2018年06月28日
一兵士の戦争体験 その9
その9
◇輜重本来の輸送業務解除
◆馬や輜重車両全部を他部隊に渡す
ヘンサダに一週間居たが、私の所属する第二小隊はその間に他の部隊に車諸共(各班に一両づつ車を残し)馬も全部渡す事に為った。どんな事でこの様に為ったのか知ら無いが。一日掛で最後の点検整備を行い申し送りに必要な準備をした。
思えば去年六月以来共に苦労して来た馬とも今日限りお別れかと思うと胸を締め着けられるものがあった。
馬も知ら無い兵隊に使われるのだから馴れる迄辛い事だろう。何処に連れて行かれるのか分から無いが、北部ビルマ方面の輸送に使われるとの事、余り苦しい目に遭わ無ければ好いが。
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馬に取ってこの暑い国病気の多い国で、山また山、道なき道を馬糧も無く重荷を運び戦うのは辛く苦しい事であろう。思っただけでも可哀相である。大人しく利口な愛馬「金栗(きんくり)号」も連れて行かれる。私は自分の馬に髭面(ひげずら)を摺(す)り着け、首を撫(な)で鬣を解いて遣り暫し別れを惜しんだ。
馬は賢い動物だから全てを感じて居る筈である。惜別の情堪え難いものがある。瀬澤小隊百頭の馬よさようなら!元気でやれよ。涙 涙 涙 アア・・・・こんな事に為って馬と別れるとは夢にも思わ無かった。
引渡し業務が済むとその次の日から厩作業が無く為り気が抜けた。今まで一日たりとも一食たりとも欠ける事無く、餌を与え水を飲ませ馬体の手入れをして来て居たのに、急に居なくなると寂しくリズムが狂ってしまう。馬の世話は大変だったが居なくなると虚脱(きょだつ)感で放心した様だ。
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◆プローム方面に向う
馬の引渡しが済むと二日後には又移動出発だ。汽車に乗せられたが今度は今までと違い自分の装具と小銃等携帯の兵器だけなので簡単だ。夕方ヘンサダの駅を出発し夜が明けると広い平野の中を列車は走って居た。
所々に森があるがそこが集落や町である。かなり大きな町の駅に止まった。ビルマ人が「マスター マスター」 「セレー、バナナ、マンゴウ」と言って物売りに遣って来る。頭の上に竹で編んだ籠を乗せその中にそれ等を入れて居り器用に持ち運んでいる。
ビルマでの軍票
私がビルマ言葉で「ベラウレ、パイサンベラウレ」お金は幾らかと聞くと「これ五十銭(ゴジツセン)、これ一円(イチエン)」と答え商売に為る。ビルマでは日本軍の発行する軍票が通用するので欲しい物が買える様に為って居た。軍隊でも階級に応じ給料が支給され、我々兵隊にはホンの小遣い程度だがこの軍票が支給されるのでそれで買物が出来たのだ。
セレーは現地たばこだが、内地の桑の葉の様なものにたばこの軸とたばこの葉を刻んで入れ、万年筆位の大きさに巻き乾かした代物である。桑の葉と見えるのもたばこの葉かも知れ無いが。
用心して吸わないと火の粉がポロリと落ち服に穴があく恐れがある。でも日本のたばこの配給は殆ど無いので、兵隊はこれを買って好く吸うたものだ。その他にも、トウモロコシの鞘(さや)の様な物にたばこの葉を詰め込んだ大きい形の物等色々なたばこがあった。余り美味いたばこでは無かったが、そんな事は言って居られ無かった。
バナナも色々の種類があり、美味しいもの余り美味しく無いもの、大きいもの小さいもの、種のあるもの種の無いもの等があった。台湾の高雄で食べた程美味しい物は無かったが、我々の命を救い元気を着けて呉れたのはこのバナナであった。又、ドリアン、マンゴウ、パパイヤなど熱帯の果物が元気を着け命を繋ぎ、蘇らせて呉れたのだ。
貨物車の入り口の扉を開けて空気を入れて居るが、天井の鉄板が焼け着き暑くて堪ら無い。しかも停車中は風が入ら無いので特に激しい暑さと為る。何時発車するか分から無いので降りても汽車の近くを離れる事は出来ない。
列車が走り続ける。どの町にもどの村にも、大きいパゴダや小さいパゴダが、金色に又は真っ白に美しい姿で建って居る。村は貧しいがお寺は確りして居りシミジミ仏教の国である事を知らされる。
暫く行くと、焼けたばかりの大きな町に差し掛かった。3・4日前焼夷弾(しょういだん)で焼野ヵ原と為って居て、未だ燻って居る所もあり焼け残りの柱が黒焦げのまま立って居た。しかし、幸いに鉄道線路は遣られて居なかった。
午前十時頃に為って空襲警報が発令され列車は平野の真ん中に止まった。皆跳び降り線路より横方向百メートル位の所にある木立の中に隠れた。幸いに敵機は来無かったので再び列車に乗り発車した。午後四時頃プロームと云う駅に到着したが、そこにはホームがあるだけで駅舎等何も無かった。
プロームの町を歩いて行くと、ここも最近の火災で黒焦げの柱が立ったまま残って居た。かなり大きな町が無残な灰燼(かいじん)の町と化して居る。住んで居た現地人はどうして居るのだろう、近くに全く人影は見え無い。
この町はビルマ西部を流れる大河イラワジの中流部の左岸に位置しプローム鉄道の終点である。又、ラングーンから此処を通り、更に北に伸びて行く幹線道路プローム街道の中心地に当たり、ビルマで屈指の人口を持っている。それに、ここからイラワジを渡りアラカン山脈方面へ行く渡船場でもあり、非常に重要な地点である。その町の中心部分をこの様に焼かれて居るのだから敵の勢力が次第に伸びて来ている事が好く分かる。
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◆シュエーダン お寺の屋敷に駐屯(ちゅうとん)
我が中隊はこのプロームの町並みを通り抜け南へ二時間位歩いた。この辺りはもう長い乾期の為、草は枯れて茶色に為り落葉樹の木からは葉が落ちてしまって居た。内地の秋を思わせる光景の所を過ぎ、大木の茂る森に到着した。
そこには大きなお寺の屋敷があり、それに続き広い森林があった。このお寺の大きな講堂に泊まる事と為り要約落ち着いた。
この辺りには、何百年も経った小さなパゴダや古い壊れ掛けの仏像が沢山あり歴史のある地方である事が偲(しの)ばれるが、戦争中の仮の宿ゆえ情緒を楽しむ間は無い。ここでも馬が居ないのでする事が無く、体操をしたり班毎に相撲をしたりして体力と健康の維持に努めた。
中隊全員の約3分の2程度250人位がここに集結して居たが、ある日、全員で会食をした。会食と言っても何も無い、各自飯盒(はんごう)を持ち寄り一堂に会して飯を食べ顔合わせをしたと云うだけの事であった。しかし川添曹長が、これ迄の苦労を労い「今後何が起きるか分から無いが心身の鍛錬をして置け」との挨拶をされた。軍隊としては珍しく和やかな雰囲気を醸し出そうとした様であった。
予定通りの進め方だったのか、下士官の誰かが詩吟をした。続いて田舎歌手の山下一等兵が流行歌を上手に歌った。次第に場が和(なご)み拍手もあった。
次に誰も現われて来ない。これだけでは少し寂しいナア、どんな進行をするのだろうか?と思って居たら、中隊本部の中村伍長の大きな声がして「第二小隊の小田上等兵やれ」と声が掛かった。一瞬ドキリとし、困った事に為ったと思った。「居ないのか、早く出て来い」と再度声が飛んで来た。
もう仕方が無い、立ち上がり「ハイ」と答えた。何を歌おうかと思案したが、この場は軍歌では無く流行歌で軟らかく歌うのが好いと思った。よし映画「愛染(あいぜん)かつら」の主題歌「旅の夜風」を歌おうと決心した。 ♪「花も〜嵐も〜踏み〜越えて〜〜行くが〜男の〜生きる道〜」と大きな声で一生懸命に歌った。
拍手があったかどうか覚えて居ないが、兎に角責任を果たしてホッとした。 中村伍長は、川添曹長の下で庶務や人事係の仕事を直接遣って居り、遂最近上等兵の選考をしたらしいから、その時私の経歴や教育期間中の成績、又中隊本部通信班に所属した最近2・3ヵ月の評判等を好く承知して居て、少しでも皆にアピールして遣ろうとの咄嗟の気持ちから指名して呉れたのだろう。
後から考えると涙が出る程嬉しく有難かった。余程の事が無い限り末端の兵隊にこの様なチャンスが与えられる事は無い筈なのに・・・・
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その内、空襲の回数が次第に増え、ある日焼夷弾(しょういだん)に拠り近くで山火事が起きたので火消しに行った。川添曹長に着いて行ったのだが、長靴を履いて居るから足が重い筈なのに早く走る。流石に現役の曹長、気合いが入った人だと驚き感心した。
このお寺の敷地内には、他の部隊も来て居り見知らぬ兵隊とスレ違う事があった。最近内地から来たのだろうか、彼倮二等兵が私に対して先に敬礼するではないか。照れ臭かったが受礼した。初めての出来事だった。
そうだ自分は遂最近上等兵に為り三っ星を着けて居るからだ。軍隊に入ってからこの方、敬礼は何時もこちらが先にするものだと思い込んで居たので面食らった格好だ。『星の数』とは好く言ったものだ、ここは星の数が全てを決める社会なのだと実感した。
しかし、同じ中隊の中では顔は好く知って居るし、同期のものが少し位早く上等兵に為ったとて誰も敬礼等しては呉れ無い。野戦ではそんな事を言って居られない。我々の部隊に新兵が約一年遅れて補充されて来たが、ホンの小人数なので我々は何時まで経っても最下位にランクされた兵隊だった。年が経ち星の数が増え上等兵に為ろうと兵長に為ろうと下が来無いので立場は変わら無かった。
プロームの町を目指して敵機が又も夜八時頃爆音を轟かし遣って来た。真っ暗だから何機居るのか分から無い。爆音の響きから4・5機は来て居るのだろう。急にパアッ、パアッ、パアッと照明弾を次から次にと落とす。
十個位もあり落下傘(らっかさん)に吊るされて居るので、フワリ、フワリ、ユックリ落ちて来て地上を明るく照らす。その明るさは六キロ離れた此処でさえ影が映る程だから、真下は非常に明るく照らされて居る事だろう。不謹慎(ふきんしん)な事だが一瞬、美しい眺め珍しい光景であるとさえ感じさせられた。
ここプロームは、日本軍の兵站基地で、弾薬、食料、衣類等が集結されて居るので、敵は執念深く攻撃して来て居るのだろう。
地上を照らし、建造物を確認して於いてから焼夷弾や爆弾を投下するのだから仕方が無い。下からは敵機の姿は逆光で全く見えずそれに対空火砲も無いのだから敵の思うままである。やがて「ドンー」 「ドンー」と爆弾の破裂音が地響きを立てて聞こえ、夜空に火の手が上がるのが好く見えた。あの辺に友軍が居り痛めつけられ、大きな倉庫が燃えて居るのかと思うと身震いが止まら無かった。
◆内地からの便り
お寺の境内に居る頃内地からの便りが届いた。母からのものが二通あった。出したのはもっと沢山だったかも知れ無い。文面は父は元気に小学校へ勤めて居るが学校でも防空演習等で忙しく、本来の勉強や教育をする時間が足り無く為り困って居る事。
母は内助の仕事を色々して居り、妹は勤労奉仕で軍需工場へ働きに駆り出されて勉強が出来ないが、頑張って居る由だった。
母が一生懸命に私の事を祈って下さって居る事が、文面から伺われ有難く懐かしく読んだ。母の優しい顔が目に浮かび、何物にも勝る親と子の情愛の深さ切れ無い太い繋がりをシミジミ感じた。
この時、米沢の西澤とよ子さんからの手紙も受け取った。物資不足で困って居る事や勤労奉仕の事が書いてあった。女学校四年生に為ったが戦争中の事なので、上級学校を何処にしようかと思って居る事等が書かれてあった。
特に印象に残ったのは「小田さん元気で頑張って下さい。米沢のさくらんぼが一生懸命にお祈りし待って居ます」と書いてある文面であった。
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米沢のさくらんぼは淡黄の薄紅色で甘酸っぱく舌触りが爽やかであった。その時代の若者や我々学生達は、初恋の味がするもの初恋を象徴するものとして愛し食べた特産品だったので、彼女もその意味を込めて認めて呉れたのだ。
どんなに胸を時めかして呉れた事か、一文字一文字がどれ程優しく温かく、彼女をどんなに懐かしく思った事か。清純なセーラー服姿が目蓋(まぶた)に浮かぶ。
当時軍隊に出し入れする手紙は検閲(けんえつ)され、余り変な事は書け無い時代であったが、さくらんぼが待って居るのであれば幾ら検閲を受けても誰にも分から無い言葉であった。彼女と私にしか分から無い大切な味わいのある表現だった。
私はこの手紙をその後何回も何回も読み返し、ずっと服の内ポケットにしまい込んで肌身離さず持って居た。長い間持ち続ける間に外の封筒は破れ、汗に汚れ雨に濡れグシャグシャに為ってからも確り抱き絞め、お守り代りにし、少しでも時間があると開いて見危険な時もその事を思い出し勇気を出した。
しかし、敵に追われ、雨に遭い、水に浸かり、弾丸の中を潜る間に何時の間にか不覚にも失ってしまったが「小田さん、さくらんぼが待って居ます」と云う一節は何時までも心に沁(し)み込んで居て私を温め勇気づけ励まして呉れたのである。
つづく
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