ネタバレ注意!ストーリーや内容を『あらすじ』として説明した後で、『感想』を書いています。
りゅうおうのおしごと! 3巻 / 白鳥 士郎
価格:682円 |
・『りゅうおうのおしごと!』の関連記事へ
【評価】
・いつも通り面白かったです。
・桂香さんを通した女流棋士の世界の話が印象的
<作品の特徴(5段階評価)>
おすすめ度: ★★★★★
読みやすさ: ★★★★★
ラブコメ量: ■■■■
戦闘・バトルの量:■■■■
男女比: 男:女女
・ハーレム系・小学生・将棋・振り飛車・女流棋士・勝負事の厳しい世界・桂香さん
【感想(ネタバレあり)】
・生石充玉将のゴキゲン中飛車!
――(あらすじ)――
八一には山刀伐尽(なたぎり じん)八段という天敵がいます。デビュー戦での敗北以来1度も勝てていません。
八一は山刀伐八段との対局に向けて、新戦法を身に付けるべく、生石充(おいし みつる)玉将の下で修業することにしました!内弟子のあいちゃんも一緒に『ゴキゲン中飛車』という戦法を学びます。
生石玉将の家は銭湯で、また将棋道場も兼ねています。あいと一緒に店の雑用をしながら、『捌きの巨匠(マエストロ)』の異名を持つ玉将に、振り飛車を教わる日々が始まりました。
※尚、『玉将』というのはこの作品内での将棋のタイトルです。実際には『玉将』というタイトルは存在しません。『王将』というタイトルは実在するので、おそらくそれがモデルです。
この作品には他にも『帝位』など、実在しないタイトルが登場しますが、『名人』と『竜王』は実在するタイトルです!
現実と架空が混ざっているので注意。
――(感想)――
私は振り飛車も好きなので、主人公の八一や弟子のあいちゃんが振り飛車を指すようになったのは嬉しかったです!
将棋の戦法は大まかに二つの戦法に分かれます。序盤に自陣内で飛車を真ん中(5筋)以降にスライドさせる『振り飛車』。そして『居飛車』です。(1マスや2マスだけ飛車が横に動くのは『居飛車』に分類される)
これまで八一もあいちゃんも居飛車党でしたが、将棋をやっている人の約半数は振り飛車党。作中でも書かれていましたが、将棋の世界が2倍になったようなものです。
将棋の内容についての描写がより幅広くなり、深くなりました!
・仲間の人生を踏み台にして勝ち上がっていく
――(あらすじ)――
あいちゃんが雨に濡れて、びしょ濡れで帰って来ました。
「……対局は…………勝ちました……
「……勝ったのに…………わ、わたしっ…………か、勝ったのに…………!」
「勝ったのに……心が痛いんですっ!」
あいちゃんは研修会で、友達の澪ちゃん相手に駒落ちで勝ってしまいました。
澪ちゃんより後に将棋を始め、早くもあいちゃんの方が強くなってしまいました。
対局に勝利して友達を傷つけてしまったあいちゃんに、師匠である八一は厳しい言葉をかけました。
「人の気持ちを思いやるのはいい。敗者の気持ちを思いやれない人間は、自分が敗者になった時、すぐに折れてしまうから」
「でも、あい。盤の前に座ったら考えることは一つだ。正々堂々と、自分の持っている全ての力を最後の一滴まで振り絞り、勝つ。それ以外は全て雑念でしかない。そして雑念を抱いたまま盤の前に座るようなことは、師匠であるこの俺が許さん」
「もしおまえが勝つことを恐れるような人間なら、もう苦しむ必要なんて無い。今ここで破門してやる。荷物をまとめてそのまま田舎へ帰れッ!!」
――(感想)――
いつもはあいちゃんにデレデレな八一が、急に厳しくなったので驚いたシーンでした。勝負の世界の厳しさがよく表れていたと思います。
作中では、プロ棋士になれそうな程有望だったのに、必死に勉強して医者になった元奨励会員のお話も出てきました。『将棋は好きだ。でも誰かを傷つけたり蹴落としたりするのは嫌いだ』と言ってプロ棋士になる道を捨てたそうです。
この人はプロ棋士には向いていませんでしたが、人間としては素晴らしい人です!
一方、プロ棋士というのはただボードゲームをやっているだけの職業です。『棋士』という職業そのものについて考えさせられました。
勝つことを目指して全力で相手を叩き潰す。その結果相手が傷ついたり、時には人生が大きく狂うこともあります。
物語の後半、女流棋士になる夢を追いかけて必死になる桂香さんを見て、姉弟子の銀子が呟いた、『私達は、どうして…………戦うことしかできないんだろう?』という言葉が印象的でした。
・アニメの主題歌になったお話
――(あらすじ)――
桂香さんは現在25歳7ヶ月。
女流棋士になるために研修会に在籍できるのは27歳まで。
タイムリミットは1年半を切っています。
桂香さんは現在C2クラスで、C1クラスに昇級すれば女流棋士になれますが、そのためには6連勝するなどの厳しい条件があります。
そんな中、桂香さんは昇級どころか降級の危機に瀕していました。
――(感想)――
この『りゅうおうのおしごと!』は、八一、銀子、あいちゃんなどの優秀な若い子たちが将棋界を揺るがしていくお話です。
そんな若い才能と対照的に、女流棋士になろうとして年齢制限が迫っている清滝桂香さんの苦悩が描かれました。
10歳の時の桂香さんが、20歳の自分へ向けて書いた手紙の内容が、私の心にも突き刺さりました。20歳をとうに過ぎ、25歳になってもまだ夢が叶っていない歯痒さや焦り。そして桂香さんがその手紙を読んだ後の変化。素晴らしい演出だと思いました。
これまでも軽く触れられていましたが、女流棋士という職業の未来は、あまり明るいものではありません。
プロ棋士のように順位戦が無いため、トーナメント戦などで負けるとパッタリと対局が無くなってしまい、仕事が消えてしまいます。
タイトルを取るような強い女流棋士は例外ですが、女流棋士をやめたり、副業をしたりといったことも多いそうです。
その上、20代後半になるまで頑張ったのに、それでも女流棋士になれなかった場合は悲劇です!同級生はとっくに働いていたり、結婚したりしている中、ゼロから新しい人生をスタートさせなくてはいけません。今さら大学に行くために勉強するのも、就職するのも厳しいですし、結婚するにも少し歳をとってしまっています!
そんな人生崖っぷちの桂香さんを見ていて、胸が締め付けられるような思いでした。
・ホロ苦いストーリー
全体的には楽しい雰囲気のライトノベルです。しかし今回は内容が重い部分がありました!
女流棋士になれないまま25歳になってしまった桂香さんの苦悩。そんな桂香さんが相手でも全力で勝ちに行かなければいけない勝負の世界の厳しさ。そういったものが詰まったビターで深い一冊でした。
(「りゅうおうのおしごと!」3巻の感想・ネタバレあり)
タグ:りゅうおうのおしごと!
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