一緒に学ぼう世界史のポイント　16　《ローマ帝国の変質》　: 素敵な「自転車と家庭水族館」

2018年08月10日

一緒に学ぼう世界史のポイント　16　《ローマ帝国の変質》　

　世界史講義録より参照

　一緒に学ぼう世界史のポイント　16　《ローマ帝国の変質》

　ローマ帝国の変質　

　1　ディオクレティアヌス帝

　パックス＝ロマーナ（ローマの平和）以降をざっと見て置きます。

　235年～284年、この時代を軍人皇帝時代と言います。軍人皇帝時代は、兵士が自分達に都合の好い将軍を皇帝にしてしまう。そんな時代。ローマ帝国は国境地帯に20程の軍団を配置して居るのですが、各軍団の兵達が自分達の司令官を皇帝に押し立てる。都合が悪く為ったら帝位から引きずり降ろす。
　アウグストゥス（オクタヴィアヌス）の時代から皇帝は兵士、詰まり市民の支持が無ければその地位は安定しませんでした。だから、皇帝達は常に兵士にサービスをし捲りました。皇帝達がご機嫌を取り過ぎて、兵士が主人みたいになったのが軍人皇帝時代。行き着く処まで行き着いた感じです。
　50年間に即位した皇帝は26人だからね、平均在位年数は２年。この内天寿を全うしたのは二名です。他の皇帝達は兵士に廃位されたり対立皇帝に殺されている。

　　　　　　　　　

　　　　　　　　　　　ディオクレティアヌス帝

　この軍人皇帝時代を終わらせたのがディオクレティアヌス帝（位284～305）です。軍人皇帝時代に情けなくなってしまった皇帝の権威と権力を強化しようとした。その為に彼は、ローマ帝国の政治の仕方を大きく変えた。彼が始めた統治の仕方を専制君主制＝ドミナートゥスと云う。
　どんなのかと云うとペルシア風の皇帝を目指したと考えれば好いです。元老院を尊重するのを辞めて、共和政的な形を捨て去った。自分のことを「主にして神」と呼ばせたり、会議の時には顧問官達を立たせたままで座るのを許さ無かった。

　　

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　「帝国四分割統治」と云うのも始めます。ローマ帝国を東西に分けて夫々に正帝副帝を置いて自分は東の正帝に為ります。広大な領土を一人で支配するには限界が来始めていたのでしょう。
　皇帝が四人いると云うのもナカナカ我々の常識では馴染めないね。どうもこの皇帝と云う訳語の感覚とローマ皇帝の実態とは少しズレがある様です。

　このディオクレティアヌス帝はキリスト教徒を迫害したことでも有名です。彼は「主にして神」だからね、国民に自分に対する礼拝を強制するんだけれども、キリスト教徒はし無い訳ですよ、ディオクレティアヌスは彼らに取っては神では無いから。皇帝としては、これは許され無い。だから弾圧しました。

　　

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　　　　　　　　　　　　　　コンスタンティヌス帝

　2　コンスタンティヌス帝

　ディオクレティアヌス帝が死んだ後、正帝副帝複数の皇帝が居る訳で一寸混乱があります。勝ち残ったのがコンスタンティヌス帝（位306～337）コンスタンティヌスで覚えて置かなければならない事は３つです。

　１　都をビザンティウムに遷して、ここをコンスタンティノープルと名付けた。ビザンティウムは今のイスタンブールです。元々はギリシア人が造った古い町です。東西の中継貿易の重要な町でした。
　何故、都を遷したか。ローマ市を中心とする帝国の西部よりも、ギリシアやシリアを中心とする東部の方が文化的にも経済的にも重要に為って来たんでしょう。もう、ローマ市が都では無いのにローマ帝国と云うのも変ですが、これ以後もローマ帝国と言っています。

　２　313年に「ミラノ勅令」を出してキリスト教を公認した。勅令と云うのは皇帝の命令のこと。ミラノで出した命令なのでミラノ勅令。
ディオクレティアヌス帝のキリスト教迫害命令から僅か10年しか経っていないのですが、全く異なった命令が出た訳です。
　何故、180度政策が変更に為ったか。先ず、弾圧によって全然キリスト教徒は減ら無かった。逆に、爆発的に信者が増えたんではないか。信者数は分かりませんけどね、そう考えた方が理解し易い。コンスタンティヌス帝は弾圧するよりも公認してキリスト教徒を自分の味方に取り込んだ方が支配に有利だと考えたんでしょう。
　彼はこんな事を後に言っている。皇帝に為る時にライバルと決戦があったんですが、その前夜に夢を見たと云う。夢の中で光り輝く十字架が現れた。そこで、コンスタンティヌスは十字を象った軍旗を作りライバルとの決戦に勝ったと云うんです。
　皇帝に為った後にコンスタンティヌスがした話です。勿論作り話だろうね。しかし、こんな作り話をしてでも、キリスト教徒を自分の支持者に加えたかったんでしょう。

　３　コンスタンティヌス帝の時にコロナトゥス制が確立します。コロナトゥス制と云うのは小作人を使った農場経営のことです。小作人のことをコロヌスと言ったのでコロナトゥス制。
　３世紀以降奴隷が減少します。詰まり、大土地所有者である貴族から見れば労働力不足です。労働力不足を補うには奴隷を結婚させて子供を作らせれば好いんですが、奴隷身分のままで、お前とお前子供を作れと言ったって奴隷だって人間ですからね、家畜の種付けでは無い。それは無理な訳。
　奴隷にも家や財産を持つことを認めて初めて、彼等だって自分の生活設計が出来る様に為り子供も作る気に為ります。そこで、農業経営者達は奴隷の身分を格上げして、家庭を持たせて子供を作らせて労働力を確保しようとしました。これがコロヌスと呼ばれる小作人です。
　只、奴隷では無いからと言って勝手に別の農場に移られてしまっては労働力確保には為りませんから、コロヌスの移動を禁止する必要があります。で、コンスタンティヌス帝はコロヌスの移動禁止令を出し、身分を固定化した。これを、コロナトゥス制の確立と言っています。奴隷から身分上昇しただけで無く、逆に一般農民からコロヌスに転落したものも居た様です。

　　

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　3　テオドシウス帝

　その後の重要な皇帝はテオドシウス帝（位379～395）ここで、ローマ帝国は一応の区切りが着きます。この皇帝は380年にキリスト教を国教化します。国教化と云うのは国の宗教にしたと云う事ですよ。皆キリスト教を信じなければいけない。ミラノ勅令は公認です。公認とは信じても好いと云う事ですから。全然、意味は違うから好く注意して下さい。国教化したと云う事は、キリスト教を国家支配の柱にしようと云う事ですね。
　更に、392年にはキリスト教以外の宗教の信仰を禁止します。キリスト教国教化と云う時に参考書では普通こちらの392年で出て来ます。因みに、ギリシアの古代オリンピックはこの時まで行われていました。でもこれ、ギリシアの神々に捧げるお祭りだからキリスト教国教化以後開かれ無く為りました。

　テオドシウス帝は死ぬ時に二人の息子に帝国を分割して相続させました。兄が継いだのが東半分、これが東ローマ帝国（首都コンスタンティノープル）弟が継いだのが西半分を西ローマ帝国（首都ローマ）です。地中海全体をグルリと取り囲んだ大ローマ帝国はここまででお仕舞。後は東西夫々のローマ帝国の話がありますが、それは又後でしましょう。

　ローマ帝国の変質　おわり　次のページへ　《キリスト教の成立》

　　