「外国語をマスターするのに一ばん大事なことは、外国語のスタイル或はさらにはつきり言つてしまえば、外国語の「癖」に慣れることです」(丸山真男『戦中と戦後の間』みすず書房 378頁)
外国語と言っても、私もそうですが、ほとんどの人にとっては英語になると思います。
英語がなかなか読めない、聞き取れないという悩みがありますね。
英語には英語のスタイル、形がありますから、まずは、そのスタイル、形に慣れることですね。
そのためには、どうすればよいのでしょうか。
「要するに大事なことは決して、ひつくり返して――つまり日本語の文法に直して読まないで、原語の配列をくずさないで理解するように練習することです」(同書 379頁)
どうしても、ひっくり返して、日本語にしようとしますが、そうしますと、英語が読めるようにはなりません。
ひっくり返しているうちにこんがらがり、意味不明になってしまいます。
英語は英語のスタイルがあるという点を忘れずに、原語の順序のまま理解することですね。
そうしませんと英語ではありませんし、少なくとも聞き取りは不可能でしょう。
もちろん読むときにも、いちいち、戻っているようでは、読めません。
英文の構造を分析する時は、ひっくり返したり、戻ったりしてもいいのですが、単に読みたいときには、前から頭から理解することです。
英文を日本語にする翻訳する能力と英語を英語として読解していく能力とは、違いがあるように思います。
翻訳する能力の方が一段と高度であると思いますね。
英語の力だけでなく、その英語を日本語にする力まで要求されますから。
しかし、英語を英語として理解する能力は、その英語を日本語にするわけではありませんから、その分手間もかからず、英文をひっくり返す必要もなく、左から右に目を移動させ、理解すれば事足ります。
英語を英語として理解することが困難な場合、その英語が日本語でどのような意味なのかを確認し、日本語の助けを借りながら理解を進めることはありますが、あくまでも理解の補助のために日本語を使用するという姿勢でいることが大切です。
どのような英語でも日本語にしないと気が済まないというのは、学校英語の枠内での思考でしょう。
実際に、英語のニュースを読み聞きするときに、すべてを日本語にする時間などありありません。
英語を英語のまま理解しなければ、どうしようもありません。
英語を英語のまま理解することを意識しながら英語を勉強することが肝要ですね。
英語を日本語にすることを学ぶのではなく、英語の語順そのままで英語を理解することを学ぶのが本来の英語の勉強でしょう。