2015年11月25日
【しあわせのパン】出演者・感想・完全ネタバレ
本日の映画紹介。
【しあわせのパン】
![しあわせのパン.jpg](/rikunohana/file/E38197E38182E3828FE3819BE381AEE38391E383B3-thumbnail2.jpg)
【出演者】
水縞りえ:原田知世
水縞尚:大泉洋
郵便屋さん:本多力
広川の旦那さん:中村靖日
広川の奥さん:池谷のぶえ
阿部さん:あがた森魚
陽子さん - 余貴美子
山下時生:平岡祐太
齋藤香織:森カンナ
未久:八木優希
未久のパパ:光石研
未久のママ:霧島れいか
阪本史生:中村嘉葎雄
阪本アヤ:渡辺美佐子
ナレーション(ヤギのソーヴァ):大橋のぞみ
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【感想】
久しぶりの人の温かさの分かるよい映画でした。
深みがあって、何を言いたいかは、
見る人の受け取り方によって変わる映画。
ずるいですけどね~。
3つのストーリーに分かれているから、
どれかのケースは当てはまってくるんです。
私としては、家族中心の2個目と3個目は、
とっても温かい気持ちになりました。
そのバランスを保つための脇役もいい。
なんかパンが食べたくてしょうがなくなりました。
細かなシーンが全て意味がある映画です。
これは何回か見ることで、目線変わるでしょう!
逆に皆さんの映画感想を聞いてみたい映画です。
一度見て、コメント欲しいくらいですよ!!!
【あらすじ】(ネタバレあり)
~~りえのナレーション~~~~~~~~~
初恋の相手はマーニだった。
諸学生のとき家の近くに図書館があって、
そこで立ち読みならぬ座り読みした月とマーニ。
少年マーニは自転車の籠に月を乗せて、
いつも東の空から西の空へと走っていきます。
ある日やせ細った月が言うのです。
「ねえマーニ。」
「太陽をとって。」
「いつも一緒にお空にいるととっても眩しくて。」
マーニは答えます。
「ダメだよ。太陽をとったら困っちゃうよ。」
「太陽をとったら君がいなくなっちゃうから。」
「夜に道を歩く人が迷っちゃうじゃないか。」
「大切なのは君が照らされていて、
君が照らしていると言うことなんだよ。」
マーニのことが大好きで。
私はずっとマーニを探していた。
だけどどんどん周りには、
好きじゃないものが増えていった。
大人になって働いて、いつの間にか大変で、
ただ1人の家族父が亡くなって大変で、
心がひとりで小さくなって、
もうマーニはいないのだと心に決めた。
そして東京で沢山の大変がたまった頃、
水縞君が月浦で暮らそうとそう言った。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
月浦のCAFEマーニ。
客の阿部へ手紙を届けた郵便屋さんは、
カフェに漂うコーヒーの匂いを深く嗅いだ。
水縞は言う。
「おはようございます。カンパーニュが焼けました。」
~~女の子のナレーション~~~~~~~~~
湖のほとりにあるCAFEマーニには、
りえさんの煎れるコーヒーと
水縞君の作る焼きたてのパン
季節のお野菜の料理。
そして遠くからのお客様が泊まれるよう
2階には温かいベットが用意されています。
一年ちょっと前この夫婦が月浦にやってきたとき、
なぜか私はこの2人を見つめていたいと思いました。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
「もう行かなきゃ。」
そう言ってりえの煎れたコーヒーと、
水縞が作ったカンパーニュを食べ終えて、
仕事に戻る郵便屋さん。
阿部を送り出したりえと水縞はカフェを出た。
向かったのは地獄耳の陽子さんのガラス工房。
「出来てるよ。鏡でしょ?あそこにかける。」
驚いて水縞は聞く。
「何で知ってるの?」
陽子は言った。
「私、耳だけは良く聞こえるから。」
~~女の子のナレーション~~~~~~~~~
地獄耳の陽子さんの作品が、
カフェには沢山並んでいるのです。
ひとつ良い事があると、
持っていた小銭をなんとなく貯める事にしています。
こんな風に2人のカフェは、
少しずつ出来上がって行くのです。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
夏のある日。
カフェに泊まりに来た若い女性、齋藤香織。
香織は近くの湖に行き友人に電話する。
「もしも~し。今ビーチ。」
「お土産楽しみに待っててね。」
電話を切って深くため息をついた香織。
1人ボートに乗るが、転覆してしまう・・・
カフェにはもう1人客人が来ていた。山下時生。
久しぶりに訪れるが常連客の1人。
時生と話をしていると、
香織がずぶ濡れのまま帰って来た。
りえに言われてタオルを渡す時生。
その夜はトマトのパンとワインで夕食。
ワインを飲み続けた香織は酔っ払った。
明日が誕生日で本当は沖縄に行く予定だった香織。
しかし彼は急にドタキャンをしたと言う。
酔っ払い全てをりえと水縞に話した香織。
「もう帰らないでここに暮らしちゃおうかな~。」
食事をしながら話を聞いていた時生は言う。
「ここにだっていろいろありますよ。」
そんな時生に絡みだす香織。
「時生君はここの人?」
「じゃあ毎日毎日静かで平和だ。」
「東京と違うもん。」
「東京で働くのってとっても大変なんですよ。」
それを聞いてイラっとした時生は聞く。
「でも好きで東京いるんですよね?」
それに対しても皮肉を言う香織。
「別に。生まれてからずっと東京だもん。」
「分からないと思うよ。君に。」
怒って席を立ち言った時生。
「それを恵まれてるって言うんじゃないですか?」
その夜、寝ようとしていた時生。
外から聞こえてくる声で寝付けずにいた。
外を見ると、香織が泣きながら騒いでいた。
「バカヤロー。」
それを見て笑ってしまった時生。
笑い声に気付いた香織は時生を見て言う。
「バカヤロー。」
翌朝二日酔いの香織。
りえは煎れたてのコーヒーを出していった。
「私もね。無理して笑うことあるんです。」
そして水縞の作ったパンを出して言う。
「素朴なパンもいいですよ~。」
その日は香織の誕生日。
水縞夫婦は時生と香織を連れて買い物に行った。
広川さんの屋外販売所。
季節の野菜や果物、花が売られている。
そこで見つけたひまわりの花。
時生は一本のひまわりを買った。
買い物の帰り道、香織に話し掛けた時生。
「今日誕生日なんですよね?」
「これ。どうぞ。」
そう言ってひまわりの花を渡した。
香織は言う。
「暇なんだったらちょっと付き合って。」
そう言って誘ったのは湖のほとり、
日焼けするために日光浴。
そして時生のバイクに乗せてもらい、
シーサーやチンスコウを探しに町を回る。
見つからないなか、バイクはガス欠。
バイクを押して歩いていると、陽子が声をかけた。
「ちょっとあんたたち。沖縄土産探しているの?」
「いくついるの?」
そう言って香織に渡したもの・・・
『コロポックル』北海道に住むと言う妖精の木彫り。
陽子は言った。
「その人形持っていたら小さな幸せがくるらしいよ。」
香織は返した。
「私大きな幸せが欲しいの。」
一方水縞夫婦は買った野菜と果物で、
ジャムやパンを作っていた。
夜は屋外で夕食。香織の誕生日を祝った。
水縞が作ったのは、
お祝いの日に焼く特別なパン『クグロフ』。
他にも季節の野菜を使った料理が並ぶ。
香織の向かいに座った水縞は、
手でパンを半分にちぎってりえに渡した。
それを見て香織は素直にお礼を言った。
「あの。本当にありがとうございます。」
それに対してりえは言った。
「じゃあクグロフ食べましょうか。」
そう言って半分にナイフで切り、時生に渡した。
時生は半分に手でちぎり、香織に渡した。
食事を終わり夜空を見ていた香織と時生。
香織は時生に言う。
「かっこ悪い奴って思ったでしょ?」
時生は答えた。
「そうっすね~。」
「でもかっこ悪い自分を知っている人が、
大人だと俺は思います。」
「だから香織さんを見たときに凄い笑えたんです。」
「一生懸命幸せになろうとしているんだな~って。」
「もがいたことのある人間じゃないと、
幸せは無いと思います。」
「もがいてもがいて恥かいて、
いいじゃないですか香織さん。」
そして時生は自分の仕事の話をした。
電車のレールを切り替えるのが時生の仕事。
「レールは簡単に切り替わるのに、
俺の人生は簡単に切り替わらないんだなって。」
「線路がずっと続いているように見えても、
自分は北海道から出られないんですよ。」
「なんか俺、もがけないんです。」
時生の話を聞いて香織は答えた。
「それってさ。もがいてるじゃん。」
「来てみればいいじゃん東京に。一緒に行こう。」
時生を月を見ながら答えた。
「無理っすよ。仕事ないし・・・」
「でも俺、今日は月が綺麗に見える。」
翌朝目を覚ました香織。
1階に下りると時生の姿は無かった。
時生は今朝早く帰ったという。
「素朴なパンもいいですね。」
そう言って水縞の焼いたライ麦パンを購入した。
「会社のみんなに食べてもらおうと思って。」
「月浦のお土産です。」
そして帰ろうとした香織はりえに言った。
「私いままでで一番好きな誕生日でした。」
りえは答えた。
「これからもっと良い誕生日が着ますよ。」
水縞も香織に言う。
「また来てください。」
「いつでも家はここにありますから。」
最後に香織は2人に言った。
「時生君にいろいろ付き合ってくれて
ありがとうって伝えてもらえますか。」
バスを待つ香織は湖やカフェの近くの景色を見て、
「綺麗だな~。悔しいけど綺麗。」
そう言った時だった、
バスの後ろからバイクに乗った時生が来た。
驚く香織の時生は言う。
「送るよ。乗って。」
「東京まで送ります。」
香織は笑顔で言った。
「マジで?じゃあよろしく頼むよ時雄君。」
香織の鞄の中ではコロポックルが揺れていた。
~~女の子のナレーション~~~~~~~~~
東京までの距離は1000キロ
誰にでも1人から2人になる瞬間があります。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
遠くで2人の姿を見て微笑むりえと水縞だった。
りえは水縞に言う。
「時生君東京までちゃんと運転できるかな~?」
水縞は答えた。
「大丈夫だよ。僕だって出来たんだから。」
「りえさん。ここで無理して笑うことないよ。」
「僕の欲しいものは1つだけですから。」
りえは聞く。
「何?ですか?」
水縞は答えた。
「内緒です。」
~~女の子のナレーション~~~~~~~~~
秋がやって来ました。
ほどよい日差し。ほどよい気温。ほどよい風。
こんな日は水島夫妻の散歩日和です。
秋はいろんなものが実る季節です。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
栗拾いに出かけた2人。
そして栗を焼き、パンを作った2人。
誰もカフェにいないのを確認して、
こっそりガラス細工を置いて帰ろうとする陽子。
恒例となった行動に気付きりえが声をかける。
「陽子さん。栗のパン食べます?」
洗濯物を2人で干していると、
バス停の前で立っている女の子。
バスが来るが乗らずに、ただ立っている。
水島は言った。
「ホットミルク作っておくよ。」
うなずき女の子をむかえに行ったりえ。
女の子の名前は未久。
バスに乗らなかった理由は分からないが、
それについては何も聞かない水縞夫婦。
ホットミルクを飲んだ美久に水縞は言った。
「今から学校にパンの配達をしに行くから、
送って行ってあげようか?」
そして学校まで美久を送った水島。
学校では友達の中心にいた美久を見た。
学校が終わり家に帰った美久。
食卓テーブルには『買って食べて』の書置きと、
千円札が置かれていた。
無視して食卓に3つの容器を並べ座った美久。
そして持ち帰った給食の栗のパンを食べた。
その時帰って来た父。
学校に遅れていったことを聞く父に美久は言う。
「ママの作ったカボチャのポタージュ食べたい。」
次の日のバス停には、美久と父が並んで立っていた。
未久がバスに乗ったのを見て、父は1人カフェに来た。
「カボチャのパタージュスープってあるんですか?」
メニューにない注文で驚く水縞。
「えっ?」
その反応を見て話を変えた未久の父。
「いいです。コーヒーを1杯下さい。」
「ご夫婦でやっているんですか?」
「ここの出身じゃないですよね?」
水島は自分が札幌で、りえが東京と答えた。
「仕事辞められたんですか?」
そんな美久の父の質問に水縞は答える。
「好きな暮らしがしたいって思ったんです。」
「好きな場所で、好きな人と。」
「散歩して、食べたいもの食べて、パン焼いて。」
「自分たちが感じた季節を、
パンを食べてくれる方達に感じて欲しいんです。」
「ここの景色って毎日変わりますよね。」
「綺麗なだけじゃないです。」
そんな水縞の言葉に美久の父は言った。
「1人じゃなかったら出来ますよ。」
「誰かと一緒なら、出切る事ってあるんですよ。」
~~女の子のナレーション~~~~~~~~~
りえさんは訳も無く悲しくなることがあります。
そんな時水島君も私も悲しくなります。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
学校の帰り道でカフェに立ち寄った美久。
りえは美久にカボチャのポタージュを出した。
それを見た美久は昔の母が作ったポタージュと、
それからの父と母の喧嘩など昔を思い出した。
母が出て行った時の事も・・・
「いらない。絶対にいらないから。」
「ごめんなさい。お邪魔しました。」
そう言ってカフェを出て行く美久。
翌日りえは美久へ手紙を出した。
『あったかいごはん作ってます。
お腹がすいたらきてください。』
水縞も美久の父へと手紙を出していた。
数日後の夜、美久がカフェに来た。
同じ日に美久の父もカフェに足を運んだ。
久しぶりの家族2人の夕食。
もちろんカボチャのポタージュも出した。
「カボチャのポタージュ・・・」
そう言うとカフェを飛び出した美久。
美久は悩んでいた。空を見上げて月を見た。
しばらくしてカフェに戻ってきた。
席に座るとポタージューを食べて言う。
「美味しいね。」
「でも、違うね。」
「ママのカボチャのスープとは違うね。」
「ママはもう戻らないんだよね?」
未久の父は言う。
「ママは戻らない。ごめんな。」
その話を聞いていた阿部さん。
いつも持ち歩いている大きな鞄を開けた。
中にはアコーディオンが入っていて、
何も言わずに演奏を始めた。
美久の父の目には涙がにじんでいた。
それを見た美久は父の側に行き言った。
「パパ。美久、パパと一緒に泣きたかった。」
水縞は1つのパンを出していった。
「お二人でどうぞ。」
父はパンをちぎって美久に渡した。
夕食を食べカフェを後にした未久と父。
「パパ。」
そう言って未久は父の手を握った。
美久と父が帰ったカフェでは、
「今夜の演奏代です。」
「りんごのハチミツパンです。」
そう言ってりえが阿部にパンを出した。
焼きたてのパンにハチミツをかけて、
阿部は冗談半分で言った。
「私は辛党なんですよ~。」
「今夜はワイン頂いていいかな?」
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~~女の子のナレーション~~~~~~~~~
月浦に厳しい冬がやってきました。
そのお客様がやってきたのは、
月も凍りそうな夜のことでした。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
「少しの時間だけ寄せてもらってもいいですか?」
そんな電話が入り、駅にむかえに行った水縞。
客は老夫婦の阪本史生と妻のアヤ。
若い頃にアヤに告白して振られた史生。
史生は傷心旅行で月浦付近にいたが、
追いかけてきたアヤに月浦駅でプロポーズして、
結婚したと車の中で水嶋に話した。
「だから娘の名前は、
有珠の有と月浦の月で有月と付けましたんや。」
そしてカフェに着いた坂本夫婦。
咳き込むアヤに史生は言う。
「もうちょっとや。もうちょっとやで。」
りえがご飯を用意しようとすると史生は言った。
「すみません。こいつパンが嫌いなんです。」
「年寄りにはどうも苦手なもんで。」
しかしカフェには米は無く、
広川のもとへ米を貰いに行った水縞。
カフェを出るときに、りえに言った。
「ちゃんと見てて。何か変なんだよ。」
一方で史生とアヤは窓から外を見ていた。
「月が見えんな~。」
そうアヤに言い『日之出湯』と書かれた暖簾と、
2人の結婚記念の懐中時計を見ていた。
懐中時計を止め、アヤの内服薬を捨てると、
史生はアヤを抱きしめた。
その時、吹雪だった空が晴れて月が見えた。
「そろそろ月を見に行こうか?」
「有月も待っているわ。」
史生はそう言ってアヤを連れ外に出ようとした。
止めるアヤだが聞かずに外に行こうとする。
水縞がちょうど帰ってきて、史生を連れ戻した。
「月ならこの窓からよく見えますから。」
カフェに戻った史生にりえは聞いた。
「一緒になられて何年ですか?」
史生は話し出す。
「50年近くになりますかね~。」
「ずっと一緒に風呂屋やってきたんです。」
「地震で全部なくなりました。」
「有月も逝ってしもうて・・・
でも皆に温かいお風呂入ってもらおうと思って。」
「頑張って立て直してね~。」
「地震のときにこいつ、残った風呂を見て、
これがホンマの露天風呂やなって笑ってました。」
「2人きりになってしまいました。」
「十分や。もう十分やなって、よう思うんです。」
「だってそうでしょ?」
「昨日できたことも今日はでけへん。」
「若いときはね、明日また違う自分がおるから
楽しみに出来るんですよ。」
「せやけど、なかなか出来なくなることばかりで・・・」
「あきません。」
そう言うと頭を抱えて泣き出す史生。
りえは坂本夫婦にポトフと、
炊き立てのご飯を差し出した。
ポトフを一口食べたアヤは、
カウンターに置かれた焼きたての豆パンを見て、
突然それを手に取り、口にいてた。
その行動に驚き史生は声をかけた。
「それパンや。食べられへんやろ。」
「パンおいしいんか?」
アヤはパンを食べて言った。
「美味しい。」
「お豆さんが入ったこのパン美味しいな。」
「私、明日もこのパン食べたいな。」
「お父さん。ごめんなさいね~。」
泣きながら史生は言った。
「分かった。分かった。」
アヤは泣いている史生にパンをちぎって渡した。
その様子を見ていたりえは、
食器にパンを乗せ坂本夫婦に差し出して言った。
「アヤさん。明日もパン食べてください。」
その夜、1人パンの生地作りをしていた水縞。
それを見に来た史生。
「パンもええですな~。」
そんな史生に水縞は言った。
「カンパーニュって言う言葉があるんです。」
「さてどういう意味でしょう?」
「ヒントです。もともとの語源は、
パンを分け合う人たちのことなんですが、
さてなんでしょう?」
答えを悩んでいた史生に水縞は続けて言う。
「史生さん。しばらく家で過ごしませんか?」
「もう少しいてくれたら、
ここから満月が見えるんですよ。」
チーズやじゃがいも、チキンや卵、
ワインを持ってくる仲間たち。
坂本夫婦にパンの作り方を教える水縞夫婦。
その夜は水縞夫婦、坂本夫婦を中心に、
阿部や郵便屋さん陽子さんに広川夫婦。
皆でワインを飲んで阿倍の演奏でダンスをする。
~~女の子のナレーション~~~~~~~~~
知ってますか?人は乾杯の数だけ幸せになれる。
ヨーロッパのどこかの国では、
そう言われているそうです。
何か良い事があったら乾杯して、
何か残念なことがあっても乾杯して、
1日の終わりを今日も誰かと乾杯と締めくくれたら、
それは幸せだと・・・
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
翌日りえが洗濯をしているからわらで、
月とマーニを読んでいたアヤは言った。
「お月さんがいてマーニがいる。
マーニがいてお月さんがいる。」
~~女の子のナレーション~~~~~~~~~
月浦の真っ白な雪が、
りえさんの心を包んでいくのを私には分かりました。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
数日後の満月の夜。
カフェの外で月を見た坂本夫婦。
綺麗な満月を見てアヤは史生に言う。
「綺麗ね~。」
「月はずっとここにあるね~。」
「明日も月浦にあるね~。」
「これでお土産できましたわ~。」
「お父さん。ありがとう。」
史生の持っていた懐中時計は動き出していた。
翌日帰ると言い出した坂本夫婦。
帰り際に史生は水縞に言った。
「カンパーニュの意味分かりましたわ。」
「共にパンを分け合う人々。」
「家族って言う意味違います?」
水縞は答えた。
「史生さん惜しいです。仲間って言う意味なんです。」
「でもそれが、家族の原点だと僕は思ってます。」
月浦駅で坂本夫婦を見送った、水縞夫婦。
りえは水縞に言った。
「ずっと。ずっと見てて私のこと。」
「水縞君のことも見てるから。」
「ありがとう水縞君。」
「私のためにここに来てくれて。」
春になって史生から手紙が届いた。
~~史生の手紙~~~~~~~~~~~~~
りえさん、尚さん。
冬の頃はいろいろお世話になりました。
アヤはこの春亡くなりました。
マーニさんに行った時、
アヤには残された命が短くて、
私は月浦でそのまま一緒に
死ねるものなら死のうと考えていました。
だけどそれは大変傲慢でした。
アヤが前は食べなかったパンを
おいしそうに食べている姿を見て、
私は恥ずかしながら、
人間は最後の最後まで
変化し続けることを始めて気付いたのです。
アヤは懸命に生きてそして死んでいきました。
それを全て私は見届けることが出来たのです。
今私は風呂屋の番台にもう一度座って、
マーニさんのこと、
尚さんが焼いたおいしいパンのこと、
りえさんのスープ思い出しています。
あそこには自分たちの信じることを
心を込めてやっていく、
そんな地に足のついた
人間らしい暮らしがありました。
カンパーニュ。仲間と一緒に。
それこそ幸せがあるような気がいたします。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
その日の夕食。
豆パンをちぎって、りえに渡す水縞。
りえは笑いながら水縞に言った。
「水島君。見つけたよ。」
「見つけた。私のマーニ。」
~~女の子のナレーション~~~~~~~~~
この日、水島君の
たった一つの欲しいものが手に入ったようです。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
2人がお店を始めて、2周年目の記念日。
『しあわせのパン』と書いたメッセージカードと一緒に、
香織と時生、未久と美久の父、坂本さんなど
沢山の関わった人にパンを送る水縞夫婦。
その日の夕方。
出かけていたりえが走って帰って来た。
「来年のお客さん決まったよ~。」
水縞は聞く。
「ずいぶん先のお客さん入ったんだね。」
「どこから来るの?」
りえは自分のお腹を指差して言った。
「ここ。」
~~女の子のナレーション~~~~~~~~~
幸せって何なのか、まだ私には分かりません。
でも私は決めました。
水縞夫妻のところに生まれることを・・・
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
(終わり)
~~ 関 連 商 品 ~~
~~RIKUのサブブログ~~
・RIKUの映画感想館
・「携帯・スマホゲーム」DORAKENを実際に攻略して・・・
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【しあわせのパン】
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【出演者】
水縞りえ:原田知世
水縞尚:大泉洋
郵便屋さん:本多力
広川の旦那さん:中村靖日
広川の奥さん:池谷のぶえ
阿部さん:あがた森魚
陽子さん - 余貴美子
山下時生:平岡祐太
齋藤香織:森カンナ
未久:八木優希
未久のパパ:光石研
未久のママ:霧島れいか
阪本史生:中村嘉葎雄
阪本アヤ:渡辺美佐子
ナレーション(ヤギのソーヴァ):大橋のぞみ
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【感想】
久しぶりの人の温かさの分かるよい映画でした。
深みがあって、何を言いたいかは、
見る人の受け取り方によって変わる映画。
ずるいですけどね~。
3つのストーリーに分かれているから、
どれかのケースは当てはまってくるんです。
私としては、家族中心の2個目と3個目は、
とっても温かい気持ちになりました。
そのバランスを保つための脇役もいい。
なんかパンが食べたくてしょうがなくなりました。
細かなシーンが全て意味がある映画です。
これは何回か見ることで、目線変わるでしょう!
逆に皆さんの映画感想を聞いてみたい映画です。
一度見て、コメント欲しいくらいですよ!!!
【あらすじ】(ネタバレあり)
~~りえのナレーション~~~~~~~~~
初恋の相手はマーニだった。
諸学生のとき家の近くに図書館があって、
そこで立ち読みならぬ座り読みした月とマーニ。
少年マーニは自転車の籠に月を乗せて、
いつも東の空から西の空へと走っていきます。
ある日やせ細った月が言うのです。
「ねえマーニ。」
「太陽をとって。」
「いつも一緒にお空にいるととっても眩しくて。」
マーニは答えます。
「ダメだよ。太陽をとったら困っちゃうよ。」
「太陽をとったら君がいなくなっちゃうから。」
「夜に道を歩く人が迷っちゃうじゃないか。」
「大切なのは君が照らされていて、
君が照らしていると言うことなんだよ。」
マーニのことが大好きで。
私はずっとマーニを探していた。
だけどどんどん周りには、
好きじゃないものが増えていった。
大人になって働いて、いつの間にか大変で、
ただ1人の家族父が亡くなって大変で、
心がひとりで小さくなって、
もうマーニはいないのだと心に決めた。
そして東京で沢山の大変がたまった頃、
水縞君が月浦で暮らそうとそう言った。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
月浦のCAFEマーニ。
客の阿部へ手紙を届けた郵便屋さんは、
カフェに漂うコーヒーの匂いを深く嗅いだ。
水縞は言う。
「おはようございます。カンパーニュが焼けました。」
~~女の子のナレーション~~~~~~~~~
湖のほとりにあるCAFEマーニには、
りえさんの煎れるコーヒーと
水縞君の作る焼きたてのパン
季節のお野菜の料理。
そして遠くからのお客様が泊まれるよう
2階には温かいベットが用意されています。
一年ちょっと前この夫婦が月浦にやってきたとき、
なぜか私はこの2人を見つめていたいと思いました。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
「もう行かなきゃ。」
そう言ってりえの煎れたコーヒーと、
水縞が作ったカンパーニュを食べ終えて、
仕事に戻る郵便屋さん。
阿部を送り出したりえと水縞はカフェを出た。
向かったのは地獄耳の陽子さんのガラス工房。
「出来てるよ。鏡でしょ?あそこにかける。」
驚いて水縞は聞く。
「何で知ってるの?」
陽子は言った。
「私、耳だけは良く聞こえるから。」
~~女の子のナレーション~~~~~~~~~
地獄耳の陽子さんの作品が、
カフェには沢山並んでいるのです。
ひとつ良い事があると、
持っていた小銭をなんとなく貯める事にしています。
こんな風に2人のカフェは、
少しずつ出来上がって行くのです。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
夏のある日。
カフェに泊まりに来た若い女性、齋藤香織。
香織は近くの湖に行き友人に電話する。
「もしも~し。今ビーチ。」
「お土産楽しみに待っててね。」
電話を切って深くため息をついた香織。
1人ボートに乗るが、転覆してしまう・・・
カフェにはもう1人客人が来ていた。山下時生。
久しぶりに訪れるが常連客の1人。
時生と話をしていると、
香織がずぶ濡れのまま帰って来た。
りえに言われてタオルを渡す時生。
その夜はトマトのパンとワインで夕食。
ワインを飲み続けた香織は酔っ払った。
明日が誕生日で本当は沖縄に行く予定だった香織。
しかし彼は急にドタキャンをしたと言う。
酔っ払い全てをりえと水縞に話した香織。
「もう帰らないでここに暮らしちゃおうかな~。」
食事をしながら話を聞いていた時生は言う。
「ここにだっていろいろありますよ。」
そんな時生に絡みだす香織。
「時生君はここの人?」
「じゃあ毎日毎日静かで平和だ。」
「東京と違うもん。」
「東京で働くのってとっても大変なんですよ。」
それを聞いてイラっとした時生は聞く。
「でも好きで東京いるんですよね?」
それに対しても皮肉を言う香織。
「別に。生まれてからずっと東京だもん。」
「分からないと思うよ。君に。」
怒って席を立ち言った時生。
「それを恵まれてるって言うんじゃないですか?」
その夜、寝ようとしていた時生。
外から聞こえてくる声で寝付けずにいた。
外を見ると、香織が泣きながら騒いでいた。
「バカヤロー。」
それを見て笑ってしまった時生。
笑い声に気付いた香織は時生を見て言う。
「バカヤロー。」
翌朝二日酔いの香織。
りえは煎れたてのコーヒーを出していった。
「私もね。無理して笑うことあるんです。」
そして水縞の作ったパンを出して言う。
「素朴なパンもいいですよ~。」
その日は香織の誕生日。
水縞夫婦は時生と香織を連れて買い物に行った。
広川さんの屋外販売所。
季節の野菜や果物、花が売られている。
そこで見つけたひまわりの花。
時生は一本のひまわりを買った。
買い物の帰り道、香織に話し掛けた時生。
「今日誕生日なんですよね?」
「これ。どうぞ。」
そう言ってひまわりの花を渡した。
香織は言う。
「暇なんだったらちょっと付き合って。」
そう言って誘ったのは湖のほとり、
日焼けするために日光浴。
そして時生のバイクに乗せてもらい、
シーサーやチンスコウを探しに町を回る。
見つからないなか、バイクはガス欠。
バイクを押して歩いていると、陽子が声をかけた。
「ちょっとあんたたち。沖縄土産探しているの?」
「いくついるの?」
そう言って香織に渡したもの・・・
『コロポックル』北海道に住むと言う妖精の木彫り。
陽子は言った。
「その人形持っていたら小さな幸せがくるらしいよ。」
香織は返した。
「私大きな幸せが欲しいの。」
一方水縞夫婦は買った野菜と果物で、
ジャムやパンを作っていた。
夜は屋外で夕食。香織の誕生日を祝った。
水縞が作ったのは、
お祝いの日に焼く特別なパン『クグロフ』。
他にも季節の野菜を使った料理が並ぶ。
香織の向かいに座った水縞は、
手でパンを半分にちぎってりえに渡した。
それを見て香織は素直にお礼を言った。
「あの。本当にありがとうございます。」
それに対してりえは言った。
「じゃあクグロフ食べましょうか。」
そう言って半分にナイフで切り、時生に渡した。
時生は半分に手でちぎり、香織に渡した。
食事を終わり夜空を見ていた香織と時生。
香織は時生に言う。
「かっこ悪い奴って思ったでしょ?」
時生は答えた。
「そうっすね~。」
「でもかっこ悪い自分を知っている人が、
大人だと俺は思います。」
「だから香織さんを見たときに凄い笑えたんです。」
「一生懸命幸せになろうとしているんだな~って。」
「もがいたことのある人間じゃないと、
幸せは無いと思います。」
「もがいてもがいて恥かいて、
いいじゃないですか香織さん。」
そして時生は自分の仕事の話をした。
電車のレールを切り替えるのが時生の仕事。
「レールは簡単に切り替わるのに、
俺の人生は簡単に切り替わらないんだなって。」
「線路がずっと続いているように見えても、
自分は北海道から出られないんですよ。」
「なんか俺、もがけないんです。」
時生の話を聞いて香織は答えた。
「それってさ。もがいてるじゃん。」
「来てみればいいじゃん東京に。一緒に行こう。」
時生を月を見ながら答えた。
「無理っすよ。仕事ないし・・・」
「でも俺、今日は月が綺麗に見える。」
翌朝目を覚ました香織。
1階に下りると時生の姿は無かった。
時生は今朝早く帰ったという。
「素朴なパンもいいですね。」
そう言って水縞の焼いたライ麦パンを購入した。
「会社のみんなに食べてもらおうと思って。」
「月浦のお土産です。」
そして帰ろうとした香織はりえに言った。
「私いままでで一番好きな誕生日でした。」
りえは答えた。
「これからもっと良い誕生日が着ますよ。」
水縞も香織に言う。
「また来てください。」
「いつでも家はここにありますから。」
最後に香織は2人に言った。
「時生君にいろいろ付き合ってくれて
ありがとうって伝えてもらえますか。」
バスを待つ香織は湖やカフェの近くの景色を見て、
「綺麗だな~。悔しいけど綺麗。」
そう言った時だった、
バスの後ろからバイクに乗った時生が来た。
驚く香織の時生は言う。
「送るよ。乗って。」
「東京まで送ります。」
香織は笑顔で言った。
「マジで?じゃあよろしく頼むよ時雄君。」
香織の鞄の中ではコロポックルが揺れていた。
~~女の子のナレーション~~~~~~~~~
東京までの距離は1000キロ
誰にでも1人から2人になる瞬間があります。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
遠くで2人の姿を見て微笑むりえと水縞だった。
りえは水縞に言う。
「時生君東京までちゃんと運転できるかな~?」
水縞は答えた。
「大丈夫だよ。僕だって出来たんだから。」
「りえさん。ここで無理して笑うことないよ。」
「僕の欲しいものは1つだけですから。」
りえは聞く。
「何?ですか?」
水縞は答えた。
「内緒です。」
~~女の子のナレーション~~~~~~~~~
秋がやって来ました。
ほどよい日差し。ほどよい気温。ほどよい風。
こんな日は水島夫妻の散歩日和です。
秋はいろんなものが実る季節です。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
栗拾いに出かけた2人。
そして栗を焼き、パンを作った2人。
誰もカフェにいないのを確認して、
こっそりガラス細工を置いて帰ろうとする陽子。
恒例となった行動に気付きりえが声をかける。
「陽子さん。栗のパン食べます?」
洗濯物を2人で干していると、
バス停の前で立っている女の子。
バスが来るが乗らずに、ただ立っている。
水島は言った。
「ホットミルク作っておくよ。」
うなずき女の子をむかえに行ったりえ。
女の子の名前は未久。
バスに乗らなかった理由は分からないが、
それについては何も聞かない水縞夫婦。
ホットミルクを飲んだ美久に水縞は言った。
「今から学校にパンの配達をしに行くから、
送って行ってあげようか?」
そして学校まで美久を送った水島。
学校では友達の中心にいた美久を見た。
学校が終わり家に帰った美久。
食卓テーブルには『買って食べて』の書置きと、
千円札が置かれていた。
無視して食卓に3つの容器を並べ座った美久。
そして持ち帰った給食の栗のパンを食べた。
その時帰って来た父。
学校に遅れていったことを聞く父に美久は言う。
「ママの作ったカボチャのポタージュ食べたい。」
次の日のバス停には、美久と父が並んで立っていた。
未久がバスに乗ったのを見て、父は1人カフェに来た。
「カボチャのパタージュスープってあるんですか?」
メニューにない注文で驚く水縞。
「えっ?」
その反応を見て話を変えた未久の父。
「いいです。コーヒーを1杯下さい。」
「ご夫婦でやっているんですか?」
「ここの出身じゃないですよね?」
水島は自分が札幌で、りえが東京と答えた。
「仕事辞められたんですか?」
そんな美久の父の質問に水縞は答える。
「好きな暮らしがしたいって思ったんです。」
「好きな場所で、好きな人と。」
「散歩して、食べたいもの食べて、パン焼いて。」
「自分たちが感じた季節を、
パンを食べてくれる方達に感じて欲しいんです。」
「ここの景色って毎日変わりますよね。」
「綺麗なだけじゃないです。」
そんな水縞の言葉に美久の父は言った。
「1人じゃなかったら出来ますよ。」
「誰かと一緒なら、出切る事ってあるんですよ。」
~~女の子のナレーション~~~~~~~~~
りえさんは訳も無く悲しくなることがあります。
そんな時水島君も私も悲しくなります。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
学校の帰り道でカフェに立ち寄った美久。
りえは美久にカボチャのポタージュを出した。
それを見た美久は昔の母が作ったポタージュと、
それからの父と母の喧嘩など昔を思い出した。
母が出て行った時の事も・・・
「いらない。絶対にいらないから。」
「ごめんなさい。お邪魔しました。」
そう言ってカフェを出て行く美久。
翌日りえは美久へ手紙を出した。
『あったかいごはん作ってます。
お腹がすいたらきてください。』
水縞も美久の父へと手紙を出していた。
数日後の夜、美久がカフェに来た。
同じ日に美久の父もカフェに足を運んだ。
久しぶりの家族2人の夕食。
もちろんカボチャのポタージュも出した。
「カボチャのポタージュ・・・」
そう言うとカフェを飛び出した美久。
美久は悩んでいた。空を見上げて月を見た。
しばらくしてカフェに戻ってきた。
席に座るとポタージューを食べて言う。
「美味しいね。」
「でも、違うね。」
「ママのカボチャのスープとは違うね。」
「ママはもう戻らないんだよね?」
未久の父は言う。
「ママは戻らない。ごめんな。」
その話を聞いていた阿部さん。
いつも持ち歩いている大きな鞄を開けた。
中にはアコーディオンが入っていて、
何も言わずに演奏を始めた。
美久の父の目には涙がにじんでいた。
それを見た美久は父の側に行き言った。
「パパ。美久、パパと一緒に泣きたかった。」
水縞は1つのパンを出していった。
「お二人でどうぞ。」
父はパンをちぎって美久に渡した。
夕食を食べカフェを後にした未久と父。
「パパ。」
そう言って未久は父の手を握った。
美久と父が帰ったカフェでは、
「今夜の演奏代です。」
「りんごのハチミツパンです。」
そう言ってりえが阿部にパンを出した。
焼きたてのパンにハチミツをかけて、
阿部は冗談半分で言った。
「私は辛党なんですよ~。」
「今夜はワイン頂いていいかな?」
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~~女の子のナレーション~~~~~~~~~
月浦に厳しい冬がやってきました。
そのお客様がやってきたのは、
月も凍りそうな夜のことでした。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
「少しの時間だけ寄せてもらってもいいですか?」
そんな電話が入り、駅にむかえに行った水縞。
客は老夫婦の阪本史生と妻のアヤ。
若い頃にアヤに告白して振られた史生。
史生は傷心旅行で月浦付近にいたが、
追いかけてきたアヤに月浦駅でプロポーズして、
結婚したと車の中で水嶋に話した。
「だから娘の名前は、
有珠の有と月浦の月で有月と付けましたんや。」
そしてカフェに着いた坂本夫婦。
咳き込むアヤに史生は言う。
「もうちょっとや。もうちょっとやで。」
りえがご飯を用意しようとすると史生は言った。
「すみません。こいつパンが嫌いなんです。」
「年寄りにはどうも苦手なもんで。」
しかしカフェには米は無く、
広川のもとへ米を貰いに行った水縞。
カフェを出るときに、りえに言った。
「ちゃんと見てて。何か変なんだよ。」
一方で史生とアヤは窓から外を見ていた。
「月が見えんな~。」
そうアヤに言い『日之出湯』と書かれた暖簾と、
2人の結婚記念の懐中時計を見ていた。
懐中時計を止め、アヤの内服薬を捨てると、
史生はアヤを抱きしめた。
その時、吹雪だった空が晴れて月が見えた。
「そろそろ月を見に行こうか?」
「有月も待っているわ。」
史生はそう言ってアヤを連れ外に出ようとした。
止めるアヤだが聞かずに外に行こうとする。
水縞がちょうど帰ってきて、史生を連れ戻した。
「月ならこの窓からよく見えますから。」
カフェに戻った史生にりえは聞いた。
「一緒になられて何年ですか?」
史生は話し出す。
「50年近くになりますかね~。」
「ずっと一緒に風呂屋やってきたんです。」
「地震で全部なくなりました。」
「有月も逝ってしもうて・・・
でも皆に温かいお風呂入ってもらおうと思って。」
「頑張って立て直してね~。」
「地震のときにこいつ、残った風呂を見て、
これがホンマの露天風呂やなって笑ってました。」
「2人きりになってしまいました。」
「十分や。もう十分やなって、よう思うんです。」
「だってそうでしょ?」
「昨日できたことも今日はでけへん。」
「若いときはね、明日また違う自分がおるから
楽しみに出来るんですよ。」
「せやけど、なかなか出来なくなることばかりで・・・」
「あきません。」
そう言うと頭を抱えて泣き出す史生。
りえは坂本夫婦にポトフと、
炊き立てのご飯を差し出した。
ポトフを一口食べたアヤは、
カウンターに置かれた焼きたての豆パンを見て、
突然それを手に取り、口にいてた。
その行動に驚き史生は声をかけた。
「それパンや。食べられへんやろ。」
「パンおいしいんか?」
アヤはパンを食べて言った。
「美味しい。」
「お豆さんが入ったこのパン美味しいな。」
「私、明日もこのパン食べたいな。」
「お父さん。ごめんなさいね~。」
泣きながら史生は言った。
「分かった。分かった。」
アヤは泣いている史生にパンをちぎって渡した。
その様子を見ていたりえは、
食器にパンを乗せ坂本夫婦に差し出して言った。
「アヤさん。明日もパン食べてください。」
その夜、1人パンの生地作りをしていた水縞。
それを見に来た史生。
「パンもええですな~。」
そんな史生に水縞は言った。
「カンパーニュって言う言葉があるんです。」
「さてどういう意味でしょう?」
「ヒントです。もともとの語源は、
パンを分け合う人たちのことなんですが、
さてなんでしょう?」
答えを悩んでいた史生に水縞は続けて言う。
「史生さん。しばらく家で過ごしませんか?」
「もう少しいてくれたら、
ここから満月が見えるんですよ。」
チーズやじゃがいも、チキンや卵、
ワインを持ってくる仲間たち。
坂本夫婦にパンの作り方を教える水縞夫婦。
その夜は水縞夫婦、坂本夫婦を中心に、
阿部や郵便屋さん陽子さんに広川夫婦。
皆でワインを飲んで阿倍の演奏でダンスをする。
~~女の子のナレーション~~~~~~~~~
知ってますか?人は乾杯の数だけ幸せになれる。
ヨーロッパのどこかの国では、
そう言われているそうです。
何か良い事があったら乾杯して、
何か残念なことがあっても乾杯して、
1日の終わりを今日も誰かと乾杯と締めくくれたら、
それは幸せだと・・・
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
翌日りえが洗濯をしているからわらで、
月とマーニを読んでいたアヤは言った。
「お月さんがいてマーニがいる。
マーニがいてお月さんがいる。」
~~女の子のナレーション~~~~~~~~~
月浦の真っ白な雪が、
りえさんの心を包んでいくのを私には分かりました。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
数日後の満月の夜。
カフェの外で月を見た坂本夫婦。
綺麗な満月を見てアヤは史生に言う。
「綺麗ね~。」
「月はずっとここにあるね~。」
「明日も月浦にあるね~。」
「これでお土産できましたわ~。」
「お父さん。ありがとう。」
史生の持っていた懐中時計は動き出していた。
翌日帰ると言い出した坂本夫婦。
帰り際に史生は水縞に言った。
「カンパーニュの意味分かりましたわ。」
「共にパンを分け合う人々。」
「家族って言う意味違います?」
水縞は答えた。
「史生さん惜しいです。仲間って言う意味なんです。」
「でもそれが、家族の原点だと僕は思ってます。」
月浦駅で坂本夫婦を見送った、水縞夫婦。
りえは水縞に言った。
「ずっと。ずっと見てて私のこと。」
「水縞君のことも見てるから。」
「ありがとう水縞君。」
「私のためにここに来てくれて。」
春になって史生から手紙が届いた。
~~史生の手紙~~~~~~~~~~~~~
りえさん、尚さん。
冬の頃はいろいろお世話になりました。
アヤはこの春亡くなりました。
マーニさんに行った時、
アヤには残された命が短くて、
私は月浦でそのまま一緒に
死ねるものなら死のうと考えていました。
だけどそれは大変傲慢でした。
アヤが前は食べなかったパンを
おいしそうに食べている姿を見て、
私は恥ずかしながら、
人間は最後の最後まで
変化し続けることを始めて気付いたのです。
アヤは懸命に生きてそして死んでいきました。
それを全て私は見届けることが出来たのです。
今私は風呂屋の番台にもう一度座って、
マーニさんのこと、
尚さんが焼いたおいしいパンのこと、
りえさんのスープ思い出しています。
あそこには自分たちの信じることを
心を込めてやっていく、
そんな地に足のついた
人間らしい暮らしがありました。
カンパーニュ。仲間と一緒に。
それこそ幸せがあるような気がいたします。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
その日の夕食。
豆パンをちぎって、りえに渡す水縞。
りえは笑いながら水縞に言った。
「水島君。見つけたよ。」
「見つけた。私のマーニ。」
~~女の子のナレーション~~~~~~~~~
この日、水島君の
たった一つの欲しいものが手に入ったようです。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
2人がお店を始めて、2周年目の記念日。
『しあわせのパン』と書いたメッセージカードと一緒に、
香織と時生、未久と美久の父、坂本さんなど
沢山の関わった人にパンを送る水縞夫婦。
その日の夕方。
出かけていたりえが走って帰って来た。
「来年のお客さん決まったよ~。」
水縞は聞く。
「ずいぶん先のお客さん入ったんだね。」
「どこから来るの?」
りえは自分のお腹を指差して言った。
「ここ。」
~~女の子のナレーション~~~~~~~~~
幸せって何なのか、まだ私には分かりません。
でも私は決めました。
水縞夫妻のところに生まれることを・・・
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
(終わり)
~~ 関 連 商 品 ~~
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