明治維新と大東亜戦争　その2: 素敵な「自転車と家庭水族館」

2018年05月20日

明治維新と大東亜戦争　その2

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　この国の異常な事

　結局、我が国の近世・近代史は二度に渡って戦の勝者が書いたまま今も尚検証されて居無いと云う事であり、先ずこの事が異常。実は、大東亜戦争敗戦と云う民族の悲劇は、その基因(そいん)を明治維新に求める事が出来る。この事に私は確信を持って居る。
　既にこれ迄の著作でその事を示唆して居るが、明確に明治維新と大東亜戦争への流れを整理する作業はこれからの仕事として残されて居る。

　尤（もっと）も、明治維新と一言で云うが、その様な名称の事件や政変は日本史上の何処にも存在しない。(明治維新とは、昭和の時代に起きた5.15や2.26事件を起こした人々が、その行動を昭和維新と掲げ、今まで御一新と言われた政治改革を明治維新と後の人がなずけたもの)こう云う事もこの百五十年近くの歴史が全く検証されて居ない事の一つの証左であろう。
　それは最早、怠慢と云う域を超えて居り犯罪的であると言っても好いのではないか。この為に、国家が独立を失い異民族に占領統治されると云う時代を経ても尚、官軍教育＝薩摩長州史観（薩長史観）は生き続けて居るのである。

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　私達は、薩長史観による明治維新とGHQ統治と云う二つの大きな歴史を検証すると云う宿題を放置したままなのだ。私は『明治維新と云う過ち』以降の著作に於いて、前者に付いて、即ち明治維新に対するこれ迄の認識・理解に異議を唱え先ずこれを検証しようとして居る。
　それが正しく出来れば「二度と過ちは繰り返しません」と云うフレーズの過(あやま)ちも、もう一つの未検証歴史である戦後アメリカ統治に於けるアメリカと戦後日本人の過ちも鮮明に浮かび上がらせる事が出来るのでは無いだろうか。

　私は、出来るだけ長い時間軸を引いて歴史を観察し、考える必要性を事ある毎に強調して来た。と為れば明治維新が民族としての過ちであったかどうかを考えるに付いては、その前の時代迄、即ち江戸期迄その時間軸を延ばす必要がある。
　明治新政権がその全てを固陋(ころう)・陋習(ろうしゅう)に満ちた時代として江戸期を全否定した事こそ明治維新最大の過ちなのである。

　　　　　

　

　　　　　　　　　　　大阪夏の陣　屏風絵　　　　

　「元和偃武(げんなえんぶ)」とは何か

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　例えば、江戸期程長く平和を維持した事例は世界史に存在しない。それは、偶々（たまたま）そう為ったのでは無く「元和偃武（げんなえんぶ）」と云う時代のコンセプトを設定したからである。では「元和偃武」とは如何云う事であったのか。
　又「参勤交代」が、諸藩の経済力を弱め幕府統治の維持を可能にしたと云うが、その行列が華美に為ら無い様に頻りに触れを出したのは幕府である。では、参勤とは諸藩に取ってどう云う役割を果たしたのか。
　同時に「鎖国」が政権を永らく維持させたと云うが、幕府は果たして国を鎖（とざ）して居たのか。「江戸四口（よんくち）」と言われる対外窓口は何故存在し、どう云う機能を果たして居たのか。
　その他、江戸期の流通を支えた五街道の整備・海運の主役北前船（きたまえぶね）・通信網の役割をも果たした宿駅制等々、江戸期の社会システムは私達が教えられた事と違って驚くべき独自性を持ち、世界史的に見ても高度なものであった。

　学術面に於いても、決して浮世絵と歌舞伎だけが江戸では無い。近年、義務教育で円周率を3とする「ゆとり教育」が問題に為ったが、円周率を3でも好い等と云ったら、砲術指導のメッカであった韮山（にらやま）代官所江川塾の塾生は腰を抜かして居たであろう。
当　時の和算のレベルは世界最高水準にあった事が分かっている。それは、ゆとり世代のみ為らず並みの平成人の及ぶ処では無いのだ。そもそも識字（しきじ）率が、世界水準を遥かに凌駕（りょうが）して居た。江戸期の識字率が75パーセントであったのに対して、世界に冠たる侵略国大英帝国のそれは20～25パーセント程度であったと推定されて居る。

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　通貨交渉でハリスの上を行った水野(みずの)忠徳(ただのり)の論理展開力

　幕末の通貨交渉で見せた水野忠徳の論理展開力は、アメリカのハリス・イギリスのオールコックにコンプレックスさえ感じさせ、咸臨丸(かんりんまる)の操船を指揮したアメリカ海軍ブルック大尉は、航路計算をして居た小野友五郎の測量・天文知識のレベルの高さに驚愕した。
　更に、ノブレス・オブリージュと云う社会的佇（たたずまい）が自分達固有のものであると信じて居たヨーロッパ騎士階級は、武士道と云う精神文化に同じ様に、或いはよりシビアに同じ態度が存在する事を知り、矢張り驚いたのである。

　これ等の、ホンの一部の事例が既に、江戸期とは決して全否定されるべき時代では無い事を示して居る。これを成立させた政治システム・経済システム・そして、社会制度・学術レベルを詳しく見て行くと、その社会全体に決定的な一つの思想が堅持されて居た事が分かるのである。
　それは、江戸期の社会を根底で支配して居た思想が、サスティナブル・・・即ち、持続可能な仕組みを尊重して居たと云う事実である。
　私は世界は「江戸」に向かって居ると象徴的な言い方をするが、産業革命以降の近代工業社会が、様々な矛盾・欠陥をアカラサマにし、それによって世界の主役であった西欧文明が明らかに終焉を迎え様として居る今、世界はそれに代わる「よすが」を求めて居るのである。

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　解説　元和偃武(げんなえんぶ)

　元和1 (1615) 年，大坂の陣が終り豊臣氏の滅亡後平和な時代に為った事。その時の年号を取って元和偃武とした。偃武とは武器を伏せて用い無いこと。しかし元和以降幕末まで全く紛争が無かった訳では無く，寛永 14 (37) 年の島原の乱や慶安4 (51) 年の由井正雪の乱 (→慶安事件 ) 等色々な政情不安はあったが，幕藩体制そのものを揺るがす様な大規模な反乱は見られ無かった。その点で元和偃武は歴史的意義を持つと言える。

　　　　　　　