2011年09月01日投稿。
下らないものを御守りだなんて思って持ち歩いて、それをちょっと付け忘れただけでもう何にもできない何もかも終りだ、なんて思って。
何てちっぽけな人間。何てちっぽけな生き方。
でも、きっと、そんな生き方しか出来ないから。
あぁあ。すがるものがなくたって、生きていけるような強い人間に生まれてたらなぁ。
序章/いきる
「ん」
「うわぁ、くれるの? ありがとう!」
乱雑に差し出したそれをすごく嬉しそうに受け取って、ばっかみたい。
私にはそれの価値なんてよく分からないんだけど、まぁ、こいつには貰って嬉しい程度には価値があるらしい。
「んじゃ、そういうことで」
私は鞄を引っ張って、それをそのまま肩に回して持つ。そしてくるりと半回転。
「あ……、もう、帰っちゃうんだ……」
しゅん。
後ろで寂しそうな声。
「気を付けて、帰ってね」
「……、」
なんなのよいったい。
私は理不尽な気持ちをぶつけそうになる、のをぐっと堪えて、振り返らないまま、じゃ、と小さく言ってから病室から抜け出す。と、その瞬間、
「またね」
ふんわり、後ろから声が聞こえる。いつもと変わらない、柔らかな声。
だから何だってそんなへらへらしてられんのよ!
叫びたくなる。
と、同時に胸が締め付けられたかのように感じて、何も言えなくなる。自然、足も止まる。
すると、ぴたりと立ち止まった私に、再び声が掛けられる。いつものように、ふんわりと、さっきと変わらない声で。
「今日、来てくれて嬉しかった……」
「……」
「……」
流れる沈黙。
でも分かる。振り向かなくたって。
君はいつもどおり、困ったような顔で、いつもどおり、笑顔で……。
それが、とても、悔しくて……。
「ん」
軽く返事をして、ひらひらもう一度手を振った。決して振り向かない。そのまんま、ばいばい。
私は、ゆっくり手を下ろすと同時に、再び歩き出す。
後ろで何か聞こえた気がするけどもう知らない。聞こえなかったふりをする。
だって。
「悔しさで歪んだ顔なんか見せられるわけないでしょ、バカ」
私はぽつりと呟いて、胸の内に隠した狂気に手をつける。
そして病院からも抜け出して、暫く歩いて振り返り。
何だってそんなへらへらしてられんのよ。
込められるだけの殺意と愛情を込めて、病室の方を睨み付けた……。
そう長くはないでしょう。
結果は聞かない。
虚しくなるから。馬鹿馬鹿しいから。
こうしていられるだけで奇跡と思った方が、
近くの声ですら遠くで聞こえて。
正直もう、何もかも面倒臭い。
結果は聞かない。分かりきっているから。
結果は言わない。悲しみに歪んだ顔なんて見たくないから。
酷い自分。
最低の人間。
でも、仕方ないよねぇ。
ベッドの上からぼんやり外に目をやって、馬鹿馬鹿しくなってふっと笑いながら、流れそうになるものを堪えていた。
だって、堪える以外の選択肢なんかないじゃない。
ふふっ、
ふははっ、
はははははははっ
あぁ、どうして今君が傍にいてくれないんだ、なんて、ね……。
夜の街。ビルの上。世界を見下ろす。
なんて小さくてごみごみした世界。
私は鼻で笑う。
「こんな世界のために戦わなきゃなんて、ねぇ」
なんて理不尽。
手に持った短刀をスッと鞘から抜き出す。と同時、後ろから声がする。
「こんな世界だから、だろう」
背後には、いつの間にやら和装の青年が立っていて。
馬鹿みたい。
理不尽極まりないわ。
そう思いながら、その反面。
にやり、口元を歪める。
「さぁ、」
「鬼狩りを始めましょうか」
射切る/了
※序、ですが、今のところ、続く予定ないです(爆)
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