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2018年06月03日
人間はもともと「怠け者」なのか
人間の本質に挑む数々の実験
科学的管理法を唱えたテイラー氏は、
怠業の理由としてもう一つ自然的怠業を挙げていました。
人間は本能として楽をしたがるので怠業するというのです。
ところが、そんなテイラー的人間観を
否定する研究が次々出てきます。
マクレガー氏は『企業の人間的側面』の中で、
テイラー的な考え方をX理論とし、
それに対して、当時新しく出てきた研究蓄積は
生来人間は仕事が嫌いなわけではなく
条件次第で自発的に働くという事を
明らかにしているとして
それらをY理論と呼びました。
またバーズバーグ氏は面接調査の結果から、
達成や仕事そのものや
責任は満足をもたらす動機付け要因だが、
給料などはもっぱら不満足を予防するための
衛生要因だとする動機づけ衛生理論を提唱します。
後に『仕事と人間』では、多くの追試を紹介し、
予想と違う結果になったものは
3%にも満たないと結論付けます。
人間の欲求は最低限の生理的欲求から始まって
最高次の自己実現欲求まで5段階に分かれていて、
各段階の欲求が満たされるとより高次段階の欲求を
するようになるというマズロー氏の欲求段階説は、
いまだに人気ですが、
1970年代には科学的に否定されています。
「達成感」が基本
「お金」はインパクトが強すぎる
ブルーム氏はその著書の中で、ある画期的な予想していました。
それは、人は外的報酬とは無関係に、
高いパフォーマンスからは高い満足度を
引き出しているというのです。
確かに、子供のころテストで100点を取れば、
誰だって嬉しかったはずです。
それは100点を取ったら親から「報酬金」がもらえる、
なんてことがなくても、うれしいのです。
実は単純なストーリーを邪魔していたのが
金銭的報酬だったことがわかります。
ブルーム氏の指導を受けたデシ氏は『内発的動機付け』で、
面白い実験をしています。
大学生を使ってパズルを解かせる実験をするのですが、
学生は、途中で金銭的報酬をもらうと、
自由時間を休憩にあてるようになってしまうのです。
これは、お金がモチベーションに効果がないと
いっているのではありません。
逆に、インパクトが強すぎるのです。
もともと仕事自体が報酬だったのに、
金銭的報酬は仕事と満足の間に割り込んで、
「仕事⇒金⇒満足」と分離してしまうのです。
こうして一度お金のために仕事をするようになると
もうおしまいです。
あとはお金をもらえなくなると満足も得られなくなり、
仕事をする気もまた、無くなってしまうのです。
見返りが大きいほどやる気は出る?
効果的な「見返り」は人それぞれ
金銭的報酬のような外的報酬による
モチベーションの理論の代表は期待理論です。
これは打算的で合理的な人間を仮定しており、
わかりやすく言えば、馬の鼻先にニンジンをぶら下げて
食べたら買ったら走ってみろという理論です。
期待理論を現代のようにな比較的完成させた形にまとめたのが
ブルーム氏の『仕事とモチベーション』です。
言っていることの途中までは
ミクロ経済学の期待効用理論と同じです。
単純化すると「行為⇒1次の結果⇒2次の結果」
つまり「仕事⇒成果⇒報酬」
という関係を考え、期待効用が大きいほど行為(仕事)の
モチベーションが高まると考えたのです。
ブルーム氏は、500以上の選考実験・調査の結果を整合的に
説明する枠組みを考えましたが
自分自身では検証できていません。
検証しようとすると、効用の個人間比較のような
問題にぶち当たり検証を強行した他の研究者の実験でも
低い相関しか見られませんでした。
ブルーム氏の期待理論をモデルをベースに
さらに複雑なモデルを作ることも行われてきましたが、
実質的には、期待値には、期待理論が検証不能な
代物であることをカムフラージュしているだけです。