2016年06月23日
冤罪物語 連載26
1か月ほどの予定で、12・6・3ミリ板を試作して、機械の性能が出ていれば試験は終了し、引き渡しになる。この間シンシナティから3人がホテル暮らしで、工場まで通ってくる。それが引き渡し条件の中に入っているから、当然なのでそれは好いとして、困ったな?と首を傾けたくなる状態が続いていた。私なら絶対にしないという状態である。
シンシナティの日本代理店のマネージャーは、毎回こちらの社員のお昼を出しているのだった。私も一緒に行きましょうと誘ってくれる。だが私は、
「自前で間に合わせますから、大丈夫です」
そう言って、昼飯の接待は受けなかった。ところが、この昼の接待をズッと受けているのが、困ったことに新規事業部のチームリーダーと、今年入社の新入社員は、躊躇なく接待を受けているのであった。
納入者と購入者との相違はある。だが、お互いにサラリーマンである。通常で勤務している間の食事は、お互い自分持ちでなければならない。
お互いに、役付の肩書のある者が責任者で、相対しているというのに、見るに堪えない光景だった。シンシナティのマネージャーは、毎回誘ってはいるものの、こちらのチームリーダーを呼ぶのに、
「・・君」とご丁寧に君づけで呼ぶのだった。これは終始続いた。私には、
「・・さん」でした。私以外のこちらの社員には、呼びもしないし訊ねることもしなかった。
私が経営陣なら、昼飯の接待など受けさせない。逆だ、こちらで出してあげることはする。出張してくるサラリーマンに、自己負担を少なくしてあげると喜ぶ。そのサラリーマンは、こちらの会社を別格に扱うはずだ。
引き渡しを受けた後は、こちらの社員だけで操作することになる。それには、原料の供給設備を併設しなければならなかった。この供給設備も40トンタンクから供給を受ける設備なので、かなり大きい。冷却装置と乾燥装置。それに混練タワーには混合器と可塑剤計量供給装置が付随する。
これ等は、専門の設備会社があって依頼してある。それが出来上がると、本格的に操作の練習が始まったのです。だが、この場面でも、トンチンカンな事が起きる。
新入社員は、信大の大学院を卒業して入社していた。建築系で2重床だから、高分子は初めて、押し出し機の金型の扱いも初めてだった。金型に不慣れ・そんなのはネジの取り外しを見ていれば分かる。
リーダー下に新入社員が居て、それに教わるという形になった。リーダーはそうした形を採りたいようだった。能力のないのや、知らないのが他人の指導など、しようと思ってもできない。無理がありすぎて普通はそんなことはしない。
大学院卒のリードで、間違いが起こる。私や、高卒の社員だって大学院卒以上に知っている事も沢山あった。ある時、
「この混合器は、温度を掛けるので冷却時間がセットできるようになっています」
と言う説明。私は、
「違う。 撹拌に伴うせん断熱で発熱してしまうので冷却を要する。原料の加工に加熱することがあっても、混合に加熱しない。170度前後で溶融するPVCに、成型前の加熱は厳禁だから冷却する。だから加熱装置は付いていない」
「調べてきます」と言って戻ってきた。
「加熱装置はありません」
この頃になると、社内の様子が変わってきた。まず初めには、こんなことがあったのです。
今までは、会長が私に用事のある場合は、本人から電話があった。なのに、奥さんが電話をしてきた。
「時々変な事を言うようになってしまってね」と、話の合間に言うのであった。この時、私は、老人性の症状が出ているのかな?と思ったくらいで、それに深刻な状況が加わっていたとはまだ知らされることはなかった。
・・・続く。
シンシナティの日本代理店のマネージャーは、毎回こちらの社員のお昼を出しているのだった。私も一緒に行きましょうと誘ってくれる。だが私は、
「自前で間に合わせますから、大丈夫です」
そう言って、昼飯の接待は受けなかった。ところが、この昼の接待をズッと受けているのが、困ったことに新規事業部のチームリーダーと、今年入社の新入社員は、躊躇なく接待を受けているのであった。
納入者と購入者との相違はある。だが、お互いにサラリーマンである。通常で勤務している間の食事は、お互い自分持ちでなければならない。
お互いに、役付の肩書のある者が責任者で、相対しているというのに、見るに堪えない光景だった。シンシナティのマネージャーは、毎回誘ってはいるものの、こちらのチームリーダーを呼ぶのに、
「・・君」とご丁寧に君づけで呼ぶのだった。これは終始続いた。私には、
「・・さん」でした。私以外のこちらの社員には、呼びもしないし訊ねることもしなかった。
私が経営陣なら、昼飯の接待など受けさせない。逆だ、こちらで出してあげることはする。出張してくるサラリーマンに、自己負担を少なくしてあげると喜ぶ。そのサラリーマンは、こちらの会社を別格に扱うはずだ。
引き渡しを受けた後は、こちらの社員だけで操作することになる。それには、原料の供給設備を併設しなければならなかった。この供給設備も40トンタンクから供給を受ける設備なので、かなり大きい。冷却装置と乾燥装置。それに混練タワーには混合器と可塑剤計量供給装置が付随する。
これ等は、専門の設備会社があって依頼してある。それが出来上がると、本格的に操作の練習が始まったのです。だが、この場面でも、トンチンカンな事が起きる。
新入社員は、信大の大学院を卒業して入社していた。建築系で2重床だから、高分子は初めて、押し出し機の金型の扱いも初めてだった。金型に不慣れ・そんなのはネジの取り外しを見ていれば分かる。
リーダー下に新入社員が居て、それに教わるという形になった。リーダーはそうした形を採りたいようだった。能力のないのや、知らないのが他人の指導など、しようと思ってもできない。無理がありすぎて普通はそんなことはしない。
大学院卒のリードで、間違いが起こる。私や、高卒の社員だって大学院卒以上に知っている事も沢山あった。ある時、
「この混合器は、温度を掛けるので冷却時間がセットできるようになっています」
と言う説明。私は、
「違う。 撹拌に伴うせん断熱で発熱してしまうので冷却を要する。原料の加工に加熱することがあっても、混合に加熱しない。170度前後で溶融するPVCに、成型前の加熱は厳禁だから冷却する。だから加熱装置は付いていない」
「調べてきます」と言って戻ってきた。
「加熱装置はありません」
この頃になると、社内の様子が変わってきた。まず初めには、こんなことがあったのです。
今までは、会長が私に用事のある場合は、本人から電話があった。なのに、奥さんが電話をしてきた。
「時々変な事を言うようになってしまってね」と、話の合間に言うのであった。この時、私は、老人性の症状が出ているのかな?と思ったくらいで、それに深刻な状況が加わっていたとはまだ知らされることはなかった。
・・・続く。
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