を横に薙ぎいている黒い少女の姿が見える。
その手に持つ刀には、ノゾミの返り血が刃一杯にこびり付いていた。
「え?私、なんで、私の腰と足が私の前に……?!
やだなぁ、私の足はちゃんと私に……」
ない。
ノゾミの体は腰から下がきれいさっぱりなくなっており、血をだくだくと噴きこぼしていたのだ。
このとき初めてノゾミは、自分が黒い少女に真っ二つにされたことを自覚した。
「……っ!?や、やだ……。いやぁぁぁっ!!」
その時ノゾミは淫怪人としての誇りも矜持も忘れ、ただの弱々しい普通の少女『希美』として悲鳴を上げた。
希美はつい最近、これと同じ悲鳴をあげた事がある。
あれは瓦礫の中ダーククロスの人間狩りに遭遇し、逃げ惑い、追い詰められた時。
目の前でいやらしい笑みを浮かべる『霞』と名乗った植物の淫怪人の触手が自分に向って延びてきたときだ。
あの時は絶望と恐怖の後に蕩けるような快感に包まれ、ダーククロスの一員になれたというご褒美がついてきた。
しかし、今希美の絶望と恐怖の先にあるものは、『死』という一切の『無』しか選択の余地は残っていない。
「敵淫怪人の戦闘能力喪失を確認。これより、抹殺する」
黒い少女が刀を構え、とことこと近づいてくる。その一歩一歩が、まるで脚のない希美が死への十三階段を昇るのを肩代わりしているようにも感じられる。
「い…いやっ!!助けて!死にたくない!死にたくない!!」
希美は辛うじて自由に動く両手を必死に動かし、黒い死神の手から逃れようともがく。
が、黒い死神はそれすら許さないのか希美の手をグシャリと踏み潰した。
「いやぁーーっ!!助けて!お父さん、お母さぁ〜〜〜んっ!!」
希美はもうこの世にはいない父と母に向って泣き叫びながら助けを求めた。
「お父さん!お母さん!お母さん!!おかあさぁーん!!」
だが、勿論いくら叫んでも父と母は助けにはこない。
ぎゃんぎゃんと泣き叫ぶ希美の頭上で、黒い少女が刀を高々と振り上げた。
「抹殺する」
「いやっ!いやあぁっ!いやいやいやいやいやい
次の瞬間、希美の首は胴体から離れ飛んでいた。
希美は結局、淫怪人としての悦びを味わうことはなかった。
「抹殺終了」
自分の体にかかる凄まじい返り血を気にすることなく、黒い少女は刀を転送させると白い少女の方へととことこと走っていった。
「ハク、敵残存兵力を確認」
黒い少女にハクと呼ばれた白い少女は、少しの間目を閉じて意識を耳に集中させ辺りの気配を確かめると再び目を開いた。
「コク、敵戦力の殲滅を確認。戦闘行動を終了します」
「了解。戦闘行動の終了を確認」
ハクの言葉にコクと呼ばれた黒い少女はこっくりと頷き、ビッグドームの外へ通じる道をてくてくと進み始めた。
その後にハクも続き、球場内にはバラバラになったダーククロスの構成員の死体だけが残されていた。
この後、暫くの間ダーククロスの間で『煉獄の白い悪魔』『踊る黒い死神』と呼称され恐れられたハクとコクが初めて実戦の舞台にたった瞬間であった。
恐怖から来るあまりの重圧に耐えかねたのか、ノゾミは全身の蔓状の触手をいっぱいに広げ、二人の少女目掛けて伸ばしていった。タングステンで出来たワイヤーよりも強力なノゾミの蔓は、一旦絡めば人間の手では引きちぎることも出来ず
力を込めて突き刺せば3cmの鋼板すら容易く貫通させることが出来る強力なものだ。
そんなものが10本近く唸りを上げて二人を包み込むように突っ込んできた。勿論、下手に受けようものならその体はたちまちのうちに串刺しにされてしまうだろう。
だが、蔓が少女達の体を貫こうとしたその瞬間、少女達は残像すら残さずその場からシュン!と掻き消えた。
まるで、最初からそこにはいなかったかのように。
「?!バカな!どこに……」
慌てたノゾミが消えた二人を捉えようと体を捩ったその時、
ズルリ
ノゾミが捩った腰がそのまま胴体から真っ二つに離れた。
「え」
突然下半身の踏ん張りを失ったノゾミは、真横になった視界のまま人工芝の上にどさりと崩れ落ちた。
「あれ?なんで?なんで私倒れているの……」
何が起こったのかよくわからないノゾミの目に飛び込んできたのは、青い血を盛大に吹き上げて立っている、自分の『下半身』だった。
その後ろには、剣を横に薙ぎいている黒い少女の姿が見える。
その手に持つ刀には、ノゾミの返り血が刃一杯にこびり付いていた。
「え?私、なんで、私の腰と足が私の前に……?!
やだなぁ、私の足はちゃんと私に……」
ない。
ノゾミの体は腰から下がきれいさっぱりなくなっており、血をだくだくと噴きこぼしていたのだ。
このとき初めてノゾミは、自分が黒い少女に真っ二つにされたことを自覚した。
「……っ!?や、やだ……。いやぁぁぁっ!!」
その時ノゾミは淫怪人としての誇りも矜持も忘れ、ただの弱々しい普通の少女『希美』として悲鳴を上げた。
希美はつい最近、これと同じ悲鳴をあげた事がある。
あれは瓦礫の中ダーククロスの人間狩りに遭遇し、逃げ惑い、追い詰められた時。
目の前でいやらしい笑みを浮かべる『霞』と名乗った植物の淫怪人の触手が自分に向って延びてきたときだ。
あの時は絶望と恐怖の後に蕩けるような快感に包まれ、ダーククロスの一員になれたというご褒美がついてきた。
しかし、今希美の絶望と恐怖の先にあるものは、『死』という一切の『無』しか選択の余地は残っていない。
「敵淫怪人の戦闘能力喪失を確認。これより、抹殺する」
黒い少女が刀を構え、とことこと近づいてくる。その一歩一歩が、まるで脚のない希美が死への十三階段を昇るのを肩代わりしているようにも感じられる。
「い…いやっ!!助けて!死にたくない!死にたくない!!」
希美は辛うじて自由に動く両手を必死に動かし、黒い死神の手から逃れようともがく。
が、黒い死神はそれすら許さないのか希美の手をグシャリと踏み潰した。
「いやぁーーっ!!助けて!お父さん、お母さぁ〜〜〜んっ!!」
希美はもうこの世にはいない父と母に向って泣き叫びながら助けを求めた。
「お父さん!お母さん!お母さん!!おかあさぁーん!!」
だが、勿論いくら叫んでも父と母は助けにはこない。
ぎゃんぎゃんと泣き叫ぶ希美の頭上で、黒い少女が刀を高々と振り上げた。
「抹殺する」
「いやっ!いやあぁっ!いやいやいやいやいやい
次の瞬間、希美の首は胴体から離れ飛んでいた。
希美は結局、淫怪人としての悦びを味わうことはなかった。
「抹殺終了」
自分の体にかかる凄まじい返り血を気にすることなく、黒い少女は刀を転送させると白い少女の方へととことこと走っていった。
「ハク、敵残存兵力を確認」
黒い少女にハクと呼ばれた白い少女は、少しの間目を閉じて意識を耳に集中させ辺りの気配を確かめると再び目を開いた。
「コク、敵戦力の殲滅を確認。戦闘行動を終了します」
「了解。戦闘行動の終了を確認」
ハクの言葉にコクと呼ばれた黒い少女はこっくりと頷き、ビッグドームの外へ通じる道をてくてくと進み始めた。
その後にハクも続き、球場内にはバラバラになったダーククロスの構成員の死体だけが残されていた。
この後、暫くの間ダーククロスの間で『煉獄の白い悪魔』『踊る黒い死神』と呼称され恐れられたハクとコクが初めて実戦の舞台にたった瞬間であった。
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