「曼荼羅本尊だけでなく、他の書状等に用いられた料紙が、ごく精密に調整されているのを見ると、いわば紙の扱いに長じた技術僧が、身延山の僧団のなかにいたに違いない」(『日蓮 久遠のいのち』平凡社 104頁)
日蓮は、曼荼羅本尊を多く残し、また、数々の書状を門下に与えています。紙の量は相当なものになります。
日蓮の執筆活動において、紙を準備する人々が大きな役割を担っていたと考えてよいでしょう。
法を広げようとしても、いくら聖人ほどの人であっても、人間一人の力は知れており、支える人々がいなければ、法は広がりません。
執筆活動を重要な活動としていた日蓮にとって、紙を精密に調整する人々の存在は大きかったといえます。
書くべき内容を持っていても、紙がなければどうしようもありません。
現在と違って簡単に良質な紙が手に入る時代ではありませんから、然るべき調整ができる人々がいなければなりません。
日蓮の周りには、紙を調整することができる人々がいたわけですから、現在に至るまで、日蓮の仏法は生き続けています。
日蓮に感謝すると共に、歴史に名前は残っていませんが、日蓮の曼荼羅本尊、書状のための紙を準備した人々にも感謝したいと思います。
偉大な人物の周りには、その偉大な人物を支えた多くの無名の人々がいることに思いを馳せながら、偉大な人物の残した法を大切にしたいと思います。