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自作小説3

【6月18日 6:47 東京・千駄ヶ谷 東京体育館】
次の日、朝早くから目の覚めた英二は再度礼の携帯に電話を掛けていた。しかし、全く応答は無かった。
先ほど係員に訪ねてみたが、まだ被害現場からの避難民全員の確認は取れていないらしかった。
遅い!と言いたかったが、そんな事を言っても意味は無いので、確認が済むまでと思い我慢する。その心には段々と不安や焦りが出始めていた。昨日は無理でも、今この時間にもなれば向こうから、心配かけたけど無事だ、くらいの連絡があってもいいはず。例え携帯を落としたりして所持していなくとも、他人に借りることは出来るはずだ。こんな状況、誰でも事情くらい察してくれるだろうに…。
最悪の事態を想定し、震えている手でスマホの画面をいじる英二の肩が突然叩かれた。
「!!」
「あ、すいません。驚かせてしまいましたね。避難民の情報をお尋ねになっていましたよね?」
先程訪ねた係員だった。どうやら確認が終了したようだ。
「や、山石礼という名前なのですが!」
「山石礼さんですね、少々お待ちください。」
そう言って係員は手元のタブレットを操作し始める。これでやっと安心出来る、英二はそう思っていた。
しかし数秒後、係員の顔が曇り始めた時、英二は再び不安に押しつぶされそうになった。
「ど、どうしたんです…?」
「え、あ、いや、も、もう少々お待ちください!」
「まさか、居ないんですか!?」
「…。申し訳ないですが、避難民の中にそのような名前の人物は確認出来ません。」
目の前が真っ暗になる、という言葉を英二は今理解出来たと思った。その場に崩れ落ちる。
「ひ、避難民は、本当に、本当にそれで全員なのですか…?」
「はい、間違いありません。」
「見落としとかはあり得ませんか…?本当に全員確認したんですか!?」
「間違いありません!!」
「そんな、そんな、礼、嘘だ…お前まで…お前まで…。」
「も、申し訳ありません、失礼します。」
係員は急ぎ足でその場を去っていった。そこへ朝食の配給を貰いに行っていた同僚が戻ってきた。
「おい、英二どうした。」
「今避難民の確認をしたが、礼が、礼が居なかった…。」
「な!?」
もう生気のない顔をした英二に、同僚はなんと声を掛けたら良いのか咄嗟に思いつかなかった。


一時間後―
見かねた同僚の提案で、自衛官護衛のもと英二は自宅を見に行く事にした。聞くところに依ると、それを希望する家族は少なくないようだ。
「英二!大丈夫か?」
「あ、あぁ、大丈夫だ…。」
「それでは、出発させて頂きます。」
英二は一日ぶりの変わり果てているであろう我が家を目指した。


しかし二十分後、まだ到着しない場所で車は止まった。
同乗していた自衛官が、ゆっくりと口を開く。
「英二さん、現場付近の探索を行っていた隊員に、あなたのご自宅を調べさせました。非常に申し上げにくいのですが、奥様、そしてご子息と思われる遺体を発見したとの事です。」
「そう、ですか。ありがとうございました。」
「あの、このままご自宅へは向かわれますか?それとも戻られますか?まだご遺体は現場にありますが、その、なんといいますか、見るも無惨なことになってると…。」
「それは、それはどういう、ことですか…?」
「両者共、首から上が、ございません。」
英二は一瞬言葉の意味が分からなかった。理解出来た時、防衛本能だろうか、気絶した。








【前日 22:28 東京・三鷹 山石家二階・礼自室】
クローゼットに隠れてからどれくらいの時間がたっただろうか。スマホは電源を切り机の上に置いてあるし、余計な音が鳴っても困るので時計もベッドの上だ。時間感覚はもう無い。
時折遠くから銃声や爆音が聞こえてくる。やっと助けが来てくれたようだ。
(もうすぐ助かる…!)
その音に僅かだが希望が芽生える。心に落ち着きも戻ってきた。だが、戻ってきた結果、さっきの惨状を真っ直ぐに受け止めることとなり、別の意味で平静を保てなくなっていた。
(母さん、あれは確かに母さんだった。あいつは母さんの頭を食っていたんだ…。)
最後の会話が喧嘩で終わった事を深く後悔する。こんなことなら謝って、また次に頑張る、とでも言えばそこまでの喧嘩にならずに楽しく会話しながら晩飯を食えたかもしれない。そう思うと涙が溢れて仕方なかった。
しかし、突然聞こえてきた階段の軋む音でその思いはかき消された。
今この家の中に居るのは奴しか居ない。
(上がってきたのか!!)
足音はドアの前で止まった。
バキィッ!!
ドアが破壊された音だろう。礼の顔から血の気が引く。
(バレてる!?なんで!?なんで!?)
部屋の中に奴が入ってくる気配がする。まっすぐクローゼットに向かってくる。間違いない。奴はここに人が居る事が分かっている。
(狼みたいな奴だったし、鼻でも良かったのか…?こんな事なら武器でも持って隠れれば…)
「所詮獣か。役立たずめ。」
(…え?人の声…!?)
驚愕する余裕も無く、礼の意識はクローゼットの扉の砕かれる音、そして体に何かが刺さる痛みを感じながら消えていった…。


続く

Roy
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