2016年06月24日
冤罪物語 連載27
今までだと、私に用事のある場合は会長本人から連絡があるのが常でした。それが、奥さんからの伝言になって、その話の最中に、
「時々変な事を言うようになって・・・」というのは前回書きました。
この後の役員会で会長は退き、相談役に退きます。
高齢が主な理由でしょう。この役員会の後、今まで秘書役でプラスチック板製造を進言して、実質新規事業をトップでリードしてきた人が、実は居なくなってしまったのです。事故ではありません。意図的に姿を消してしまったのでした。
何億という設備投資と、私たち新規事業部を設けて先行投資もしています。この時経営陣は、事業の先行きを心配して当然です。消えた人間を探す。また、製品の買い取り予定だった企業を訪ねます。
「製品を買っていただけますか?というお訊ねですか。価格の提示もないので、確たる返事はしていません。そちらが一方的に騒いでいただけです」
先方の言い分だったそうです。何も言わないで消えてしまったので、社内では相談役のお金を持ち逃げしているとか、高価な設備投資をしているので、納入メーカーからバックマージンをもらっているとかの噂がありました。
私には、本当の事は分からないままです。この後相談役に私は何回か会っています。が、この件に関しては、相談役からは何も話はなかったのでした。代わりに、相談役は居なくなった人宛ての手紙を、私に黙って差し出しました。
宛名がありますから、居なくなった人宛てというのは一目で分かりました。そこには『今が貴方にとって大事な時だ、もうひと踏ん張りして頑張るように』という内容でした。何があったのか、その大枠さえ私には分かりません。ですが、相談役が許しているなら終わったこと。私は何も知らなくてもいいことだ。
と、それきりその事についての興味は無くなりました。この時と前後したのが、機械がこちらに引き渡された時期でした。これからは、新規事業部の5人で機械操作に慣れるために試作を重ねることになります。
私たちだけで押し出し機を操作して、試作品を造ろうとしました。温度が設定温度に達して30分もすれば、押し出し機からダイスという金型を通して原料が吐出されます。引き取り機に引っ張られて板に成形されるハズ。
この押し出し機から、引き取り機で引き取る間は「人力で引っ張って引き取り機に乗せる」という作業をしなければなりません。ここの部分だけは、未だに人力でするのです。
ダイスから板の原型が吐出されています。タイミングを合わせて、板の真ん中当たりに穴を開けてロープを通して、引き取り機の最後部でロープを引っ張るのです。引き取り機先端のローラーの間を通って、ローラーで挟むまでは引っ張り続けるのです。私は最後部で引っ張り続けます。
アレッ・・・・いくら引いても動かなくなってしまいました。
機械の横に出て前方を見ると、引き取り機が止まっています。ローラーには板が巻き付いています。
見ると、材料がダイスと引き取り機の間で切れています。私は、
<引き取り機は止めないで、ローラーから排出するまで動かしていいのに、そうしないと固くなって手で取ることになって手間が掛かってしまう>
思った通り硬化してしまって、カッターやのこぎりで切り取りです。ローラーは鏡面仕上げです。キズは絶対に付けれません。
その後3回ほど通そうとするのですが、引き取り速度が速すぎるのか、温度設定の間違いなのか、ここのリーダーは原因が分からない様子でした。困るのは、板は切れても引き取り機は回して、ローラーを通して止めればいいものを、それをしない。
板は硬化してしまう。外すのは私たちでリーダーは何もしない。力仕事ですから体力の消耗は激しい。口に出して怒鳴るわけにもいかず・・・・・・・、
<バカヤロー引き取り機は回せ、板を通してから止めるんだ>
続く。
「時々変な事を言うようになって・・・」というのは前回書きました。
この後の役員会で会長は退き、相談役に退きます。
高齢が主な理由でしょう。この役員会の後、今まで秘書役でプラスチック板製造を進言して、実質新規事業をトップでリードしてきた人が、実は居なくなってしまったのです。事故ではありません。意図的に姿を消してしまったのでした。
何億という設備投資と、私たち新規事業部を設けて先行投資もしています。この時経営陣は、事業の先行きを心配して当然です。消えた人間を探す。また、製品の買い取り予定だった企業を訪ねます。
「製品を買っていただけますか?というお訊ねですか。価格の提示もないので、確たる返事はしていません。そちらが一方的に騒いでいただけです」
先方の言い分だったそうです。何も言わないで消えてしまったので、社内では相談役のお金を持ち逃げしているとか、高価な設備投資をしているので、納入メーカーからバックマージンをもらっているとかの噂がありました。
私には、本当の事は分からないままです。この後相談役に私は何回か会っています。が、この件に関しては、相談役からは何も話はなかったのでした。代わりに、相談役は居なくなった人宛ての手紙を、私に黙って差し出しました。
宛名がありますから、居なくなった人宛てというのは一目で分かりました。そこには『今が貴方にとって大事な時だ、もうひと踏ん張りして頑張るように』という内容でした。何があったのか、その大枠さえ私には分かりません。ですが、相談役が許しているなら終わったこと。私は何も知らなくてもいいことだ。
と、それきりその事についての興味は無くなりました。この時と前後したのが、機械がこちらに引き渡された時期でした。これからは、新規事業部の5人で機械操作に慣れるために試作を重ねることになります。
私たちだけで押し出し機を操作して、試作品を造ろうとしました。温度が設定温度に達して30分もすれば、押し出し機からダイスという金型を通して原料が吐出されます。引き取り機に引っ張られて板に成形されるハズ。
この押し出し機から、引き取り機で引き取る間は「人力で引っ張って引き取り機に乗せる」という作業をしなければなりません。ここの部分だけは、未だに人力でするのです。
ダイスから板の原型が吐出されています。タイミングを合わせて、板の真ん中当たりに穴を開けてロープを通して、引き取り機の最後部でロープを引っ張るのです。引き取り機先端のローラーの間を通って、ローラーで挟むまでは引っ張り続けるのです。私は最後部で引っ張り続けます。
アレッ・・・・いくら引いても動かなくなってしまいました。
機械の横に出て前方を見ると、引き取り機が止まっています。ローラーには板が巻き付いています。
見ると、材料がダイスと引き取り機の間で切れています。私は、
<引き取り機は止めないで、ローラーから排出するまで動かしていいのに、そうしないと固くなって手で取ることになって手間が掛かってしまう>
思った通り硬化してしまって、カッターやのこぎりで切り取りです。ローラーは鏡面仕上げです。キズは絶対に付けれません。
その後3回ほど通そうとするのですが、引き取り速度が速すぎるのか、温度設定の間違いなのか、ここのリーダーは原因が分からない様子でした。困るのは、板は切れても引き取り機は回して、ローラーを通して止めればいいものを、それをしない。
板は硬化してしまう。外すのは私たちでリーダーは何もしない。力仕事ですから体力の消耗は激しい。口に出して怒鳴るわけにもいかず・・・・・・・、
<バカヤロー引き取り機は回せ、板を通してから止めるんだ>
続く。
タグ:日記
この記事へのコメント
コメントを書く
この記事へのトラックバックURL
https://fanblogs.jp/tb/5187573
※ブログオーナーが承認したトラックバックのみ表示されます。
この記事へのトラックバック