2018年06月21日
司馬史観とは? 司馬遼太郎の「張り扇史観」
幕末・維新の歴史の本を読む際に出て来るのが、作家・司馬遼太郎氏の歴史観と比較する人達が多い事だろうか。そこで司馬遼太郎の「張り扇史観」から引用して彼の歴史観の一部を紹介したいと思います。
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司馬遼太郎の「張り扇史観」
その1
戦前の国民的作家と言えば吉川英治だが、戦後の国民的作家は司馬遼太郎である。処が、私には抵抗があってこの国民的作家の作品をどうしても読み通す事が出来ないのだ。「梟の城」等の伝奇的な作品なら何とか読む事が出来る。けれども、それ以外の歴史長編と為るともうダメなのである。
ジャーナリズムの世界に於ける司馬遼太郎は、野球の世界での長嶋茂雄の様な存在で、誰からも好意を持たれて居る。二人とも敵を作ら無い温厚なタイプだから何処に行っても評判が好いのである。だが私は、その評判の好い処に引っ掛かるのだ。
司馬遼太郎の読者には健全な常識を備えた実務家が多い。一言で言ってしまえば、司馬遼太郎を愛読するのは平均的日本人なのである。だから、彼は読者の好みに合わせて歴史上の人物を軽量化しアイドル化する。彼の歴史小説を読んで居ると、イージーリスニングにしたクラシックを聴く様な気がして来るのだ。
森鴎外や中島敦の作品には歴史の重さや暗さがリアルに書き込まれて居る。この点は、松本清張、中山義秀、吉村昭等も同じで、歴史の残酷で非情な面を憚る事無く描き出す。事実、暗黒面を描く事無しに過去を浮かび上がらせる事は不可能なのである。
司馬遼太郎は明治を賛美し昭和時代を酷評している。だが、明治史は自由民権運動、社会主義者への惨たらしい弾圧によって血塗られて居る。為政者間にも、松本清張の「梟首」に見る様な陰惨な内部抗争が繰り広げられて居た。
だが常識的な歴史は、それらから目を逸らして明治日本を賛美する。我が司馬遼太郎も、俗説に調子を併せて明治を矢鱈に賛美するのである。彼は、アッケラカンとしてこう書くのだ。
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(司馬) ・・・維新後、日露戦争迄と云う三十余年は、文化史的にも精神史の上からでも、永い日本歴史の中で実に特異である。これ程楽天的な時代は無い。
無論、見方によってはそうでは無い。庶民は重税に喘ぎ国権は飽く迄重く民権は飽く迄軽く、足尾の鉱毒事件があり女工哀史があり小作争議がありで、その様な被害意識の中から観ればこれ程暗い時代は無いであろう。しかし、被害意識でのみ観る事が庶民の歴史では無い。明治は好かったと云う。その時代に世を送った職人や農夫や教師等の多くが、そう言って居たのを私共は少年の頃に聞いて居る。
司馬遼太郎は明治史の暗黒面を承知の上で、その時代を生き残った庶民が「明治は好かった」と言って居たと云う理由で、明治を明るい楽天的な時代だったと云う。
彼は、常識に寄り添い体制に寄り添い歴史の暗部に蓋をして、明るくて心地好い「庶民向けの」歴史パノラマを繰り広げて見せる。明治物に限らず彼が作品に取り上げる主人公は、日本人好みの英雄であり歴史上のスターであり日の当たる場所に居る成功者達だ。
彼はそれ等の人物に新しい解釈を施し、現代風にリフォームされた人物像を読者の前に提供するけれども、基調は相も変わらぬ通俗的な歴史ロマンなのである。彼が既製の歴史観を大きく転換した事は一度も無い。
では、彼の歴史観は、如何して既成観念に媚びる形に為ってしまうのか。歴史上の権力闘争や合戦を描くに当たって、状況を上から俯瞰するレフェリーの視点に立つからなのだ。
レフェリーの立場で作品を書けば、勝者の勝因・敗者の敗因を記す事で結局勝者の行動を正当化する事に為る。作者は常に勝者の側に立って全局を見通す事に為り、関ヶ原合戦を描けば家康の視点が第一義的に優先され石田三成は失敗者として位置付けられる。かくて作者は時代の流れを追認する体制派に転落するのである。
鴎外・中島敦の歴史小説を読むと悲運に倒れた歴史上の人物が主人公に為る事が多い。そして、それ等の作品では局面が敗者の側から見られて居る。読んでいて、やり場の無い悲痛な印象を受けるのは、作品がハッピーエンドで終わら無いからだ。
が、司馬遼太郎の作品は常にハッピーエンドで終わって居る。彼の本を読んでいると、自分が歴史を俯瞰する賢者に為った様な気分に為り、勝者との一体感に包まれながら明るい気持ちでページを閉じる事が出来る。
私は司馬遼太郎の文体から小賢しさを感じる。そして、その作品全体からは夜郎自大の増長慢と云った印象を受ける。しかし、世間では頻りに「司馬史観」なるものを持て囃すのだ。私は世に言う「司馬史観」と云うものを研究してみようと思い立って世評の高い「坂の上の雲」を読んでみた。そして読み終わって、もしかすると自分は司馬遼太郎を過小評価して居たのかも知れ無いぞとチラッと思った。
この作品は正岡子規と秋山兄弟の青春と重ね合わせて、近代日本の青春を描いて居ると云う事に為って居る。「坂の上の雲」と云う題名も、子規と秋山兄弟が坂の上の輝く雲を仰ぎ、明るい未来を目指して闘った事から付けられたと云う事に為って居る。
だが、坂の上の太陽や青空を目指したと云うのなら分かるけれども、坂の上の雲を目指したと云うのでは、少々イメージ的に可笑しくは無いか。雲は矢張り明るい空を隠す邪魔物であり、常識的にはマイナス要因なのだ。
私がこうした印象を持ったのは、作者が記して居る日露戦争後の秋山兄弟の身の振り方に奇異の感を抱いたからだった。司馬遼太郎は乃木希典と比較して秋山好古の事をこう書いている。
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(司馬) 乃木は身を犠牲にすると言いつつも、台湾総督を務めたり、晩年は伯爵に為り、学習院長に為ったりして、貴族の子弟を教育した。
しかし好古は爵位も貰わず、しかも陸軍大将で退役した後は自分の故郷の松山に戻り、私立の北予中学と云う無名の中学の校長を務めた。黙々と六年間務め、東京の中学校長会議にも欠かさず出席したりした。従二位勲一等功二級陸軍大将と云う様な極官に上った人間が田舎の私立中学の校長を務めると云うのは当時としては考えられぬ事であった。
第一、家屋敷ですら東京の家も小さな借家であったし松山の家は彼の生家の徒土屋敷のままで、終生福沢諭吉を尊敬しその平等思想が好きであった。好古が死んだ時、その知己達が「最後の武士が死んだ」と言ったが、パリで武士道を唱えた乃木よりも或いは好古の方が極自然な武士らしさを持った男だったかも知れ無い。
司馬遼太郎は、更に秋山好古の弟、秋山真之についてこう書く。
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(司馬) 彼は海軍を辞めて出家しようとし、その事を部内の人々から留められると自分の長男の大(ひろし)に僧に為る事を頼み、現にその長男は無宗派の僧に為る事によって父親のその希望に応えた。
この天才は、敵の旗艦スワロフやオスラービア等が猛炎を挙げて沈もうとして居る時、その事に勝ちを感ずるよりも、明治を支えて続いて来た何物かがこの瞬間に於いて消え去って行く光景をその目で見たのかも知れ無い。
「坂の上の雲」の主役を務めた秋山兄弟は、日露戦争後、軍と政府に背を向け時代に逆らう様な生き方をして居る。二人は自らの過去を否定し日本の将来に寧ろ絶望して居るかの様に見える。
司馬遼太郎が、日本に絶望した秋山兄弟を念頭に置いて作品を書いたとしたら、坂の上に浮かんで居る雲は希望の象徴では無くて凶兆としての雲なのである。この考え方が正しければ、司馬遼太郎は私が想像して居たよりも遙かに明晰な作家だったと云う事に為る。しかし、本当にそうなのだろうか。
トルストイは「戦争と平和」を書く事によって、戦争を潜り抜ける事で変化する人間群像を描いた。「坂の上の雲」に描かれた秋山兄弟も戦後に全く別人に為った。司馬が兄弟の回心、二人の内面的な変化に焦点を置いて「坂の上の雲」を書いたら、或いは上質の文学作品に為ったかも知れ無い。
処が、司馬遼太郎は秋山兄弟の内面に殆ど触れていない。彼は、作品の冒頭から兄弟に関する俗耳に入り易いエピソードを並べて、彼等が如何に優れた才能人であったかを強調するだけだ。だから、作品の後半に二人が戦後、軍国日本に背を向けたと云う記述が出て来ると如何にも唐突だと云う感じを受けるのである。
好意的に見れば、作者は最初秋山兄弟の挫折を描く事によって日本の挫折を描く積りだったかも知れ無い。が、日露戦争に付いて調べている内に戦史的興味の方が強く為って、登場人物の人間的成長を書く事を放棄したとも考えられるのだ。
実際に「坂の上の雲」の半分以上が日露戦争に関する戦史的叙述に費やされている。作者はこの作品の為に準備期間を含めて40代の10年間を費やしたと云う。と云う事に為れば、司馬遼太郎の歴史観や人間観を知るには、子規や秋山兄弟の描き方よりは日露戦争の描き方を見た方が好い事に為る。
その2につづく
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梅雨が明けたら遠くまで走ろうね!
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