2017年01月07日
よしの807-4社員の自殺とデジタル広告不正から読み解く、電通デジタル部門の実態
よしの807-4社員の自殺とデジタル広告不正から読み解く、電通デジタル部門の実態
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IT大手ヤフーは すうねんまえから ざんぎょうを へらし
「サービスの 公開(こうかい)よていに まにあわないときは ざんぎょうするのではなく 公開を のばしていい」というルール
さらに しゅうきゅう3かも どうにゅうよてい とのこと。
えらい ちがいです。
http://hataraku-ikiru.com/dentsu-degital.html
2016.10.10 ワークライフバランス
社員の自殺とデジタル広告不正から読み解く、電通デジタル部門の実態
2016年9月、大手広告会社の電通が、デジタル広告について不正な取引があったことを認め、ネット広告の信頼を揺るがしたとして話題になりました。
そして翌10月、今度は、電通の新入社員だった高橋まつりさんの自殺が、過労によるものとして労災認定されるという耳の痛いニュースが立て続けに起きました(実際に亡くなったのは2015年12月)。
あまり触れられていない気がするんですが、高橋まつりさんが働いていたのも、デジタル広告系の部署(デジタル・アカウント部)だったんですよね。
今回は、電通の中でも特にデジタル広告を扱う部門の実態を、断片的にではありますが、読み解いてみたいと思います。
(当方は電通の関係者ではありません。あしからず。)
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目次 [非表示]
• 1 デジタル広告部門に関連する2つの事件
• 2 デジタル広告の成長に注力する電通
• 3 「会社の戦略」と「現場の実態」に生じているであろう歪み
o 3.1 恒常的な人員不足
o 3.2 確立されていない運用体制
デジタル広告部門に関連する2つの事件
まず一つ目の事件は、デジタル広告部門の、インターネット広告の請求やレポートをめぐる不正。
電通は9月23日、インターネット広告の代金をめぐって広告主への過大請求があったと発表した。広告の掲載時期が本来の取り決めより短くなったりずれたりした場合にも、広告主に報告せず、請求額を正していなかった。
(引用:日経ビジネス)
そして二つ目の事件は、デジタル広告部門で勤務していた女性新入社員の過労による自殺。
広告大手の電通に勤務していた女性新入社員(当時24)が昨年末に自殺したのは、長時間の過重労働が原因だったとして労災が認められた。
(引用:朝日新聞)
この2つの事件が、同じデジタル広告部門で起きたことは偶然ではなく、広告業界関係者のTweetなどを見ていても、間違いなく共通した構造的問題があるように思います。
ここからは、電通のデジタル部門(ひいては、デジタル広告業界全体)が抱えている問題に、焦点を当ててみたいと思います。
デジタル広告の成長に注力する電通
電通といえば、テレビCMのイメージが強いかも知れませんが、ここ最近は、広告会社の中でも進んでデジタル広告(インターネット広告)に力を入れています。
最近ではテレビを見る人が減っていて、その代わりにインターネットを閲覧する人が増えていることや、消費者のニーズが多様化していて、同じものを一斉に流すテレビCMの効率性が問われていること、広告主の予算削減で、テレビCMよりも単価の安いデジタル広告に注目が集まっていることなどが、主な理由でしょう。
2016年7月には「(株)電通デジタル」という新会社を発足し、設立イベントでは電通の石井社長からは「Degital or Die」(=デジタル化するか、さもなくば死)という発言まで出たそうです。
それだけ「デジタル」は、電通の成長戦略の重要な一つであるということは間違いありません。
「会社の戦略」と「現場の実態」に生じているであろう歪み
しかし、様々な記事を読み解くと、そのデジタル広告を推進する現場の実態は、デジタルシフトを標榜する戦略とはかけ離れていた様子が見えてきます。
恒常的な人員不足
まず一つは、デジタル広告業界は、恒常的な人員不足であるということ。この点は、不正取引についてのインタビューで、電通の中本副社長も言及しています。
中本副社長は「インターネット広告のニーズが急激に増える中、対応できる人材が不足していた。不正を監視する社内体制も整っていなかった」と釈明。原因を調査中だが、単純ミスのほか、人手不足などで作業が追いつかず、契約期間に間に合わなかったケースがあるという。
(引用:毎日新聞)
また、高橋まつりさんの過労死認定についての記事でも、
業務が大幅に増えたのは、試用期間が終わり、本採用になった昨年10月以降。部署の人数が14人から6人に減ったうえ、担当する企業が増えた。
(引用:HUFFINGTON POST)
とあり、明らかな人員不足であったことが伺えます。
わたしも仕事で関わっていたことがあるので多少分かりますが、テレビCMの仕事なら、仕事の単価は億単位が当たり前ですが、それに比べてデジタル広告の仕事は、せいぜい数百万単位の仕事が多いんです。
つまり、確かなことは言えませんが、デジタル広告は売上が大きくないから、人件費を割くことが出来ず、人員を増やせないという背景があるのかも知れません。
残念ながら優秀な人間は少なく、大きな戦略を作ったりすることはおろか、与えられた目の前のタスクもボロボロこぼしていく有様だったりする。そりゃそうだ、給料低いんだもん。経験の少ない若者か、経験はあっても能力の低い人しか雇えない。
(引用:電通の不正請求は広告業界全体の問題 )
確立されていない運用体制
人手が少ないうえに、デジタル広告はまだ仕組みとして新しく、運用方法や体制が確立されていないという問題も指摘されています。
たいていは津波のように押し寄せる業務に呆然となってしまう。日付の確認ミス・金額の記入間違い・指示を勘違いして間違った発注をする、間違ったバナーを掲出する等々、細かいミスやケアレスが多発していく。呆然となりながら業務をしているとミスをしたことすら気づかず、次々とやってくる業務をちぎっては投げ、ちぎっては投げを繰り返す。受注を取ってくる営業がそんな細かい運用の話をわかるはずもなく、売り上げのことだけを考えて、ミスが含まれたレポートや請求書を、分からないまま得意先に報告することになってしまう。
(引用:電通の不正請求は広告業界全体の問題)
こんな状態で、まともな仕事が出来るわけがありませんよね。そりゃあ、ミスも起こるし、不正も出てくるし、社員だって体を壊すのは当たり前です。
察するに、高橋まつりさんも、このような状況下で仕事をしていたのではないでしょうか?
デジタル広告担当は毎日朝帰り、休日出勤当たり前が恒常化している。体を壊して休職する者も多い。
(引用:電通の不正請求は広告業界全体の問題)
高橋まつりさんも、休職や退職で済めば良かったのですが・・・。本当に残念でなりません。
合わせて読みたい
電通社員の自殺を防ぐには「逃げろ!」と全力で言ってくれる人が必要だった | No.2宣言
間違いなく彼女は、「休職する」「辞める」という冷静な判断を、自分で出来るような精神状態ではなかったはずです。そしてこれは誰にでも起こり得る話で…
ということで今回は、デジタル広告の不正と新入社員の自殺。2つの事件に共通して潜む問題について、焦点を当ててみました。
まだ新しいビジネスモデルや体制が確立されていない中で、電通の成長戦略として位置づけられ、仕事量が膨大であるにも関わらず、それに見合う人員を割り当てられなかった結果として起こった事件。つまりは、経営の問題ということ。
中本副社長は、不正取引のインタビューで、次のようにも発言しています。
「人為的なミスも含めて、この責任は、特定個人というより、業務を統括するマネジメント、我々も含めた経営の問題であると考えています。深く反省し、信頼回復に向け、全力で調査し、原因究明、再発防止に努めていく所存です」
(引用:BuzzFeed)
どうか一刻も早く、これを実現してまともな組織、まともなビジネスモデルへと進化させてほしいと願ってやみません。
レポートの改ざんで人は死にませんが、過労では人は死んでしまうんですから…。
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入社式。それは辞める権利が生まれた瞬間でもある
電通社員の自殺を防ぐには「逃げろ!」と全力で言ってくれる人が必要だった
http://www.goodbyebluethursday.com/entry/dentsu-fraud
3分でわかる電通の不正(不適切業務)とネット広告の闇について
TOP > 3分でわかる政治経済と時事ニュース > 電通の不正
日本の最大手広告代理店である電通が、ニュースリリースで「デジタル広告サービスにおいて、複数の不適切業務が行われていた」と発表しました。
日本国内のデジタル広告サービスにおける不適切業務の発生について
電通幹部は、上記リリースの直後に記者会見をし、今回の不適切業務が「不正」であったということを認めています。
具体的に何が行われたのか箇条書きで記すと、以下のとおりです。
• 広告掲載期間のズレ
• 広告の未掲出
• 運用レポートの虚偽報告
• 運用実態とは異なる過剰請求
これらの不正が、人為的ミスによって、あるいは故意に行われており、その他の不正に関しても、現在調査中、という発表でした。
この記事では、今回の電通の不正が一体どのようなものなのか、ネット広告における闇の部分についても言及しながら、わかりやすく解説していきたいと思います。
1. 運用型広告について
2. 電通の不正の概要
1. 運用実績の虚偽報告
2. 広告の不掲出
3. なぜ発覚したのか?
4. ネット広告の闇と電通(広告代理店)のモラル
5. 参考・関連記事
運用型広告について
今回の不正を理解するには、まずネット広告における「運用型広告」というものを理解しなければなりません。
広告というのはいろいろあって、テレビ広告、雑誌広告、新聞広告など様々です。
紙媒体であれば、「ここに広告を掲載するには○○万円」といった料金体系でわかりやすいのですが、効果測定が極めて詳細に可能なネット広告においては、料金体系がかなり複雑化しています。
例えば、「1か月この枠にバナーを掲載します」という期間保証型広告があり、「1000クリックされるまで広告を掲載します」というクリック保証型広告があり、「10000PV獲得するまで掲載します」というPV保証型広告などがあります。
しかし、上記に挙げた形の広告というのは、現代ではもうかなり古いです。そんな広告に出稿するクライアントは稀です。
現代においては、今回の電通案件でも問題になった、「運用型広告」というのが主流になっています。
これは、基本的に広告がオークション方式になっていて、クリックやPVの単価をこちら側で入札し、条件が合致すれば広告が掲載され、クリックされる、という仕組みです。
もっともわかりやすいのが、Googleが提供する検索連動型広告「Google Adwords」ですね。あの広告は「○○というキーワードが検索されたときに、広告を表示させたい」という場合に、その○○というキーワードに対して入札するわけです。その入札単価が高いほうがより上位表示され*1、クリックされると料金が発生します。
現在では検索連動型広告だけではなく、特定層向けメディアを集めた広告ネットワークを作って、そのメディア群の広告ネットワークで入札方式をとっている商品も多くなっています。(Ex.ママ向けメディアやIT関係者向けメディアなど)
広告主も「興味のない人に広告を打ちたくない」ので、より年齢、性別、興味嗜好をターゲティングして、限定的に広告を打つことが可能になりました。
そうなってくると、重要なのが「運用」になってくるわけです。
それぞれのアカウント画面からリアルタイムに入札して、広告の掲出状況を調整できるわけですね。
「あんまり掲出されていないなぁ」と思えば、入札単価を上げて、より掲出されるようにする。しかし、単価を上げすぎると、1クリック当たりの単価が上昇して、費用対効果が下がる。
その広告効果を最大限に高めることが、「運用」なのです。広告代理店は、この「運用」業務をしています。
電通の不正の概要
前提の説明が長くなってしまいました。ようやく、今回の電通の不正の概要について説明します。
非常にシンプルに説明すると、クライアントは「予算100万円で9月のネット広告運用して」という発注をするわけです。当然、この9月には「9月1日〜30日までまんべんなく」という意味合いがこめられています。
電通は「わかりました!」と言って、その100万円を使って、前述した運用型広告を使って運用するわけです。
でもこの100万円を1か月間でまんべんなくきっちり使い切ることって、まあまあ難しいんですよね。入札方式ですから、他社が介入することなので、なかなか思い通りにいかない。
運用実績の虚偽報告
9月の前半は入札単価50円で運用してたけど、10万円分しかクリックされなかった…このままじゃ、やばい!残り半月は単価めちゃくちゃ上げて90万円分使い切らなくちゃ!ということも、よくあることです。クライアント側から見れば、広告予算として100万円確保しているので、100万円きっちり使ってもらわないと困るんですね。「なんかあんまり広告掲載されなくて、30万円しか使えませんでした〜」というのは言えないわけです。だから、単価を上げてでも使い切ります*2。
でも、このレポートをクライアントが見たら、どう思うでしょうか。
「おい、なんだこの急激な単価の伸びは!?ちゃんと運用やっていたのか!?」って、普通の広告担当なら言いますよね。
だから、レポートを改ざんするわけです。
クライアントに対するレポートというのは、アカウントの運用結果画面からCSVファイルか何かでエクスポートして、それを自社のExcelフォーマットにコピペして提出します。だから、そのExcelファイルの数字をちょちょっといじってしまえば、9月の30日間、良い感じで運用できてましたよ〜というレポートを出せるのです。
これが、運用実績の虚偽報告です。
広告の不掲出
あるいは、こんなケースも考えられます。
9月100万円の広告予算で、最初の3週間だけで予算を使い切ってしまった!というケースです。
もう予算がないので、入札できません。そうなると、9月の残りの1週間は広告が掲出されないわけです。広告の「未掲出」ですね。これは、電通の記者会見でも「不正の例」として実際に紹介されていた事例です。
まだ予算を使い切っての「未掲出」なら良いほうです。もっとも悪質なのは、予算を使い切っていないのに、使い切ったと虚偽の報告をして請求をする「未掲出請求」です。
9月100万円の予算なのに、月末までに60万円分しか予算消化できなかった…。でも100万分消化したことにして請求してしまおう!というケースです。
今回の電通の不正も、このケースがありました*3。クライアントからしてみれば、40万円分は、広告未掲出なのに請求されてしまっている。由々しき事態ですね。
これは広告の不掲出、あるいは過剰請求とも言える事例です。
なぜ発覚したのか?
今回の不正は、あるクライアントからの指摘によって発覚しました。それは、トヨタです。おそらく、電通の中でもトップレベルの予算を割いてくれているクライアントでしょう。
トヨタの広告担当者が、「ある時期における広告効果が期待値に比べ、一向に上がってこない。本当に掲載されているのか?」と疑義を持った。そこで、今回の発覚につながりました。
ここまで不正が発覚しなかったのは、「今までもそういう指摘があったが、黙殺されてきた」あるいは、「クライアントの広告担当者がそこまで詳細に期待値と実績の分析をしてこなかった」など考えられますが、今までにそういう指摘がなかったとはちょっと考えにくいです。各社の広告担当者だって、おしなべて広告効果の分析に疎い、なんていうことは考えにくいです。
おそらく「指摘してきたクライアントがトヨタだった」というのが一番大きいでしょう。電通にとっては、絶対に無視できないクライアントです。そのクライアントが「大丈夫なの?」と言ってきたから、本気で社内調査をしたのだと思います。
現在までに発覚している不正に係る業務の対象となる広告主は111社。金額は約2億3千万に上る。
ネット広告の闇と電通(広告代理店)のモラル
管理画面の閲覧権限を持っていないクライアントは、基本的に代理店からのレポートを信じるしかないわけです。
代理店は、広告主がアカウント画面にログインすることを嫌がります。それは、運用画面をいじられると困るからです。
広告の管理画面をクライアントと共有している代理店がどれほどあるのかわかりませんが、今回の発覚の経緯から推測するに、電通とトヨタはおそらく、管理画面の共有をしていなかったのでしょう。
代理店は、レポートを改ざんしようとすれば、いくらでもできます。Excelファイルをいじるだけです。
ネット広告の闇とは「代理店が運用するシステムでは、本当に広告が運用されているのか検証することが難しい」ということです。
新聞広告やテレビCMのように、「あっ、ちゃんとうちの広告出てるね」と確認することが困難です。なぜなら、ネット広告が表示されるのは、各個人のPCやスマートフォンだったりするわけですから。
だから、その代理店がそのレポートをいじることは絶対にやってはいけないことなのです。そのレポートを改ざんすると、ネット広告の信頼性が完全に崩れます。そこは、広告代理店のモラルが問われる部分であります。
しかしながら、今回の一件があって、もしかしたらクライアント側から「アカウント画面を見せてくれ」という要望が多くなるのかもしれません。アカウント画面を共有することになれば、レポートの改ざんというのは一気に減るでしょう。
電通の一件は、氷山の一角であるという気がしてなりません。
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3分でわかる政治経済と時事ニュース シリーズの記事一覧
参考・関連記事
「食べログの信頼性が損なわれた理由」/口コミサイトが独立性を保つことの難しさ - さようなら、憂鬱な木曜日
電通「これは事実です」 トヨタなど100社への広告料金の不正請求疑惑について : 市況かぶ全力2階建
電通「不適切と表現したが、まあ、不正です」:日経ビジネスオンライン
*1:Adowrdsには品質ランクというものがあり、入札単価×品質ランクの方式で上位表示される。単純に単価が高ければ上位表示されるというわけではない
*2:クリック単価重視の広告主もいる。その場合、予算を使い切るよりクリック単価重視の運用がされる
*3:現在までに分かっている金額は総額320万円
宮田レイシープ (id:goodbyebluemonday23) 102日前
―
http://toianna.hatenablog.com/entry/2016/09/26/091940
電通のデジタル広告不正について、クライアントの立場から「ごめんなさい」と言いたい
キャリア 時事ネタ
電通がデジタル広告領域で、契約期間に実際は掲載しなかったのを始めとする不正が発覚した。私はこれまで数社で電通へWeb広告を発注する立場だった。その上で、この問題が発覚したとき冷や汗が流れた。そして電通の担当者さんへ「申し訳ない」と感じている。不正は電通だけが根源ではないと強く感じているからだ。
クライアントは情弱が多い
そもそも、電通はWebに弱い。電通の個人投資家向け情報には、電通の強みとしてテレビ、新聞、雑誌、ラジオが図解されている。Webがこれほどまでに重要になった現在、なぜ掲載されていないか。弱いからである。そんなことはクライアントもわかっているが、広告発注は1社に絞ったほうがコストが安くなる。すでにテレビ広告を電通へ依頼している企業なら、Web広告も一括発注することが多い。
また、マーケティングコンセプトは同じなのにCMは電通・Webは博報堂などと製作先を分散してしまえば全く異なる広告があがってくる。芸能人もイラストも違う広告が媒体別に拡散されてしまえばキャンペーンごとの統一性が失われる。あるいは前例主義で「ずっと電通さんにお世話になってるから」と選ばれる。だからWebに弱いとわかっていても、総合力に強い電通へ依頼することが多い。
そうなると、電通の営業さんがWebに強くないのはこちらも承知の上だ。その上で依頼主がWeb広告を勉強しておけばいいだけの話なのだが、いかんせん依頼側も情弱なことが多い。たとえば私は比較的Web広告の知識があると言われペーペーのころから社内の偉い人へ説明していたが、それは単にWeb広告の基礎用語を知っていたからである。例えば「インプレッションが多い案よりも、コンバージョンを優先しましょう」と言えるくらいで、つまり詳しい人から鼻で笑われるレベルだ。
クライアントにとって何よりも重要なのは実際の売上である。実際の売りにさえ達していれば、ぶっちゃけ掲載期間が多少いじられていようが、想定インプレッション数に達していなかろうが問題ない。
しかしWeb広告は「実際の売上」を証明するデータの蓄積がない。ネット通販ならそのままオンラインで売れるが、クルマなどリアル店舗で購入する商品に関しては顧客の何割がWeb広告経由で訪れるかを正確に測定できない。
対してテレビCMや新聞、雑誌は今までの膨大な統計から、広告の品質に関わらず最低何割が広告から商品を購入するか知っている。しかしWebにはその蓄積がない。にも関わらず、次々と新しいメニューが出てくる。バナー広告でいくら商品が売れるかもわからないのに、やれVRだのネイティブアドだのが登場する。
「効きそう、だけど効能はわからない」という意味で、これらの広告投資は水素水と大差ない。少なくとも、数百万以上を放り込むクライアント目線では、だ。
Webに期待されている売上は少ない
であるにも関わらずなぜ、クライアントがWeb広告への投資を止められないか。それはテレビや新聞など既存メディアの凋落が激しいからである。同じ広告費をテレビへ投下してもじりじりと売上が下がっていく。このままではジリ貧だ。お上から鶴の一声で「これからはネットだ!」と号令がかかり、慌てて取り組む経営企画部も少なくない。
そんな状態で走り出すから正直なところ、Web広告由来の売上を高く見積もれない。「テストプランのつもりで」と稟議を通すことも負いだろう。億単位で予算がぶっ飛ぶテレビCMと比較すると、Webは数百万円から投資できる。数百万なら、CMを1週間減らすだけで十分捻出できるではないか。というわけで電通さん、ちょっと広告の予算配分変えといて――。これが、私が数社にわたって見てきたWeb広告に対する投資の始まりだ。Web広告の多くはリターンをはなから期待されていない。
クライアントが情弱なだけが原因ではない。会社員の大半は会社でメールを使っているだろうし、Google広告を観ている。だがバナー広告をクリックした経験が、これをご覧になっている読者の何割にあるだろうか? バナー広告のクリック率は0.05%前後。効果測定のヒアリング調査でも「バナーをクリックして御社製品を買いましたよ」なんて消費者へはまずお目に掛かれない。テレビや新聞、雑誌ならよくあることなのに。これがまた、Webへの不信を募らせる。
このようにWeb広告は実体験からも成果を期待しづらい。クライアントにとっては「予想外に売れちゃって説明を求められたらWebのお陰だと報告しよう」くらいの存在である。
こういった経緯でクライアントから合計10億円投下されて、うち300万円だけがWebに割かれる。あなたが電通の経営者なら、その300万円にテレビCMと同じ人員を割くだろうか? 割くわけがない。プロフェッショナルを下請けから出向させて、あとはよろしく! が関の山だろう。出世も見えないまま降ってくる大量の処理作業、明らかにテンションの低いクライアント。社員にとって不正も働きたくなる土壌がそこにはある。
だからトヨタの指摘があったと聞いたとき、私は驚かされた。トヨタはどんだけWebへ期待してるんだよと。もしかして上層部から売りが達していない理由を詰められて、咄嗟に「広告の実施状況を今一度確認します」と口走ったから今回の不正が判明したんじゃないの、と。
結果として実際に不正があったので、電通が今回は売上未達の非を全面的に負うことになるだろう。私がトヨタのマーケターなら胸をなでおろすところだ。
だが、もっとフェアに話せばクライアントがWebを知らな過ぎた、あるいは予算を削りすぎてきた面も多いにあるのではないか。「ホームページ作ってバナー広告を貼れば何とかなる。あとはこう……なんか知らないけどSEOだっけ?あれやっといて」くらいの認識しかない企業が多すぎるんじゃないのか。
不正は不正で、現時点でもすでに社員は方々のクライアントとケジメをつけているところだろう。いくら予算不足の部門だろうが、慰謝料も社会的制裁も大いに受けるべきだ。だがその一方で、依頼主としての無学から罪悪感に胸を締め付けられた次第である。
トイアンナ (id:toianna) 101日前
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IT大手ヤフーは すうねんまえから ざんぎょうを へらし
「サービスの 公開(こうかい)よていに まにあわないときは ざんぎょうするのではなく 公開を のばしていい」というルール
さらに しゅうきゅう3かも どうにゅうよてい とのこと。
えらい ちがいです。
http://hataraku-ikiru.com/dentsu-degital.html
2016.10.10 ワークライフバランス
社員の自殺とデジタル広告不正から読み解く、電通デジタル部門の実態
2016年9月、大手広告会社の電通が、デジタル広告について不正な取引があったことを認め、ネット広告の信頼を揺るがしたとして話題になりました。
そして翌10月、今度は、電通の新入社員だった高橋まつりさんの自殺が、過労によるものとして労災認定されるという耳の痛いニュースが立て続けに起きました(実際に亡くなったのは2015年12月)。
あまり触れられていない気がするんですが、高橋まつりさんが働いていたのも、デジタル広告系の部署(デジタル・アカウント部)だったんですよね。
今回は、電通の中でも特にデジタル広告を扱う部門の実態を、断片的にではありますが、読み解いてみたいと思います。
(当方は電通の関係者ではありません。あしからず。)
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• 1 デジタル広告部門に関連する2つの事件
• 2 デジタル広告の成長に注力する電通
• 3 「会社の戦略」と「現場の実態」に生じているであろう歪み
o 3.1 恒常的な人員不足
o 3.2 確立されていない運用体制
デジタル広告部門に関連する2つの事件
まず一つ目の事件は、デジタル広告部門の、インターネット広告の請求やレポートをめぐる不正。
電通は9月23日、インターネット広告の代金をめぐって広告主への過大請求があったと発表した。広告の掲載時期が本来の取り決めより短くなったりずれたりした場合にも、広告主に報告せず、請求額を正していなかった。
(引用:日経ビジネス)
そして二つ目の事件は、デジタル広告部門で勤務していた女性新入社員の過労による自殺。
広告大手の電通に勤務していた女性新入社員(当時24)が昨年末に自殺したのは、長時間の過重労働が原因だったとして労災が認められた。
(引用:朝日新聞)
この2つの事件が、同じデジタル広告部門で起きたことは偶然ではなく、広告業界関係者のTweetなどを見ていても、間違いなく共通した構造的問題があるように思います。
ここからは、電通のデジタル部門(ひいては、デジタル広告業界全体)が抱えている問題に、焦点を当ててみたいと思います。
デジタル広告の成長に注力する電通
電通といえば、テレビCMのイメージが強いかも知れませんが、ここ最近は、広告会社の中でも進んでデジタル広告(インターネット広告)に力を入れています。
最近ではテレビを見る人が減っていて、その代わりにインターネットを閲覧する人が増えていることや、消費者のニーズが多様化していて、同じものを一斉に流すテレビCMの効率性が問われていること、広告主の予算削減で、テレビCMよりも単価の安いデジタル広告に注目が集まっていることなどが、主な理由でしょう。
2016年7月には「(株)電通デジタル」という新会社を発足し、設立イベントでは電通の石井社長からは「Degital or Die」(=デジタル化するか、さもなくば死)という発言まで出たそうです。
それだけ「デジタル」は、電通の成長戦略の重要な一つであるということは間違いありません。
「会社の戦略」と「現場の実態」に生じているであろう歪み
しかし、様々な記事を読み解くと、そのデジタル広告を推進する現場の実態は、デジタルシフトを標榜する戦略とはかけ離れていた様子が見えてきます。
恒常的な人員不足
まず一つは、デジタル広告業界は、恒常的な人員不足であるということ。この点は、不正取引についてのインタビューで、電通の中本副社長も言及しています。
中本副社長は「インターネット広告のニーズが急激に増える中、対応できる人材が不足していた。不正を監視する社内体制も整っていなかった」と釈明。原因を調査中だが、単純ミスのほか、人手不足などで作業が追いつかず、契約期間に間に合わなかったケースがあるという。
(引用:毎日新聞)
また、高橋まつりさんの過労死認定についての記事でも、
業務が大幅に増えたのは、試用期間が終わり、本採用になった昨年10月以降。部署の人数が14人から6人に減ったうえ、担当する企業が増えた。
(引用:HUFFINGTON POST)
とあり、明らかな人員不足であったことが伺えます。
わたしも仕事で関わっていたことがあるので多少分かりますが、テレビCMの仕事なら、仕事の単価は億単位が当たり前ですが、それに比べてデジタル広告の仕事は、せいぜい数百万単位の仕事が多いんです。
つまり、確かなことは言えませんが、デジタル広告は売上が大きくないから、人件費を割くことが出来ず、人員を増やせないという背景があるのかも知れません。
残念ながら優秀な人間は少なく、大きな戦略を作ったりすることはおろか、与えられた目の前のタスクもボロボロこぼしていく有様だったりする。そりゃそうだ、給料低いんだもん。経験の少ない若者か、経験はあっても能力の低い人しか雇えない。
(引用:電通の不正請求は広告業界全体の問題 )
確立されていない運用体制
人手が少ないうえに、デジタル広告はまだ仕組みとして新しく、運用方法や体制が確立されていないという問題も指摘されています。
たいていは津波のように押し寄せる業務に呆然となってしまう。日付の確認ミス・金額の記入間違い・指示を勘違いして間違った発注をする、間違ったバナーを掲出する等々、細かいミスやケアレスが多発していく。呆然となりながら業務をしているとミスをしたことすら気づかず、次々とやってくる業務をちぎっては投げ、ちぎっては投げを繰り返す。受注を取ってくる営業がそんな細かい運用の話をわかるはずもなく、売り上げのことだけを考えて、ミスが含まれたレポートや請求書を、分からないまま得意先に報告することになってしまう。
(引用:電通の不正請求は広告業界全体の問題)
こんな状態で、まともな仕事が出来るわけがありませんよね。そりゃあ、ミスも起こるし、不正も出てくるし、社員だって体を壊すのは当たり前です。
察するに、高橋まつりさんも、このような状況下で仕事をしていたのではないでしょうか?
デジタル広告担当は毎日朝帰り、休日出勤当たり前が恒常化している。体を壊して休職する者も多い。
(引用:電通の不正請求は広告業界全体の問題)
高橋まつりさんも、休職や退職で済めば良かったのですが・・・。本当に残念でなりません。
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電通社員の自殺を防ぐには「逃げろ!」と全力で言ってくれる人が必要だった | No.2宣言
間違いなく彼女は、「休職する」「辞める」という冷静な判断を、自分で出来るような精神状態ではなかったはずです。そしてこれは誰にでも起こり得る話で…
ということで今回は、デジタル広告の不正と新入社員の自殺。2つの事件に共通して潜む問題について、焦点を当ててみました。
まだ新しいビジネスモデルや体制が確立されていない中で、電通の成長戦略として位置づけられ、仕事量が膨大であるにも関わらず、それに見合う人員を割り当てられなかった結果として起こった事件。つまりは、経営の問題ということ。
中本副社長は、不正取引のインタビューで、次のようにも発言しています。
「人為的なミスも含めて、この責任は、特定個人というより、業務を統括するマネジメント、我々も含めた経営の問題であると考えています。深く反省し、信頼回復に向け、全力で調査し、原因究明、再発防止に努めていく所存です」
(引用:BuzzFeed)
どうか一刻も早く、これを実現してまともな組織、まともなビジネスモデルへと進化させてほしいと願ってやみません。
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3分でわかる電通の不正(不適切業務)とネット広告の闇について
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日本の最大手広告代理店である電通が、ニュースリリースで「デジタル広告サービスにおいて、複数の不適切業務が行われていた」と発表しました。
日本国内のデジタル広告サービスにおける不適切業務の発生について
電通幹部は、上記リリースの直後に記者会見をし、今回の不適切業務が「不正」であったということを認めています。
具体的に何が行われたのか箇条書きで記すと、以下のとおりです。
• 広告掲載期間のズレ
• 広告の未掲出
• 運用レポートの虚偽報告
• 運用実態とは異なる過剰請求
これらの不正が、人為的ミスによって、あるいは故意に行われており、その他の不正に関しても、現在調査中、という発表でした。
この記事では、今回の電通の不正が一体どのようなものなのか、ネット広告における闇の部分についても言及しながら、わかりやすく解説していきたいと思います。
1. 運用型広告について
2. 電通の不正の概要
1. 運用実績の虚偽報告
2. 広告の不掲出
3. なぜ発覚したのか?
4. ネット広告の闇と電通(広告代理店)のモラル
5. 参考・関連記事
運用型広告について
今回の不正を理解するには、まずネット広告における「運用型広告」というものを理解しなければなりません。
広告というのはいろいろあって、テレビ広告、雑誌広告、新聞広告など様々です。
紙媒体であれば、「ここに広告を掲載するには○○万円」といった料金体系でわかりやすいのですが、効果測定が極めて詳細に可能なネット広告においては、料金体系がかなり複雑化しています。
例えば、「1か月この枠にバナーを掲載します」という期間保証型広告があり、「1000クリックされるまで広告を掲載します」というクリック保証型広告があり、「10000PV獲得するまで掲載します」というPV保証型広告などがあります。
しかし、上記に挙げた形の広告というのは、現代ではもうかなり古いです。そんな広告に出稿するクライアントは稀です。
現代においては、今回の電通案件でも問題になった、「運用型広告」というのが主流になっています。
これは、基本的に広告がオークション方式になっていて、クリックやPVの単価をこちら側で入札し、条件が合致すれば広告が掲載され、クリックされる、という仕組みです。
もっともわかりやすいのが、Googleが提供する検索連動型広告「Google Adwords」ですね。あの広告は「○○というキーワードが検索されたときに、広告を表示させたい」という場合に、その○○というキーワードに対して入札するわけです。その入札単価が高いほうがより上位表示され*1、クリックされると料金が発生します。
現在では検索連動型広告だけではなく、特定層向けメディアを集めた広告ネットワークを作って、そのメディア群の広告ネットワークで入札方式をとっている商品も多くなっています。(Ex.ママ向けメディアやIT関係者向けメディアなど)
広告主も「興味のない人に広告を打ちたくない」ので、より年齢、性別、興味嗜好をターゲティングして、限定的に広告を打つことが可能になりました。
そうなってくると、重要なのが「運用」になってくるわけです。
それぞれのアカウント画面からリアルタイムに入札して、広告の掲出状況を調整できるわけですね。
「あんまり掲出されていないなぁ」と思えば、入札単価を上げて、より掲出されるようにする。しかし、単価を上げすぎると、1クリック当たりの単価が上昇して、費用対効果が下がる。
その広告効果を最大限に高めることが、「運用」なのです。広告代理店は、この「運用」業務をしています。
電通の不正の概要
前提の説明が長くなってしまいました。ようやく、今回の電通の不正の概要について説明します。
非常にシンプルに説明すると、クライアントは「予算100万円で9月のネット広告運用して」という発注をするわけです。当然、この9月には「9月1日〜30日までまんべんなく」という意味合いがこめられています。
電通は「わかりました!」と言って、その100万円を使って、前述した運用型広告を使って運用するわけです。
でもこの100万円を1か月間でまんべんなくきっちり使い切ることって、まあまあ難しいんですよね。入札方式ですから、他社が介入することなので、なかなか思い通りにいかない。
運用実績の虚偽報告
9月の前半は入札単価50円で運用してたけど、10万円分しかクリックされなかった…このままじゃ、やばい!残り半月は単価めちゃくちゃ上げて90万円分使い切らなくちゃ!ということも、よくあることです。クライアント側から見れば、広告予算として100万円確保しているので、100万円きっちり使ってもらわないと困るんですね。「なんかあんまり広告掲載されなくて、30万円しか使えませんでした〜」というのは言えないわけです。だから、単価を上げてでも使い切ります*2。
でも、このレポートをクライアントが見たら、どう思うでしょうか。
「おい、なんだこの急激な単価の伸びは!?ちゃんと運用やっていたのか!?」って、普通の広告担当なら言いますよね。
だから、レポートを改ざんするわけです。
クライアントに対するレポートというのは、アカウントの運用結果画面からCSVファイルか何かでエクスポートして、それを自社のExcelフォーマットにコピペして提出します。だから、そのExcelファイルの数字をちょちょっといじってしまえば、9月の30日間、良い感じで運用できてましたよ〜というレポートを出せるのです。
これが、運用実績の虚偽報告です。
広告の不掲出
あるいは、こんなケースも考えられます。
9月100万円の広告予算で、最初の3週間だけで予算を使い切ってしまった!というケースです。
もう予算がないので、入札できません。そうなると、9月の残りの1週間は広告が掲出されないわけです。広告の「未掲出」ですね。これは、電通の記者会見でも「不正の例」として実際に紹介されていた事例です。
まだ予算を使い切っての「未掲出」なら良いほうです。もっとも悪質なのは、予算を使い切っていないのに、使い切ったと虚偽の報告をして請求をする「未掲出請求」です。
9月100万円の予算なのに、月末までに60万円分しか予算消化できなかった…。でも100万分消化したことにして請求してしまおう!というケースです。
今回の電通の不正も、このケースがありました*3。クライアントからしてみれば、40万円分は、広告未掲出なのに請求されてしまっている。由々しき事態ですね。
これは広告の不掲出、あるいは過剰請求とも言える事例です。
なぜ発覚したのか?
今回の不正は、あるクライアントからの指摘によって発覚しました。それは、トヨタです。おそらく、電通の中でもトップレベルの予算を割いてくれているクライアントでしょう。
トヨタの広告担当者が、「ある時期における広告効果が期待値に比べ、一向に上がってこない。本当に掲載されているのか?」と疑義を持った。そこで、今回の発覚につながりました。
ここまで不正が発覚しなかったのは、「今までもそういう指摘があったが、黙殺されてきた」あるいは、「クライアントの広告担当者がそこまで詳細に期待値と実績の分析をしてこなかった」など考えられますが、今までにそういう指摘がなかったとはちょっと考えにくいです。各社の広告担当者だって、おしなべて広告効果の分析に疎い、なんていうことは考えにくいです。
おそらく「指摘してきたクライアントがトヨタだった」というのが一番大きいでしょう。電通にとっては、絶対に無視できないクライアントです。そのクライアントが「大丈夫なの?」と言ってきたから、本気で社内調査をしたのだと思います。
現在までに発覚している不正に係る業務の対象となる広告主は111社。金額は約2億3千万に上る。
ネット広告の闇と電通(広告代理店)のモラル
管理画面の閲覧権限を持っていないクライアントは、基本的に代理店からのレポートを信じるしかないわけです。
代理店は、広告主がアカウント画面にログインすることを嫌がります。それは、運用画面をいじられると困るからです。
広告の管理画面をクライアントと共有している代理店がどれほどあるのかわかりませんが、今回の発覚の経緯から推測するに、電通とトヨタはおそらく、管理画面の共有をしていなかったのでしょう。
代理店は、レポートを改ざんしようとすれば、いくらでもできます。Excelファイルをいじるだけです。
ネット広告の闇とは「代理店が運用するシステムでは、本当に広告が運用されているのか検証することが難しい」ということです。
新聞広告やテレビCMのように、「あっ、ちゃんとうちの広告出てるね」と確認することが困難です。なぜなら、ネット広告が表示されるのは、各個人のPCやスマートフォンだったりするわけですから。
だから、その代理店がそのレポートをいじることは絶対にやってはいけないことなのです。そのレポートを改ざんすると、ネット広告の信頼性が完全に崩れます。そこは、広告代理店のモラルが問われる部分であります。
しかしながら、今回の一件があって、もしかしたらクライアント側から「アカウント画面を見せてくれ」という要望が多くなるのかもしれません。アカウント画面を共有することになれば、レポートの改ざんというのは一気に減るでしょう。
電通の一件は、氷山の一角であるという気がしてなりません。
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参考・関連記事
「食べログの信頼性が損なわれた理由」/口コミサイトが独立性を保つことの難しさ - さようなら、憂鬱な木曜日
電通「これは事実です」 トヨタなど100社への広告料金の不正請求疑惑について : 市況かぶ全力2階建
電通「不適切と表現したが、まあ、不正です」:日経ビジネスオンライン
*1:Adowrdsには品質ランクというものがあり、入札単価×品質ランクの方式で上位表示される。単純に単価が高ければ上位表示されるというわけではない
*2:クリック単価重視の広告主もいる。その場合、予算を使い切るよりクリック単価重視の運用がされる
*3:現在までに分かっている金額は総額320万円
宮田レイシープ (id:goodbyebluemonday23) 102日前
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http://toianna.hatenablog.com/entry/2016/09/26/091940
電通のデジタル広告不正について、クライアントの立場から「ごめんなさい」と言いたい
キャリア 時事ネタ
電通がデジタル広告領域で、契約期間に実際は掲載しなかったのを始めとする不正が発覚した。私はこれまで数社で電通へWeb広告を発注する立場だった。その上で、この問題が発覚したとき冷や汗が流れた。そして電通の担当者さんへ「申し訳ない」と感じている。不正は電通だけが根源ではないと強く感じているからだ。
クライアントは情弱が多い
そもそも、電通はWebに弱い。電通の個人投資家向け情報には、電通の強みとしてテレビ、新聞、雑誌、ラジオが図解されている。Webがこれほどまでに重要になった現在、なぜ掲載されていないか。弱いからである。そんなことはクライアントもわかっているが、広告発注は1社に絞ったほうがコストが安くなる。すでにテレビ広告を電通へ依頼している企業なら、Web広告も一括発注することが多い。
また、マーケティングコンセプトは同じなのにCMは電通・Webは博報堂などと製作先を分散してしまえば全く異なる広告があがってくる。芸能人もイラストも違う広告が媒体別に拡散されてしまえばキャンペーンごとの統一性が失われる。あるいは前例主義で「ずっと電通さんにお世話になってるから」と選ばれる。だからWebに弱いとわかっていても、総合力に強い電通へ依頼することが多い。
そうなると、電通の営業さんがWebに強くないのはこちらも承知の上だ。その上で依頼主がWeb広告を勉強しておけばいいだけの話なのだが、いかんせん依頼側も情弱なことが多い。たとえば私は比較的Web広告の知識があると言われペーペーのころから社内の偉い人へ説明していたが、それは単にWeb広告の基礎用語を知っていたからである。例えば「インプレッションが多い案よりも、コンバージョンを優先しましょう」と言えるくらいで、つまり詳しい人から鼻で笑われるレベルだ。
クライアントにとって何よりも重要なのは実際の売上である。実際の売りにさえ達していれば、ぶっちゃけ掲載期間が多少いじられていようが、想定インプレッション数に達していなかろうが問題ない。
しかしWeb広告は「実際の売上」を証明するデータの蓄積がない。ネット通販ならそのままオンラインで売れるが、クルマなどリアル店舗で購入する商品に関しては顧客の何割がWeb広告経由で訪れるかを正確に測定できない。
対してテレビCMや新聞、雑誌は今までの膨大な統計から、広告の品質に関わらず最低何割が広告から商品を購入するか知っている。しかしWebにはその蓄積がない。にも関わらず、次々と新しいメニューが出てくる。バナー広告でいくら商品が売れるかもわからないのに、やれVRだのネイティブアドだのが登場する。
「効きそう、だけど効能はわからない」という意味で、これらの広告投資は水素水と大差ない。少なくとも、数百万以上を放り込むクライアント目線では、だ。
Webに期待されている売上は少ない
であるにも関わらずなぜ、クライアントがWeb広告への投資を止められないか。それはテレビや新聞など既存メディアの凋落が激しいからである。同じ広告費をテレビへ投下してもじりじりと売上が下がっていく。このままではジリ貧だ。お上から鶴の一声で「これからはネットだ!」と号令がかかり、慌てて取り組む経営企画部も少なくない。
そんな状態で走り出すから正直なところ、Web広告由来の売上を高く見積もれない。「テストプランのつもりで」と稟議を通すことも負いだろう。億単位で予算がぶっ飛ぶテレビCMと比較すると、Webは数百万円から投資できる。数百万なら、CMを1週間減らすだけで十分捻出できるではないか。というわけで電通さん、ちょっと広告の予算配分変えといて――。これが、私が数社にわたって見てきたWeb広告に対する投資の始まりだ。Web広告の多くはリターンをはなから期待されていない。
クライアントが情弱なだけが原因ではない。会社員の大半は会社でメールを使っているだろうし、Google広告を観ている。だがバナー広告をクリックした経験が、これをご覧になっている読者の何割にあるだろうか? バナー広告のクリック率は0.05%前後。効果測定のヒアリング調査でも「バナーをクリックして御社製品を買いましたよ」なんて消費者へはまずお目に掛かれない。テレビや新聞、雑誌ならよくあることなのに。これがまた、Webへの不信を募らせる。
このようにWeb広告は実体験からも成果を期待しづらい。クライアントにとっては「予想外に売れちゃって説明を求められたらWebのお陰だと報告しよう」くらいの存在である。
こういった経緯でクライアントから合計10億円投下されて、うち300万円だけがWebに割かれる。あなたが電通の経営者なら、その300万円にテレビCMと同じ人員を割くだろうか? 割くわけがない。プロフェッショナルを下請けから出向させて、あとはよろしく! が関の山だろう。出世も見えないまま降ってくる大量の処理作業、明らかにテンションの低いクライアント。社員にとって不正も働きたくなる土壌がそこにはある。
だからトヨタの指摘があったと聞いたとき、私は驚かされた。トヨタはどんだけWebへ期待してるんだよと。もしかして上層部から売りが達していない理由を詰められて、咄嗟に「広告の実施状況を今一度確認します」と口走ったから今回の不正が判明したんじゃないの、と。
結果として実際に不正があったので、電通が今回は売上未達の非を全面的に負うことになるだろう。私がトヨタのマーケターなら胸をなでおろすところだ。
だが、もっとフェアに話せばクライアントがWebを知らな過ぎた、あるいは予算を削りすぎてきた面も多いにあるのではないか。「ホームページ作ってバナー広告を貼れば何とかなる。あとはこう……なんか知らないけどSEOだっけ?あれやっといて」くらいの認識しかない企業が多すぎるんじゃないのか。
不正は不正で、現時点でもすでに社員は方々のクライアントとケジメをつけているところだろう。いくら予算不足の部門だろうが、慰謝料も社会的制裁も大いに受けるべきだ。だがその一方で、依頼主としての無学から罪悪感に胸を締め付けられた次第である。
トイアンナ (id:toianna) 101日前
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