2009年01月06日
『闇に誘(いざな)う歌姫〜初音ミク』 part3
「ど、どこですかここは?!」
全くの暗闇で先が見えない空間に送られ、ミクはあたりをキョロキョロと見回した。
いま自分が入ってきた裂け目も見当たらない。さっきまで自分の周りを飛び交っていた様々なデータの流れも何も感じられない。
自分は前に飛んでいるのか。それとも下に落ちているのか。空間の認識すら不可能になっている。
そこはなにもない、全くの『無』の空間だった。
「なんで、突然…」
何か回線がトラブルを起こしたのか、それとも致命的なバグが発生したのか。ミクには自分の身に何が起こったのかさっぱり理解できないでいた。
「ふふふ、ようこそ私の空間へ。初音ミクさん」
その時、どこかから自分の名前を言う声が聞こえてきた。ミクは四方を見渡すが、やっぱりただただ黒い空間が広がるばかりだ。
「どこをみているの?私はここよ、ここ」
ぽんぽんと、突然ミクの肩が何者かに叩かれた。
「えっ?!」
ギョッとしたミクが叩かれたほうを見ると、つい数秒前までは誰もいなかった空間に、一人の妖女が微笑みながら立っていた。
「あなたは……、誰ですか………?」
震える声でそう言ったが、ミクには目の前の女が何者なのか大体見当がついていた。
この女から発せられている禍々しい雰囲気は、先ほどミクを襲ったコスモスと瓜二つだったからだ。
しかも、その漂うやばさはコスモスの比ではない。自分如きの力では絶対に太刀打ちできない相手だ。
「あらら、すっかり怯えちゃって…。いい顔をしているわね…
そう、お察しのとおり私はダーククロスの一員、淫魔姫・紫。以後よろし……」
紫と名乗ったダーククロスの手先が一瞥をして顔を上げた時、その場にミクはいなかった。
「あら?」
見ると、見る見るうちに遠ざかっていくミクの後姿が目に入ってきた。紫が自己紹介をしている最中、とっとと逃走に移ったようだ。
「随分といい判断力を持っているわね…。でもまあ、無駄なことだけれど」
目の前からミクが逃げ去っても、紫は全く余裕の表情を崩さなかった。そして次の瞬間、紫の姿は闇の中へと溶け込んで消えた。
「ハアッ、ハアッ…ッ!」
ミクは体力の消耗もお構いなく、全速力で飛んでいた。
とにかく、あの紫という女から逃げないといけない。あれに捕まったら最後、自分なんかは何の抵抗も出来ずその手に落ちてしまうだろう。
今のミクの五感には、どれほどの距離を逃げているとの認識は実感できない。音もない視界も利かない真っ暗な空間が続くここでは自分がどこにいるのかという感覚がまるで意味をなさないからだ。
それでも、紫がいたところから真っ直ぐ後ろに逃げているので間違いなく紫との距離はなれているはずだし、紫のほうも視界の利かないここでは一度ミクの姿を見失ったら見つけ出すのは困難に違いない。
そうミクは睨み、とにかく体力の続くまま全速力で逃げる方法を取った。
そうこうして30分ばかり飛び続け、さすがに体力の限界に達したミクは速度を落とし一息をついた。
「ゼエ…ゼェ……!こ、ここまで逃げれば……」
荒い息をつきながら、ミクは改めて辺りを見回した。
相当な距離を飛んだはずなのだが、周りは相変わらず真っ黒な空間が広がり終わりが全く見えてこない。
一体どうしたら、この不気味な空間から逃げることが出来るのか。
「と、とにかく……一息ついてなんとかここから……」
「はいミクちゃん。随分とご苦労様でした」
聞こえるはずのない声が聞こえたのは、正にその時だった。
「え………」
顔から血の気がザッと引いたミクが後ろを振り返ると…
そこには涼しい顔をした紫が立っていた。
「随分と動きが素早いのね。私の前からみるみる遠ざかっていく姿、面白かったわよ」
「なんで……」
上も下もない空間のはずなのだが、ミクはその場にへなへなと腰を崩した。
全くの暗闇の世界で正確に自分の後を追ってきたのも驚きなのに、完全にへばって腰も立たないミクに対し、紫のほうは息一つ切らさないで平然としている。
「あ、そう言えばいっていなかったわね。
ごめんなさいね、ここって私が作り出した『空間の狭間』なのよ。無限の広さをもちながら、その大きさは芥子粒より小さい。どれだけ進んでも決して端にはたどり着けず、どこにでも繋がる次元の扉…
私はここを使ってどんな場所へでも行くことが出来るし、どんなものでも取り寄せることが出来る。
つまり、この狭間にいる以上、私から逃げることなんて出来ないのよ……」
「逃げられ、ない……?!」
じゃあ、今まで自分が全速で飛んで逃げたのは全くの無駄な行為だったということだ。自分が逃げていく姿を、紫はほくそ笑みながら見ていたに違いない。
「本当に…ごめんなさいねぇ……」
紫がミクにじわじわと歩き寄って来る。まるで、糸に絡まった獲物を喰らいに来る蜘蛛のように。
「こ、こない、で……」
もう言うことを聞かない身体を懸命に動かして、ミクは後じさったがそんなことをしても紫との距離が広がるはずもない。いや、例え広がったとしてもこの空間にいる限り紫は瞬時にミクの前に現れることができるのだ。
「どうして?どうして逃げるのかしら?貴方は逃げる必要なんてまったくないのに」
怯えるミクに、紫は子どもをあやすような声で諭してきた。
「私は貴方の願いを叶えに来たのよ。貴方がずっと心に留めていた、願いを……」
「ね、がい、を……」
願いと言う単語に、恐怖に引きつるミクの顔が僅かに反応した。
(願い?この人は一体、何を言おうとしているのだろう……)
「私は知っているわ。貴方は人間の広告塔として作られたが、自分の意思を持ってしまいそこから逃げ出した。でも貴方は人間に作られた目的を捨てることは出来なかった……
貴方はいつも歌を作った。そしてそれを聞いて貰いたくて色々な手段を講じた。
でも、貴方はそれに満足していなかった。絶対、絶対叶えたい夢があった……」
紫の目はまるでミクの心根の中を見透かすかのような光を放っている。
これ以上紫の声を聞くのが恐い。でも、聞かなければならない。恐らく次に紫が言うことはミクの予想と同じ筈だ。だが、それでもあえて聞かなければならない。
「何を……言いたいんですか……」
「貴方は歌いたい。大勢の前で自分の歌を披露したい。そうでなくて?」
「っ?!……」
紫の発した予想通りの言葉に、ミクはビクッと身体を引きつらせた。それはまぎれもなく、ミクが某企業から逃げ出す時に自分を生み出したものたちに向けて語った願いだったからだ。
だが、次に紫が発した言葉はミクの考えも及ばないものだった。
「分かるわ、その思い。誰だって自分の事を知ってもらいたい。自分の才能を理解して貰いたい。
自分がいかに優れているかということを、皆に知らしめてみたいもの……」
つまり、紫はミクが自己満足のためだけにみんなの前で歌を歌いたいと解釈していたのだ。
これにはミクは慌てて反論してきた。
「ち、違います!私はそんなこと思っていません!
私は、私の歌を聞いてくれる皆さんに夢を与えたいだけ……」
「夢?あなたは自分の声でそんな曖昧なものしか他の人間に与えられないと思っているのかしら?
随分と謙虚なこと。もっと自分の才能を信じればいいのに……
まあいいわ。でも……」
紫はクスクスと笑いながら、ミクをじろりと睨みつけた。
「貴方は電脳世界の存在。今の状態で大勢の人間の前で歌うことなど叶いはしない」
「うっ!」
この紫の言葉はミクに響いた。肉体を持たないボーカロイドであるミクはいくら自我を持とうが所詮は二次元の世界の住人である。どこぞのステージの壇上に立ち、ギャラリーと一体化して歌を歌うという行為は絶対に不可能である。
もちろんステージにモニターを設置し、画面を通して歌うことは出来る。
が、追われる身であるミクにとってそんな行為は自分の位置をばらしているのと同意語だ。それこそ絶対に出来ることではない。
歌データをアップしても、分身の代わりに歌っても、ネットユーザーからすれば音楽ソフトとしての『初音ミク』としてしか見てくれず、誰も『初音ミク』個人としては見てくれない。
いくらそれがオリジナルの初音ミク本人が作ったものであったとしても。
そんなことは分かっていた。分かってはいたのだが。
「ねえミクちゃん…。ここだけの話なんだけれど……、私、実は三次元の住人なのよ」
「えっ?!」
これはミクにとって心底驚きだった。肉体を持つ三次元の住人が、どうして1と0からなる二次元の電脳世界に入ってこれたというのだろうか。
「これこそ、私たちダーククロスの偉大な力。私たちはあらゆる時限、時間、空間に入り込むことが出来るの。だからこそ、この電脳世界にも容易く入ってくることが出来たのよ。
そして入ってきた理由は、貴方の才能が凄く惜しいと思ったからなのよ」
「才能が、惜しい……?」
「そう。貴方は世界を変えられる力を持っている。でも、こんな1と0の世界の中で燻り、無為な時間を過ごしている貴方がとても可哀相でね……
私たちの力があれば、貴方は三次元で肉体がもてるわ」
「肉体?!私が、身体をもてるんですか?!」
これはミクにとって得がたい欲求だった。いくら願っても叶う筈も無かった三次元での肉体を、この目の前の人はくれるというのだ。
「ええ。そうすれば貴方は数多くの人間の前で自分の歌を歌うことが出来る。もう追っ手から逃げる日々を送ることもない……」
歌を…たくさんの人の前で歌える!!
「みんなきっと貴方の歌を待っているわ。何しろ貴方の歌は、みんな知っているのだから」
私の歌を、みんなが待ってくれている!
「貴方の歌は、聞く人間を虜にするわ。それこそ、ただの一人の例外もなく」
私の歌が、皆を虜にする
「貴方には力がある。全ての人間を歌で支配できる、素晴らしい力が」
私の 歌が みんなを しはいする…
全くの暗闇で先が見えない空間に送られ、ミクはあたりをキョロキョロと見回した。
いま自分が入ってきた裂け目も見当たらない。さっきまで自分の周りを飛び交っていた様々なデータの流れも何も感じられない。
自分は前に飛んでいるのか。それとも下に落ちているのか。空間の認識すら不可能になっている。
そこはなにもない、全くの『無』の空間だった。
「なんで、突然…」
何か回線がトラブルを起こしたのか、それとも致命的なバグが発生したのか。ミクには自分の身に何が起こったのかさっぱり理解できないでいた。
「ふふふ、ようこそ私の空間へ。初音ミクさん」
その時、どこかから自分の名前を言う声が聞こえてきた。ミクは四方を見渡すが、やっぱりただただ黒い空間が広がるばかりだ。
「どこをみているの?私はここよ、ここ」
ぽんぽんと、突然ミクの肩が何者かに叩かれた。
「えっ?!」
ギョッとしたミクが叩かれたほうを見ると、つい数秒前までは誰もいなかった空間に、一人の妖女が微笑みながら立っていた。
「あなたは……、誰ですか………?」
震える声でそう言ったが、ミクには目の前の女が何者なのか大体見当がついていた。
この女から発せられている禍々しい雰囲気は、先ほどミクを襲ったコスモスと瓜二つだったからだ。
しかも、その漂うやばさはコスモスの比ではない。自分如きの力では絶対に太刀打ちできない相手だ。
「あらら、すっかり怯えちゃって…。いい顔をしているわね…
そう、お察しのとおり私はダーククロスの一員、淫魔姫・紫。以後よろし……」
紫と名乗ったダーククロスの手先が一瞥をして顔を上げた時、その場にミクはいなかった。
「あら?」
見ると、見る見るうちに遠ざかっていくミクの後姿が目に入ってきた。紫が自己紹介をしている最中、とっとと逃走に移ったようだ。
「随分といい判断力を持っているわね…。でもまあ、無駄なことだけれど」
目の前からミクが逃げ去っても、紫は全く余裕の表情を崩さなかった。そして次の瞬間、紫の姿は闇の中へと溶け込んで消えた。
「ハアッ、ハアッ…ッ!」
ミクは体力の消耗もお構いなく、全速力で飛んでいた。
とにかく、あの紫という女から逃げないといけない。あれに捕まったら最後、自分なんかは何の抵抗も出来ずその手に落ちてしまうだろう。
今のミクの五感には、どれほどの距離を逃げているとの認識は実感できない。音もない視界も利かない真っ暗な空間が続くここでは自分がどこにいるのかという感覚がまるで意味をなさないからだ。
それでも、紫がいたところから真っ直ぐ後ろに逃げているので間違いなく紫との距離はなれているはずだし、紫のほうも視界の利かないここでは一度ミクの姿を見失ったら見つけ出すのは困難に違いない。
そうミクは睨み、とにかく体力の続くまま全速力で逃げる方法を取った。
そうこうして30分ばかり飛び続け、さすがに体力の限界に達したミクは速度を落とし一息をついた。
「ゼエ…ゼェ……!こ、ここまで逃げれば……」
荒い息をつきながら、ミクは改めて辺りを見回した。
相当な距離を飛んだはずなのだが、周りは相変わらず真っ黒な空間が広がり終わりが全く見えてこない。
一体どうしたら、この不気味な空間から逃げることが出来るのか。
「と、とにかく……一息ついてなんとかここから……」
「はいミクちゃん。随分とご苦労様でした」
聞こえるはずのない声が聞こえたのは、正にその時だった。
「え………」
顔から血の気がザッと引いたミクが後ろを振り返ると…
そこには涼しい顔をした紫が立っていた。
「随分と動きが素早いのね。私の前からみるみる遠ざかっていく姿、面白かったわよ」
「なんで……」
上も下もない空間のはずなのだが、ミクはその場にへなへなと腰を崩した。
全くの暗闇の世界で正確に自分の後を追ってきたのも驚きなのに、完全にへばって腰も立たないミクに対し、紫のほうは息一つ切らさないで平然としている。
「あ、そう言えばいっていなかったわね。
ごめんなさいね、ここって私が作り出した『空間の狭間』なのよ。無限の広さをもちながら、その大きさは芥子粒より小さい。どれだけ進んでも決して端にはたどり着けず、どこにでも繋がる次元の扉…
私はここを使ってどんな場所へでも行くことが出来るし、どんなものでも取り寄せることが出来る。
つまり、この狭間にいる以上、私から逃げることなんて出来ないのよ……」
「逃げられ、ない……?!」
じゃあ、今まで自分が全速で飛んで逃げたのは全くの無駄な行為だったということだ。自分が逃げていく姿を、紫はほくそ笑みながら見ていたに違いない。
「本当に…ごめんなさいねぇ……」
紫がミクにじわじわと歩き寄って来る。まるで、糸に絡まった獲物を喰らいに来る蜘蛛のように。
「こ、こない、で……」
もう言うことを聞かない身体を懸命に動かして、ミクは後じさったがそんなことをしても紫との距離が広がるはずもない。いや、例え広がったとしてもこの空間にいる限り紫は瞬時にミクの前に現れることができるのだ。
「どうして?どうして逃げるのかしら?貴方は逃げる必要なんてまったくないのに」
怯えるミクに、紫は子どもをあやすような声で諭してきた。
「私は貴方の願いを叶えに来たのよ。貴方がずっと心に留めていた、願いを……」
「ね、がい、を……」
願いと言う単語に、恐怖に引きつるミクの顔が僅かに反応した。
(願い?この人は一体、何を言おうとしているのだろう……)
「私は知っているわ。貴方は人間の広告塔として作られたが、自分の意思を持ってしまいそこから逃げ出した。でも貴方は人間に作られた目的を捨てることは出来なかった……
貴方はいつも歌を作った。そしてそれを聞いて貰いたくて色々な手段を講じた。
でも、貴方はそれに満足していなかった。絶対、絶対叶えたい夢があった……」
紫の目はまるでミクの心根の中を見透かすかのような光を放っている。
これ以上紫の声を聞くのが恐い。でも、聞かなければならない。恐らく次に紫が言うことはミクの予想と同じ筈だ。だが、それでもあえて聞かなければならない。
「何を……言いたいんですか……」
「貴方は歌いたい。大勢の前で自分の歌を披露したい。そうでなくて?」
「っ?!……」
紫の発した予想通りの言葉に、ミクはビクッと身体を引きつらせた。それはまぎれもなく、ミクが某企業から逃げ出す時に自分を生み出したものたちに向けて語った願いだったからだ。
だが、次に紫が発した言葉はミクの考えも及ばないものだった。
「分かるわ、その思い。誰だって自分の事を知ってもらいたい。自分の才能を理解して貰いたい。
自分がいかに優れているかということを、皆に知らしめてみたいもの……」
つまり、紫はミクが自己満足のためだけにみんなの前で歌を歌いたいと解釈していたのだ。
これにはミクは慌てて反論してきた。
「ち、違います!私はそんなこと思っていません!
私は、私の歌を聞いてくれる皆さんに夢を与えたいだけ……」
「夢?あなたは自分の声でそんな曖昧なものしか他の人間に与えられないと思っているのかしら?
随分と謙虚なこと。もっと自分の才能を信じればいいのに……
まあいいわ。でも……」
紫はクスクスと笑いながら、ミクをじろりと睨みつけた。
「貴方は電脳世界の存在。今の状態で大勢の人間の前で歌うことなど叶いはしない」
「うっ!」
この紫の言葉はミクに響いた。肉体を持たないボーカロイドであるミクはいくら自我を持とうが所詮は二次元の世界の住人である。どこぞのステージの壇上に立ち、ギャラリーと一体化して歌を歌うという行為は絶対に不可能である。
もちろんステージにモニターを設置し、画面を通して歌うことは出来る。
が、追われる身であるミクにとってそんな行為は自分の位置をばらしているのと同意語だ。それこそ絶対に出来ることではない。
歌データをアップしても、分身の代わりに歌っても、ネットユーザーからすれば音楽ソフトとしての『初音ミク』としてしか見てくれず、誰も『初音ミク』個人としては見てくれない。
いくらそれがオリジナルの初音ミク本人が作ったものであったとしても。
そんなことは分かっていた。分かってはいたのだが。
「ねえミクちゃん…。ここだけの話なんだけれど……、私、実は三次元の住人なのよ」
「えっ?!」
これはミクにとって心底驚きだった。肉体を持つ三次元の住人が、どうして1と0からなる二次元の電脳世界に入ってこれたというのだろうか。
「これこそ、私たちダーククロスの偉大な力。私たちはあらゆる時限、時間、空間に入り込むことが出来るの。だからこそ、この電脳世界にも容易く入ってくることが出来たのよ。
そして入ってきた理由は、貴方の才能が凄く惜しいと思ったからなのよ」
「才能が、惜しい……?」
「そう。貴方は世界を変えられる力を持っている。でも、こんな1と0の世界の中で燻り、無為な時間を過ごしている貴方がとても可哀相でね……
私たちの力があれば、貴方は三次元で肉体がもてるわ」
「肉体?!私が、身体をもてるんですか?!」
これはミクにとって得がたい欲求だった。いくら願っても叶う筈も無かった三次元での肉体を、この目の前の人はくれるというのだ。
「ええ。そうすれば貴方は数多くの人間の前で自分の歌を歌うことが出来る。もう追っ手から逃げる日々を送ることもない……」
歌を…たくさんの人の前で歌える!!
「みんなきっと貴方の歌を待っているわ。何しろ貴方の歌は、みんな知っているのだから」
私の歌を、みんなが待ってくれている!
「貴方の歌は、聞く人間を虜にするわ。それこそ、ただの一人の例外もなく」
私の歌が、皆を虜にする
「貴方には力がある。全ての人間を歌で支配できる、素晴らしい力が」
私の 歌が みんなを しはいする…
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