2015年02月10日
探偵歌劇ミルキィホームズTD第5話感想〜ゲームとアニメの融合、うまくいった例〜
本筋とは無関係になるが、この感想を見る方が2015年以降の方かもしれないので、念のため記しておこう。
探偵歌劇ミルキィホームズTD第5話「キャロルの身代金」は、時勢に併せて、テレビ放送が見送られた不運の回である。空いた放送枠には同作の第1話の再放送があてられ、翌週以降には第6話が予定通りに放送された。つまり、製作遅延を理由とした番組そのものの延期というわけではなく、この回のみがリアルタイムでの放送を見送られたのだ。
これは同時期、イスラム国によって起こった日本人人質事件ならびに殺害事件を理由とする(同事件ではイスラム国が誘拐した日本人の身代金を日本政府に要求し、身代金が払われなかったために予告通り人質が殺害された)。今回のタイトルが前述の事件を想起されるためにとった製作側の自粛であり、ホームページにも「情勢に配慮をいたしまして、 今週の放送を見合わさせて頂くことになりました」という報告分が掲載された。この動きは同時期に放送されたアニメ「暗殺教室」にもみられ、時勢としては当然の流れだったともいえるだろう。
しかし、タイトルに身代金という単語は含まれてはいるものの、今回のお話にテロや殺害事件を想起させる要素は少なく、むしろお話としての作りも非常に良かっただけに、この自粛はもったいないものだったと言わざるをえない。幸い、ニコニコ動画をはじめとした動画サイトでの公式配信は予定通り行われたため、本回の視聴は円盤化まで待たなければならなかった……という事態は、少なくすんだ。
以上が事件の概略であるが、テレビ放送の自粛に対してネット配信という別の道が示されたことは一視聴者として素直に喜んでいいことであろう。事件そのものは悲惨なものであり、繰り返してはならない惨事である。しかし今回のお話が、場合によってはお蔵入りしていたかもしれないと考えると、何とももったいない話である。放送の自粛に関しては、様々な側面からの理由があるから今後も避けられないとして、時期を見てからネットの配信は行う……という形で、他の作品も今回のミルキィホームズのような処置をとってもらいたいと思う。
前置きが長くなったが、あらため、探偵歌劇ミルキィホームズTD第5話「キャロルの身代金」の感想である。
第5話の脚本を務めた伊神貴世はOVA作品「探偵オペラ ミルキィホームズ Alternative ONE & TWO」の脚本を務めており、他にも「輪るピングドラム」、「ユリ熊嵐」などに脚本として名を連ねている。第5話ではミルキィホームズでは珍しく(?)ミステリー要素が取り入れられていたわけだが、伊神貴世の名前を見てなるほどと得心した人は多かったようである。自分自身もそうだった。トイズを用いた推理はもちろん、Aパートでのミルキィホームズでのおふざけも伏線の一部とは実に感服した。
推理以外の部分についても、第5話は全体的に満足度が高い作りとなっている。以下、2点にまとめてあげてみよう。
1つ目はギャグとシリアスの配分である。
これは、いわゆるアニメ版ミルキィホームズとゲーム版ミルキィホームズの調和がうまくいっていると言い換えてもいいし、シーンごとのメリハリがうまくついているといってもいい。先にも触れたように今回のお話ではトイズを用いた推理パートが挿入されているわけだが、そのシーン直前までのダメダメなミルキィホームズの描写があってこそ光るシーンであった。ネロが今回のゲストキャラ「キャロル・ドジソン」にサインをねだっている部分も伏線一つであり、ミルキィホームズがふざけているように見えて探偵としての推理もきちんと行っていた……というところは、以前にゲーム版世界観で描かれた「探偵オペラ ミルキィホームズ Alternative ONE & TWO」の脚本を務めた伊神貴世だからこそできた描写であろう(同じようなことができそうなのは、ゲーム版のシナリオを担当した子安秀明や山根直樹といったところか)。そういったシリアスパートが描写される一方で、1期に登場したヨコハマ大樹海でミルキィホームズがコミカルなアクションシーンを見せたり、1期と2期ではおなじみのミルキィホームズ投獄ネタも盛り込まれている。悪くいえばこれまでのミルキィTDのギャグと比べてパンチが少ないところもあるが、作品内のパロディに終始した抑えめなギャグは今回のお話によくマッチしているので気にする必要性はないだろう。前作の「ふたりはミルキィホームズ」を含め、アニメ版とゲーム版がひとまとめにされた現在のミルキィホームズ世界観を最もうまく描写した回だったと評価できる。
2つ目は茉莉音についての描写である。
今回のエレメントバトルでは、ミルキィホームズだけではなく茉莉音自身も参加している。それだけにとどまらず、時間を止めてキャロルを子供のままで閉じ込めることを「キャロルのため」と語るエレメント「リズミック」に対して、茉莉音は自分の意見を示し、「私と奇跡の歌のように、キャロルさんとお芝居は二つで一つ」「演じる喜びを奪わないで」とリズミックの説得を試みていた。この5話までの経験を通して茉莉音自身が成長していると感じとれる1シーンである。
また、キャロルが「あなたを見ているとイライラするのよ!まるで未来の自分を見ているようで!」と語るように、今回のお話では過去の茉莉音=キャロルという構図をあてはめることもできる。冒頭で描写されているが、年をとることで子役でなくなったキャロルは、奇跡の歌をなくした茉莉音になるのではないかと強いショックを受けていた。このショックがエレメントの憑依と重なって今回の事件につながっていくわけだが、最終的には茉莉音とキャロルは和解を果たして友達同士となる。最後のシーンでは、完全に対応しているわけではないが、「どんなに辛くても惨めでも、きっと取り戻します。私の歌を」と茉莉音が過去の自分に対して決意を表明しているようにも見て取れる。
今までのお話ではミルキィホームズが茉莉音と関わり、ミルキィホームズとの経験を通じて茉莉音が成長していくという部分が主題にあった。つまりは茉莉音の成長劇である。第4話ではこの部分が弱く、私自身は若干物足りなさを感じてしまったところがあった。今回もミルキィホームズは茉莉音のために行動していたわけではない(今回のミルキィホームズの主な目的はキャロルについてである)のだが、第5話のような物足りなさを感じずにすんだ。なぜかというと、ひとえに茉莉音の成長がきちんと描かれているという点につきるであろう。エレメントバトルに参加し、エレメントに自分の考え、過去の自分と友達になることができた。キャロル独自の部分に学んだところもありはするが、茉莉音が成長しているのだと鑑賞する側に伝えられる描写が見れたことで物語に対する満足感を得られたのだ。
以上2つが個人的に気に入ったところである。それと同時に、今後のミルキィTDの脚本にぜひとも取り入れてもらいたいところでもある。パロディはアニメ版ミルキィの華でもあるので1つ目にあげた「ギャグとシリアスの配分」は多少破かれて仕方ないとして、「茉莉音についての描写」については力を入れていってもらいたい。
次の第6話で折り返し。こちらも先行視聴組の感想を見るに評価は良いので、期待していきたい。
それと別枠として書いておくが、異様に野宿慣れしたミルキィホームズの件のテンポはBGMも相成ってとても良かった。作画・演出班に最大の讃辞を送りたい。
探偵歌劇ミルキィホームズTD第5話「キャロルの身代金」は、時勢に併せて、テレビ放送が見送られた不運の回である。空いた放送枠には同作の第1話の再放送があてられ、翌週以降には第6話が予定通りに放送された。つまり、製作遅延を理由とした番組そのものの延期というわけではなく、この回のみがリアルタイムでの放送を見送られたのだ。
これは同時期、イスラム国によって起こった日本人人質事件ならびに殺害事件を理由とする(同事件ではイスラム国が誘拐した日本人の身代金を日本政府に要求し、身代金が払われなかったために予告通り人質が殺害された)。今回のタイトルが前述の事件を想起されるためにとった製作側の自粛であり、ホームページにも「情勢に配慮をいたしまして、 今週の放送を見合わさせて頂くことになりました」という報告分が掲載された。この動きは同時期に放送されたアニメ「暗殺教室」にもみられ、時勢としては当然の流れだったともいえるだろう。
しかし、タイトルに身代金という単語は含まれてはいるものの、今回のお話にテロや殺害事件を想起させる要素は少なく、むしろお話としての作りも非常に良かっただけに、この自粛はもったいないものだったと言わざるをえない。幸い、ニコニコ動画をはじめとした動画サイトでの公式配信は予定通り行われたため、本回の視聴は円盤化まで待たなければならなかった……という事態は、少なくすんだ。
以上が事件の概略であるが、テレビ放送の自粛に対してネット配信という別の道が示されたことは一視聴者として素直に喜んでいいことであろう。事件そのものは悲惨なものであり、繰り返してはならない惨事である。しかし今回のお話が、場合によってはお蔵入りしていたかもしれないと考えると、何とももったいない話である。放送の自粛に関しては、様々な側面からの理由があるから今後も避けられないとして、時期を見てからネットの配信は行う……という形で、他の作品も今回のミルキィホームズのような処置をとってもらいたいと思う。
前置きが長くなったが、あらため、探偵歌劇ミルキィホームズTD第5話「キャロルの身代金」の感想である。
第5話の脚本を務めた伊神貴世はOVA作品「探偵オペラ ミルキィホームズ Alternative ONE & TWO」の脚本を務めており、他にも「輪るピングドラム」、「ユリ熊嵐」などに脚本として名を連ねている。第5話ではミルキィホームズでは珍しく(?)ミステリー要素が取り入れられていたわけだが、伊神貴世の名前を見てなるほどと得心した人は多かったようである。自分自身もそうだった。トイズを用いた推理はもちろん、Aパートでのミルキィホームズでのおふざけも伏線の一部とは実に感服した。
推理以外の部分についても、第5話は全体的に満足度が高い作りとなっている。以下、2点にまとめてあげてみよう。
1つ目はギャグとシリアスの配分である。
これは、いわゆるアニメ版ミルキィホームズとゲーム版ミルキィホームズの調和がうまくいっていると言い換えてもいいし、シーンごとのメリハリがうまくついているといってもいい。先にも触れたように今回のお話ではトイズを用いた推理パートが挿入されているわけだが、そのシーン直前までのダメダメなミルキィホームズの描写があってこそ光るシーンであった。ネロが今回のゲストキャラ「キャロル・ドジソン」にサインをねだっている部分も伏線一つであり、ミルキィホームズがふざけているように見えて探偵としての推理もきちんと行っていた……というところは、以前にゲーム版世界観で描かれた「探偵オペラ ミルキィホームズ Alternative ONE & TWO」の脚本を務めた伊神貴世だからこそできた描写であろう(同じようなことができそうなのは、ゲーム版のシナリオを担当した子安秀明や山根直樹といったところか)。そういったシリアスパートが描写される一方で、1期に登場したヨコハマ大樹海でミルキィホームズがコミカルなアクションシーンを見せたり、1期と2期ではおなじみのミルキィホームズ投獄ネタも盛り込まれている。悪くいえばこれまでのミルキィTDのギャグと比べてパンチが少ないところもあるが、作品内のパロディに終始した抑えめなギャグは今回のお話によくマッチしているので気にする必要性はないだろう。前作の「ふたりはミルキィホームズ」を含め、アニメ版とゲーム版がひとまとめにされた現在のミルキィホームズ世界観を最もうまく描写した回だったと評価できる。
2つ目は茉莉音についての描写である。
今回のエレメントバトルでは、ミルキィホームズだけではなく茉莉音自身も参加している。それだけにとどまらず、時間を止めてキャロルを子供のままで閉じ込めることを「キャロルのため」と語るエレメント「リズミック」に対して、茉莉音は自分の意見を示し、「私と奇跡の歌のように、キャロルさんとお芝居は二つで一つ」「演じる喜びを奪わないで」とリズミックの説得を試みていた。この5話までの経験を通して茉莉音自身が成長していると感じとれる1シーンである。
また、キャロルが「あなたを見ているとイライラするのよ!まるで未来の自分を見ているようで!」と語るように、今回のお話では過去の茉莉音=キャロルという構図をあてはめることもできる。冒頭で描写されているが、年をとることで子役でなくなったキャロルは、奇跡の歌をなくした茉莉音になるのではないかと強いショックを受けていた。このショックがエレメントの憑依と重なって今回の事件につながっていくわけだが、最終的には茉莉音とキャロルは和解を果たして友達同士となる。最後のシーンでは、完全に対応しているわけではないが、「どんなに辛くても惨めでも、きっと取り戻します。私の歌を」と茉莉音が過去の自分に対して決意を表明しているようにも見て取れる。
今までのお話ではミルキィホームズが茉莉音と関わり、ミルキィホームズとの経験を通じて茉莉音が成長していくという部分が主題にあった。つまりは茉莉音の成長劇である。第4話ではこの部分が弱く、私自身は若干物足りなさを感じてしまったところがあった。今回もミルキィホームズは茉莉音のために行動していたわけではない(今回のミルキィホームズの主な目的はキャロルについてである)のだが、第5話のような物足りなさを感じずにすんだ。なぜかというと、ひとえに茉莉音の成長がきちんと描かれているという点につきるであろう。エレメントバトルに参加し、エレメントに自分の考え、過去の自分と友達になることができた。キャロル独自の部分に学んだところもありはするが、茉莉音が成長しているのだと鑑賞する側に伝えられる描写が見れたことで物語に対する満足感を得られたのだ。
以上2つが個人的に気に入ったところである。それと同時に、今後のミルキィTDの脚本にぜひとも取り入れてもらいたいところでもある。パロディはアニメ版ミルキィの華でもあるので1つ目にあげた「ギャグとシリアスの配分」は多少破かれて仕方ないとして、「茉莉音についての描写」については力を入れていってもらいたい。
次の第6話で折り返し。こちらも先行視聴組の感想を見るに評価は良いので、期待していきたい。
それと別枠として書いておくが、異様に野宿慣れしたミルキィホームズの件のテンポはBGMも相成ってとても良かった。作画・演出班に最大の讃辞を送りたい。
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