2018年06月25日
福島第一原発の廃炉作業員が足りない!
私達は今、ロシアで開催されているサッカーW杯の模様に一喜一憂して居るのだが、それはさて置き日本では静かに新たな原発の新安全基準が承認され、次々と原発の再稼働が認められようとしている現状を忘れられては居ないだろうか?
熱し易く冷め易い我々の性格は簡単には修正出来無くとも、その現実を忘れては為ら無い。そして、福島第一原発の事故処理だけで相当な問題を抱えて居る現状もである。既に3.11から7年も経つのに現場では一向に処理への目途も立た無いのだ。既に事故から1年経た時点で多くの問題点を露呈している。少し昔の記事だが次のレポートをご紹介しよう・・・
原発作業員が去って行く 福島第一原発“廃炉”の現実
NHK No.32692012年11月5日(月)放送から
n1
“廃炉”の現場 原発作業員は今
朝6時。福島第一原発に向かう作業員の志賀央(しが・あきら)さんです。地元・浪江町出身の志賀さんは、6年前から下請け会社の社員として原発で働いて来ました。原発までは2時間の道のりです。
志賀さん 「今日は普段通りなのでこんなものかなって。遅く為ると、もっと進ま無い」
n2
原発迄、およそ20キロ。途中、志賀さんは、防護服やマスク等の装備を整える為にこの施設に立ち寄ります。照明機器の設置工事をしている志賀さん。装備を全身に纏って行う作業は極めて厳しいものだと言います。
志賀さん「全面マスクして線量の高い場所に行く時は、マスクをしながら走ら無きゃ行け無かったり、慣れて居ない内は一寸厳しい。こんなので作業出来るのかなって感じで。実質、夏場30分・1時間遣ったら休憩しないと倒れるんじゃ無いかなって」
志賀さんの周りではこの半年で、10人近くが福島第一原発の仕事を辞めました。志賀さん自身何時まで、この仕事を続けるか迷って居ると言います。
n3
「将来何時まで原発で作業を?」
志賀央さん「それはもう判ら無いですね。本当に考えちゃうとその時には、違う所で遣った方が好いんじゃないかって思ったりする時もあるし、(地元の)友達とかの為にって云うのも可笑しいんですけど、一緒に為って頑張って行こうかなって思うんですけど。まとまらないです、先は」
n4
原発を去る作業員が相次いで居るのは何故なのか。その原因の1つが依然として高い放射線量です。地元の元請け企業の1つが取材に応じて呉れました。この会社では汚染水から放射性物質を取り除く設備の建設に携わって居ます。作業員がその日の仕事を終えて、福島第一原発から帰って来ました。
現場責任者「今日、被ばくは幾つ?」
作業員「0.02(ミリシーベルト)です」
会社では、作業員の1日の被ばく量を全て記録し確認して居ます。福島第一原発で被ばくする量は今でも他の原発での作業に比べ平均で10倍近くに為っています。国は作業員に対し1年間で50ミリシーベルト5年間で100ミリシーベルトと云う被ばく量の上限を設けています。これを超えると原発で働く事は出来ません。
この会社では20人居た作業員の内、被ばく量の上限に近づいた2人を福島第一原発の仕事から外すしかありませんでした。残された作業員も、被ばく量は日々上限に迫っています。
n5
元請企業 梅田義弘さん 「毎日綱渡りに近い部分もあるんですけれど、辞めて行く人配置転換を求める人が一杯居ます。どうにも為ら無いと云うか、しょうが無い事。現場としては非常に苦しい処で」
作業員が原発を去るもう1つの原因が待遇の悪化です。関西出身の40代の男性です。去年(2011年)の秋から下請け企業の社員として福島第一原発で働いて来ました。週5日の仕事で、当初月給は手取りでおよそ25万円。しかし、その後5万円減り20万円程度に為りました。更に、今年8月、会社から宿舎の旅館を出て行くと共に食費も自己負担する様求められました。
n6
「ここは特殊な仕事なので、働いている者にしたら辛いものがある。僕等みたいな人間が頑張って居るから第一原発が落ち着いて居る訳ですよ。そう云う人間に対して、そう云う状況に持って行くこと自体が理不尽だと僕らは感じています」
この待遇では被ばくのリスクを背負ってまで働く事は出来ない。男性は、今年9月同僚10人と共に仕事を辞めました。
n7
待遇の悪化の背景には何があるのか。私達(NHK)は東京電力から直接受注する元請け企業28社にアンケートを行い15社から回答を得ました。すると、廃炉に向けた工事の受注単価が最近下がる傾向にある事が分かりました。単価が下がったと答えた10社の内8社が理由として挙げたのが、東京電力のコスト削減に伴う競争入札の拡大。
受注競争の激化で単価が下がり、結果として作業員の人件費に影響が出ていると見られています。影響は、下請け企業の経営にも及び始めています。この会社では福島第一原発の建設当初から作業を請け負って来ました。この春以降、同じ規模の工事の受注金額が以前より3割程下がったと言います。
n8
下請け企業 横田善秀社長「うちとしては建設から携わって居たので廃炉まで関わって居たいと思って居るが、今のままでは会社の存続が危ぶまれると云う事です。地元の原子力発電所に携わった会社は同じ様な状況だと思う」
更に、このままでは将来、廃炉を担う技術を持った作業員が居なく為ると危機感を募らせる企業もあります。原発の計器の保守管理に当たって居るこの会社では事故後、福島第一原発で働く社員を採用出来ていません。
n9
下請け企業 名嘉幸照会長「今の状態では将来、若い人が原発に携わる人が居なくなる。これはハッキリしている。トータル的にマンパワーも予算も考え無いと、将来どう為るかと危惧している」
原発作業員 悪化する待遇
ゲスト野津原有三記者(社会部)
n10
事故の後、これ迄合計で2万人以上が作業に当たって居るんですが、どの程度入れ代わって居るかと云う正確な数字は把握されて居ません。しかし、取材をしていますと事故から1年8か月経った現在でも可成り入れ代わりは多いと感じます。
特に、放射線量が高い現場では3か月程で被ばく線量の限度に近づいて原発を離れるケースもあります。そして最近、理由として増えて居るのが待遇の悪化です。VTRで紹介した男性は例外では無く、地元のハローワークの求人票を見ても1日の給料が1万円前後。月に直して20万円前後と云うものも多く出されていました。
●作業員はどんな思いで居るのか?
作業員は地元・福島県出身の方が多く、自分達の作業が地域を守って居ると云う気持ちに支えられて居ます。厳しい環境で仕事をして居ますがその支えが失われて来ていると云う声が今出ています。例えば、国が直接行う福島県の除染の作業では、日当に加え国が金額を定めた1日1万円の手当が出る様に為って居ます。その結果、原発で働くよりも除染作業で働いた方が高く為ると云うケースも出て来て居るんです。高い線量の中、働く原発の作業員からは何故、待遇に差が出るのかと云う不満の声も出て居ます。
●作業員が去って行く 問われる東電
東京電力は、これまで人材の確保には問題が無いと説明して居ます。その根拠は福島第一原発で働く為に行う従事者登録を行った作業員の総数です。東京電力はこの数が当面必要な作業員の数を十分上回って居るとして大丈夫だと説明して居るんです。しかし、その説明には根拠が不足して居る事が今回私達の取材で分かって来ました。
原発作業員は足りるのか?
n11
今年7月、東京電力は廃炉作業の見通しを発表しました。「作業員の従事者登録の方が多めに為って来て居ります」今年必要な人数は1万1700人なのに対し、従事者登録をして居る作業員は2万4300人居ると説明。要員の不足は生じ無いとして居ました。
n12
しかし、福島第一原発では次々に新たな作業が必要に為って居ます。事故後、瓦礫の処理等を行っていた元請けの大手建設会社です。
「ここが、1班?タンクの組み立て?」
「タンクの組み立てですね。」
「で、もう1班はここ?」
東京電力から別の作業の要請を受け対応に当たって居ます。それが、大量の汚染水を保管するタンクの設置作業です。原子炉建屋の地下で増え続ける汚染水。これを汲み上げ保管する必要に迫られたのです。
n13
大成建設福島地区事務所 東 輝彦所長「間に合わ無い場合は昼夜で遣った事もありますし、作業員、労務の段取り、調達、職員も各支店からローテーションを組んで、皆が駆けつけて何とかミッションを達成すると云う事で遣って参りました」
n14
これまでに設置されたタンクは900基。今後も、相当数のタンクが必要に為ると見られています。当初、計画には無かった作業員が必要に為って居るのです。今、福島第一原発では実際にどれ程の作業員が働いて居るのか。東京電力の内部資料を元に作成した9月のある1日の作業員の配置図です。黄色で示して居るのが作業員。
n15
当初、原子炉建屋を中心に行われて居た作業は汚染水のタンクを初め敷地内の様々な場所に広がって居ました。1日に必要な作業員は3000人に上って居ました。東京電力が作業の増加や被ばく限度による交代等を考慮して改めて試算した処、1年間に必要な作業員は1万8000人である事が分かりました。これまで発表して来た1万1700人から6000人も増えて居たのです。
更に取材を続けると、或る事実が浮かび上がって来ました。東京電力が確保出来るとして来たおよそ2万4000人は事故以降、福島第一原発で働いた事のある作業員の総数でした。この内1万6000人は既に従事者登録を解除。先月(10月)の時点で登録している作業員は8000人しか居ませんでした。必要な作業員が増える一方で確保出来る作業員の数が当初の発表よりも少ない実態。
作業員は、本当に確保出来るのか。東京電力に問いました。
n16
東京電力 原子力・立地支部 山下和彦部長「或る一定の幅を以て不透明な部分があると思う。(作業員は)入れ替えが多くて、他の仕事に入って叉再登録と云う事をされて居ますので、全体としては(登録者数は)そんなに変わって行かないのかなと」
東京電力は、1日に必要な作業員は3000人の為、8000人を確保して居れば短期的には問題無いとしています。しかし、長期的には懸念がある事を認めました。
「必要な作業員が増えて行くと、危機感や懸念はどの様に考えていますか?」
山下和彦部長「長期の人材の確保ですね。これが相当に難しく為る可能性がある。従って、人材の確保と育成に力を入れていかなければいけない」
廃炉作業を監督する立場の資源エネルギー庁です。今後40年続くとも言われる廃炉作業を担う人材の確保について国として、どう考えているのか問いました。
n17
資源エネルギー庁 中西宏典大臣官房審議官「実態を踏まえて改善すべきは改善すべき点として認識しようと。今時タイミング的には遅いと云う事もあるかも知れませんけれど、我々は色々な所で言われて居る事に対して、現場の皆様の声に出来るだけ耳を傾ける事が第一歩だと思う」
ゲスト安念潤司さん(中央大学法科大学院教授)
●人材確保 把握が曖昧に為った訳は
登録作業員の数は増減しますし、被災地の一部では復興需要によって人手不足の現象もありますので、ナカナカどれだけの人員を確保出来るかを正確に予測するのは確かに難しい作業ではあると思うんです。
只、矢張り大きな組織と云うのはどうしても、本部と言いましょうか本社と現場との間のコミュニケーションが十分上手く取れ無いと。本社はどうしても、現場がどう云う環境で働いて居るのか把握していないと云う事がままありますので、それも矢張りあるだろうと思います。只、長期的には今、東京電力の方がおっしゃって居ましたが、ナカナカ不安があると云うことを率直におっしゃる様に為ったのは私は寧ろ好い事だと思います。
n18
●若い人材が集まら無いと云う状況
深刻な事態ですね。既に悟紹介がありました様に福島第一の廃炉だけで40年掛かると言われて居ります。それから福島第一だけでは無くて、今後経年した年月が経った原子炉が次から次からと廃炉に為って行く訳ですから、廃炉の為の技術者・作業員は幾らでも必要に為る訳です。
そうした中で若い人の参入が無いと云うのは大変深刻な事態だろうと思います。(今、作業をして居る方々の知識や経験は)国民全体に取っても宝と言って好い位私は大切だと思います。
●福島第一原発“廃炉” 何が求められるか?
難しい問題だと思うんですが、ややセンチメンタルな事を申し上げれば、例えば福島第一の場合あの現場の作業員の人々の努力のお陰で辛うじて冷温停止状態が保たれて居ると云う事を好く認識すべきでしょう。
我々は、彼等の努力に対して敬意と感謝を忘れてはいけないと思います。只、矢張り何と言ってもお金が必要です。賃金の水準は確保しなければいけません。一定の線量に為ると、職場を離れなければ為りませんから、その後の雇用も確保しなければいけません。
更には、長期的な健康の不安はどうしてもありますので5年・10年を睨んで健康管理をする・医療を提供すると言った体制を整えなければ為りませんが、何れにしても可成りのお金の掛かる事です。
●今後どの様にお金を確保して行くのか?
難しい問題ですね。お金はどうしても必要です。そのお金をどうやって調達するかは基本的には2つしかありません。電気料金を値上げして東電自身が確保する。もう1つ、それが出来無ければ税金を投入する。どちらかです。
しかし、現在既に東電は一度値上げをした訳ですし除染も廃炉も、それから被災者に対する損害賠償も皆東電が負うと。これはナカナカ長期間に渉って維持する事は出来無いでしょう。そうしますと矢張り国が関与せざるをえません。
元々、原発は国策として導入されたものですし国民全体が利益を受けて来た事ですから、その後始末も矢張り国民全体の課題として考えなければ行けないんじゃないでしょうか。(責任の主体が東電だけでは)私は、無理だと思います。
●東電と国の“廃炉”の責任は?
(東電は)改めて問われるでしょうね。これは、色んな形で示すしかありませんが矢張りマダマダ資産の売却や子会社の売却と云うものの余地はありますし、それに、何と言いましても修繕費等の外部からの調達と云うものの削減する努力も必要です。
更には、何と言っても一番大きい燃料費ですが、これをどう遣って安く調達するかマダマダ考え無ければ為ら無い余地があると思います。(最早、東京電力だけの問題では無く)国全体の問題です。兎に角原発の将来をどうするかと云う事のビジョンをハッキリ示して、その中で福島第一の処理をどの様にするかを位置づける必要があると思います。しかも、それはもう待ったなしの課題です。
以上
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