アフィリエイト広告を利用しています

広告

posted by fanblog

自作小説2

【同日 同時刻 東京・新宿】
礼の父、山石 英二は仕事を終え、新宿駅のホームで電車を待っていた。ホームを見渡す限り空いているので、座って帰れるだろう。
「帰ったらまた礼に説教か。嫌だねぇ」
妻からの連絡によるとまた礼が反抗し、暴言を吐いたらしい。年齢や時期を考えれば仕方の無い事と思うが、親としてはやはり叱らねばならない。
妻と息子それぞれに事情を聴くためメールを送りながら丁度到着した電車に乗り込む。そのとき構内放送が流れ、暫く停車する旨が伝えられた。三鷹駅での人身事故の影響らしい。
「よりによって降りる駅でかよ。こりゃ遅くなりそうだ…」
座席に座り、少し眠ろうとすると携帯が震えた。
見ると、息子からである。
「父さん、詳しくは話せないけど、色々あって電話出来ない。だから簡単に文面に出来るだけの状況を知らせる。まず、母さんが死んだ、殺された。勿論俺じゃないけど、人でもない。獣、狼みたいな化け物が家に入ってきてるんだ。そいつが母さんを殺した。俺はたまたま家の外に居たおかげで殺されなかったけど、今自室のクローゼットに隠れてる。外とかの状況は分からないけど、そいつは家の回りにも複数居るかもしれない。それにまだサイレンも何も聞こえてこないから危ない状況なのは確かだ。今何処らへんか分からないけど、まだ仕事場の近くでしょ?そっちが安全とも限らないけど、こっちよりはまだマシだと思うから少しの間そこで待機しててくれ。その他詳しくは後で会えたら話すよ。気をつけてね。電話はこの後電源切るから通じないと思う」
…到底信じられない文章だ。妻が死んだ?化け物?何だそれは?
しかし、読んでる途中で周りが騒ぎ始めた。化け物、狼、その他この件を連想させるような単語が車内を飛び交っている。
本当のことなのか?今すぐにでも電話をかけて本人の口から詳しく聞きたかったが、本当とすればそれはしない方が良い。メール通りなら繋がらないだろうし。
深呼吸をして気持ちを落ち着かせようとするが、妻の死、その事だけは未だ心から理解出来ない。遺体を見た訳でも無いから当然である。
正直なところ、体は震え平静が保てなくなりそうではあるが、それでもまだ気を確かに保っていられるのは、まだその危険な状況に身を置いている息子が心配だからである。
そのとき、構内放送が流れた。
「えー、駅構内に居る全ての皆様にお知らせいたします。ただいま、三鷹駅における人身事故の情報が入ってきましたが、これは人身事故ではなく、正体不明な危険生物によるトラブルと判明いたしました。自衛隊も出動しているようですが、三鷹駅周辺は今も危険な状態にあるとのことです。また、この危険生物の発生原因も不明であるため、只今政府より緊急避難命令が発令されました。駅構内にいらっしゃる皆様は駅員の指示に従って移動を開始してください。」
車内やホームは騒がしかったが、まだ意味が分かっていない人が多数なようで、誘導のための駅員が来ると大人しく従っていた。英二も、礼の無事を祈りながら避難所へ向かった。


【同日 22:18 三鷹駅前】
被害発生から一時間。
コンビニ店員の通報から発覚したこの事件の収束の為に派遣された自衛隊が到着し、化け物への応戦を行っていた。
到着時点での駅前の被害は相当なものであった。
車は悉く破壊されバスは横転し窓ガラスは血で赤く染まっていた。
自衛隊員の中にもすでに犠牲者が出始めていた。
「クソっ、なんなんだこいつら!獣のくせになんで撃たれて平気なんだよ。」
「無駄話は後だ!まだ我々は通報を受けた区画どころか、この近辺の人命の救助さえ出来ていないのだ。このままここでの戦いが長引くほどに犠牲者は増えていく!余計な事を考える暇があったら、手を動かせ!」
「ハッ!」
化け物共は尋常じゃなく丈夫で、少し撃たれたほどでは動きが鈍りさえしない。しかし、全く効かないというわけではなく、撃ち込んでいればそのうち息絶える。
「曹長!キリがありません!戦車での強行突破の許可を!」
「もうとっくに試している!無理なのだ!奴らにとっては生身も戦車も大差がない!」
「なんですって!?」
「もう二台も潰されている!だからここで奴らの殲滅の援護に留まっているのだ!」
「クッ!」
そこからさらに三十分近く経過した。
駅前だけで相当数の個体が確認されていたが、今は半数ほどにはなっている。
上空のヘリからの連絡で、やっと一つだけ進攻出来そうな経路が確保出来たようだ。二部隊がそこから被害区画へ向かう。残りは掃討を続けながら付近の救助活動を始めた。


【同日 23:52 東京・千駄ヶ谷 東京体育館】
英二達は千駄ヶ谷の東京体育館への避難を行っていた。周りは警察や自衛隊で固められ、いつ化け物が現れても被害を出さぬように厳重警戒がなされているようだ。
英二は避難途中で同僚と合流していた。
「奥さん、やられたって本当か。」
「あぁ。」
「丁度住んでるとこ辺りで発生したらしいな、化け物。不運だったとしか言えんな…。」
「…。」
「ま、まぁでも、そんななかで生き残ってる息子は凄いじゃないか!な!」
「あ、あぁ…。」
「…無理な話だと思うがもうちょっと元気出せよ。」
「すまない、しかし礼が心配でな…。」
「大丈夫だ、自衛隊も到着してるらしいし、お前の家、そんなに駅から遠くないんだろ?だったらもう救助されてるさ。明日になればどこの避難所に保護されてるか分かるだろ。」
「そうか、そうだよな。」
英二の顔に少し明るさが戻る。同僚が安心していると、館内放送が流れた。
「えー、只今現場の自衛官から連絡が入りました。付近に現れた化け物全ての反応の消失を確認、その後生存者は全て保護されたようです。現在も警戒は続いているため避難所からの帰宅の許可は出せませんが、事態は収束した模様です。繰り返します…」
英二はすぐに礼に電話を掛けてみる。しかし何度掛けても、只今電話に出る事が出来ません。というアナウンスが流れる。
一瞬不安になるが、保護されたか何かの時に落としたり、避難中で電話に出られる状況ではないのかも、と思い、落ち着かないままではあるが横になった。



続く

Roy
【このカテゴリーの最新記事】

トラックバック

コメント

お名前:

メールアドレス:

ホームページアドレス:

コメント:


この記事へのコメント

   
↑応援ポチお願いします!(。・∀・)y─!!↑
プロフィール

RoyTaka
<< 2014年01月 >>
      1 2 3 4
5 6 7 8 9 10 11
12 13 14 15 16 17 18
19 20 21 22 23 24 25
26 27 28 29 30 31  
カテゴリアーカイブ
月別アーカイブ
最新記事
最新コメント
ミュウミュウ 財布
インパルスガンダム (07/04)
最新トラックバック
↑こちらも応援お願いします(o^冖^o)!!!↑
×

この広告は30日以上新しい記事の更新がないブログに表示されております。