2012年08月10日
航空運送と貿易システム
1、航空運送
航空機は、本来、高速性、安全性、適時性に優れた輸送手段であったが、最大の欠点は、輸送量かられ、しかも運賃が高いということであった。大型貨物輸送機の登場により、航空貨物輸送の欠点は大きく緩和されることになった。企業は、高付加価値製品の物流航空機によって行うようになった。船舶より比較的割高な航空運賃が、航空機の高速性、安全性、適時性によって削減できる物流費用で相殺されるようになったのである。このような原因で航空輸送の発展をもたらした。
1945年4月、航空企業の首脳はハバナに集まり、国際航空運送協会つまりIATAを成立した。IATAの機能は2つに集約される。調整機能と清算機能である。IATAは、設立当初から、1919年に設立され第二次世界戦中に自然消滅した旧IATAにならい、代理店制度を充実させていった。IATA代理店制度とは、IATAが承認した代理店が、統一契約であるIATA代理店契約を締結することによって、IATA加盟の各航空会社と、均一の条件と手数料で代理店関係に入ることを可能にする制度である。1963年にIATAは荷主用コンテナという制度を設けた。この制度は、荷主があらかじめ登録しておいたコンテナを利用して行う運送に対して運賃を割引というものであった。しかし、登録されたコンテナが多種多様で効率が悪かったため、1967年に17種類の標準コンテナを指定することとした。この制度が航空化物輸送へのコンテナー導入を促進することになる。
航空会社は、本来、貨物の集荷が規則されるなど物流能力に限りがあったし、その貨物郵送のセールス能力の乏しかった。迅速性という航空輸送の特徴を活かすには、貨物輸送の販売と貨物の集荷を、いわゆるフォワーダー企業に依存する必要があり、航空貨物代理店制度はそのための有効な手段であった。
一方、混載貨物制度は、キロあたりの航空貨物運賃率は重量が増えるほどやすくなるという特徴と、航空貨物はもともと少量貨物が中心であるという現実を利用して生じてきた制度である。つまり、少量貨物の荷主にとっては、航空会社に直接運送を依頼するより、混載貨物として運送を依頼した方が有利な運賃率を利用できるし、混載業際としても混載差益を享受できるのである。
混載差益を得るには、できるだけ大量の貨物を集めなければならない。つまり、集荷能力に混載業者としての適否がかかっているのである。ほとんどの航空貨物代理店が混載業者を営むようになったのは当然である。言葉を変えれば、高い貨物輸送セールス能力と物流能力をもつ航空貨物代理店こそが、混載業者ということができる。そして、フォワーダーは代理店という機能に加えて、混載業者という機能も持つことになる。航空貨物代理店や混載業者になる前のフォーワーダーの多くは、すでに国内運送業者、通関業者、保険代理店、倉庫業者などの機能をもっていた。
航空が貨物は直送貨物と混載貨物に分けられる。直送貨物は荷送人が直接航空会社へ運送を依頼する方法であり、荷送人と航空貨物代理店が運送契約を締結する。混載貨物は、荷送人から運送依頼を受け、自分の運送約款で契約を締結した混載業者が、今度は荷送人として航空貨物代理店と運送契約を締結。
直送貨物の流通過程は以下の図1−1の通りである。
荷送人から運送依頼を受けた航空貨物代理店は、通常自らあるいは他の運送業者に依頼して国内運送を行う。貨物がエアカーゴ・ターミナルを経由する場合には、通関手続きの済んだ貨物を一括運送を行う。
エアカーゴ・ターミナルを経由する貨物を除いて、航空貨物代理店あるいはその下請け運送を行う運送人の手により空港にもち込まれた貨物は、航空貨物代理店により輸送包装、バルク・ユニタイゼーション、通関など国際運送ができる状態にする。貨物によっては、空港搬入前に、各上屋で通関され空港まで保税運送を行うこともある。そして、航空貨物代理店が運送状を作成する。
輸入地に到着した貨物は、航空会社から荷受人に引き渡される。荷受人は通関業者を兼ねる業者を代理店として指定している。この代理店は航空貨物代理店であることも多い。輸入通関やその他の必要な続きを終えた貨物は、この代理店によってあるいはその下請け業者の手によって、荷送人やあるいは荷受人の指定する倉庫に配達される。
荷送人からの運送依頼により、混載業者は集荷・国内運送を行うことが多い。貨物エアカーゴ・ターミナルや混載業者所有の上屋に搬入され、混載仕立てや輸出通関に必要な手続きが行われる。
荷送人に対して運送を請け負った混載業者は、今度は自分が荷送人となって、航空会社の代理店に運送を依頼する。航空貨物代理店は航空運送状を作成し、貨物を航空会社所有の上屋に搬入する。搬入された貨物は、航空会社自らあるいは地上取扱理店により航空機に積み込まれる。
仕向空港に到着した貨物は、混載業者により荷受人に指定された混載仕分代理店が、混載仕分をして、必要に応じ通関や配達を行う。混載業者が輸入地に営業所や現地法人を持っていれば、それらが行う。
混載業者はほとんどIATA航空貨物代理店を兼ねているので、実際は、輸出地での集荷から航空会社への引渡しを、1社がそれぞれの資格で行っている。このことが航空貨物流通の特徴である。
2、貿易システム
貿易システムとは、ある国からたの国への物品とそれに対する対価の合理的移動を可能にするための集合体である。貿易取引を個人経済つまり私企業たる貿易会社からみると。物品の引渡しと代金の支払いという二つの債務を履行することに集約される。ここでの定義は、そのような債務の履行を合理的に行うためのシステムということである。
「図1−3全体貿易システムの構造モデル」をみながら、全体貿易システムについて説明する。貿易取引に間わる政府、銀行、保険会社、フォワーダー、運送会社の集合体を、輸出者の集合と輸入者の集合を中心として配列している。ここでは、輸出者も輸出者も、さらにはその他の取引関係者も、それぞれ全体の集合体として扱っているので、「全体貿易システム」になる。この貿易システムは輸出者の物品引渡しと輸入者の対価の支払いを可能にするものであるから、輸出要素と輸入要素を貿易システムにおける主体要素になる。
貿易システムの各要素間には、矢印で示した相互関係がある。ここにいう相互関係とは、制度化あるいは慣習化された情報による働きかけのことである。貿易システムという観点から見れば、貿易の各要素はサブシステムとよぶこともできる。
貿易システムの各要素つまりサブシステムには、物流、貿易管理、貿易決済、貨物保険、契約のサブシステムからなる。各サブシステムは、航空運送の発展に応じて、その構造を変化させてきた。
物流サブシステムのなかで、まず特徴的なのは、貨物の航空機への積み込み形態である。
航空運送では、荷送人が積み込みを行うことではなく、運送人あるいはその代理人が、積み込みに先立って、荷送り人から貨物を引き取る。このような積み込み形態は、コンテナ輸送では、当初からこのような引き取り形態が採用されていた。この理由は、航空輸送ではその迅速性ゆえに、効率よく積み込む必要があること、貨物専用機登場の以前は旅客機の下部貨物室を利用して貨物を輸送していて、そのような輸送形態では運送人が貨物を積み込んでいた。
航空貨物輸送の発展にともない、以下の影響である
@貿易管理システムつまり通関制度が取った対策は、手続きの簡素化や簡略化であった。
A貿易決済サブシステムに影響を与えた。
B航空運送状を信用状統一規則で引き受け書類としたことであった。
C貨物保険に対して、新保険制度の開発は必要になる。
サブシステム構造変化の要因とその連鎖は、フォワーダーの他人格化と航空運送状制度の生成である。同一のフォワーダー内部では、それぞれの担当者部署が異なった立場で業務を処理しているのであるが、外部の者にとっては、多数の人格がときに応じて現れては消える多重人格者を見る思いである。フォワーダーのこうのような複雑な機能を他人格化とよぶことにする。多人各課という言葉で表されるフォワーダーの多機能化が、航空貨物物流構造の中心的な特徴である。
航空運送の特徴の一つは、迅速な運送手段ということである。このような特徴から、航空輸送状は非流通性である。非流通性運送書類の発行という航空輸送の特徴は、されに、航空運送状の荷受人名を、輸入者とするのではなく、信用状発行銀行など輸入地銀行とするという手続きを生じさせた。運送書類が有価証券である場合には、その証券を所有することによって貨物の所有権を主張できるのだが、非流通性の運送書類では、荷受人だけが貨物を引き取る権利を持つことになる。そのため信用上取引あるいは売買契約上、銀行を荷受人とすることで、貨物に対する担保権を確保しようとするのである。
そのほか、混載制度も貿易決済サブシステムへ影響を与えることになる。航空輸送の迅速性、高運賃、小口高付加価値品という特徴が、混載貨物制度を航空運送に導入させ、大量輸送の始まりが、混載制度をいっそう発展させた。
貿易システムの中のあるサブシステムが構造構造変化を起こしていく。このときに、他のサブシステムも、それに適応して構造変化を起こしていく。あるいは、時として、何の構造変化はどのような動機によって行われるのである。構造変化の動機は、各サブシステムの中に存在する各要素にもとめなければならない。つまり、平易にいえば、一企業であり、あるいは一組織である。企業によって、あるサブシステムが構造変化を起こした場合は、自社の存続や繁栄のための経営判断として、構造変化という意識決定を行う。
あるサブシステムの中のあるサブシステムの構造変化に対して、別のサブシステムは、構造変化をすることで適応する方法は三つである。一つは、自ら構造変化することである。構造変化は、まず、従来あった制度や機能を、新しい構造に適応すべく変化させることによってなされる。構造変化による適応の2番目の方法は、制度や機能を新たに追求する方法である。これは、類似の方法や制度を修正するのと違って、修正の対象となる方法や制度が従来存在せず、まったく新しい制度や機能を創設する方法である。構造変化による適応の最後の方法は、制度や機能を消滅させることである。あるサブシステムの構造変化に対応するために、不必要となった制度や機能を消滅させることで、新制度に適応しようとする。
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