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　世界史講義録より


　一緒に学ぼう世界史のポイント　75　《フランス革命　3》

　



　



　フランス革命３



　国民公会


　　　　国民公会

　８月10日事件で王権を停止すると同時に新しい国会を開くことが決められました。立法議会は、立憲君主制の1791年憲法に基づいていたから当然ですね。立憲君主制の憲法では拙(まず)い訳です。新しい憲法を作る為の議会が1792年９月に成立しました。
　これが国民公会。この議会は男子普通選挙で選出された。普通選挙と云うのは財産や納税額で選挙権を持つ人を制限し無いと云う事です。８月10日事件は下層市民の力で成功したし、対外戦争の危機を乗り切る為には下層市民の力を結集しなければ為らなかった訳だね。

　国民公会は早速王政の廃止と共和政樹立を宣言した。共和政と云うのは王や皇帝のいない政治制度です。これ以後のフランスの政治体制を第一共和政と云う。この言い方は確り覚えて置いてください、因みに今のフランスは第五共和政です。

　　　　　ルイ十六世の死刑を執行

　この後問題に為ったのはルイ16世の処遇です。王政が無くなったので王様はいらないから、彼をどうしたら好いのか。やがて裁判が始まります。王宮の隠し戸棚から王が外国の使節と秘密に遣り取りしていた文書が沢山発見されて、王がフランス政府と国民を裏切っていた証拠は沢山出て来た。結局、賛成387反対360で死刑と決定した。但し賛成387のうち26は条件付き賛成と云う内容で、それを除けば361対360と云う微妙な評決でした。

　



　



　1793年1月21日　パリの革命広場で2万人の市民が見守るなかで王は処刑された。最後の言葉は「私は無罪だ。私は敵を許そう」と云う様な内容だったらしい。王に沢山しゃべられて市民が動揺しては拙(まず)いので最後の方の言葉は、兵士の鳴らす太鼓の音に掻き消されて好く聞こえ無かったらしい。
　因みに処刑の方法はギロチンです。この処刑道具はフランス革命の中で発明されたものです。発明者はギヨタンと云う医者。革命が始まって以来反革命の容疑で多くの人が死刑に為る様に為った。

　　　　　人に優しい」処刑器具ギロチン

　それまでの死刑は首切り役人が斧で受刑者の首を切る。切られる方は首切り台の上に首を載せてうつ伏せに為って居る訳ですが、実際問題として首を切られるまで大人しくジッとして居る訳では無い。廻りの刑吏が身体を押さえ着けても何とか逃げようとジタバタモガク。だから、狙いを定めて斧を振り下ろしても一撃で首を刎ねる事は余り無かった様で、肩を切られ頭の一部を切られアチコチズタズタにされて要約絶命したと云う。死ぬ方も苦しいですが首切り役人も大変な重労働だったらしい。
　ギヨタンはそう云う処刑方法を見て、受刑者に取って残酷だと思ったんだね。どうせ死ぬなら一撃で苦しまずに死なせる方法はないかと云う事でギロチンを発明した。理性に基づいた人道的な発明だった訳だ。

　　　　王妃マリー＝アントワネットの処刑

　この後10月には王妃マリー＝アントワネットも死刑に為って居ます。プリントには馬車に乗せられ処刑台に連れて行かれるマリー＝アントワネットの絵がありますね。後にナポレオンの肖像画を描くことになるダヴィッドと云う画家が居る。
　この人は国民公会の議員でもあったのですが、このダヴィッドがマリー＝アントワネットが処刑台に連れて行かれると聞いて、通りに飛び出してその場でスケッチをしたものです。そう思って見ると、粗い絵ですが臨場感があるね。
　マリー＝アントワネットは心労で髪が真っ白に為って居たと云いますが、この絵では一寸判ら無い。長い髪は短く切られています。ギロチンに掛ける時に髪が長いと邪魔だから切られてしまったのです。頭には、市民が着ける帽子を被らされている。服は好く判りませんが質素なものの様です。後ろ手に縛られて馬車の台に座らされているのでしょう。

　　　　　ダヴィッドのスケッチ

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　この頃は政治の変動が激しくて、彼女の処刑は余り話題にも昇ら無かった様です。国民公会がルイ16世を処刑したことは諸外国にショックを与えた。これを切っ掛けに反フランス・反革命のヨーロッパ諸国の軍事同盟が造られた。これを第一回対仏大同盟と云う。この同盟は1793年から97年まで続きます。
　参加国は、イギリス・ロシア・オーストリア・プロイセン・スペイン・オランダなどヨーロッパの主要国は参加している。何処の国の王家も王を殺すと云う行為を見過ごすことが出来なかった訳だ。

　対仏大同盟の結成を呼びかけたのはイギリスで、当時の首相はピットと云うがこの名前は覚えて置く事。
　イギリスは、ピューリタン革命や名誉革命を経験していて王を処刑したこともある。なのに何故対仏大同盟の中心に為ったのか。実は、フランス軍はヴァルミーの戦いの後優勢に転じて国境を越えて進軍し、1792年の11月にはベルギーを占領する。そして、ここで封建制を廃止した。難しい言い方をすれば革命の輸出と云う。簡単に言えば、フランスが領土を拡大して占領地域に自国の政治制度を押し着けて居たのです。

　フランス軍は次はオランダに進出するかも知れない。イギリスに取っては市場を奪われることに為る訳です。特にオランダは金融市場の中心だったのでここをフランスに奪われたくは無かった。
　要するに、経済的な利害関係からイギリスはフランスを警戒していたのです。対仏大同盟との戦争が国境線で始まりフランスの対外的危機は深まります。一方、国内でも経済危機が深まり、経済政策を巡って政治的対立が激しく為って居た。
　政府は財政難の為に紙幣をドンドン増刷したのでインフレが進んだ。紙幣の価値が下がるのです。農家は小麦を売っても紙幣の価値が下がれば損なので売ろうとしない。商人達も売り惜しみをします。結局市場に小麦が出回ら無い。インフレによる物価高と食糧不足で、生活を直撃されるのが下層市民です。彼等の不満は政府の無策に向けられた。

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　政権を担当して居たのはジロンド派と云うグループでした。国民公会では大きく分けて2つの派閥があった。ジロンド派とジャコバン派。ジロンド派は裕福な商工業者である上層・中層市民が支持して、政策は穏健で急速な改革は好ま無い現実主義的です。
　ジャコバン派は、職人や小商人など下層市民が支持している。急進的に革命の理念を実現しようとし理想主義的です。指導者にはロベスピエール・マラー・ダントンと云う人気者がいる。

　話を戻すと、パリで商人達の買い占めや売り惜しみで食糧不足に為ると、下層市民は政府に対策を求めるでしょ。ジロンド派の大臣ロランは何と言ったか「議会が食糧について為し得る唯一のことは、議会は何も為すべきでは無いと云う事、あらゆる障害を取り除くことを宣言することであろう」判りますか？食糧不足に対して「何も為すべきでは無い」と言っているのです。
　何故か？ジロンド派は自由が好きで、革命前は貴族達に頭を押さえ着けられて自由は無かった。フランス革命で自由に為った。政府は自由を制限すべきでは無いと考えているのです。経済活動も自由で買い占めや売り惜しみも自由でそれで儲かる人には儲ける自由があると考えるのです。確かに理屈としては筋が通っている。

　でも、現実に飢えている下層市民はどう為るのか。自由の名の元にジロンド派は市民を見殺しにしようとして居るのだとジャコバン派は反論します。民衆に近い立場のエベールと云う政治家の発言。
　「商人達に祖国は無いのだ。彼等は革命が自分達に有利だと思われた間はそれを支持し、貴族と高等法院を破壊する為にサン＝キュロット（下層市民）に手を貸した。しかし、それは自分達が貴族に取って代わる為だった」　言っていることは判りますね。次はロベスピエール。
　「権利の内第一のものは生存する権利である。だから社会の法は社会の全ての成員に生存の手段を確保する法であった。他の全ての法はそれに従属する」

　　　　　　マクシミリアン・ロベスピエール


　大商人の経済の自由よりも下層市民の生きる権利の方が大事でしょと言っている。若さと美貌の「革命の大天使」切れ味鋭いサン＝ジュストは言う。
　「金持ちも貧乏人も在っては為らない、富裕は汚辱だ」「富裕は汚辱」ですよ実に過激です。次のマラーは過激で好いじゃん！と言い放つ。
　「過激な手段によってしか自由を打ち立てることは出来ない。諸国王の専制を打ち破る為には、一時的に自由の専制を組織し無ければなら無い時が来たのだ」本当の自由を手に入れる為には、自由を制限し無ければなら無い時があると言っているんですよ。ジロンド派では駄目だと云う事です。

　



　



　ここで「諸国王の専制」と言っているのは対仏大同盟のことで、対外的な戦争の危機も迫っているのに、経済問題でジロンド派と悠長に議論なんかしている時では無いと云う気持があります。強力な権力を打ち立てて機敏に危機に対処して行かなければいけないとジャコバン派は考える。パリの民衆もその考えを支持します。
　1793年６月、遂にジャコバン派は実力で議会からジロンド派を追放し独裁政治を開始した。いよいよ、フランス革命のクライマックス、ジャコバン独裁の始まりです。


　参考図書紹介・・・・もう少し詳しく知りたい時は

　死刑執行人サンソン―国王ル...集英社新書　cover あのギロチンを使ってルイ16世の処刑を執行したパリの処刑人サンソンの伝記です。革命によって身分差別が消えて行く事を喜ぶ反面、敬愛する国王を処刑しなければならなかったサンソン。読み物としても、充分楽しめました。


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