藤原保信氏の『西洋政治理論史』の叙述スタイルについて、「解説」では4つの特徴を指摘しています。
この4つの特徴は、取りも直さず、日蓮教学研鑽に必要な姿勢であると思われます。
以下で4つの特徴を確認してみましょう。
1 「テキストをして語らしめるかのように、原典からの引用を重視」(『藤原保信著作集』第4巻 解説 新評論 387頁)
2 「思想の全体性を統一的に理解しようとする手法」(同書 388頁)
3 「既存の研究の蓄積を踏まえたきわめて正攻法のもの」(同書 同頁)
4 「自らの理論家としての問題関心をストレートに表現」(同書 同頁)
当然のことながら、日蓮教学の研鑽ですから、日蓮の書、御書そのものが第一次資料として重要になります。
まずは、御書の引用が必要です。
その上で、日蓮を一面的に把握するのではなく、全面的に把握することです。「思想の全体性を統一的に理解」するとは、まさにこのことですね。
また、日蓮研究での業績の蓄積がありますから、その業績を確認しながら、オーソドックスな研鑽を心掛けることですね。突拍子もないことを言っても仕方がありません。
しかし、御書を引用し、全体的・統一的に把握し、正攻法の研鑽をするにしても、それだけでは、根本的に何かが欠けていると思われます。
つまり、研鑽者自身の問題関心がなければ、ただの字義解釈に終わってしまいます。
やはり、研鑽者自身の視点、問題関心、生命の充実があってこそ、日蓮教学研鑽は活きてくるものです。
日蓮の御書を鎌倉時代のだけのものにするのではなく、現代に蘇えらせる研鑽が必要です。
結局は、研鑽者自身の境涯がポイントとなります。最初から境涯が高い人はいませんから、日蓮教学を研鑽していきながら、境涯を上げていけばよいでしょう。