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2015年01月18日

艦隊これくしょん-艦これ-第1話感想〜艦これアニメに見る登場キャラクターの絞り込み〜

 艦隊これくしょん、通称「艦これ」は2013年4月にサービス開始したブラウザゲームである。「大和」に代表される大日本帝国海軍の艦艇をかわいらしい少女(艦娘)へと擬人化し、彼女らと共に謎の敵・深海棲艦と戦って勝利を掴む、というのがおおまかなゲーム内容となる。
 当初は10万人の登録ユーザー、1〜2万のアクティブユーザーを想定した企画だったものの、同年7月には登録ユーザーが20万人を突破。その後も登録者は後を絶たず、2014年8月の段階で220万人の登録ユーザーを誇るブラウザゲームの最大手となった。2015年1月には艦これと同系統、あるいは類似のゲームシステムを持つ「御城プロジェクト」、「俺タワー」、「刀剣乱舞」が登場しており、またサービス開始より2年近くが経過したことから、アクティブユーザー数自体は全盛期から減少されていることは予想される。しかし、史実をモチーフとした期間限定マップ(海域)の解放は今も定期的に行われており、大日本帝国海軍に限らない海外艦をモチーフとした艦娘の実装、実装済みの艦娘の強化後の姿の追加など、その終着点はまだまだ見えておらず、その勢いが完全に途絶えるのはまだまだ先の話になりそうだ。
 
 艦これの活躍の舞台はブラウザゲームに限らない。
 サービス開始時と同時に連載が始まった4コマ漫画「艦隊これくしょん -艦これ- 4コマコミック 吹雪、がんばります!」をはじめ、艦娘の心情描写や成長劇に比重を置いた小説「艦隊これくしょん -艦これ- 陽炎、抜錨します!」、ブラウザゲームのBGMにアレンジを加えたボーカル曲を収録したCD「艦隊これくしょん -艦これ- 艦娘想歌」、自分自身が艦娘となって戦いを繰り広げるTRPG「艦隊これくしょん -艦これ- 艦これRPG」など、様々なメディアミックス展開が行われている。
 そして、2015年1月。アニメ作品「艦隊これくしょん_-艦これ-」の放映が開始となり、艦これを遊んだことのない多くの人々にもその名前が認知されることとなった。


 アニメ版艦これについてまず感じたのは、「艦娘」とその敵である「深海棲艦」以外の存在の徹底的な排除である。
 装備品扱いである「連装砲ちゃん」やマスコット的扱いの「妖精」といった例外はあるものの、この排除の姿勢は凄まじい。「艦隊これくしょん -艦これ- 陽炎、抜錨します!」でおぼろげながらも描写されていた一般人市民が映らないのはもちろんのこと、漫画「艦隊これくしょん -艦これ- 水雷戦隊クロニクル」で艦娘たちに檄を飛ばしていた鎮守府の人間は見当たらないし、ブラウザゲームの分身である提督も影のみの出演である。艦これの世界観設定はメディアミックス作品ごとに異なるので安易な比較はできないが、これだけ艦娘の描写にだけ絞り切った作品というのは意図的にやらないと逆に難しい。
 アニメ版艦これに登場する艦娘の一人・睦月は、「たいていのことはこの中(※舞台となる艦娘の拠点・鎮守府のこと)で済んじゃう」と切り出し、「任務や出撃に関することだけじゃなく、休日を過ごすための施設もある」という理由のため、「睦月もほとんど出ることがない」と鎮守府について説明する。この直前には鎮守府が陸地から離れた孤島であることが描写されており、前述した睦月の説明を合わせて考えると、艦娘以外の存在が画面上に見えなくても極力問題がないように舞台設定が施されているのは間違いなさそうである。
 一般人や鎮守府の人間を描写しないのならまだしも、艦娘に強く関わる存在である提督まで画面内から排除しているのは作劇上では割と問題である。実際、第1話終盤で個人的にどうしても気になった場面が存在する。それは落胆していた主人公・吹雪が、影だけの描写にとどまる提督と何かしらの会話をして、憧れの存在である赤城と同じ艦隊になって共に戦うと決心するところである。彼女の決心を促した(らしい)提督の描写がごっそり削られているため、第1話の盛り上がりどころである吹雪の心境の変化についていきづらくなっているのだ。提督の像を多少なりとも動かしていれば自然になったと思う場面だけに、もったいなく感じてしまう。
 しかし、作劇上では不具合となっている要素ではあるが、提督を描写しないことによるメリットはもちろんある。
 アニメ版艦これ第1話にはかなりの数の艦娘が出演する。主人公である吹雪、そのルームメイトである睦月と夕立、同じ艦隊に所属する神通型3姉妹、鎮守府のエースである一航戦の赤城と加賀、提督の秘書官である長門にそのサポートをする陸奥と大淀、その他にも暁型4姉妹の、界隈でファンの多い北上と大井のペア、ect……一言だけ喋る艦娘や画面上にチラッと映る艦娘を合わせて、軽く30は超えている。ブラウザゲーム版に登場した艦娘の4分の1にも届かない数ではあるが、群像劇ならまだしも、主人公を一人に定めた作品としては破綻し兼ねないほどのキャラクター数である。そして、この数はまだまだ増えることが予想される。たぶん、倍近くにはなるのではないだろうか。
 これだけ多くの艦娘が登場できたのも、徹底して艦娘の描写に絞ったことによる工夫によるものだ。もし提督を画面内に登場させて吹雪と会話をさせたのなら、少なくとも10人の艦娘の出番は削られたとみて間違いない。その後は1話以降にも登場させないといけないし、それに伴って艦娘の登場数も大きく減少したはずである。提督に限らず、艦娘以外を映さないという徹底した姿勢により、艦娘の登場回数が担保されている。これが提督を描写しないことによるメリットであり、製作陣が優先したことなのではないかと推測する。
 推しの艦娘が登場しない……そういう悲しみを持つ提督を一人でも減らすための、あえての方針なのであろう。
 
 アニメ化されたことによる一番の収穫は、アニメという統一された作画で動く艦娘たちが鑑賞できるという点であろう。私自身を例にとると、ゲーム中ではあまり興味の湧かなかった利根が体操着で走りながら僅かな言葉を喋るだけで興味が出てしまった。このようにあまり注目していなかった艦娘に目を向ける人もいれば、自分の好きな艦娘の良さを再認識、あるいは新発見するような人もいるだろう。全ての艦娘が出るわけではないだろうが、第1話での徹底した艦娘の描写から察するに、ひとりでも多くの艦娘を登場させようという製作陣の心意気は感じられる。ただ、劇中で唐突に挿入されるブラウザゲーム版のセリフには違和感を覚えるところがあったので、そこだけは改善してもらえるといいのだが。
 艦娘以外を画面に映さないというデメリットはあるものの、吹雪を主人公に据えたことによるストーリーラインの土台は第1話で形成されているし、第2話以降の彼女の成長劇にも期待できそうである。ブラウザゲーム版の吹雪にはアニメ放映に合わせて改二(強化バージョン)が実装されているので、いずれアニメにも登場することが伺える。吹雪がどのような経緯で改二に至るのか。妄想を広げながら放送を見守りたいと思う。


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