2018年07月05日
従軍奇談 その3
従軍奇談 その3
洞窟の中で聞いた玉音放送
(私達には敗戦は寝耳に水では無かった)
私が太平洋戦争に従軍し、兵隊として「撃ち方止め」の命令に繋がった玉音放送をこの耳で聞いたのは広東省広州市郊外の小高い丘にある洞窟の中であった。所属していた部隊は気象隊と言う戦闘をする軍隊とは異なる特別の部隊である。
最も重要な任務は気象観測結果の受発信と気象予報で、天気図を描き予報結果を航空戦闘隊に報告することであった。平時であれば気象台が行っている仕事と殆ど同じであるが、航空作戦に不可欠な気象情報は重要で敵味方共に戦時下では極秘事項であり、軍隊自身が行っていた。
気象情報の送受信の仕事の中枢はモールス信号による「放送局」と言えば大袈裟だが、数台の受信機と発信器、及び大きなアンテナが設置されているだけのもので、局を敵の爆撃から破壊されるのを防御するため、丘の中腹を掘り抜いた洞窟の奥に設置されていた。常時10名ばかりの当直者が一日数交代でその勤務に当たっていた。
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1945年(昭和20年)8月15日(水曜日正午、日本時間)の昭和天皇による「終戦の詔書」いわゆる「玉音放送」を、偶々当直中だった私は聞くことが出来た。当時としてはかなり高性能の受信機ではあったが、内地からのJOAKの電波はその時は雑音が多く、神主の祝詞のような声の詔勅は意味が良く把握できなかった。
しかし、続くアナウンサーの解説の声は当時のマイクに合うプロの発声法で「耐え難きを耐え、忍び難きを忍び、此処に矛を収める」と言う内容であることが明瞭に聞き取れた。
矛を収めると言うのは「撃ち方止め」「戦闘行為の停止」である。この時「頭が真っ白になっただろう」と後で尋ねる人々が多かったが、実際は案外冷静で「とうとうその時が来たか」と思った。
それと言うのも外国の情報を自由に受信できる立場に我々はあったし、また任務上日本軍の展開している全地域の気象情報の発信地点が、この1年、特にこの半年間には日増しに縮小されて来たことを知っていた。即ち北はアリューシャンから南は南太平洋や東南アジアまでの日本軍の活動地域がドンドン狭くなり、追い詰められた戦況にあることを毎日の仕事を通じ身をもって感じていたからである。
軍隊の情報伝達は徹底した上意下達システムで、海軍の主力がミッドウェイで失われていることすら、兵・下士官は勿論、尉官将校でも知らない者が多く、真偽の程は分からない侭ただ漠然と噂で感じる程度である。分かっているのは悪名高い「大本営発表」だけで、それも前線の兵士には伝わらないことも多い。
不利な戦局の情報を兵に伝えれば「たちまち士気に影響」し戦争など出来る筈はない。全体の戦局が不利に向かっているのを任務を通じて実感出来る者は極めて特殊な者だけであった。気象隊はこの特殊な者の一つであった。
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街に出ると民衆の我々を見る目つきがこの数日間で一変しているのを感じ、私は街頭で買った華字紙を貪るように読んだ。そこには「勝利」の大きな活字が踊っていた。文章の調子が今までのデマ宣伝とは異なり真実感があった。この様な経緯から私だけでなく部隊の多くの者は「遂に来るべき時が来た」と受け止める心の準備は出来ていた。
私達の部隊の多くの者は恐らく「華南や本土での地上決戦は間近いだろう」と感じていた。残っていた数機が沖縄特攻に飛び立つのを送ったのもツイ先日である。沖縄が危ないことも皆が知っていた。観測情報が途絶えたと言うことは活動が麻痺状態か、部隊が壊滅したかである。次は北からの中国軍と上陸してくる南からの連合軍に挟み撃ちとなるか、もしくは、日本の派遣軍を無視して、直接日本本土の九州か関東平野の海岸で対決することになるだろうと内心では思っていた。
放送を聞き終わると直ぐに洞窟を出て集会所に行った。丁度昼飯時で皆は食事を終わりかけていた。「日本がバンザイした」と言うと「馬鹿言え」と言う皆の言葉が返ってきた。「今俺は下番して来た処だ。JOAKを聞いた」「それは敵のデマ電波だ」と言う少数の者も居たが、多くは「そうか」と思ったたのだろう、ただ押し黙っていた。
私が遅い昼食を食べ終わるか終わらない内に、突如部隊長の緊急全員集合の指示があり、華南派遣軍の司令部からの命令としての「撃ち方止め」が伝えられた。
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その時を振返ると皆は冷静で、内心ホットした気持ちだったように思う。「生きて虜囚の辱めを受けず・・・」の戦陣訓は措くとしても、飛行場のピスト勤務では毎日が連続空爆に曝され一つ間違えば生死を分ける状況下にあったから、「ホットした」と言うのは「これで死なずに日本に帰られる」と言うような楽観的安堵感ではなく、毎朝目を覚ますと「今日も未だ生きている」とツクズク思う何とも言えない心理状態から取り敢えず暫くは脱却出来ることへの安堵である。
数日か数週間か、それとも数ヶ月かは分からないが、とにかく今日死ぬことは先ず無いと言う聊やかな心理で「ホット」したのだ。「弱兵の言」かも知れないが多くの人が体験記で同様のことを語っている。
それから数日間は命令により部隊の文書類や分厚い乱数表(暗号書)などの焼却に大童であったが、眼前に敵軍が居るわけではない。もっとも便衣隊(日中戦争時、平服を着て敵の占領地に潜入し、後方攪乱をした中国人のグループ)などは街に入って来ているらしいと聞いたが、日本軍の兵士に反抗するものは居なかったのだろう、姿も見なかった。
便衣隊を見たのはかなり後になってからで、後で触れるが、破落戸(ごろつき)の集団で「治安を害し、民衆を迫害した」として中国正規軍から処刑されるものが多かった。一般市民も日本軍兵士に刃向かうものは居らず、平穏な日々が数週間は続いた。
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部隊の在った丘の上から下の街路を見下すと、数台のトラックに機関銃・水・食糧を満載して多くの兵士が街を脱出して行くのが数日間続いて見えた。申し合わせたように白衣の従軍看護婦が数名乗っていた。「撃ち方止め」に納得せず、抗戦を続ける兵士達である。
日本兵の人数比からみると、それらはごく僅かな一部の兵であったとは思うが、歓声を上げて出て行く光景は私の脳裏に焼き付いた侭今でも残っている。あの人達はその後どうなったのだろうか?後から聞いた噂では殆どが山賊と化して次第に社会から抹殺されたと言うことだが、恐らくそうなった可能性は高いのではないか。
玉音放送から多分10日目ぐらいであったと思うが、午前10時ごろ従卒に白旗を持たせた中国軍(国民党軍)の将校の軍使が徒歩で部隊を訪れてきた。前以て上から「鄭重に対応せよ」との連絡があり、部隊長室で対談が始まった。言葉が通じないので漢字による筆談である。私は偶々そこに居合わせて居た。
貴名?、所属如何?、毛筆による日本の学校で習った漢文による遣り取りである。通じない言葉も多く、なかなか捗らない。やっと昼前になって将校は我吃飯后・馬上再来と書いた。部隊長は「了解」と答えを書いて握手を交わし、午前の話し合いは終わり、彼は部屋を出て丘を下って去った。
部隊長は衛兵に「軍使が午後また来る。騎馬で来るから馬に注意せよ。徒歩で来るものは入れるな」と指示した。これはまずいと私は思い、「彼は飯を食ったら、またすぐに来ると言ったのです。馬上 (ma 3 shang 4)は「直ちに、すぐに」の意味で、必ずしも騎馬で来るとは限りません」と思わず言ってしまった。
「何だ。お前は支那語が解るのか?」私は「しまった、バレたか」と思ったが後の祭り。「ハイ、少々は・・・」と答えざるを得なかった。実は私は中国語を多少解することをひた隠しに隠していた。通訳係りにでもなったら、敗戦の状況下で「双方からの板挟みになってどんなトラブルに巻き込まれてしまうかも知れず、こき使われた揚げ句、結局は碌な結末にはならない」と思っていたからである。
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早速その翌日、私に対し「中国空軍第四方面軍司令部へ通訳として転属を命ず」と言う命令が出た。今まで敵だった軍隊の司令部で通訳の仕事をせよと言う訳である。
負けた日本軍の将兵はズタズタに破壊された粤漢鉄路(エツ漢鉄道、広東省の広州から湖北省の武漢三鎮で知られた漢口に到る鉄道、粤は広東と広西一帯を指す古い地名)の修路に狩り出され、かっての苦力(クーリー、インド・中国の下層労働者の呼称)のように働かされると言う噂が蔓延していた。先行き我々はどうなるか誰にも解らない。成り行きに任せる外は無い。転属命令は諒承するもしないもない。上官による軍の命令である。
つづく
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