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2018年06月03日

特許から生じる利益を「広く浅く」得る

ありとあらゆる手段で利益を上げる

模範を防ぐ手段としては、特許権著作権商標権といった

知的財産権があります。 

こうした知的財産権の実施許諾契約・使用許諾契約は

ライセンス契約と呼ばれます。

技術移転、営業秘密の開示を含む契約や

図面等の技術資料の取引なども含まれます。

特許が切れた後も図面については

お金を取ることは可能なのです。



しかも規約だけで権利を守れると考えるひとは

実務の世界にはいないでしょう。

本当に重要な技術であれば100%子会社にすべきですし

それが無理でも提携先に資本参加して取締役や

人も出して権利を守るべきです。



提携という大きな枠組みで考えたとき、

特許から生じる利益の回収方法は実に多様です。

ロイヤルティー(使用料)は、

その1つにしかすぎません。

例えば、技術指導料を取る。

供給する設備や部品の価格に上乗せする。

出資している場合には株式配当としてもらう。

人をお出している場合には、

その人の人件費を出してもらう。

とにかく、ありとあらゆる手段を使って、

広く浅く利益を回収して行くのが、賢いやり方です。



お互いに承諾しあう場合には

クロス・ライセンス契約といいますが、

ロイヤリティーは相殺されてほとんどゼロの場合も多く、

実態は互いに「特許権侵害を訴えたりしません」

という相互不可侵条約みたいになることもしばしばらしいです。

「まね」立派な戦略だ

模範を防ぐ法的手段も設備されているか

先手必勝とはよく言いますが、ことビジネスにおいて

先発の優位はあり得るのでしょうか。

むしろ後発企業のほうが、

先発企業が苦労して開拓した市場に、

宣伝費やインフラ設備をあまりかけずに便乗できたり、

規格や仕様が統一されてから投資したほうが、

投資効率も良いはずです。

これを後発の優位といいます。



創造的模範戦略』は模倣戦略を唱えます。

先端企業のマイクロソフト社も、

OSもワープロも用計算ソフトも

すべてパイオニア企業の模範なわけで

後発企業が模範戦略を取ることで

成功した事例はたくさんあります。



実際、模範する側の後発企業は、

後発の優位をいかした低コスト・低価格を武器に

@コスト・リーダーシップ戦略で先発企業を出し抜くのです。

偽物の中国製品が大流通するのは

コスト・リーダーシップ戦略が成功しているからですね。



日本では模範戦略のことを同質化戦略

言うこともありますが

同質化することにより競争の軸を価格にするわけで、

同質化戦略コスト・リーダーシップ戦略

は表裏一体と言えます。

とはいえそうやすやすと模範されては

研究開発としても利益が出ないので、

模範を防ぐための手段を考えなければなりません。

コスト・リーダーシップと差別化は両立しない?

現在は二兎追って二兎得られてしまう・・・

戦略ターゲットが業界全体の時は、

基本戦略の内A差別化を取るべきだといいます。

例えばトヨタ自動車だと、

もともと高品質で差別化しているのですが、

更にレクサスだと高級ブランドで差別化しており、

プリウスであるとハイブリッドで

技術的な差別化をしています。



このように複数の面で差別化するのが良い

といわれているのですが、

業界の中でも特異だとみられる何かを

想像しようとするのが差別化戦略です。

もっとも、トヨタに当初のような

戦略的意図があったかはわかりませんが。。。



ただし、A差別化戦略は、

やるのであればお金がかかります。

研究開発はしなければなりませんし、

サービス・販売・広告にも手は抜けません。

そのため差別化戦略

コスト・リーダーシップ戦略は相いれません。

@Aを同時に追求すると

「二兎追うものは一兎も得ず」に終わります。

これをスタック・イン・ザ・ミドルといいます。

要するにどっちつがずだと

失敗しますよというわけです。

競争を勝ち抜く基本的な考え方

「コスト・リーダーシップ」「差別化」「集中」

アメリカの経済学者ポーター氏は

戦争の戦略』の中で、

とあるべき基本戦略として、

@コスト・リーダーシップ戦略

A差別化戦略

B集中戦略

の3つを上げ使い分けるように主張しています。



戦略ターゲットが特定セグメントだけであれば、

特性の品種・買い手・地域に絞り込んだ

B集中戦略を取るべきだとしますが、

トートロジーですね。



戦略的ターゲットが業界全体の時は、

例えば、業界内で最も低いコストを実現できれば、

他社よりも高い利益率を上げることも可能ですし、

他社よりも低い価格で売りさばいて、

他社を市場から駆逐することもできます。

これが、@コスト・リーダーシップ戦略です。



ではどうやってコストを下げるのか?

生鮮効率の良い設備を積極的に建設し、

がむしゃらに量産することでコスト削減を


図るというのも手ですが

それだけでは足りません。

零細な顧客との取引は切り捨て、

研究開発・サービス・販売・広告など

のコストを最小限に切り詰めるのだそうです。

なんだかやりすぎのような気がします。

しかし、そもそも基本戦略は

どれか1つを選んで成功させないと、

利益はあがらないとされているのです。


MAIKERUPO-TA-.jpg
マイケル・ポーター氏〜

アメリカの経済学者。

ファイブフォース分析やバリュー・チェーンなど、多くの経営理論を提唱した。

今なお戦略思想の第一人者として君臨している。

「内部展開」と「買収合併」のいいとこどり?

ライバル会社同士の意外な提携も

内部展開合併買収を対比して使ってきましたが、

実際にはその中間もあります。

いわゆる提携です。

例えばジョイント・ベンチャー、略してジョイベンは

合弁企業を共同で設立するケース。

あるいは他社でも製品の製造・販売ができるように、

特許等の使用許諾を与えるライセンシング

クロス・ライセンシング

そして相手のブランド製品を生産し供給する

OEMなども提携です。

OEMは、自動車業界でよく使われている印象です。



提携自体は別段珍しいことではありませんが

意外なライバル企業同士が唐突に提携を発表して

世間をにぎわすことがありました。

「左手で握手しながら右手で殴り合う」とも例えられ、

戦略サファリ』で

「結局、他のドメインでは競争相手となる」

と評されています。

常識的には、なぜ提携するのか理解できないので、

おそらく高度に政治的な判断が

あってのことだろうと言う事で、

戦略的提携と呼ばれるようになりました。



しかしながらそもそもこの場合でいうと

提携する理由が希薄なので成功は難しいのです。

にもかかわらず、

意外性があればるほどマスコミ的にはうけるので

ニュースとして報道れされ株価が一時的に反応を起こします。



〜戦略的提携の種類〜

 ・コラボレーション広告

 ・研究開発のパートナーシップ

 ・リース・サービス契約

 ・流通チャンネルの共有

 ・技術移転

 ・共同入札

 ・クロス・マニュファクチュアリング

 ・資源開発ので起業化

 ・政府と業界のパートナーシップ

 ・合弁スピンオフ

 ・クロス・ライセンシング



他社にまねできない自社だけの能力

「硬直化」と背中合わせの発想

1980年代になると、世界中から

日本式の経営が注目されました。

欧米企業が、既存事業のなかでちまちまと

選択と集中などと言っている間に、

日本企業は、現有能力・資源をはるかに


超えた野心的目標を掲げ、

能力を鍛えているではないか・・・・

とまで評されたのです。



こうした日本企業の研究をもとにして、

コア・コンピタンス経営』では

「 顧客に対して、他社にはまねできない自社ならではの

   価値を提供する、企業の中核的な能力 」を

コア・コンピタンスと呼びました。

そして欧米企業の戦略の発想が

事業を単位としているのに対し日本企業の戦略は

このコア・コンピタンスをベースに発送されていて、

これを活用、強化する戦略がとられているとしたのです。



昔からある日本企業の多角化は

内部展開型ですからコア・コンピタンスの

活用・強化を考えていたというのは本当でしょう。

合併買収による多角化が基本の欧米企業とは

所詮、戦略の発想の仕方が違います。



ただ、「これぞわが社のコア・コンピタンス」

としがみつけば、硬直化するのが普通です。

殻にしがみついているとジリ貧に陥ります。

次元領域は自ら定める

自社の「立ち位置」を狭く考えがち

成長率やシェアを測る「市場」とは何でしょう。

実は、客観的には存在しません。

例えば、ビールには発泡酒や第三のビールを含めるでしょうか。

ノンアルコールビールはどうでしょう。。。



市場の境界は、社会が主体的、

主観的に決めるのものです。

こうした事業領域のことをドメインと言いますが

どうしてもドメインは狭く考えられがちです。

それをマーケティング界の大家レビット氏は、

マーケティング近視眼と呼びました。



ひとつの例を挙げると

かつてアメリカの鉄道会社に独占的利益を

享受していた会社がありました。

この会社は事業を機能的に「輸送」手段と定義できず

物理的に「鉄道」と定義してしましました。

そして事業は陳腐化していきます。

もしこの時自社の事業を

「人や物資の輸送」と定義していれば、

鉄道事業が衰退しても、

トラック輸送や航空輸送への

多角化は可能だったはずです。



ドメインは一度定義したらおしまいと

いうわけではありません。

会社の全社戦略にとって、

ドメインをどのように再定義していくかが

まさに基本中の基本となります。

会社が長期的に存続し成長していくためには、

ドメインがある程度余裕を持った広がりを

持っていないといけないのです。

「市場成長率」×「市場シェア」で事業を取捨選択

選択と集中のためのマトリックス

多角化が注目されたのは、

当時アメリカは合併買収ブームで、

その主役がコングロマリットだったからです。

しかし、関連性が低い分野に

多角化すれば失敗しやすいし、

会社の寄せ集めに過ぎない持株会社形態では

統一的な経営も難しい。



こうした中で、製品系列を整理して、

選択と集中を行うための分析ツールとして登場したのが、

プロダクト・ポートフォリオ・マネジメント(PPM)です。



〜2つの経験則〜

  A)市場成長率が高ければ

   成長についていくためにお金がかかるが、

   成長率が下がればお金はかからなくなる

  B)市場シェアが高いほど、

   生産効果が聞いて生産コストが下がるので

   利益が出るようになる。



市場成長率と市場シェアの高低で

ポートフォリオ・マトリックスを作れば、

お金の出入りで取捨選択の方針が得られます。



〜ポートフォリオ・マトリックス〜

@お金のなる木:入大・出小なので資金源に

A花形:入大・出大で華やか。

 シェアを維持すればお金の生る木に

B負け犬:入小・出小ですでに勝負はついており、

 売却等で投資を回収すべし

C問題児:入小・出大でこのまま負け犬に転落するか、

 積極投資でシェアを拡大して花形を目指すか
product-portfoliomanagement1.jpg

多角化するなら本業に近い分野で

成功したロジックを共有しやすい利点がある

どのような多角化の仕様が、効果が高いのでしょうか?

ルメルト氏は『多角化戦略と経済効果』で、

まずは専門比率・垂直比率・関連比率を駆使して、

専業・本業中心・垂直的総合・関連事業・非関連事業と

いった多角化のカテゴリーに分類することを考えました。

そのうえで業績を比較すると、関連の薄い分野や

関連のない分野に進出するよりも、

本業に近いところで多角化したほうが、

業績が良かったことが分かったのです。



では、なぜそうなるのでしょうか?

それには後にプラハラッド氏とベティス氏が

提唱したドミナント・ロジック

関係しているのではないかと考えられています。

ドミナント・ロジックとは、

一言でいえば、「成功の方程式」です。

それぞれの組織で、これまでの長い経験のなかで、

失敗したロジック(考え方)は捨てられてきました。

これは組織学習の一種で、

アンラーニングと呼ばれます。

このアンラーニングによって、

成功したロジックだけが選び抜かれ、

組織の中に残っていくわけです。

そして組織の課で共有され、

支配的なロジックになっていく。

それがドミナント・ロジックです。



たとえ異業種であっても、

自分たちの成功の方程式が使えるような事業であれば、

新規事業進出の成功確率は当然高くなります。

これも一種のシナジー効果です。

多角化によって生まれる一石二鳥

多角化のメリット

多角化することによって何か良いことがあるのでしょうか???

よく言われているのがシナジー効果です。



シナジー効果は相乗効果とも呼ばれ、1+1=2ではなく

3にでも4にでもなることを示しています。

例えば、鉄道会社が、多角化の一環

としてバス事業にも進出して

駅から沿線の住宅地へバスの路線を開設すれば

沿線住民にとって、その鉄道駅は利用しやすくなります。

それまで他の鉄道を利用していた人も吸収して、

その鉄道路線の利用者は増えるでしょう。

更に長期的には、

便利になった鉄道沿線の人口も増えるので

鉄道もバスも利用者が増えていくはずです。

これがシナジー効果です。



それに対してある事業で空いた能力を

その他の事業に回すような場合には、

相補効果を呼ぶこともあります。

ただし、厳密な意味で、相乗効果

相補効果を分けることは難しいです。



たとえば、工場の敷地の空きスペースを

駐車場にして貸したりする場合でも、

いっけん相乗効果はなさそうですが、

実際には毎月に1回のペースでやっている

草刈作業がいらなくなったり、

駐車場を利用しているひとが工場の売店も

利用してくれるようになったり、、、

と、すぐにシナジー効果が発生します。


いろいろな事業に進出する戦略

戦略の中でも一番ポピュラー

戦略という言葉が、経営学の分野で

使われるようになったきっかけは、

おそらく多角化の成長戦略でしょう。

今でも戦略という言葉が

一番しっくる使い方だと思います。

ここで多角化とは、簡単に言ってしまえば、

1つの会社がいろいろな事業に進出することです。



例えば、東京の私鉄は鉄道だけでなく、

バスもタクシーもデパートもホテルも経営しています。

大きなメーカーも販売会社、

物流会社、さらには旅行代理店

からタクシー会社までもっている所でもあります。

メーカーで「いろいろな製品を作る事」ではなく

「色々な産業に進出する事」が多角化なのです。



アンゾフ氏は『企業戦略論』で

成長ベクトルを考え製品も市場も新規の場合を

多角化とし、それ以外は拡大化と分けています。

そして多角化をさらに、

@水平的多角化

A垂直的総合

B同心的多角化

Cコングロマリット的多角化 に分けます。



アンゾフ氏のイメージしている多角化は、

昔の日本企業が良くやっていた

内部展開型の多角化ではありません。

合併買収によりほかの会社を吸収したり

子会社化したりて進めていく多角化なのです。

そんな中、関連性の低い広範な産業に進出した企業は

コングロマリットと呼ばれ、

1960年代後半以降アメリカを席巻していきます。

仕事を進めながら現場でひらめいた戦略

当初の計画ガチガチではない戦略も大事

リーダーたるもの計画も立てずに

行き当たりばったりで会社を経営するのは、大変です。

毎年だいたい同じ時期に同じようなことを

しなければならないのに

毎年「去年はどうだったっけ」の繰り返しでは進歩がありません。



実際、普通の会社では年間行事表くらいはあるし、

3年や5年の中長期の経営計画を

立てている会社もあります。

ただし、およそ計画道理にはいかないというのも世の常。

普通にやっているはずなのに遅延したり、

途中で頓挫したり、

中には「もっといいことを考えついた!」

とばかりに計画を変更してしまったりと

計画とは変えるためにあるもの・・・です。



最初は意図された戦略があったはずだとします。

でも計画通りに実現されたのは、その一部。

実際に実現された戦略を見てみれば、

当初から計画されていた計画的戦略だけでなく、

途中でやりながら考えついた戦略も取り込まれているはずです。
ミンツバーグ氏は創発的戦略と呼びました)



格好つけて言えば、

計画厳格に実行することではなく、

創発的戦略を含めた戦略的学習プロセスを

マネジメントすることが

リーダーの仕事なのです。

赤信号、みんなで渡れば怖くない

慎重になりすぎることもあるが・・・

1961年、アメリカのキューバ侵略作戦が

失敗したときケネディ大統領は

「なぜあんなバカな決定をしてしまったのだろう」

とつぶやいたとか。

アメリカ大統領という究極のリーダーが、

優秀なスタッフをそろえたはずなのに・・・



リーダーシップ論を含め、

実践的手法を導入した集団学力では、

手段を対象にして、

様々な実験が行われてきました。

その中に人間は集団になると勢いが

つくというものがあります。

リスキー・シフトと言われますが、

いわゆる

「赤信号、みんなで渡れば怖くない」

的な実験結果です。

そのために、本来は「集団思考」と訳すべき

group thinkが「集団浅慮

と批判を込めて訳されたりするわけです。



ジャニス氏は『集団浅慮の犠牲者』でキューバ侵略ではなく、

北朝鮮侵攻、真珠湾攻撃、ベトナム戦争における

決定を事例として、

集団になると誤った決定をする可能性が

高くなると警鐘を鳴らしました。



もっとも、逆に慎重になる

コーシャス・シフトというものもあり、

一筋縄にはいきません。

個人レベルでもトバルスキー氏とカーネマン氏の

プロスペクト理論のように、

不確実性が意思決定バイアスをもたらすことが

知られているので、

結局、リーダーもふらふらしている?

リーダーはどんな仕事をしているのか?

リーダーはコミュニケーションに時間を割く

実際のリーダーは何をしているのでしょうか?

どうなふうに経緯戦略を練り、

どんなふうにリーダーシップを

発揮しているのでしょうか?

その疑問に、愚直に答えたのが管理者行動論です。



経営戦略論で有名になる前、ミンツバーグ氏は、

5人の管理者を一週間を詳細に観察して、

マネジャーの仕事』を著しています。

観察した結果、一つの仕事にかけられている時間が短く、

断片化していることがわかりました。

デスクワークでも平均たった16分で次の仕事に移ります。

電話は平均6分、予定外のミーティングは平均12分、

現場観察も平均11分で次の仕事に移ります。



管理者はコミュニケーションに

多くの時間を使っているのですが、

どれも受動的なレスポンスなので、

カールソン氏は糸で操られた

パペットにたとえたほどです。

1人でオフィスに閉じこもり、

じっくり経営戦略を練る、、、

といった管理者はいなかったのです。



コッター氏は『ザ・ゼネラル・マネジャー』で、

事業部長レベルの15人も管理者の活動を調べましたが、

やはり人と会って話をすることに多くを使っていました。

ただし優秀な管理者は、その中で自らの課題を

アジェンダとして描き、会社内部に協力的な

人的ネットワークを構築していたそうです。

「どんな状況にも適応しうる優れたリーダー」は存在しない

リーダーシップは条件次第

2次元で考える場合、

構造づくりを部下への配慮が

どちらも優れているのが望ましい

といったオハイヨ研究的なリーダーシップ論は、

リーダーとしてのあるべき資質を

問うているのと大差ありません。

そんなリーダーシップ研究は、

条件即応モデルの登場で一変します。



フィードラーが『新しい管理者像の研究

に達するまでは紆余曲折ありました。

「最も苦手とする仕事仲間」についての評価をもとにした

LPC尺度を使って、
LPC・・・least preferred coworkerの略

自身も含め研究者たちがLPC得点と

集団業績との関係を探ったのですが

高LPCリーダーのほうがいい

という結果が安定しませんでした。

しかし、研究が進むにつれLPC得点と集団業績の関係が

リーダーシップ状況に依存していたことに気づきました。

これが条件即応モデルです。



つまり、普遍的に優れているリーダーシップの特性や

スタイルなどというものは、

実際には存在しなかったのです。

あるリーダーは、ある条件下で優れたリーダーでも

別の条件下ではそうではなかった、

考えてみればそのような事例は

歴史上の偉人でも身の回りの人でも

たくさん見つけることができます。

リーダーシップは、微妙な対人関係の

文脈に依存しているのです。

どんなリーダーが組織をうまく動かせるのか?

専制的なリーダーでも、短期良いなら業績はあがる

優れたリーダーとはどんなリーダーか

みんなそんな話が大好きです。

戦国時代の武将の話がビジネス誌をにぎわせ、

「リーダーシップ論」と称する某大学の人気授業では、

経営者を次々招いては、とにかく武勇伝を聞くのだとか。

実際、第二次世界大戦のころまでは

リーダーの資質が注目されていました。

それが年代になるとリーダーの資質ではなく、

リーダーシップのスタイルを科学的に研究する

リーダーシップ論がでてきます。



アメリカのミシガン大学では、

リッカート氏が中心になって

リーダーの行動と業績に関係を調べました。

その結果、例えば、階級階層的に上下関係でガンガンやれば、

短期的に業績は高くなっても長期では悪化し、

不満がたまり人は辞めていき

対照的に、参加的にやれば、

長期的に業績が上昇していくことがわかりました、

アメリカのオハイヨ州立大では、

部下の仕事環境を整える

構造づくりと部下への配慮の二次元で

リーダーシップをとらえ両方とも

高いリーダーシップ行動が

良い結果につながるという、

ある意味当たり前の事がわかりました。



日本でも三隅二不二氏が集団における目標達成や

課題解決に関するP行動集団の維持に関するM行動の

両方を兼ね備えたリーダーが望ましいとする

PM理論を提唱しました。

人間はもともと「怠け者」なのか

人間の本質に挑む数々の実験

科学的管理法を唱えたテイラー氏は、

怠業の理由としてもう一つ自然的怠業を挙げていました。

人間は本能として楽をしたがるので怠業するというのです。

ところが、そんなテイラー的人間観を

否定する研究が次々出てきます。



マクレガー氏は『企業の人間的側面』の中で、

テイラー的な考え方をX理論とし、

それに対して、当時新しく出てきた研究蓄積は

生来人間は仕事が嫌いなわけではなく

条件次第で自発的に働くという事を

明らかにしているとして

それらをY理論と呼びました。



またバーズバーグ氏は面接調査の結果から、

達成や仕事そのものや

責任は満足をもたらす動機付け要因だが、

給料などはもっぱら不満足を予防するための

衛生要因だとする動機づけ衛生理論を提唱します。

後に『仕事と人間』では、多くの追試を紹介し、

予想と違う結果になったものは

3%にも満たないと結論付けます。



人間の欲求は最低限の生理的欲求から始まって

最高次の自己実現欲求まで5段階に分かれていて、

各段階の欲求が満たされるとより高次段階の欲求を

するようになるというマズロー氏の欲求段階説は、

いまだに人気ですが、

1970年代には科学的に否定されています。


「達成感」が基本

お金」はインパクトが強すぎる

ブルーム氏はその著書の中で、ある画期的な予想していました。

それは、人は外的報酬とは無関係に、

高いパフォーマンスからは高い満足度を

引き出しているというのです。

確かに、子供のころテストで100点を取れば、

誰だって嬉しかったはずです。

それは100点を取ったら親から「報酬金」がもらえる、

なんてことがなくても、うれしいのです。



実は単純なストーリーを邪魔していたのが

金銭的報酬だったことがわかります。

ブルーム氏の指導を受けたデシ氏は『内発的動機付け』で、

面白い実験をしています。

大学生を使ってパズルを解かせる実験をするのですが、

学生は、途中で金銭的報酬をもらうと、

自由時間を休憩にあてるようになってしまうのです。



これは、お金がモチベーションに効果がないと

いっているのではありません。

逆に、インパクトが強すぎるのです。

もともと仕事自体が報酬だったのに、

金銭的報酬は仕事と満足の間に割り込んで、

「仕事⇒金⇒満足」と分離してしまうのです。

こうして一度お金のために仕事をするようになると

もうおしまいです。

あとはお金をもらえなくなると満足も得られなくなり、

仕事をする気もまた、無くなってしまうのです。


見返りが大きいほどやる気は出る?

効果的な「見返り」は人それぞれ

金銭的報酬のような外的報酬による

モチベーションの理論の代表は期待理論です。

これは打算的で合理的な人間を仮定しており、

わかりやすく言えば、馬の鼻先にニンジンをぶら下げて

食べたら買ったら走ってみろという理論です。



期待理論を現代のようにな比較的完成させた形にまとめたのが

ブルーム氏の『仕事とモチベーション』です。

言っていることの途中までは

ミクロ経済学の期待効用理論と同じです。

単純化すると「行為⇒1次の結果⇒2次の結果」

つまり「仕事⇒成果⇒報酬」

という関係を考え、期待効用が大きいほど行為(仕事)の

モチベーションが高まると考えたのです。



ブルーム氏は、500以上の選考実験・調査の結果を整合的に

説明する枠組みを考えましたが

自分自身では検証できていません。

検証しようとすると、効用の個人間比較のような

問題にぶち当たり検証を強行した他の研究者の実験でも

低い相関しか見られませんでした。



ブルーム氏の期待理論をモデルをベースに

さらに複雑なモデルを作ることも行われてきましたが、

実質的には、期待値には、期待理論が検証不能な

代物であることをカムフラージュしているだけです。


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