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2018年12月20日

民話「ゆきおんな」の考察



 





 「雪女」ゆきおんな


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 「ゆきおんな」の話に少しばかり心が残りました。このお話はそもそも、日本各地に残る民話の中から、小泉八雲(ラフカデヨ・ハーン)が取り上げた民話集「怪談」の中のお話でもあります。そのあらすじを簡単にご紹介しましよう・・・


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 昔々、寒い北国でのお話です。茂作と巳之吉と云う猟師の親子がいました。二人は山が雪でスッポリ覆われる頃になると猟へ出かけるのでした。その日も二人は猟をしていましたが、次第に吹雪が強くなり、ドンドン雪が積り、このままでは遭難しそうでした。
 そこへ天の助けか一件の猟師小屋が見えたので、二人はそこで吹雪が去るまで休むことにします。囲炉裏に火をくべて冷えた身体を温めます。一日中歩き疲れたせいでグッタリ疲れ、直ぐに眠りこんでしまいました。

 余りに強い風だったので戸がガタンと開き、ピューと風が吹き込んで来て、囲炉裏の火がかき消されます。
夜中、余りの寒さに息子の巳之吉が目を醒まします。


 「ウウゥー、なんちゅう寒さだ!」

 手はかじかみ、体の芯から凍えるようです。処がどうも様子が変です。小屋の中に二人の他に誰か居る様です。見ると、真っ白な肌をした女が寝ている父、茂作の顔を覗き込んで「フーッ・・・」と息を吹きかけています。すると見る間に茂作の体は凍えて行き、寝たまま息をひきとってしまいました。



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 「ア、ありゃあ雪女…!」

 巳之吉は逃げようとしますが寒さと怖さで体が動きません。女はユックリ近づいて来ます。処が、怖がる巳之吉に女は優しく言います。


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 「貴方は未だ若い。それにとても綺麗な目をしています。助けてあげます。但し今夜のことを人に話したら、その時こそ貴方の命はありませんよ」

 そして女はスーーッと消えて行きました。


 




 ハッと気がつくと、朝でもう雪は止(や)んでおり、かたわらで茂作が冷たくなっていました。山をおり、茂作の葬式を出します。巳之吉は自分が火を絶やした為に茂作の命が失われたことを深く悔やみますが、あの女のことは誰にも話しませんでした。



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 それから一年ほどたったある大雨の日のこと。巳之吉が仕事から戻ると家の前で一人の女が雨宿りしていました。遠くからでも判るほどその姿はホッソリと美しく、うつむいた横顔は何とも言得無い好い色香を放っています。
 フッと女が顔を上げます。その顔に巳之吉は見覚えがありました。こんな美しい女を見たのは後にも先にもあの時ばかりです。吹雪で意識がボヤけていたとは言え、雪女の顔を忘れるはずはありませんでした。


 「雪女が、俺を殺しに来た!」

 巳之吉は真っ青になって立ち尽くしますが、女が話しかけます。

「アノもし、この雨で困っています。どうかしばらく雨宿りさせてくれませんでしょうか?」

 巳之吉は女が何を考えているか恐ろしかったのですが、さしあたって危険は無さそうだし、それに自分は雪女との約束は破らず人に話してはいないのだからと、女を家に招き入れます。


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 女は「お雪」と名乗り、親兄弟に死なれて一人身になった境遇など、色々と打ち明け話をします。話しているうちに二人は心を寄せ合い、一緒に暮らすようになり、マア色々あって夫婦になります。こうして幸せな月日が流れて行きます。それでも時々はお雪が雪女かもと思うことがありました。
 お雪は暑い日差しを受けるとフラフラ倒れてしまうのです。巳之吉はそんなお雪を優しく抱きとめながら、心の何処かで「もしや雪女では」と疑うのでした。しかしお雪は巳之吉を殺す処か、とても好いお嫁さんでした。掃除はすみずみまで行き届き、タタミのあわせ目のゴミまで爪楊枝で掻き出すのでした。
 二人の子供も生まれ幸せな毎日に、何時しか巳之吉は「お雪が雪女でもそうで無くても、どっちでも好い」と思えて来ました。



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 或る吹雪の晩のことです。巳之吉はお酒を飲んでおりまして、お雪の横顔を見ながら好い気分になっていました。

 「アア、こうやってるとあの不思議な晩のことを思い出すナァ・・・」
 「不思議な晩?」
 「ん?親父が死んだ晩のことさ…」


 と言いかけるともう止まりません。巳之吉は昔雪女に会った夜のことをすべて話していました。


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 「マア、今にして思えばオラの見間違いだったんだろうな。 だども、お前を見ていると、何だかあの夜の雪女に似ている気がして、 ちょっと疑ったりしてたこともあったな。へへ」

 するとお雪は

 「あなた、とうとう喋ってしまったんですね」

 スッと巳之吉を見つめます。

 「エッ?」
 「あれほど喋ってはいけないと言っていたのに」と、お雪の着物がスーと白く変わっていきます。
 「おい、待ってくれよ、ナア冗談だろう。すまない今のことは忘れてくれ。な、酒の上のことだ。そんな、俺はどうでも好いんだ雪女だろうと何だろうと。お前が一緒にいてさえくれれば!」
 「あなたと過ごした楽しかった毎日は忘れません。本当にしあわせでした」


 その時バタン戸が開いてヒューと吹雪が吹き込んで来ました。そしてお雪の姿は消えて無くなりました。
残された巳之吉は、何時までもボーゼンとへたれこんでいました。


 おしまい


  






 この物語の疑問点


 質問 昔話 雪女は何故爺さんを殺して傍にいた若者の所に嫁に行ったのか、何故口止めをしたのか、何故殺さず消えたのか、全然判りません。何一つ納得が出来ません。
 爺さんを殺した理由、若者が生き残った理由。嫁に来た理由。口止めして約束破られて逃げる位なら最初から嫁にくんなよ。話が極端過ぎて全く理解できないので判り易く解説して下さい。宜しくお願いします。



 ベストアンサーに選ばれた回答
          
  pet********さん 2014/2/2401:45:18


 小泉八雲(ラフカディオ・ハーン)の怪談、雪女によれば、雪女は吹雪中の小屋に突然現れて、茂作(老人)も巳之吉(若者)も両方殺そうとしていました。殺意の理由は判りませんが、そもそもの性質に「自分のテリトリー内に人間を見つけたら殺す」と云うのがあるものなのではないかと思います。
 基本、民話の中の雪女は真夏や南国や街中にノコノコ出現して吹雪を起こしたり人を凍死させたりはしません。雪のふる中に現れるにしろ、雪女が雪を呼ぶにしろ、雪女が雪女として活動し力を振るうのは大体が冬であるし北国や雪山です。

 大雪がそこに偶々居合わせた生き物の命を奪うことがあるのに対して「お雪よ、どうして命を奪う?」と疑問を向けても仕方がありませんよね?雪女も自分のテリトリー内に人間が居たら、遭難させたり凍死させたりすることに為るのは「だって私、基本的にそう云うものですから、何でかって聞かれても・・・?」って感じではないかと思います。
 そう云う訳で雪女は、何時吹雪いても可笑しくない山に仕事で遣って来て、結局帰れ無くなり、暖をとる為の火を起こすことも出来ない(囲炉裏も何も無い)粗末な小屋に泊まることに為ってしまった二人の木こりの処に現れ、眠っている二人とも殺す筈でした。処が、茂作は殺され巳之吉は殺されなかった。何故か?

 先ず茂作は直ぐに眠りこんでしまったのに対し、巳之吉はナカナカ眠れずにいました。結局ウトウトしてしまうのですが、閉めた筈の戸が開いて吹き込んで来た雪が顔にあたったので目覚めると、雪女が茂作を殺している処だったのです。
 固まってしまった巳之吉に接近して来た女は、暫く怖い目をしていましたが、フッと表情を緩めて「お前もあの年寄りのようにしてやろうと思ったが、お前はとても若い(18歳)ので、どうも憐れに為った。それにお前はナカナカ綺麗だから、今は許してやることにする」と言います。

 つまり、巳之吉が殺され無かったのは、死ぬには余りにも早過ぎる若さだと思われたことと、"綺麗"だったから。綺麗って云うのが美形のことなのか、若い健康体で人間性もきれいと云う事なのかわかりませんが、兎に角、雪女に殺すのには惜しいと評価された訳です。
 茂作が先に殺されたのは、年齢順に選ばれたのか、眠りの浅い巳之吉よりも深く眠っていたことが関係するのか・・・?

 嫁に来た理由もハッキリとは判りませんが、雪女が巳之吉に好感を持ったからなのかなと思います。「今は命をとら無いが、誰にも、親にも絶対に話すな。話したら殺す」と言い渡しているので、監視する為に潜入して来たとも考えられますが、雪女がお雪として巳之吉の前に現れるのが小屋の件の一年後なので、ちょっと考えてしまうところです。

 事件から時間が経って恐怖感や実感が薄れた頃に禁を破る可能性を考えたのかも知れませんが、嫁に為ってまで身近にいないと口外されたかどうかが判らないと云うのも、そんなものかしら?と思うので、恐怖体験から時間が経った後、信頼して心を許した相手に秘密を口外するかどうか試す、監視する目的がゼロではないとしても、お雪としての巳之吉とのやりとりもふまえて考えた時、シンプルに好意が芽生えてと云う方が納得出来る様に思います。
 
 巳之吉が雪女=お雪と知らずについ暴露してしまった際にも、巳之吉は「今でも、夢か現か定かじゃない、アレは夢だったのかどうか?」と云うとても曖昧な暴露の仕方なのに、雪女の反応が凄いので、そのタブーは何か絶対のことだったみたいです。理由は不明。
 何で?どうして?何て人間に納得出来る様な理由を求めること自体が違うことなのかも知れないけど、それにしては、結局「子供達(10人生まれました!)を思えば、お前を殺せない」と、巳之吉を約束通りには始末しないので、益々好く分から無い。詰まり好きなんでしょ?みたいに思えてしまうとこがある。

 雪女は基本人間を殺すが、巳之吉は若い身空の綺麗な人だったから個人的に思う処(気に入った?)があって殺さず嫁にも来た。好意と監視の両面であり得ると思うけど、嫁として関わり、子供を10人も作って、結局約束破ったのに殺さ無いと云う事を考えると、監視より感情的な部分がかなり大きいと感じます。

 以上




 素敵な「自転車と家庭水族館」/span>https://fanblogs.jp/yorichan5000/ 管理人のひとこと


 確かにこのお話には色々な謎の部分が含まれていそうですね。それは、聞き手によって色々な想像を与え貴重と思われる数々の教訓も含まれていそうです。
 例えば、秘密を守る約束の大切さであり、男女の愛情の機微であったり、単に打算的な人間の営みであったりします。特に雪女の心を考えると色々な想像が出来ます。

 ・・・山の中の吹雪の晩に出会った若く逞しい男。自分の存在を知られたら相手は生かしておいては為らぬ定め、仕方なく若い男はそのままにして親父を殺して去った。が、どうしても、その男の事が忘れられず雪女はその後男に遭いに行きます。そして、話すうちに打ち解け夫婦と為るのです。子をもうけ幸せな生活を送りますが、そんな或る日・・・と云う訳で、スッカリ安心しきって居た男は、大切な約束を破ってしまうのですね。これも身の定めです、愛する子供の為に男を殺しはせずに只黙って立ち去って行くのです。
 幸せは何時までも続くものでは無い、《幸せ》と感じた時がピークであり、その後次第に冷めて行くのも世の常ですからね。日々反省し相手に感謝し誠意を尽くすことが大切なのです・・・
 





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