三日ほど前のことです。ドライブの途中で「道の駅」に寄りました。車を止めて歩き出すと、初老の夫婦が軒先を眺めていました。何だろうと私は思いました。
「知ってるかな、あれ」と主人が奥さんに語りかけています。
「さあ?」と首を傾げる奥さん。
「ツバメの巣なんだよ、あれは」
「そう?」
「で、なぜ、あそこに巣を作るか、分かるかな?」
「・・・・・」
「狙われ易いのだよ、蛇に、ツバメの巣は。それで、軒先なんだ。あそこだと蛇も上って行けない訳だ」
「賢いのね、ツバメって」
私は仲睦ましい夫婦の会話を耳にしながらカメラを取り出そうとしていました。それに気付いた主人は、
「右手の角にもありますよ。写真を撮るのだったらあそこがいいかな」
と教えてくれました。
夢中で撮った一枚がこの写真です。
撮影後、私は口をあんぐりと開けて軒先の巣を見上げていました。親鳥が頻繁に餌を運んで来ては、一斉に黄色い口内を見せる雛に順番に口移しで与えています。そしてまた、餌場へと飛び立ちます。3〜4分間に一回の割合で親鳥はこれを繰り返すのです。
私の幼い頃の記憶が甦ってきました。両親は急峻な山中で農業を営んでいまして、田植えの時期になるとツバメが我が家の軒下に巣を作っていたのです。不思議そうに巣を見上げる私に、父親はこの主人と同じ様に教えてくれたことを思い出したのです。
「生き物は大切にせなあかん」。父親の口癖でした。竹竿で巣を落とそうとした私はこっ酷く叱られたものです。
子育ての本能と言えばそれまでですが、それにしても甲斐甲斐しく雛に餌を与える親鳥の姿は私に爽やかな感動を齎しました。私を育んでくれた両親のこと、先ほどの初老の夫婦のことも想いました。
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