園城寺(おんじょうじ)は、滋賀県大津市園城寺町にある天台寺門宗の総本山の寺院。山号は長等山(ながらさん)。本尊は弥勒菩薩。開基(創立者)は大友与多王。日本三不動の一つである黄不動で著名であり、観音堂は西国三十三所観音霊場の第14番札所で札所本尊は如意輪観世音菩薩である。また、近江八景の1つである「三井の晩鐘」でも知られる。なお一般には三井寺(みいでら)として知られる。平安時代などの日本古典文学で、何も注釈を付けず「寺」と書かれていれば、この園城寺を指す(当時の古典文学では延暦寺もしばしば取り上げられているが、こちらは「山」(比叡山)と呼ばれている)。
2015年(平成27年)4月24日、「琵琶湖とその水辺景観− 祈りと暮らしの水遺産 」の構成文化財として日本遺産に認定される。
札所本尊真言(如意輪観音):おん ばだら はんどめい うん
ご詠歌:いでいるや波間の月を三井寺の 鐘のひびきにあくる湖
三井寺(園城寺)金堂は日本の国宝
歴史
当寺は7世紀に大友氏 (古代)の氏寺として草創され、9世紀に唐から帰国した留学僧円珍(天台寺門宗宗祖)によって再興された。園城寺は平安時代以降、皇室、貴族、武家などの幅広い信仰を集めて栄えたが、10世紀頃から比叡山延暦寺との対立抗争(山門寺門の争い)が激化し、比叡山の宗徒によって園城寺が焼き討ちされることが史上度々あった。近世には豊臣秀吉によって寺領を没収されて廃寺同然となったこともあるが、こうした歴史上の苦難を乗り越えてその都度再興されてきたことから、園城寺は「不死鳥の寺」と称されている。
文化財
三井寺の秘仏
黄不動像(絹本著色不動明王像、国宝)をはじめ、三井寺の仏像には平素公開されない秘仏が多い。唐院大師堂の木造智証大師像2躯(中尊大師・御骨大師、ともに国宝)、唐院大師堂の木造黄不動立像(重要文化財)、新羅善神堂の木造新羅明神坐像(国宝)、観音堂の木造如意輪観音坐像(重要文化財)、護法善神堂の木造護法善神立像(重要文化財)などはいずれも秘仏である。これら秘仏は下記の行事等の機会に公開されたことがある。
・「智証大師一千百年御遠忌記念三井寺秘宝展」(1989年10月から1990年9月まで東京国立博物館など4会場で開催)および「智証大師一千百年御遠忌大法会」(1990年10月から11月に寺内で開催) - 上記秘仏のすべてが公開。
・「智証大師帰朝1150年記念国宝三井寺展」(2008年11月から2009年5月まで大阪市立美術館など3会場で開催) - 上記秘仏のすべてが公開。
・「天台寺門宗宗祖智証大師生誕1200年慶讃大法会」(2014年10月から11月に寺内で開催) - 大師堂で智証大師像2躯と木造黄不動像、観音堂で如意輪観音像を開扉。
・「ご即位記念 秘仏御開帳」(2020年3月から6月まで寺内で開催)- 徳仁の第126代天皇即位を記念して、観音堂で如意輪観音像を開扉。
なお、金堂本尊の弥勒菩薩像(弥勒如来とも)は、天智天皇の念持仏と伝え、唐からの請来像ともいうが、公開されたことがなく、写真も存在しないため、いかなる像であるかは不明である。
国宝
・金堂 附:厨子 1基
・新羅善神堂 附:須弥壇及び厨子 1具
・勧学院客殿
・光浄院客殿
・絹本著色不動明王像(黄不動)(既述)
・木造智証大師坐像(中尊大師) - 唐院大師堂の中央の厨子に安置。秘仏で、毎年10月29日の円珍の命日にのみ開扉される。卵形の頭の形と細い眼が特徴の独特の風貌は、各地に残る円珍の肖像に共通のものである。この像はもと比叡山内の山王院(千手院)にあったといわれ、円仁(慈覚大師)門徒と円珍門徒の抗争激化のため、円珍門徒が比叡山を下りた正暦4年(993年)に園城寺に移されたものといわれている。ただし、作風的には10世紀後半頃のものと見られ、正暦4年頃に園城寺で新たに造像されたとの見方もある。「三井寺の秘仏」の節で紹介した行事等で公開されたほか、1986年(昭和61年)に開催された「開創千二百年記念比叡山と天台の美術」展でも公開されたことがある。
・木造智証大師坐像(御骨大師) - 唐院大師堂内、中尊大師像の向かって左の厨子内に安置する。秘仏で、特別な行事の時以外、開扉はされない。荼毘に付した円珍の遺骨を納めるところから「御骨大師」と呼ばれて寺内で尊崇され、出版物への写真掲載は制限されている。中尊大師像より古く、9世紀末、円珍没後まもない頃の作と思われる。
・木造新羅明神坐像 - 新羅善神堂に安置。非公開。円珍が日本へ帰国する際、船中に現れた神とされる。長いあごひげを蓄え、目尻の下がった異様な相貌、異様に細く長い指など極めて特殊な像容を示し、日本彫刻史の中でも異彩を放っている。平安時代後期、11世紀頃の制作と推定される。「三井寺の秘仏」の節で紹介した展覧会で公開されたほか、1986年(昭和61年)に開催された「開創千二百年記念比叡山と天台の美術」展でも公開されたことがある。
・五部心観2巻 - 両界曼荼羅のうち、金剛界曼荼羅の諸尊を表した白描(はくびょう)図像の巻物である(白描とは、陰影や肥痩のない、均質な墨の線だけで表した絵画のこと)。2巻のうち1巻は完本で唐時代に制作され、円珍が師の法全(はっせん)から授かったもの。もう1巻の残欠本は11世紀平安時代に日本で写されたものである。ただ、最近では残欠本の方を請来本とする意見もある。
・智証大師関係文書典籍 - 円珍に関わる資料46種が一括して国宝に指定されている。主なものとしては、円珍の系図、唐への渡航関係文書、円珍自筆本、唐から請来した経典などがある。京都国立博物館・奈良国立博物館に寄託(文書典籍の明細は別記)。
智証大師像(中尊大師)。平安時代の作。
木造新羅明神坐像(国宝、園城寺所蔵)
交通
京阪石山坂本線 三井寺駅より徒歩10分または大津市役所前駅より徒歩12分
西日本旅客鉄道(JR西日本)琵琶湖線(東海道本線)大津駅より京阪バス三井寺バス停下車0分
湖西線(JR西日本)大津京駅より京阪バス三井寺バス停下車0分
所在地 滋賀県大津市園城寺町246
位置 北緯35度0分48.09秒 東経135度51分10.26秒
山号 長等山(ながらさん)
宗派 天台寺門宗
寺格 総本山
本尊 弥勒菩薩
創建年 7世紀
開基 大友与多王
中興年 貞観元年(859年)
中興 智証大師円珍
正式名 長等山 園城寺
別称 三井寺
2023年04月19日
この記事へのコメント
コメントを書く
この記事へのトラックバックURL
https://fanblogs.jp/tb/11948349
※ブログオーナーが承認したトラックバックのみ表示されます。
この記事へのトラックバック