まず。主人公のアランがイメージしていたフランスの50代男性とはちょっと違っていた。
ドルフマンが「この人は元軍人か?」と尋ねてしまうほどの強面で体格もよい。
フランス男性って細身で小柄な印象が強いので、
人事部一筋の男が、屈強な体躯なのが意外だった。
ストーリーの大筋のところは変わっていなかった。
その代わり、原作で恐ろしかったフォンタナは小物扱いで、
企業の権力争いや裁判の勝ち負けに焦点が絞られていた。
フォンタナがホントに恐ろしいほど怖いのが魅力だったのに!
それと、シャルルの人柄にブレがあった。無欲で善意の塊のようなシャルルが
ハッキングのプロっていう設定はどうかと思う。
そこは、もう1人ちゃんと同僚役なくさない方がよかったのでは…。
ドルフマン殺しても終わりってわけじゃないのに。
主人公の一人語りではないので、アランの揺れる心のうちは沈黙のまま。
どこまでが彼の戦略で、どこからが運だったのかも
ドラマをみただけではわからない。
原作は一章ごとに、なんどもハラハラドキドキ、そして絶望を味わう。
ドラマでは、アランの苦しさをあまり追求していない
「ブレイキング・バッド」くらいのスパンで描いてくれたら…もっと
感情移入できたのだけど、原作があるし、結末も決まっているから、そうもいかないのかな。
印象深かったのは、裁判のシーン。
人民を誘導することに、極度な不快感を表す裁判長。
陪審員制度が定着しているから、素人の意見を揺さぶられるのは嫌なのだろうな。
それに、なんといっても「集団心理」by.ル・ボンの怖さを知っているお国柄。
「正義」が変化することも重々承知。ここはホント見ごたえありでしたな。
アランの自宅の荒み感も、とても雄弁だった。失業年数も4年から6年に優れているから、
たしかに、もう、生活ギリギリって感じなのね。
義理の息子のへっぽこな感じもいい。ニコルの美しさも。実は不倫していたのも、理解できる。
原作でもほんとは不倫してたかも、アランが気づいていなかっただけでね。
なんだかだ、原作と比べながらでも
たっぷり楽しめた作品でした。
ドラマを観てから原作にチャレンジするのもアリです。
ゾクゾク感は原作の方が勝ってます。
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