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2019年01月11日

山形の民話 3 (全68話)




 





    12-15-20.jpg 山形の民話


   

 その6『金神様』(かねがみさま)



 むかしあったけど。あるところに若(わか)い夫婦(みょうと)がいてあったと。夫(とと)なる男は大層(たいそう)臆病者(おくびょうもん)で、晩(ばん)げには外の厠(かわや)へ一人で小便(しょうべん)にも行けないほどだと。
 妻(かか)は夫の臆病を治(なお)してやるべとて、夕顔(ゆうがお)のデッコイのを六尺棒(ろくしゃくぼう)に吊(つ)るして門口(かどぐち)さ立てて置いたと。




     1-11-1.jpg 金神様挿絵:かわさき えり


 
 その晩げ、夫が妻ば呼(よ)ばって「厠までついて来てけろ」と言うので、妻は「悪(わる)いども、今日は一人で行って呉(け)れ」と言うた。
 夫が仕方(しかた)なく外へ出ると、真っ暗(まっくら)な門口で、デッコイ何やらが立ちふさがって通せんぼしていた。ヘナヘナァと腰(こし)くだけて「オ!大入道(おおにゅうどう)だぁ!」と叫(さか)んだと。妻は、ウフフと笑(わら)って門口さ行き


 「よく見ろず!夕顔だ!ホレ!恐(こわ)い、恐いと思うから妙(みょう)な物に見えるんだ。この世(よ)の中さ、化(ば)け物なのい無いんだ!」

 と、言うて聞かせたと。それからと云うもの、夫は妻の言うことを信(しん)じて、
 「恐くない、恐くない。化け物はいない、化け物はいない!」
と唱(とな)えるようになり、だんだんに臆病で無くなったと。


 




 その頃(ころ)、向(む)かいの山で毎晩(まいばん)げ、怪(あや)し気な光がボオーッと灯(とも)っておったと。村の人たちは寄(よ)るとさわると
 

 「狐火(きつねび)だべか?」
 「いや、鬼火(おにび)でねか?」
 「人魂(ひとだま)かもしんね!」


 と噂(うわさ)し合(お)うていた。けれど、気味悪(きみわる)がって誰(だれ)も確(たし)かめに行かん。夫なる男が、

 「ホンじゃ、俺(おれ)が見届(みとど)けてくるべえ!」

と言うた。皆は「ヤア、臆病者が大口(おおぐち)たたいた!」と言うて、ゲラゲラ嘲笑(わら)ったと。
 嘲笑われても夫は向いの山をガサラ、ゴサラ分け入って登(のぼ)って行った。そしたら大っきな松(まつ)の木があって、その傍(かたわ)らに小っさな小屋(こや)があった。光はその中から灯っていたのだった。
 小屋の内(なか)には一人の婆(ば)さんが居て、苧桶(おおけ)を構(かま)えて苧績(おう)みしていだったと。夫が入って行って、


 「毎晩げ光が灯っていたのは、あんたの仕業(しわざ)だったか?」

と訊(き)くと、

 「ヤレヤア、やっと来たか。わしは金(かね)の精(せい)だ。この下に金の入った瓶(かめ)が埋(う)まっている。埋めた者も絶(た)えた。それから随分(ずいぶん)長い間埋まったままだった。誰かに見つけて貰いたくて光を出していたが、恐がってか誰も来んかった。金はお前に授(さず)ける。明日、ここの下を掘(ほ)ってみろ!」

 と言うた。 そして婆さんは「これでオレの願いも叶(かな)った」と言うて、たちまち光の尾(お)を引いて夜の空を飛(と)んで行って終(しま)ったと。  
 夫は、その場所へ一本の柴(しば)を差(さ)して帰り、妻さ  「アイツは金神様だった・・・」と語(かた)ったと。




      1-11-2.jpg 金神様挿絵:かわさき えり


 次の朝、早くに起(お)きて妻と向いの山さ行くと、昨日(きのう)の小屋は無(な)くなっていて、差しておいた柴が一本あったと。そこを掘ると、大っきな瓶(かめ)があって、中には大判小判(おおばんこばん)がギッシリと詰(つ)まっていたっけど。それを持ち帰り、臆病者だった夫とそれを治した妻は、一生(いっしょう)福々(ふくぶく)しく暮(く)らしたと。

  とうびん。



 





 【管理人のひとこと】


 賢(かしこ)い嫁さんを貰うと、何かと福が訪れるものだ。嫁は、夫の臆病を直し勇気ある男に変貌させた。その上、大判小判がザックザック・・・と、お金持ちに為ってしまった。と云うお話でメデタシめでたしなのだが、世の中そんなに上手く行けば万々歳。実にこの夫婦にあやかりたいものだ。だが「好い嫁に巡り合いたい!」と黙って待っていても現れはしないもの。先ずは自分から積極的に動くしかないわな・・・



 




 
 その7『でんぽう狐』(でんぽうぎつね)



 むがし、むがし。秋田(あきた)ど山形(やまがた)の間ば状箱(じょうばこ)担(たな)いで走る飛脚(ひきゃく)いだった。ほの飛脚だば、秋田の殿様(とのさま)の書状(しょじょう)ば持って走って山形さ行き、山形の殿様の返事(へんじ)ば貰って、走って秋田さ戻(もど)る。朝が秋田で昼(ひる)が山形、夕方には又秋田ていうよだな。一日で往復(おうふく)してしまうけど。/span>


    1-12-1.jpg でんぽう狐挿絵:かわさき えり

 
 ある日な、この街道(かいどう)ば走って行ぐ飛脚の姿(すがた)見で、茶屋(ちゃや)の爺(じい)、首傾(かし)げたど。

 「婆(ばあ)! アレぁきっと狐(きつね)コだべ。人の姿形(なり)だども、様子(ようす)変(へん)でねか?」
 「どれえ?アリャ状箱で通りの人を払(はら)った。飛脚はアンナこたあせん。爺の見立(みた)て通りだ!」
 「そんだか?ヨッシ鼠(ねずみ)ば捕(とら)えで油(あぶら)で揚(あ)げろ。それば糸縄(いとなわ)コで軒(のき)さ吊(つ)るしてみるべ。きっと喰(く)いに来るさげて」


 て、爺と婆ふたりして油鼠(あぶらねずみ)ば作った。して、油鼠ば軒下(のきした)さ吊り下(さ)んげでだど。
 ほの飛脚、状箱ば持って茶屋の前さ差(さ)しかがったけ、油鼠の匂(にお)いで、ハッと止(と)まったけど。ほんでも思いなおして、直(す)ぐに行ってしまった。爺と婆、ほれば隠(かく)れで見でだもんで、

 「ホラ、足が止まったべ?やっぱり人の形(なり)していでも油鼠が喰いでじゃ、畜生(ちくしょう)だもん。キット戻って来るさげ、油鼠ばそのまま軒さ吊るしておぐべ」

 て、様子見ることにしたけど。飛脚に化(ば)けた狐、油鼠のええ匂いするもんで、狐の本性(ほんしょう)が戻ったべ。三里(さんり)も走ったんだが我慢(がまん)さんねくて、喰いでくて喰いでくて、戻ったど。ほして、軒下さ吊り下んげであった油鼠ば、 パクッと喰らいついだ。


      1-12-3.jpg でんぽう狐挿絵:かわさき えり


 「ほれっ、来たどぞ!」

 て、爺と婆ぁ待っているべ。棒(ぼう)でワッチ、ワッチと叩(たた)がれて、とうどう殺されてしまったど。狐コどしても「アレ喰えば、見破(みやぶ)られるな」て、分がってでも喰いてくでだど。

 昔にこんなことがあったから、終(おわ)りが分がっていても、つい、やってすまうようだな事を喩(たと)えで、「油鼠は三里戻っても喰う」て、いうなだど。

 とんびすかんこ ねっけど。



 




 【管理人のひとこと】


 お爺さんとお婆さんにボコボコにされて殺されてしまった狐・・・何か可哀想だね?秋田と山形を往復する脚の速い飛脚が在ったんだね。それに化けて狐が何か悪さをしたのかな?それと、ネズミの天ぷらが狐の大好物とも知らなかった。人は、大好物を前にしても直ぐに口に入れてはいけない・・・と云う事かな?グッと堪(こら)えることも必要なんだね。
 



 その8 『沼の貸し膳』(ぬまのかしぜん)



 むがす、あるどごろに貧乏(びんぼう)な爺(じい)さまと婆(ばあ)さまがいだど。爺さまは毎日山で柴(しば)を刈(か)り、それを町で売って暮(く)らしを立てていだったと。
 ある年の暮れ、正月支度(したく)の銭(ぜに)コ稼(かせ)ごうとて、柴をいつもより多めに背負(しょ)って売りに行っだど。
 「柴コー、柴コいらねすかー!」
 とて、町の中を歩いたが、誰(だれ)も呼(よ)ばって呉れる人アねがっだど。仕様(しよう)がねぐ、来た道たどって、山の沼コの端(はじ)まで来たら、重くて息が切れだど。

 「家さ持ち帰ってもすかたなス。沼コの主殿さ呉るべ」
 「申(も)す、申す、沼コの主殿や、お正月の柴コでも使って呉さい!」


 とて、バシャリン投げ込んだど。みるみる柴コァ沈んだど。爺さま、それ見届けて、サテ帰るべとしだら、うしろで、


        1-12-4.jpg 挿絵:かわさき えり



 「もすもす、爺さま、待ででござれ!」

 とて、止める人あったけど。爺さま振り返って見っど、沼コの波の上さ娘の神様(かみさま)あらわって、

 「爺さま、爺さま、お正月の柴コありがたかっだ。ホンで、爺さまさ、お礼返すべどで呼ばっだ。今夜、お年越(こ)すでもあんべす。ひとつ御馳走(ごちそう)のお膳(ぜん)コでも授(さず)げんべ」

 とて、二揃えの朱塗(しゅぬ)り黒塗(くろぬ)りの膳椀(ぜんわん)さ、ンまい物ば山盛(やまも)りして呉たけど。爺さまが夢のようで動転しているど、神様ァ、

 「お膳コ使いあげたら、また、この沼コさ返して呉ろ。また用立てっから!」
 とて、パラリ消えですまたけど。爺さま、
 「尊(とうと)い、とォとい」
とて拝(おが)んで、お膳持って帰り、婆様と二人めでたいお年越しのお振舞(ふるま)いコしたど。


      1-12-5.jpg 挿絵:かわさき えり



 明げでお正月になっで、またの御馳走ばいただぐべとて、爺さま沼コさお膳返すべどしたら、婆さま欲張(よくば)って、膳椀を返すの惜すくなって、
 「爺さま、お前ばり返してござれ」
 とて言ったど。爺さま、仕方なく一揃いのお膳だけ沼さ返したずも。そすたらば、それ沈んだぎりで、なんぼ待っででもお正月の御馳走盛ったお膳コァ呉んねがったど。家さ帰ってみっど、婆さまのお膳もお椀もいつの間にか消えてすまっだど。爺さまァ、神様の言ったこど守らねさえ、罰(ばち)当っだど。
 
 ドンビン バラリ。



 





 【管理人のひとこと】


 神様の折角の好意を欲張った為に、無に為ってしまうお話です。この様なお話には、色々なシチュエーションが在りそうですね。サテ、日頃の行いが悪いので私はそれほど神様からの好意を受けたことがありません。もし、その様な機会に恵まれたら「欲張らず」有難く感謝してお受けしましょう・・・もし、昔話に何かご意見のある人は、ぜひ投稿ください。お待ちします。









 









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